デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
「ん……朝、か……?」
士道が目を覚ましたのは自分の部屋のベッドの上だった
「あ、やっと起きた」
「あぁ、おはよう。凜祢」
「おはよう。大丈夫なの、士道? なんだか酷い顔してるように見えるけど……」
「えっと……そうか? もしかしたら変な夢でも見てたのかもな」
「それなら良かった……せっかくのお休みなんだし、体調が悪かったりしたらもったいないもんね」
「あ、そうか。今日って休みだったっけ……」
目を覚ました士道を見た凜祢は、その言葉を聞くと少し表情を不機嫌なものに変える
「何言ってるの? 今日の約束、忘れてないよね?」
「約束?」
「そうだよ、約束。すっごく大事な」
凜祢にそう言われた士道だったが、その約束が何だったのかすっかり忘れてしまっている
「マジか!? すまんが、わからん……。いったい何の約束だったっけ?」
「もちろん。決まってるじゃない」
相変わらず困惑と言ったような表情を浮かべている士道に対して、凜祢は笑顔を向けて言葉を紡ぐ
「デート、だよ?」
それから、目を覚ました士道は私服に着替えると凜祢と街に出た
「ねぇ士道、あれ食べない?」
「あぁ、いいんじゃないか? よし、行こう」
どうやら凜祢のショッピングに付き合う約束をしていたらしい士道は凜祢に手を引かれ歩いていた
凜祢と出かけることは何度かあってもこうしてデートとして出かけるのは初めての事だから、士道も少しだけ緊張している
「士道、次どこ行こうか?」
「え? 買い物だけじゃなかったのか?」
「デートだって言ったでしょ。まだまだ、本番はこれからだよ?」
「お、おわっ! ちょ……ちょっと待て凜祢!?」
「いいからいいから!」
士道の手を引いた凜祢は笑顔でそう言うと、デートを再開する
凜祢を救う事を士道に任せたセイバーは、凶禍楽園の繰り出す攻撃に当たらないよう気を付けながら移動を続け一度身を隠す
「確か凶禍楽園は暴走してるって言ってたけど。ガッツリ正常運転だろ……」
セイバーからしても暴走しているようには感じない以上、自分が出来るのはあの触手の攻撃を食らわない事と士道が凶禍楽園から戻ってくるのを待つだけだ
「できる限り……早く戻って来て欲しいな」
そんなことを思いつつ、セイバーのことを探す触手の前に出ると、炎を纏った剣で迫りくる触手を切り裂いた
いつになく積極的な凜祢に連れられ、士道は色々な所に行った。ファミレスで食事をとりゲーセンで遊ぶ、そんな何でもない事のはずなのにいつになく楽しそうな凜祢の姿を見た士道は、とても嬉しい気持ちになる。それは凜祢が必死に楽しもうとしているのだとわかってもふと笑みがこぼれてしまう
「ん? どうしたの、士道? 何か嬉しいことでもあった?」
「いや、そうじゃなくて……ただ、楽しいなってさ」
「ふふ、そっか。私も凄く楽しいよ」
「おう。それじゃ、次はどうする?」
「えっと、そろそろ日も暮れちゃいそうだけど……一つだけ、行きたいところがあるんだ。いい?」
「遠慮するなって。ただ、夕飯の時間だけ気をつけないとな」
「うん、そうだね。それには間に合うと思うから、大丈夫」
そう言った凜祢に連れられてやってきたのは、高台公園。その場所から見える景色を見上げながら凜祢は口を開く
「ふふ、風が気持ちいいね」
「あぁ、本当だな」
夕陽に照らされた街を、高台公園から見下ろす
「今日のデート、すっごく楽しかった。士道は?」
「さっきも言ったろ。楽しかったよ。なんか……新しい凜祢をたくさん見れた気がした」
「あはは……もしかして、はしゃぎ過ぎちゃった?」
「そんなことないって。いつも大変なんだから、こういうときくらい羽休めしないとな」
「ありがとう、士道。でも思っちゃう……明日も明後日も、来週も来月も……ずっと、こうしていられたらいいのにな、って」
確かにそれが出来たらどれだけ良いものかと士道は考える……しかし、このままでは駄目だと心が告げる。だから士道は告げた
「──駄目だ、凜祢。それは……できない」
士道にとっても、凜祢にとっても残酷な言葉を。この世界を否定し、安寧を捨てる選択を
「え……? どうして……?」
「それは……」
どうしてその言葉が出たのか、それは今の士道にはわからない。否定する必要のない言葉を、大切な幼馴染を否定する言葉を告げたのか
少しずつ士道の視界がぼやけていく、今からでも遅くないと、さっきの言葉を取り消せと言う声がどこからか聞こえている気がする……しかし、視界がぼやけ、逆に記憶は鮮明になり、蘇ってくる
「……っ……!?」
とてつもない情報量に押しつぶされそうになっていた士道はそれに何とか耐えると、気が付けば左手に一冊の小さな本が握られていた
「やっぱり私じゃ……本当の家族には、なれないんだね」
