デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
第5-B 1話, 1 Year Ago
トーマが士道たちと出会う一年前の話、そしてトーマと美九が再会する半年前のお話
夏に差し掛かったある日、トーマは最近台風が多いな等と考えながら居候先兼職場でもある定食屋で料理の仕込み作業をしていた
「おっちゃん、煮魚の仕込み終わったよ。次はなんかやる事ある?」
「おう、ご苦労さん。そうだなぁ……いや、何もねぇからもう上がっちまって良いぞ。それと鍵はしっかり閉めろよ」
「わかった、それじゃあお疲れ様でした」
「お疲れさん……っとそうだ、坊主。ちょっと待て」
給料の払い忘れ以外で呼び止められることは滅多にないトーマは不思議そうに顔を向けた
「どしたの? 給料日はだいぶ先だと思うけど」
「そうじゃねぇ、おまえさん。ちょっと旅行に行く気はねぇか?」
「旅行って……おっちゃん達と? それなら遠慮するから、奥さんと二人で──」
「ちげぇよ、お前さん一人でだ。ちっと頼まれごとがあってな、そのついでに旅行でも行ってきたらどうだって意味だよ」
おっちゃんの話を聞いたトーマは、ますます意味がわからないと言った様子で首をかしげる
「……なんでオレ一人? それに用事ならおっちゃん達が行った方がいいんじゃないの?」
「頼まれごとってのが体力ある方がいいんだよ。だから行ってきちゃくれねぇか」
「……わかった、それで何処に行けばいいの?」
「或美島だ」
「……或美島って、何処だったっけ?」
「伊豆の方にある島でな、何年か前にリゾート開発かなんかで話題になったんだが聞いた事ないか?」
「オレ、あんまテレビ見ないんすけど……」
「そうか、とりあえずな。その或美島で飯屋をやってる知り合いがいてな、俺らくらいの都市なんだが開発の影響でだいぶ客足増えたのと従業員が怪我が重なって人手が足りてねぇんだとよ。だからお前さんにその飯屋の手伝いに行って欲しいんだよ」
そこまで言われてようやくトーマは納得する。最初はどんな頼まれごとをされるものかと冷や冷やしたがそこまで突拍子もない頼みで良かったなどと心の中で安堵する
「手伝い位なら全然いいよ。それでいつ頃出ればいいの?」
「そうだなぁ、準備と連絡込みで明後日にはこっちを出てくれ」
「わかった、それじゃあ準備はしとく」
「頼むな、チケットとかはこっちで用意すっからよ」
「了解、そういえば期間は?」
「怪我しや奴が復帰するまでの間だから、大体一週間くらいだな」
一週間、言葉にすると短いようだが現実時間だと案外長い期間ここを開けることになる。それは少し不安だったが頼みを受けてしまった以上仕方ないと割り切って部屋に戻ると、準備を始めた
時はあっという間に流れ二日後、右手に一週間分の着替えと必要最低限の日用品を詰めたカバン、左手におっちゃん直筆の地図を持ったトーマは或美島の地面を踏んだ
「えぇっと、目的の場所は──」
トーマが地図片手に移動しようとしたところで、声をかけられる
「ちょいと待ちな」
「……はい?」
「その身なり、アンタみたいだね。アイツんとこの坊主ってのは」
「えーっと……もしかして貴方が──」
「そうだよ、私がアンタの雇い主”御手洗フミ”さ……好きに呼びな」
「フミさん……よろしくお願いします」
「それじゃ、さっさと行くよ」
御手洗フミの言葉に従って、トーマは飯屋まで向かい、仕事を始めることになったのだが……そこからが地獄の始まり。基本的に今まで天宮市にある定食屋の昼時と言う稼ぎ時を経験しているからそこまで苦労することはないだろうと考えていたトーマを襲ったのは想像以上の皿と料理の数
リゾート開発の影響で客層で増えたことで、ただでさえ少ない食事処の中でも元々の利用者が多かったこともあり天宮市とは比べ物にならない程のハードスケジュール
「坊主! 皿洗う手が遅くなってるよ!」
「すいません!」
ひたすら皿を洗い続け
「坊主! もっと気合い入れて鍋を振りな!」
「はい!」
それが終わったと思ったらひたすら鍋を振り、料理をし続ける。そんな事を続けるているとあっという間に一日目が終了する
「……疲れた」
「なっさけないねぇ坊主、ホントにアイツのところで仕事してるのかい?」
「一応……住ませて貰ってる恩もあるので」
「恩ねぇ……坊主、本当にそれだけの理由で働いてんのかい?」
「えぇ、まぁ……でも給料は貰ってますし、寝床も提供して貰っててありがたい限りですけどね」
トーマの言葉を聞いたフミは先ほどまで座っていた椅子から立ち上がると、トーマの方に鍵を投げ渡してきた
「フミさん、これって……」
「ここの鍵だよ、寝泊まりはここの奥にある部屋を自由に使いな」
「わ、わかりました」
「戸締りはしっかりするんだよ」
そう言い残すとフミは飯屋から出ていき、トーマも今日は休むという事で部屋の中に引っ込み、一日は終わる
二日目、昨日より客数は少なくなりトーマ自身も対応しやすくなったものの中々にハードスケジュールをこなしていた
「坊主! もっと手ぇ動かしな!」
「はい!」
動きはマシになったものの、相変わらず後ろから駄目だしを受けるトーマであった
そして三日目。初日、二日目に比べると客足にも慣れ他の従業員に迷惑をかけない程度には働けるようになったトーマはいつものように皿洗いに勤しんでいるとフミに呼び止められた
「坊主、ちょっと待ちな」
「何かありましたか?」
「ちょっと、買い物に行ってきな」
そう言いながら渡してきたのはメモ帳と小さ目の財布。メモの内容は足りないらしい調味料や食材等だった
「一番近いところなら歩いて行けるから、頼んだよ」
「わかりました」
軽い休憩時間だと考えたトーマは買い出しをして、その帰り道で……台風に遭遇した
「……流石に、ゲリラ台風は聞いてねぇよ」
全身水浸しになりながら帰り道を歩いているところで、ふと霊力の気配を感じたトーマの視線の先で、二つの閃光がぶつかりあった
或美島へとやってきたトーマ
そんな彼が感じた霊力の気配
これは、士道たちと出会う一年前の話
二人の少女と一人の剣士の物語
次回, 八舞テンペスト≪Before≫ 第5-2話
PS.
【お知らせ】
第五章である八舞テンペストは
士道とトーマの出会う1年前のお話し≪Before≫
士道とトーマが出会った後、凜祢ユートピア後のお話し≪After≫
この二つによる二幕構成になります