デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第5-B 4話, 八舞姉妹

 三日目、売上勝負最終日。今日も今日とて耶倶矢と夕弦が客の案内をしている姿をトーマは後ろから小突かれる

 

「手ぇ止めてないで、キリキリ働きな」

「す、すいません」

 

 普段ならそれだけ言ってすぐに定位置に戻ってしまうはずのフミだが、今日はトーマのことを少し眺めた後に軽く息を吐いた

 

「……あんた、なんか悩みでもあるのかい?」

「え?」

「今日は随分と深刻そうな顔をしてるからね。あぁ、手は止めんじゃないよ」

「は、はい」

「何があったのか、話してみな」

 

 トーマはフミの方を向かず皿洗いを続けたまま、話を始める

 

「……半分の確率で失敗する可能性がある事柄に臨むのって、案外メンタルに来るもんだなって考えてたんですよ」

「アンタ、たかがそんな事でやたら深刻そうな顔をしてたのかい?」

「そんな事って……」

「そんな事だよ。半分で大丈夫ならむしろいい方じゃないかい。世の中大丈夫じゃない事なんざ山ほどあるんだからね」

 

 フミの言葉を聞いたトーマは少し腕を止めそうになるが、そうするとフミに小突かれるので何とか手を動かしながらフミの言葉を待つ

 

「いちいち深刻そうな顔してないでもっと楽に考えな……そうでもしないと早いうちにくたばることになるよ」

「……ありがとうございます、フミさん」

「はっ、感謝する暇があんならもっと働いてうちの売り上げに貢献しな」

 

 それだけ言い残し、フミは自分の定位置まで戻っていった

 

「半分で大丈夫ならそれはまだマシ……か」

 

 その言葉が、不思議とトーマの心に深く残る

 

 

 

 

 

 

 

 そして、時は進み判定の時。フミを含めた従業員全員が帰宅した後、トーマは二人が接客した客の注文額の合計を計算し終え、外で待っている二人の元に向かう

 

「待たせたな」

「構わぬ、我の勝利を噛み締めるのには良き時間であった」

「反論。この勝負、勝つのは夕弦です」

 

 何を言ってるんだこいつらはと心の中で思いながら結果を書いた紙に視線を向ける

 

「それじゃ、結果を発表するぞ」

「うむ」

「応答。はい」

「結果は────引き分けだ」

 

 それを聞いた耶倶矢と夕弦の瞳が見開かれた

 

「引き、分け……?」

「愕然。それでは、この勝負は……」

「あぁ、勝者はなし……と言いたいところだが、その前にお前達に説明して置くことがある」

「……いいだろう、申してみよ」

 

 片手に無銘剣を出現させたトーマは、それを鉛筆代わりにして地面に円を二つ書く

 

「困惑。これは──」

「今のお前達の状態を簡単にだが図形にした絵だな……耶倶矢でも夕弦でもいいから、今の自分の状態を話してみろ」

「それなら、我が話そう……んんっ、我々二人は元は一人の精霊だった、それが何の因果か二人に別れ、今は真なる八舞の座を争っている……だろう、夕弦」

「同意。それで間違いはありません」

 

 耶倶矢の説明を聞いたトーマは二つの円の中心に、もう一つ円を書き足した

 

「……やっぱりか、それにあの本の欠片がアレだとしたら。確率はぐんと高まる」

「?」

「疑問。トーマはさっきから何を?」

「悪い、それじゃ改めて説明を始める」

 

 そう言ったトーマは無銘剣を地面にさして話を始める

 

「まず初めに、オレが初めてお前達二人の霊力を感じ取った時にちょっとした違和感を感じたって事を伝えておく」

「違和感……だと?」

「あぁ、それに関しては本来一人だった精霊の持ってる霊力が二人に分割されたからって事だった……だが、オレの感じた霊力は”限りなく同一”の存在同士によるぶつかり合いって事だ」

「反論。それは同一の存在と言うことでしょう」

 

 夕弦のその言葉を聞いたトーマ無銘剣を手に取ると地面に書いた三つの円をトントンと叩く

 

「限りなくっていた筈だぞ、今の二人の状態はこの円と同じなんだよ、大部分は同一の霊力で構成されているがその中に異なっている部分がある」

「では、我と夕弦は……」

「あぁ、同一人物に近い別人って言う解釈も少しだができるって事だ……そこで、オレは今からお前達に三つ案を出す」

 