「りん──」
悲しそうに呟いた凜祢に対して、士道が言葉をかけようとした瞬間。何かに引っ張られるように意識が遠のいた
「ここ、は……? 戻って来たのか?」
「起きたか、士道!」
声の聞こえた方を見ると炎を纏った剣で自身に迫っている触手を切り裂いているセイバーの姿があった
「トーマ……」
「私の凶禍楽園から……
「よくはわからないけど……どうやら、そうみたいだな」
「…………」
ルーラーはその言葉を聞き、少し黙った後ぽつりと言葉をこぼす
「……そっか──もう、大丈夫なんだね、士道……」
「え──?」
ルーラーの──凜祢の言ったその言葉は安堵と、その中に少しだけ悲しみが混ざったようで士道は困惑の声を発した
「それは、どういう……」
「な……こ、これは……!?」
「……あなたは私の
「凜祢、聞いてくれるか……? さっき、おまえとデートした。初めて楽しいデートだって思った。本当は、ずっと一緒にいたいって……思った」
目を閉じ、諦めのに近い感情を見せていた凜祢に対して士道は言葉を続ける
「なぁ、凜祢? ……俺、凜祢と一緒にいたい。おまえはもう、とっくに俺の家族なんだよ。だって、この世界で一番近くに──すぐ隣にいてくれたのはおまえなんだから……! この世界じゃなくなって……ここから出たって、おまえが俺にとって大切な存在ってのは変わらないんだ……! だから、一緒に帰ろう、凜祢。元の日常で……最初から、やり直すんだ。
自分の心にある言葉を士道は言葉を続ける
「失敗なんて、怖がらなくていい。俺がいる、みんながいる。おまえなら、自分の手で幸せを掴めるはずだ!」
「…………士道」
「凜祢……わかって、くれるか?」
士道はゆっくりと凜祢に近づき。目の前まで行く
「……私から、凶禍楽園の制御が完全に離れた。その間は私が抑えられてたけど、もう凶禍楽園の力を抑えるものはない。このままじゃ、この世界は──」
「それはオレたちに任せろ!」
凜祢の言葉にそう言ったのは、士道ではなくトーマだった。周りに纏わりつく触手を切り裂きながらトーマは声を上げる
「そういうわけだ! いい加減起きろよ──園神冬馬ッ!」
『不死鳥無双斬り』
トーマの放った言葉の直後、凜祢の事を抑えていた触手が炎の斬撃によって切られ。凜祢は士道の元まで落ちる
「……うるさい目覚ましだな、俺」
「そうでもなきゃ絶対に起きないだろ、オレ」
士道たちの近くに立っていたファルシオンは、一度変身を解除すると自分の上着を凜祢にかぶせる
「……兄さん」
「すまなかった、凜祢」
「え?」
「俺はお前の兄として、何もしてやることが出来なかった。それはこの場所の番人と言う逃げ道を用意してお前から逃げ続けたから……それは取り返しのつかない事実だ──だから、せめて最後くらいは兄として、俺に出来ることをする」
冬馬がそんなことを言っていると触手に弾き飛ばされたセイバーが足元まで転がり変身が解けた
「いってて……話は終わったか?」
「……あぁ」
「そうか、それなら……止めるぞ、この楽園を」
「……あぁ!」
立ち上がったトーマは、士道と凜祢の方に少しだけ視線を向ける
「……正直、オレは”凜祢”が妹って言う実感はない。なんせオレの妹は”凜音”だけだからな。それでも……アイツの記憶を持ってるなら凜祢もオレの妹だ。だから待ってろ。兄ちゃんたちが終わらせてくる」
そう言ったトーマたちは一歩前に出る
「それで、暴走の根源は?」
「……俺たちの真上にある球体だ」
そう言われたトーマは真上を向くと確かに赤く光る球体があった
「全然気づかなかった……」
「……はぁ、あの球体にお前から奪った力の殆どが集中してる。外付けのバッテリーだ」
「じゃあアレを破壊すれば止まるんだな?」
「……そう言うことだ、一撃で決めるぞ」
二人は生身のまま剣をベルトに納刀し、トリガーを引く
『必殺黙読──不死鳥無双斬り』
『ドラゴニック必殺読破!──ドラゴニック必殺斬り!』
力を込めた二人は真上にある球体に視界を向け、思い切り剣を引き抜き、斬撃を放つ。深紅と橙、二色の斬撃はそれを打ち消そうとする触手たちを燃やし尽くし球体を破壊する
「これで終わったのか?」
「……あぁ、終わった。これで結界と──俺も消える」
「え?」
「俺は元々お前から奪った力を凶禍楽園の霊力で作り出した
少しずつ、世界が白に染まり始める。それは結界が消え始めているのを示していた。それと同時に冬馬の身体も光の粒子となって消滅していく
「……五河士道、凜祢の事を頼む──それと、妹の願いを叶えてやってくれ」
「……わかった」
「凜祢、最後のその時まで悔いのないようにな」
「っ──うん」
二人に言葉を伝えた冬馬は、最後にトーマの方へと向き直る
「トーマ、気を付けろ」
「気を付けろって……一体──」
