デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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EX1-3, 6月27日

 朝、マンションの一室

 自分の中にある塗り潰されていた部分が剥がれ、記憶の一部を思い出すことの出来たトーマだったが。それについて考えるのは後にして今は朝食を作りながら奪われた力の所在について考えていた

 

「……全部奪われなかっただけマシだが、奪った力は何処にあるのか」

 

 あの天使の正体が一体何なのかすら掴む事の出来ていないトーマからしたら、奪われた力を取り返しに向かおうにもどうにもできないのが現状……などと考えていると制服を着た美九がリビングまでやってくる

 

「お兄さん、おはようございます」

「おう、おはよう……ってそうだ、美九」

「? なんですか?」

「お前、最近何か変わったこととかなかったか」

「変わったこと……ですかぁ、特に思い当たりませんねぇ」

「そうか」

 

 美九の言葉を聞いたトーマは少しだけ肩を落とすが、すぐに切り替えて朝食作りを再開する

 

「あ、そういえばお兄さん、昨日凜祢さんと会ったんですよね?」

「確かに会ったが……それがどうかしたのか?」

「どうかしたのか、じゃありませんよ……久々の兄妹の再開はどうだったんですか?」

「……別にどうってことはない。ただ妙に懐かしかっただけ」

「へー、なんか意外ですねぇ」

「意外とそんなもんなんだよ、家族ってのは……どんなに離れてても繋がってるから久々に会っても案外変わんないもんだ。まぁ……人によって違いはあるだろうけど」

 

 そう言いながら、トーマは焼きあがった目玉焼きを皿に移すと、美九の前まで持っていく

 

「ほれ、出来たぞ」

「待ってましたぁ! いただきまーす!」

「オレも、いただきます」

「やっぱりこの味ですねぇ、安心する味です」

 

 嬉しいことを言ってくれる美九を見たトーマは、頬を少しだけ緩ませて自分も朝食を食べ始めた

 

 

 

 

 

 

 そして時は進み時刻は午前十一時、いつものように購買にお弁当や惣菜パンを運び終えたトーマが辺りを見回すと今日はやけに外に出ている生徒たちが多い

 

「なんか随分と賑やかだな」

 

「おぉ、やってるやってる! ラクロスのユニフォームって、どうしてあんなにかわいいんだろうな五河! 萌えてくるよな!」

「”もえ”の意味が間違ってるだろ!? まともに応援もできんのかおまえは!」

 

「ん?」

 

 裏手から駐車場に向かおうとした辺りで、聞きなれた声がトーマの耳に届いた

 

「あれ、士道とその友達か?」

 

 少しそちらに視線を向けると、士道もこっちに気が付いたようで軽く手を上げてきた

 

「よう、頑張ってるか高校生」

「ボチボチだよ、それよりトーマは……仕事か」

「そう言うこった。それより士道、そっちの男子生徒は友達か?」

「どうも、五河の友人の殿町宏人です」

「よろしく、それより二人はこんな所で何やってるんだ?」

 

 トーマがそう言うと、士道は少し視線を横にやって話を始める

 

「今日は球技大会だからさ、俺達はその応援だよ……ほら、丁度凜祢もラクロスの試合中だし」

 

 士道の目を向けている方にトーマも視線を向けるとユニフォーム姿の凜祢がラクロスの試合をしている最中だった

 

「そっち! マークお願い!」

 

「お! さすがラクロス部! 活躍してるな!」

「あぁ、そうみたいだな……」

 

 その言葉を聞いた瞬間、トーマの頭の中に小さなノイズが走る

 

「……なぁ、士道。凜音ってラクロス部なのか?」

「そうだけど。もしかしてトーマ、凜祢から聞いてなかったのか?」

「……あ、あぁ、最近はなかなか会う機会もなかったからな」

 

 自分の記憶の中に存在する”凜音”と今の”凜祢”確かに同一の存在であるはずなのに、トーマの目には全くの別人のように映っていた

 

「――あぁ、駄目だ! 動きを読まれてる!」

 

 思考の渦に呑まれそうになったトーマだったが、殿町の言葉で八ッと我に返る。それと同時に相手チームに点が入る

 

「っ! ……入れられちまった!」

「ど、どっちが勝ってるんだ?」

「今のでトータル十一対十一……同店に追いつかれた!」

「ど、同店!」

「もう後半に入ってる。残り時間は……後五分ってところだ」

「勝てるのか?」

「わからん……」

 

「大丈夫だ、絶対に勝てる」

 

 少し不安な様子だった士道たちとは正反対に、トーマは絶対に勝てるという確信があった

 

「え?」

「二人のどっちかで良いんだが、ルールは知ってるか?」

「俺は、知らないけど……殿町は?」

「まぁ、最低限ルールくらいは」

「そうか、それじゃあ教えてくれ」

 

 少し困惑している様子の殿町だったが、この球技祭におけるラクロスのルールを話し始める

 