 その言葉と共にトーマへと視線を戻した二人の事を真っすぐ見据え、まず一本目の指を立てる

 

「案1、耶倶矢が消滅するのを受け入れ、夕弦を唯一の存在になる」

 

 その言葉を聞いた夕弦からの視線が少し強くなるが、それに構わずもう一本の指を立てる

 

「案2、夕弦が消滅するのを受け入れ、耶倶矢が唯一の存在になる」

 

 二つ目の案を言葉にした瞬間、今度は耶倶矢から向けられる視線が強くなるが、三本目の指を立てる

 

「案3、半分の確率でお前らは消滅するが、もう半分の確率で二人は消滅することなく共に生きられる可能性に賭ける」

 

 その言葉を聞いた瞬間、二人の目が見開かれる

 

「どっちも生きられるって……そんなことできるの!?」

「可能性は五分五分だが、お前達の持ってた本の欠片がオレの予想と同じものだったら確率は八割まで持っていける」

「「……ッ!」」

「今すぐに答えを出せとは言わない……少し時間を置くから荒事で解決しようとせずに互いの想いを、言葉でぶつけあって答えを決めてくれ」

 

 

 それだけ言い残して、トーマは二人から離れた場所に座り、瞳を閉じてその時を待つ

 

 

 

 

 

「……ねぇ、夕弦。さっきの提案、どう思う?」

 

 トーマが離れた後、耶倶矢はいつもの芝居がかった口調ではない、年相応の口調で夕弦に話しかける

 

「疑念。正直信じることはできません、夕弦たち二人が存在出来る方法等……眉唾すぎます」

「だよねぇ、それならどれを選ぶかはもう決まってる感じ?」

「肯定。当然です……とるべき選択は既に決まっています」

「それじゃ、せーので言おうか」

「了承。わかりました、せーのでですね」

 

「せーの──」

「同調。せーの──」

 

 息を吸った二人は、同じタイミングで言葉を発する

 

「「案3かな(ですね)」」

 

 そう言われてから程なく、二人の間に小さいながらも笑い声が響く

 

「……実はね、どっちか片方しか存在できないって知った時、夕弦の為に私が消えようって考えてたんだ」

「告白。実は夕弦も、耶倶矢のために消えようと考えていました」

「一緒だね、私たち」

「同意。一緒です」

 

 互いに笑いあった二人は、お互いの目を真っすぐ見る

 

「ねぇ夕弦、もし、トーマの賭けが失敗してどっちも消えるってなって……それでも片方が先に消えればもう片方が生き残れるってなったら──」

「制止。それ以上言っては駄目です。もしその時が来たとしても……夕弦と耶倶矢はずっと一緒です」

「そっか……うん、そうだね」

 

 二人の少女は手を繋ぎ、トーマの元へと向かう

 

 

 

 

 

「……決まったか?」

「うん、私たちはどっちも生き残れる可能性に賭けたい」

「請願。なのでお願いします……トーマ」

「わかった、それじゃあ何をすればいいのか……進めながら教えていく。まずはあの本の欠片を出してくれ」

 

 

 トーマがそう言うと耶倶矢と夕弦はそれぞれの持っていた本の欠片を取り出すと、トーマへと見せる

 

「これだよね?」

「あぁ、まずはお互いの霊力をその欠片に込めてくれ」

「わかった」

「了承。わかりました」

 

 二人が欠片に霊力を込めると欠片が少しずつ輝き始めた。それを見たトーマは頷くと改めて口を開く

 

「次は霊力を込めた欠片をこの剣にかざしてくれ」

 

 頷いた二人が欠片を無銘剣にかざすと、二つに分かれていた本は合体し一冊の本を生み出し、深い緑色に輝き始める

 

「頼む……予想が当たっててくれよ」

 

【ワンダーワールド物語 風双剣翠風】

 

 剣の名が辺りに鳴り響いた瞬間、無銘剣は形を変え緑色の剣──風双剣翠風へと姿を変える

 

「ビンゴだ、二人ともその剣を掴めッ!」

「う、うん!」

「混乱。わ、わかりました」

 

 二人が風双剣に手を伸ばそうとした瞬間、周囲に風が吹き荒れ三人は権から弾き飛ばされてしまう

 

