デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
翌日、士道は凜祢の声で目を覚ます
「士道? 起きた……?」
「……ん? ……り、凜祢?」
「おはよう、士道」
昨日の考えが頭をよぎり、黙ってしまっている姿を見た士道に対して凜祢は不思議そうに問いかける
「……? どうしたの士道? 私の顔に何かついてる?」
「あ、いや……な、なんでもない。ちょ。ちょっとその……」
「……? もうまた寝ぼけてちゃってるの? 早く起きて顔を洗ってくること。ご飯できてるから」
「あ、あぁ……」
昨日の考えが、どれだけ振り払っても頭から離れない。それでもなんとか振り払って朝食を食べて学校に向かう支度を整える
「士道ー? 支度できたー?」
「え! あ、あぁ! 今行くって!」
そんな声が耳に届いた士道は、急いで玄関に鍵をかけて凜祢の元まで向かう
「すまん凜祢! 待たせたな!」
「ううん、大丈夫」
「じゃ、じゃあ、行くか?」
「うん」
いつもの通学路を、いつものように歩いている筈なのに、二人の間にいつものような会話はない
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「えぇっと……」
なんとか会話をしようとした士道だったが、頭の中が真っ白であるため上手く話す事ができない
「そ、その……」
「ねぇ、士道?」
「っ! ……な、なんだ?」
「今日も放課後、空いてるかな?」
「あぁ、空いてる……ってか、空けるよ。凜祢のお願いなら」
「ありがとう。それじゃ、午後はよろしくね?」
「わ、わかった!」
もしも、凜祢が精霊だとしたら……士道のやるべきことは一つだが、それでも彼の心は騒めいたままだった
そして、放課後。士道は時間の流れがやけに早いように感じていると、凜祢が話しかけてくる
「士道? 帰る準備、しないの?」
「おう、り、凜祢か」
「ほらほら、時間は有限なんだよ? 早く早く!」
「ちょ、ちょっと待てよ凜祢! そんなに急がなくたって……」
「今言ったでしょ? 時間は過ぎてくだけなんだよ? そういうわけで、早く準備すること」
「りょーかい」
時間は有限、と言うことで制服姿でのデートになった士道と凜祢は、家の近くにある公園にやってくる
「なぁ、凜祢?」
「ん?」
「その……昨日のデート……あんか、ごめんな?」
「ううん。悪いのは私……全部、私が悪いんだよ」
「いや、正直、俺もちょっと集中できてなかったていうか、心ここにあらずなところがあったから……」
「士道がそう言うなら……そうだ! じゃあ、おあいこにしよ?」
「そ、そうだな、おあいこだ。あはは……」
「ふふふ……」
ぎこちなかった空気が、ほんの少しだけ緩和されたように見えたが……すぐに無言の時間が再開する
「……えーっと、そ、そういやこの公園で昔よく遊んだよな……? 琴里と一緒にさ」
「え? あ、うん。……ブランコとか滑り台とか、ベンチに落書きとか、ね?」
「そうそう。危ないって言ってるのに、琴里のやつがブランコの二人乗りをせがんできてさ」
「うんうん」
「あのときは困ったけど、今となっては、なんていうか……貴重な思い出かな」
「そうだね、大きくなっちゃうと、一緒にできたこともできなくなっちゃうし……兄さんとも、一緒にいられなくなっちゃったし」
「そうだな……そういえば、おまえは何で遊んでたっけ?」
「……え?」
士道の問いかけに、凜祢は少しだけ困惑したような顔になった
「いや、この公園で何が好きだったかなって」
「そ、それは──ほら、やっぱりあれ、かな……?」
「ん? ……うーん、思い出せん……そういえば、トーマも何で一緒にいなかったんだっけ?」
「……やっぱり、力が──」
「え……?」
「ううん……士道ってば忘れっぽいところあるし、もうずいぶん昔のことだから……仕方ないよ」
「う……。な、なんかごめん……。友達甲斐がない奴っていうか、こんなんじゃ幼馴染としても失格だよな」
「そんなことないってば。もう……今日の士道は謝ってばっかり」
「あ、ごめん──って、あ……」