「球技祭のラクロスの試合は、公式ルールは採用してない。もっと単純で安全な簡易ルールを採用している……」

「簡易ルール?」

「ソフトラクロスというおお方もされてるみたいだが……。ほらみろ、一チームの人数が六人しかいないだろ? 正式な女子ラクロスなら一チーム十二人はいるはずだからな」

「そ、そんなに多いのか!」

「正式なルールだと、どのスポーツでも人数は多くなるもんだぞ、士道」

 

 個人技で行われるスポーツは例外だが、正式なルールで行われる場合の人数はどのスポーツでも人数が多くなる。スタメンが五人のバスケでもベンチには大体十人だか十五人だか入るのだから、そう言うものなんだろう

 

「ソフトラクロスってのは、対戦チームを含めて十二人で行われる。ルールは簡単、それぞれ両端に置かれたゴールにボールを入れるだけだ」

「そこはサッカーと一緒だな」

 

 改めて殿町が再開したルール説明に、士道は相槌を打つ

 

「だがラクロスでは、アイスホッケーみたいにゴール裏のスペースも使っていい。そして――」

「そして?」

「ここが一番サッカーと違うところなんだが、ゴールを入れる前に、必ず二回以上のパス交換が必要なんだ」

「絶対にパスをしなかいけないってことか?」

「そう、だから、例えラクロス部の力がどれほどだろうと、凜祢ちゃん一人で相手ゴールに持ち込むようなことはできない」

「あ……」

 

 ラクロス部と言う有利な立場ではあるが、必ず仲間にパスを出さないといけない以上。その利点も意味をなさない場合の方が多い。むしろ経験者と言う点だけ見ると凜祢は圧倒的に不利だ

 

「それに、相手クラスだって馬鹿じゃないからな」

「経験がある凜音におんぶにだっこ状態なら、凜音一人を抑えてしまえば、他は大した脅威にならない」

「……っ」

 

「キャッ!」

 

 一通りのルール解説を終えたタイミングで、凜祢の小さな悲鳴が聞こえてきた

 

「り、凜祢!? 大丈夫なのか……!?」

「……ゲホゲホッ! す、砂埃で見えなかったが、凜祢ちゃんへのチェックが一段と激しくなってるようだな! 今のはファールを取ってもおかしくないレベルだった! これは……凜祢ちゃんを完全につぶしにきてるぞ」

「く――! 凜祢! 絶対勝ってくれよ!」

 

「あらぁ? 今、咳をしたのってぇ……。あ、やっぱり殿町くんだったんですかぁ?」

「……え? あ、タ、タマちゃん――じゃなくて、お、岡峰先生! どうしたんですか?」

 

 凜祢の事を応援している士道たちの近くに岡峰教諭がやってくると殿町は少しだけ慌てた様子を見せる

 

「ラクロスの試合を見学しに来たんですけれどオ、それどころじゃないようですねぇ。殿町くん、ちょっと来てくださぁい」

「は、はい……?」

「調子悪そうですし、とりあえず、保健室に行きましょうねぇ」

「い、いや、俺は本当に大丈夫ですから――」

「駄目ですぅ! さっき席をしてたの聞きましたからねぇ! さぁ、早く行きますよぉ!」

「お、おい五河! おまえからもなんとか言ってくれ! 親友だろ!?」

「せ、先生……こいつ、応援のために……苦しいのに我慢して……! うぅ……は、早く、連れてってあげてください!」

「い、五河おまえ、俺を――!?」

「それは大変ですぅ! 殿町くん! あなたのクラスメートを思う気持ちは、とっても素晴らしいと思いますぅ! でも、自分の身体も大切にしなくちゃ駄目ですよぉ!」

 

 士道の助けを得ることのできなかった殿町は、そのまま岡峰教諭に連行されていった

 

「……自業自得って、こういうことを言うんだろうな」

「士道……見捨ててよかったのか?」

「あぁ……結局アイツの自業自得――!? お、ナイスパスカット! あぁ……でも残り時間が……!」

「心配ない、絶対に勝てる」

 

 マークを振り切れてないままだった凜祢の元に、クラスメートからのパスが飛ぶ

 

「あ――! おいやめろ! 今凜祢にパスしちゃ駄目だって!」

 

 そんな心配をよそに、凜祢は味方からのパスを見逃した……しかし、見逃されたパスは凜祢の後ろに回り込んでいた味方に繋がる

 

「こっち! お願い! ――――これでっ!」

「う、打て! 凜祢――ッ!」

「せいやぁーーッ!」

 

 凜祢の放ったボールは相手のゴールに吸い込まれ、その後すぐに審判が試合終了を告げる

 

「試合終了! 十二対十一! 二年四組の勝利!」

 

「ふふ、やったね! みんなのチームワークの勝利だよ!」

 

 どうやら士道は、そんな凜祢の笑顔に見惚れているようだったが。トーマは士道の方に軽く目を向けた後、士道の肩に手を置く

 