「くっ……」

「ちょ、ちょっと! あれじゃ掴めないんですけど!?」

「質問。どうするのですか、トーマ」

「気合いを入れて突っ込むだけ。あの剣が消滅して本と剣に分離したらその時点で終わり……途中まではオレが送り届けるから、後はお前ら次第だ」

「……わかった、信じるかんね」

「決心。よろしくお願いします」

 

【エターナルフェニックス】

 

 エターナルフェニックスの本を開いたトーマは、それを思い切り自分に押し当てると。炎を纏いながらその姿はファルシオンへと変化する。しかしそれは通常のファルシオンとは異なり。文字通り不死鳥の化物と形容する以外ない程の異形

 

「ぐッ……あぁッ──ッ、二人とも……行くぞ」

 

 二人の前に立ったファルシオンは、自分たちに向かって襲い来る風の斬撃をその身に受けながら真っ直ぐ突っ込んでいった。耶倶矢と夕弦もファルシオンの後を追うように風双剣へと向かい、風で形成された障壁の目の前まで辿り着く

 

「はッ……ッツ!!」

 

 その障壁に手を突っ込んだファルシオンは閉じた扉を無理やりこじ開けるように腕を開くと、障壁の間に僅かな隙間が出来る

 

「今だ……行けッ、そして自分の想いを込めて……剣を掴め! その想いに剣は必ず答えてくれる!」

 

 振り向かずそう言ったファルシオンの後ろにいた耶倶矢と夕弦は、手を固く繋いだまま障壁の中へと入った瞬間。僅かに開かれていた隙間は閉じ、ファルシオンは後方へと弾き飛ばされ、トーマの姿へと戻る

 

 

 

 

 

 障壁の中に入った二人は、真っすぐその中心に浮いている風双剣へ手を伸ばそうとする……しかし風双剣はそれを拒むように風の斬撃を二人へと放ってくる。

 

「くぅ……っ」

「苦悶。……ッ」

 

 それでも二人は風双剣へと伸ばす手を止めず、少しずつその手を近づけていく

 

「ねぇ……夕弦……っ、もし二人で……生き残れたら……っ、何したい?」

「思案。……そう……ですね……っ、まずは……色々なものを……見て回りたいです……耶倶矢と二人で」

「それと、恋も……してみたい、かも……」

「失笑。耶倶矢に……相応しい、相手がいるとは……思えません」

「うっさい、そんなの……やって、実際に、探さ、ないと……わかんないでしょっ!」

「微、笑。それ……も、そうで……すね」

「そうだ……後……っ、おばあちゃんにも……恩返ししなくちゃ、だしね……っ!」

「同、意。たし……かに、三日だけ、とは言え……夕弦たちに……居場所をくれ、ましたから……っ!」

 

 二人の目に決意の光が点る

 

「だから……っ!」

「呼応、だから……っ!」

 

「「絶対に! 二人で生きて……帰るんだぁ!」」

 

 その言葉と共に、二人の手が聖剣へと触れた。その瞬間……風双剣の周りを吹き荒れていた風はやみ、代わりに温かい光が二人の事を包み込む。光に包まれた二人はその中で、一人の少女の幻影を見る

 耶倶矢にも夕弦にも似たその少女は二人に笑みを見せ、抱きしめた

 

────双刀、分断

 

 

 

 

 それからどれだけの時間が経ったのだろう、今まで気を失っていた耶倶矢と夕弦が目を覚ますと。互いの手には二つに分かれた風双剣翠風が握られていた

 

「……私たち、無事?」

「確認。ちゃんと足はありますか?」

「うん、幽霊ではないみたい……夕弦は?」

「同意。夕弦もしっかり実体があります」

「……と言うことは、やったんだね。私たち」

「応答。はい、やったんです。夕弦達は、やり遂げました」

 

 それを確認した二人の目には、自然と涙が浮かんでいた

 

「良かった……っ、ほんとうに……よがっだぁぁぁ」

「感涙。夕弦も……本当に、よかった……です」

 

 涙をためた二人の目に映ったのは、呆れるぐらい綺麗な星空だった

 

 

 

 

 

 

 それから、ボロボロになった二人……ではなく三人の事を発見したフミによって、病院に連れていかれ。唯一残りの日数を病院の室内で過ごすことになったトーマの元に、元気を取り戻した八舞姉妹がお見舞いにやってきた

 