凜祢にそう言われた士道が発したのは、またもや謝罪。それを聞いた凜祢は少しおかしそうに笑う
「ほら、言ってるそばから」
「し、仕方ないだろ。無意識に出ちゃったんだから」
「はいはい。ふふ……やっぱり、士道といると楽しいなぁ……」
「そ、そっか……?」
「うん、ありがとね」
突然の感謝の言葉に、士道は困惑するが凜祢は気にする様子もない
「何でもないよ。今日は行きたいところがあるの。士道、付き合ってくれる?」
「お、おう……もちろん!」
凜祢に連れられて士道がやってきたのは、天宮市の市街から少し離れた場所にある貯水池。何日か前に士道たちが肝試しで訪れた場所
「……行きたい場所って、ここだったのか?」
「……」
「……み、見事に誰もいないな。はは……これだけ静かだとなんか逆に落ち着かないっていうか……」
士道の言葉に対して凜祢は言葉を返してこない
「凜祢……?」
「ねぇ士道、ひとつ聞いていい?」
「え? な、何だよ」
「うん……さっき公園で、デート中、心ここにあらずだったって言ってたけど……どうして?」
「あ、あぁ……その話か……」
「私がなんんか悪いことしちゃったのかな……って思って」
凜祢の言葉を聞いた士道は、少しだけ悩んだ後に昨日のデート中にあった事を話し始めた
「いや……実は凜祢とデートしてるときにさ、よぎったんだよ……」
「よぎった……って何?」
「最初は、よくあるデジャブかなって思ったりしたんだけど……。思い返すほど、確か前に同じようなデートをした記憶はあってさ……」
「……おな、じ」
「いや、変なこと言ってるってのはわかるんだ。でもさ……それがずっと気になってて──」
「そう、だったんだ……」
「ごめん、凜祢にも失礼だよな。──って、なんか今日の俺は本当に謝ってばっかだな」
場の雰囲気を少しでも軽いものにするために士道はそう言うが、凜祢は真剣な様子で士道に話しかける
「──ねぇ、士道?」
「ん?」
「掛け間違えたボタンに気付いたときって……、どうすればいいと思う?」
「え、い、一体何の話だ?」
「一度そうなっちゃうと……どれだけうまく合わせようとしても、そこからはずれたままで……どんどん綻びが大きくなっていく。それを元に戻す為に別のボタンを増やしても、その綻びは元に戻せない」
「……?」
「だからね……私、こう思うの。一度全部諦めて……また最初からやり直せばいいんじゃないかって。増やしたボタンも最初からあったことにしちゃえばいいんじゃないかって」
「えぇと……凜祢……?」
いつもと違う凜祢の様子に、士道は少しだけ困惑する
「あ、ごめんね。今のは忘れて……何でもないの」
「そ、そうか……?」
凜祢はそう言うが、士道にはその言葉が深刻そうに聞こえた
「士道、ちょっと待っててくれる?」
「待っててッて……どこ行くんだよ?」
「ふふ、ひ・み・つ。女の子にそういうこと聞くんじゃありません」
「す、すまん……!」
「もう、また謝ってるよ?」
「あ……」
「ごめんね。少し、気をつけた方がいいかも?」
「おう、そうする。注意しないとな……」
凜祢がその場から離れていく様子を見ていると、士道は苦笑を浮かべる
「はは、なんだかんだで凜祢も謝ってるし……。謝ってばっかりだな……」
そう言ってすぐ、士道は凜祢の言葉に違和感を覚える。さっきのやり取りに凜祢が謝る要素はなかったはず。それなのに何故凜祢は士道に対して謝ったのか。それを考えていた瞬間、辺りの空気が一変する
「──なっ! なんだ!?」
士道がそれを感知した直後、空間は歪み全く別のどこかに士道は移動する
「こ、これは……ッ!? ──え?」
その瞬間、士道の元に何かが向かってくる……が、士道へと到達する直前でそれは防がれる
「っうわッ!?」
「大丈夫か、士道」
「と、トーマッ!? なんでここに──」
「詳しい話は後だ、下がってろ」
突然現れたトーマは、右手に持った火炎剣の切っ先を前に向けると。空間が揺れ一人の人間が現れる──それは、士道が何度か夢で見た少女
「お、おまえは……夢の……!?」
「……そう……私と貴方は夢を共有していた……」
「お、おまえは一体何者なんだ!? せ、精霊……なのか!?」