「それじゃあ、オレももう行く……流石に時間を潰し過ぎた」

「あ、あぁ……またな」

「おう」

 

 士道に見送られながら、トーマは車を止めた方に歩いていった

 

 

 

 

 

 

 

 その日の深夜、トーマは一人、新天宮タワーに向けて歩いていた

 この時まででトーマの中に存在する黒く塗りつぶされた部分が剥がされ、思い出したのは二つ

 一つは自分の過去――凜音と言う名の、園神凜祢と瓜二つの少女がいたという記憶

 そしてもう一つはこの世界が繰り返しているという事実。トーマはどの繰り返しの中でもその最中にこの事実を思い出し、新天宮タワーに向かい天使によって殺された。しかし今までとひとつ前のループで決定的に違うのは、天使がトーマの力を奪ったという事。今までのループでは殺されこそせれど力を奪わせることはなかった

 

「どうして、オレの力を奪ったのか……それはいつもの場所に行けばわかることか」

 

 火炎剣の納刀されたソードライバーを腰に巻きながら、トーマは新天宮タワーの前までやってきた瞬間、不快な感覚が全身を襲う。今までのループで何度も体感した感覚だ

 、そしてこの感覚の後に現れるであろう存在(モノ)を予想していたトーマの目に映ったのは、自分にとって想像もつかない存在(モノ)

 

「――ッ、どういう……ことだ……」

 

 トーマの目の前に現れたのは、漆黒の刀身に橙色のエンブレムが付いた剣――無銘剣虚無とそれを握っている誰か。影にその身を隠されていた存在は、月の光によって徐々にその正体を明らかにしていく

 無銘剣を握る誰かの姿は、白と黒のみで構成されていたが間違いなく、ファルシオンそのものだった。見た目は同じだがアーマーに当たる部分は白と黒の文様ようなものになっており、複眼も先端に青いラインが入っている以外は白くなっている

 

「お前は……誰だッ」

「-・-・・ -・--・ -・-・--」

 

 その場に佇んでいたファルシオンは、トーマに向けて斬撃を放つ。その斬撃に対し回避行動をとったトーマは流れるような動きで本を装填し、剣を引き抜く

 

『烈火抜刀!』

 

 ファルシオンのものとは異なる深紅の炎で全身を身に包んだトーマの姿は右半身にドラゴンの意匠を纏った戦士、セイバーへと変化する

 

「答えろ……お前は一体誰だッ!」

「---- -・ -・--- -・--・ --・・- ・--・ -- ・・- -・・・ ・-・-・- ・-・ ・-」

「……対話をする気はないって事か」

「・-- -・・・ --・ ・-・-・- --・ ・-・・ ・- ・-・-- ・・ -・-・・ ・-・ ・- ・-・・」

 

 セイバーの眼前にいるファルシオンからは、何か発せられてるようだったが、トーマにはそれが理解できない以上。剣を交えて戦う他ない

 

「はぁッ!」

「--・・ ・-・-・ -・-・--」

 

 セイバーの斬撃を片手で受け止めたファルシオンは、そのままセイバーに斬撃を放った

 

「ぐぅっ!」

「---- ---- ・-・・ ・・・ ・-・-・- -・ ・・-・ -・-・- ---」

 

 ファルシオンは、キング・オブ・アーサーの本を取り出すと無銘剣にリードする

 

永遠(とわ)の騎士王 無限一突』

「・-・・・ -・- --・ -・ ・・」

 

 ファルシオンはがリードした事で出現したキングエクスカリバーへとエネルギーが集中し、漆黒の斬撃が放たれる

 

「――そう簡単に、終われるか!」

 

『必殺読破! 烈火抜刀! ドラゴン一冊斬り! ファイヤー!』

 

 セイバーはその斬撃を避けることなく、深紅の炎を纏った刀身でそのまま受け止め。弾き飛ばす

 

「・-・ -・-・ ・・--・・」

「その力……返してもらうぞ!」

「-・- -・--・ ・- ・-・・ ・・ ・-・-・- ・-・・ -・--- ---・- -・- -・-- -・-・ -・・・ ・- ・-・・ ・-・ ・-」

 

 互いにその場で相手の出方を伺っていると、ファルシオンは急に一歩ずつ後ろに下がり始める

 

「……なんだ?」

「---- --- ・- --・-・ ・・ -- ・-・-・- --・-・ ・・ ・-・・ ・-・-・ ・・-- - -・ ・・ -・ ・・」

 

 警戒を続けるセイバーを他所に、ファルシオンはその場から完全に消え。残ったのは深夜の静寂だけだった




続いていく日常
現れた異なる姿のファルシオン
思い出した記憶の欠片は未だ不透明で
大切な何かは欠けたまま

真実は未だ闇に呑まれ
解き明かされることはない

次回, 凜祢ユートピア EX1-4
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