「くくっ、大事ないか。トーマよ」

「挨拶。お元気そうで何よりです。トーマ」

「二人も、身体の方は何ともないか?」

「心配無用! 颶風の巫女であるこの八舞に不調の二文字は存在しない!」

「密告。実際には昨日まで筋肉痛でピーピー泣いていた耶倶矢なのでした」

「ちょ、夕弦! それ言うなし!」

 

 元気そうな二人を見たトーマは笑みをこぼすと、二人に話しかける

 

「何はともあれ、無事でよかったよ。本当に」

「……うん、お陰様でね」

「同意。本当にありがとうございます。夕弦たちの事を救ってくれて」

「別にオレが何かしたわけじゃない。オレはただもしもの可能性を教えて、二人はその可能性を掴み取った……ただそれだけだ」

「それでもだよ、その可能性を教えてくれただけでも、本当にありがとう」

「感謝。もしもトーマが可能性を提示してくれなかったら、夕弦たちはどうなっていたかわかりませんでしたから。だから、ありがとうございます」

 

 頭を下げてきた二人に対して、トーマは少し気恥ずかしそうに頬をかいた。それから少しして顔を上げた耶倶矢は何かを思い出したように懐から本を三冊のワンダーライドブックを取り出した

 

「そういえばトーマ、目が覚めた時私たちの周りに落ちてたんだけど。これトーマのだよね?」

 

【ワンダーワールド物語 風双剣翠風】

【ストームイーグル】

【こぶた3兄弟】

 

 その三冊は確かにワンダーライドブックではあったのだが、今はそれを受け取る気の無かったトーマは耶倶矢と夕弦にその三冊を返す

 

「それは二人が持ってた方がいい。二人の霊力はその本の中に封じ込められてるし……それに、もしオレが持って帰って二人の存在が不安定になったりしたら目も当てられないからな」

「……良いの?」

「あぁ、それは二人が持ってて……それで、また会う機会があったらそん時に改めて渡してくれ」

「疑問。トーマはここに住んでいるのではないのですか?」

「あぁ、一週間だけフミさんの店の手伝いでこの島に来てただけなんだよ……それも後二日で終わり。明後日の飛行機で天宮市に帰ることになってる」

「……そう、なんだ」

「落胆。残念です」

 

 露骨に肩を起こした二人に対して、トーマは笑顔で言う

 

「これが今生の別れって訳でもない。それに……もしかしたら来年も手伝いで呼ばれるかも知れないからな」

「そっか、それなら……仕方ないね」

「同意。来年も会えるのなら、その時を楽しみにしています」

 

 そんな病室でのやり取りから二日後、退院したトーマは荷造りを終えるとカバンを持って飯屋の裏口から出ていく

 

「一週間、お世話になりました」

「ふんっ、精々身体壊して迷惑かけるんじゃないよ」

「此度の別れは永遠ではない……また会える日を楽しみにしているぞ、我が盟友よ」

「挨拶。お身体に気を付けて、あまり無茶はしないでくださいね」

「あぁ、二人も元気で」

「それじゃ、車出すからさっさと乗りな」

 

 フミの言葉を聞いたトーマは後をついていこうとしたところで、腕を二人に掴まれた

 

「どうした?」

「えっと……その……そういえば、お礼、まだだったなって」

「礼って、そんなん別に良いよ」

「反論。それでは夕弦たちの気が収まりません……なので、これがそのお礼です」

 

 その言葉と共に、耶倶矢と夕弦の唇がトーマの唇に軽く触れた

 

「へっ?」

「ッ! う、うぅ~~、それじゃ! またね!」

「しゅ、羞恥。結構恥ずかしいですね……お、お元気で!」

 

 顔を赤くして走り去っていた二人の事を呆然と見つめていたトーマに、クラクションが鳴らされる

 

「早くしな! 色男!」

「いっ……あぁっ、はぁ……今行きます」

 

 そして、トーマは或美島を離れ天宮市へと戻っていった

 

 

 

 

 これまでが、トーマと八舞姉妹の出会いの物語

 

 そして時は流れ、物語は現代へと戻り……トーマと八舞姉妹の再会の物語へと続く




過去の話は終わり
物語は現代へと移行する

初めての出会いから一年の月日が経ち
トーマは再び或美島の土を踏む

再び訪れた島で何が起きるのか

トーマと八舞姉妹の再会の物語が
そして、士道たちの波乱に満ちた修学旅行が、いよいよ始まる

……前に語られるのは、修学旅行の少し前のお話

次回, 八舞テンペスト≪After≫ 第5-A 0話
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