デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
売上勝負、一日目。シンプルな服装に色違いのエプロンと言う出で立ちの八舞姉妹はさっそく接客を開始する。時間は丁度夕食時の少し前、一仕事終えたであろう男が入ってくるや否や二人は凄い勢いでその男の前まで行く
「くくっ、よくぞ来たなお客人よ」
「挨拶。いらっしゃいませ、どうぞこちらへ」
思った以上に押しの強い二人に案内されながら、男は席に座ると休む間もなくメニュー表を差し出される
「さぁ、早速選ぶがよい!」
「提案。夕弦のオススメは――」
息を吐く間も与えない二人の接客に対して男が若干引き気味になっていると、耶倶矢と夕弦は後ろから頭を叩かれた
「いたっ」
「痛打。痛いです」
「全く、アンタらは何やってんだい」
二人の後ろから現れたフミの手によって二人は裏手に連行され、程なくしてから頭を軽く掻きながらフミが呆然としている男の元まで戻ってくる
「悪かったね、急にビックリしただろう」
「は、はい……」
「あの子らにゃアタシがしっかり言い聞かせとくから、ゆっくりしていきな……しっかり金は落としていくんだよ」
そう言うとフミもゆっくりと歩きながら裏口まで戻る。呆気に取られていた男だったが気を取り直して、メニューに視線を落とした
「ホント、坊主が連れてきたんだからちっとは出来るもんだと思ってたけど間違いだったみたいだね」
「面目ない……」
「謝罪。すみませんでした」
「あの、なんでオレまで正座を――」
「決まってるだろう、連帯責任だよ」
「――はい、すいませんでした」
三人の様子を見たフミはため息を吐くと、再び話始める
「アンタら二人は接客をする前に大事なことを教えないといけないみたいだね」
「……大事なこと?」
「疑問。それは一体」
「良いかい、何よりも大事なことはお客を見ることさ」
「混乱。お客を――」
「……見ること?」
「そうさね。まずは入ってきたお客を見て、ソイツが何をしに来たのかを観察するのさ。ウチの場合は何を食いにここに来たのかだね。そいつを見極められるようになってようやくウチじゃ一人前さ」
そう言いながら、フミは懐から一本タバコを取り出すとそれで入口の方を指すと、丁度良いタイミングで作業着姿の二人組が入ってくる
「アンタらはあの二人をどういう風に見る」
「どうって、作業着の二人組でしょ?」
「回答。仕事帰り……でしょうか?」
「夕弦の言う通り、仕事帰りさね……それなら腹空かせてる可能性もある、酒を飲みに来てる可能性もある。それなら何を頼むのか当たりをつけることくらいはできるだろう」
「なるほど……」
「感心。納得しました」
「そうかい、それならまずは他の奴の動きを見ながら働き方と、客が何を求めてるのかがわかるようにするこったね」
その言葉を最後に、特に問題もなく一日目は終了する
売上勝負、一日目終了
その日の夜、すっかり疲れた様子の耶倶矢と夕弦が布団の上に倒れていると少し離れた場所に敷かれた布団の上にいたトーマは何かを思い出したように身を起こして二人に問いかける
「そういえば二人に聞いときたいことがあるんだが」
「?なんだトーマ。何なりと申してみよ」
「お前ら、こんな感じの本持ってたりしないか?」
そう言いながらトーマは、手元にあるエターナルフェニックスの本を投げて渡すと、耶倶矢たちその本を見た後トーマの方に投げ返してくる
「知らんな、少なくとも我は見た覚えがない」
「同意。夕弦も見たことないものです、それは夕弦たちに何か関係あるものなのですか?」
「……嫌、詳しいことはわからんが。何となく聞いた方がいい気がした」
「何それ……意味わかんない」
そう言って一度起こした身体を再び布団の上に倒した耶倶矢とは違い夕弦は少し考えた後に、僅かに目を見開くとポケットの中から何かの欠片を取り出した
「確認。もしかしたらとは思いますが、これは何か関係あるのでしょうか?」
「……ちょっと見せてくれ」
近くによったトーマが確認する、二つに分割されたらしい欠片。確かにぱっと見だとわからないがこれはワンダーライドブックの欠片である事に違いはない
「エターナルフェニックスを真っ二つにしたらこんな感じ……でも何の本なのかはわかんねぇな」
表紙に当たるページはあるがそこには何も書かれてない以上、どんな本でどんな効果を持っているのかはわからない
「夕弦が持ってたって事は、耶倶矢も持ってるんじゃないのか?」
「へっ?……あぁ、それなら持ってるけど何の役に立つのかわっかんないのよねぇ」