士道のその問いに答えたのは、眼前にいる少女ではなくトーマだった
「精霊……かどうかはわからないが、霊力は感じる」
「そ、それじゃあやっぱり精霊──」
「まだわからない。それより……どうして士道を狙う」
「……それを知る必要は、ない。貴方たちはすぐに、すべてを忘れるのだから……」
「そんなことさせ、──っ!?」
火炎剣を構えたトーマと士道を引き離すように、目の前の少女とば別の角度から斬撃が飛んできた
「……やっぱり、いるよな」
「えっ? ……あれって、トーマ?」
斬撃が飛んできた先にいたのは、無銘剣を構えたファルシオン。しかしその姿は士道の目の前にいるトーマとは異なり、どちらかと言うと目の前にいる少女に近い髪の色をしている
「士道、オレに何があってもお前は逃げろ……正直、守りきれる気がしない」
「さようなら。また、あの日常の中に還りなさい。そしてどうか、次こそは幸せな夢を──」
少女の言葉と共に、少女から放たれた光弾とファルシオンが放った斬撃が二人の元に迫る。どちらかか片方に逃げることのできない状況で、士道の頭の中によぎったのは。十香たちとのデートの記憶。いつかの世界で共に歩んだ少女たちとの思い出
しかし、放たれた二つの攻撃は士道たちに届く前に、打ち消される
「…………!?」
「……あ、あれ……? 何が……?」
士道が目を向けると、そこにいたのは霊装を完全顕現させている、十香と四糸乃、琴里。そしてワイヤリングスーツを纏った折紙と、狂三の姿まである
「間一髪だったわね。まったく、冷や冷やさせないでよ! トーマまでいるのに役に立ってないし!」
「……面目ない、生憎力の九割をあっちのオレに持ってかれててな」
「まったく……危なっかしくてみていられませんわねぇ」
「……大丈、夫、ですか?」
『ホントに間一髪だったね二人ともー』
狂三や四糸乃も話しかけてくる中で、十香は眼前にいる少女へと目を向ける
「目的は知らぬが、シドーを傷つけるなら、貴様は私の敵だっ!」
「訂正すべき。士道の敵は、私の敵」
「ぬ……!」
「……み、みんな!? それに狂三まで──!?」
「あら、わたくしはついでなんですの?」
士道の言葉を聞いた狂三は、少し冗談交じりに言葉を返す
「や……そういうわけじゃないけど……」
「……どうやってここに……? ……私以外にこの
少し戸惑っている様子の少女に対して、十香は顕現させた鏖殺公を構える
「貴様がすべての元凶なのだな? ならば、倒して元の世界に戻るぞ!」
「ちょ、ちょっと待て十香! 俺に話をさせてくれないか!?」
「む……しかし、あやつが私たちを閉じ込めているのだろう? ここで倒してしまえば一件落着ではないのか?」
「十香の言う通りよ、士道。結界の影響下にいる限り、精霊たちの暴走の危険も消えないわ!」
「そ、それはわかってるけど……少しでも話を聞かせてくれる可能性があるのなら、俺は──諦めたくないんだ! 頼む、十香! 琴里!」
「……オレからも頼む、士道に話をさせてやってくれ!」
士道だけでなくトーマも頭を下げると、少し困惑しつつも十香は鏖殺公の構えを解いた
「ぬぅ……! そこまでいうなら仕方あるまい!」
「まったく……けど、仕方ないわね」
「す、すまん! でも、何にもわからないまま終わらせるなんて、俺にはできない!」
「……行ってこい、士道」
士道にそう言いながら、トーマはファルシオンに目を向けるが、動く気配はない
「なぁ、教えてくれ! おまえは一体何者なんだ!? なぜ俺を狙う!?」
「……私の名は──
「は、神……?」
「そう、神──。この世界……
その言葉の直後、士道の近くにいた十香が鏖殺公を構えなおす
「……嫌な感じがどんどん強くなっているぞ。気をつけろ、シドーッ!?」
「十香の言う通り、これ以上は危険よ!」
「──ちょ、ちょっと待ってくれ! ルーラーって言ったか? おまえ、全てを知ってるのか!? ──俺に残ってる記憶は、全部本当にあったことなのか!? おまえが元凶だって言うなら、教えてくれ! こんなことしなきゃいけなかった理由を!!」
その言葉を聞いたルーラーは、戸惑っているように感じる
「──元凶……? あなたは、否定するというの?