「お前の持っているドラゴニックナイト……今お前の持っているそれは、この世界だから具現化できた奇跡の産物──」
そう言われたトーマがドラゴニックナイトの本に目を向けると、冬馬の言う通り本は粒子となって消失する
「──だが、一時的にとは言えその本が現れたという事は失われた本……全知全能の書のシステムが起動したということになる」
「全知全能の書の……システム?」
「今は名前だけ憶えておけばいい……だが、それはいずれお前の元に現れ選択を強いることになる……だが、決して迷うな。自分の心に従え──」
その言葉を最後に、冬馬は光となってその場から完全に消え、士道たちの視界も光に包まれた
それから、一週間の時が流れた
凶禍楽園の結界が完全に消滅した後も、世界は進み続けている
「……平和だな」
「そうだね」
マンションのベランダから外の景色を眺めていたトーマに相槌をうったのは制服姿の凜祢……今日は、凜祢と士道のデートの日だ
「もう、行くのか?」
「……うん、もう時間がないみたいだから」
「そっか……いってらっしゃい、凜祢」
「うん、行ってきます。お兄ちゃん」
その言葉を後、凜祢はこの部屋に戻ってくることはなかった
天宮市、駅前
五河士道は一人の少女を待っていた……今回はインカムもフラクシナスのサポートもない純粋なデート。相手はもちろん凜祢だ
「お待たせ、士道」
「いや、俺も今来たところ……それじゃあ、行くか」
「うん」
凜祢は士道から差し出された手を取ると、歩き出す
「凜祢、最初はどうする?」
「うーん……最初はあそこ行きたいかも、ゲームセンター」
「よし、それじゃあ行くか」
士道は凜祢の手を引いてゲームセンターまでやってくる。中に入った凜祢は士道の手を引くとクレーンゲームの前まで向かう
「ねぇ士道、これやってみても良い?」
「あぁ、もちろん」
さっそく百円入れた士道は凜祢と一緒にクレーンゲーム挑戦するが、そう簡単に取れる訳もなく景品はあっさり落下する
「あ、あれ?」
「まぁ、そう簡単に取れるもんでもないしな……もう一回やるか?」
「うーん……ううん、大丈夫」
「遠慮しなくていいんだぞ?」
「本当に大丈夫、それより……次はあれやりたい!」
そう言った凜祢は格闘ゲームを指さすと士道の手を引いて筐体に向かっていく。それから、士道と凜祢の二人はゲームセンターを全力で楽しんでから、次の目的地まで向かう
「次は何処に行く?」
「少しお腹すいちゃったし、せっかくだからアレ食べてみたいかな。きなこパン」
「……それじゃあ、行くか」
それから、士道たちはデートを続け……最後にやってきたのは高台公園
「やっぱり最後はここか」
「うん、やっぱり最後はここかなって」
凜祢は士道にそう言うと、思い切り身体を伸ばす
「今日は楽しかったね! 士道!」
「あぁ、そうだな」
夕陽に照らされる中、士道に目に映っている凜祢の身体は淡い光に包まれていた
「……ねぇ、士道」
「どうした?」
「最後に、一つだけお願いを聞いてもらえないかな?」
そう言った凜祢の事を、士道は見ることが出来なかった……けれど、それでも凜祢は言葉を続ける
「士道……私とキスしてくれないかな」
「──っ!」
「お願い、士道」
「…………わかった」
少しずつその姿を薄れさせていた凜祢の方を見た士道は、目を閉じてその唇に触れる──ほんのわずかな時間のキスだったが、二人にとってとても大切なものだった
「ありがとう、士道」
「──っ!!」
士道は目から溢れそうになるものを必死に抑えながら、凜祢の方を向く
「士道、ありがとう……僅かな時間だったとしても。たくさんの思い出を私にくれて、たくさんの事を教えてくれて」
「……凜祢」
「人には……楽しい記憶だけじゃない、苦しい記憶も必要なんだって教えてくれて。それを乗り越えるから楽しい記憶はもっと楽しくなるんだって」
今までよりも、凜祢の身体は薄くなっていく
「士道……私ね、楽園を作ったのは間違いじゃなかったと思うんだ……本当に少しだけだったけど、士道と──みんなといられた日々は……偽りなく、本当に幸せだったから」
「あぁ……俺もそうだよ、だから──」
「大丈夫だよ、姿は見えなくても……私は士道と一緒にいるから」
その言葉を聞いた士道はもう限界だった。我慢していた涙が止められない
「あはは、士道……凄い泣いてるね」
「そういう凜祢こそ──」
「……ホントだ、何でだろう……泣かないって……決めたんだけどな……」
瞳の縁に溜まった涙を手で拭った凜祢は、笑顔を士道に向ける
「……ありがとう、士道。大好きだよ──」
その言葉を最後に、園神凜祢は夕陽へと溶けて消えた
一つの物語は終わり
元の日常を取り戻す
しかし、まだ解明されていないものがある
どうして彼女は結界を張ったのか
なんで彼女は士道の事を狙ったのか
彼女は、何をしたかったのか
次回,凜祢ユートピア EX1-11