そう言いながら耶倶矢も本の欠片を渡してくる。二つの欠片の断面を確認したトーマだったがどちらも滑らかな平面で結合部もない、二つを繋ぎ合わせてもそれが合体する様子もない以上、今のままじゃどうしようもないのだろう
「確かに、これじゃあ本としての体裁も保ててない……どうしようもないな」
二人に欠片を返したトーマはそのまま自分の布団に戻り眠りについた
翌日、売上勝負二日目。毎度のように修羅場のような環境の厨房ほどではないものの相変わらずハードな職場である接客側の耶倶矢と夕弦は、昨日フミから言われたことを守りつつ仕事をしていた
「よく来たなお客人、さぁ早速席に案内してやろう!」
「歓迎。いらっしゃいませ」
耶倶矢と夕弦、少しずつではあるが慣れてきているようで表情も自然なものになっている
「坊主、さっさと手ぇ動かしな」
「わかりました」
相変わらず駄目だしを受けながらも仕事を続けているトーマは料理を作りながら少しだけ二人の方を見て笑みをこぼす
「何ニヤニヤしてんだい、気持ち悪い」
「す、すいません……でもなんか、案外様になってるんだなと」
「はっ、あの程度まだまだだよ」
相変わらず口の悪いフミの言うことを聞き流しながら、料理を作り続けること暫く。最も忙しい時期は過ぎたであろうと言った時間帯、裏で休憩しようと思っていたトーマの元に耶倶矢がやってくる
「ねぇ、トーマ」
「どうした?」
「……少し話があるんだけど、良い?」
「あぁ、構わないぞ」
「そっか、それじゃあちょっとついてきて」
耶倶矢に連れられたトーマは、店から少しだけ離れた場所までやってくる
「そういえば耶倶矢……あの荘厳な口調はもういいのか?」
「……今回は大事な話をするための場だから、良いの」
「そうか、それで大事な話ってのは?」
「あのさ、現状の勝敗ってどうなってるの?」
「一日目は勝敗判定が不可。二日目は今のところ同等って感じだな……客の注文は時の運だが、ここまで売り上げがピッタリ同額ってのはビックリだ」
「そっか……ねぇ、もし、もし引き分けだったら……夕弦の勝ちって事にしてくれないかな」
それに関しては時の運だから何も言えない
「それに関しては何も言えないな……でも、なんでそんなことを?」
「だって、夕弦は超かわいいし、少し愛想はないけど従順だし、胸大きいし、マジで男の理想が形になったようなキャラじゃん……だから――」
「……考えておくが、どうしてそんなことを?」
「うーん、私も消えたくはないけどそれ以上に夕弦に生きて欲しいんだ。いろんなものを見て、思いっきりこの世を楽しんでほしい」
その言葉を最後に、耶倶矢はトーマと別れて飯屋まで戻っていく
「夕弦を選べ……ねぇ」
同一の存在から生まれたとしても既に別々の存在として認識しているからこそ、自分にとって大切な存在であると感じているからこそあの言葉が出たのだろう
「それじゃ、オレも戻る――」
「制止。少し待ってください、トーマ」
「夕弦か……どうした?」
「進言。少しお話があります」
「話……か」
「応答。はい、お時間は大丈夫でしょうか?」
夕弦の方を向かないまま、トーマは空を眺めていると、夕弦が隣までやってくる
「質問。トーマにお伺いしたいことがあります」
「……何が訊きたいんだ?」
「応答。はい、トーマ。現在の勝敗はどうなっていますか?」
「ここまでだと完全に引き分けだな」
「
改まった様子で夕弦はトーマに言う
「請願。もしも、明日の対決も引き分けだったなら……どうか、耶倶矢の勝ちと言うことにして頂けませんか」
「耶倶矢の……か、一応聞いとくが、そいつはどうしてだ?」
「説明。耶倶矢の方が夕弦よりも遥かに優れているからです。悩む余地はありません、耶倶矢は多少強がりな所がありますが、面倒見は良いですし愛嬌もあります。それに――」
一度息を整え、夕弦は続ける
「それに、真の八舞に相応しいのは耶倶矢です。だからこそ……もしも引き分けだった場合、必ず耶倶矢を選んでください」
その言葉を最後に、夕弦も戻っていった。そして、その場に一人残されたトーマの答えも二人の話を聞いた事で完全に決まった。たとえどんな結果でもそれだけは覆らない
そして二日目も終わり、いよいよ最終日――三日目が始まる
それぞれの想いを知り、決意を固めたトーマ
売上勝負も残すところ一日となり
いよいよ、決着の時は間近に迫る
次回, 八舞テンペスト≪Before≫ 第5-4話
三話で完結しませんでした。もう二度と次でこの章終わるとか言いません
申し訳ありませんでした