「ら、楽園って……これが楽園だって言うのか?」
「そう、貴方はここで何をしてもいい。十香と契りを結んでも、琴里と並び歩くことを選んでも、折紙の傍にいると誓っても、四糸乃との日々を過ごしても、狂三と共に生きることを決めても、いい」
ルーラーのその言葉を聞いた瞬間、士道の脳裏に様々な記憶がよぎる。それは士道にも何故あるのかわからない記憶でも。ルーラーの言ったすべての記憶が、士道の中には存在する
そして、その記憶があるのは士道だけではない
「な……いったい、どういうことなのだ!? 確かに私もシドーとわかりあった……」
十香にも
「士道は私を選んでくれた? ……この記憶は……」
琴里にも
「不思議。士道の温かさも残ってる気がする」
折紙にも
「……士道さんと一緒、に……がんばり、ました」
四糸乃にも
「うふふ、士道さんはわたくしに……。たくさんのものを与えてくれましたわね」
狂三にも
確かにその記憶はある
「……全部の結末でオレは死んでるんだが。まぁ真実を解き明かそうとしたんだから当然か」
全ての記憶で限りなく真実に近づいたトーマも、その記憶を取り戻した。しかしそれでは前提条件が破綻している、士道は一人しかいないし、トーマも生きている。それならみんなの記憶はなんなのか
「貴方の考えていることは、この
「やっぱりこの記憶も全部……おまえの、仕業」
「──貴方たちはここで何をしても良かった。すべてが許されていた。ただ──
「……それで、オレは何度も──」
「今回は、一人じゃない。貴方たちは知りすぎた、近づき過ぎた。……だから、消さなくてはならない」
「なんでだよ……なんでなんだよ! それが……幸福な楽園だっていうのかよ!? 俺を狙って、殺して……それでどうなるっていうんだ!!」
士道にとって、ルーラーの言葉は理解できない。楽園だというのならどうして自分を殺すのか、どうしてそんなことをしなければならないのか
「それは……あなたは知らなくていいこと。貴方はただ、たゆたっていればいい。楽園の安寧に。そうすれば、全て私が叶えてあげる。どんな望みも、どんな未来も、どんな結末も──」
「何を……言ってるんだ!? そんなこと──」
「ここでなら、この楽園でなら、それは絵空事ではない」
ルーラーはそう言いながら、無数の光弾を自身の周りに出現させる
「……っ」
士道は、ルーラーの戯言にしか思えない言葉に力を感じる。いつの間にか信じてしまいそうになるくらい……けれど、それでは許容できない
「……仮に、おまえのいう楽園なんてものが実在したとしたら……良いことも悪いことも、全部、都合のいいようになるかもしれない。でも……それが本当に楽園なんて呼べるのかよ! 都合のいいように幸せになって、それで本当に満足できるのかよ!」
「……? それに、何の問題があるというの? 人は幸福を求めるもの。人は過ちを嫌うもの。それが全て叶うというのに、貴方はそれを否定するというの?」
「……好きなことが好きなように叶ったら、そりゃ素敵だろうさ! だけど……得体の知れないナニカに与えられた無機質な幸福は……自分の手で手に入れた些細な幸せにすら届かない!」
士道は、目の前にいるルーラーに向かって告げる。自分の想いを、考えを言葉にして
「俺は──ここが楽園なんて認めない!」
その言葉を聞いたルーラーの言葉には、僅かに戸惑いが含まれていた
「五河士道が……否定するの? この楽園を……
「……!?」
そして、その言葉と共に周りを漂っていた光弾を消す
「……この世界が誰にも望まれないというのなら……
「役割? それは──!?」
その刹那、空間が軋む
「な、なんだ!?」
「楽園が──
「どういう、ことだ……?」
「……このままいけば、この世界は──まもなく『死』を迎える」
驚愕で目を見開いている士道に対して、ルーラーは言う
「……終わりの時は迫っている……。もう一度、よく考えて……? それでもあなたが、この世界を否定するというなら……。私を────殺しにいらっしゃい……
その言葉を最後に、先ほどまで士道のいた空間は消失し、天宮市へと戻された
ついに目の前に現れた楽園の管理者
繰り返しの記憶を取り戻した士道は
それでもと楽園を否定した
楽園の死が間近に迫り
物語はいよいよ終幕へ向けて動き出す
次回, 凜祢ユートピア EX1-7