デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第5-A 1話, 修学旅行の前の話

 都立来禅高校、夏休み前にある期末試験と終え次に控えるのは待ちに待った修学旅行

 

「はいはーい、皆さん席に着いてくださぁい。ホームルームを始めますよぉ」

 

 岡峰教諭の言葉で立っていた生徒たちも自分の席に戻っていったのを確認すると教卓の前に立って一度手を叩いた

 

「それじゃあ、帰りのホームルームを始めまぁす。あっ、ども。その前に言っておかないといけないことがあるんでした」

 

 少し眉を上げて何かを思い出したらしい岡峰教諭は出席簿の間に挟んでいたプリントを一枚取り出す

 

「実は──今回の修学旅行、行き先が変更になりました」

『──え?』

 

 因みに修学旅行は当日、今から半月程度猶予はあるのだが。急に修学旅行の行き先が変更になるというのはかなり異例の事態である

 

「んん……まぁそうなりますよねぇ」

「ええと、どこに変更になったんですか?」

 

 殿町が手を上げて岡峰教諭にそれを聞く。それに関しては当然である、なんせ本来の行き先は沖縄。修学旅行の定番ともいえる場所であり、青い海など魅力的な場所はかなりある……それに、海目的で水着を新調した女子も少なくない以上

 

 一番大切なのは、変更先が海の無い場所になる事──もしそうなったら暴動が起きても不思議じゃない

 

 その不穏な空気を感じ取ったであろう岡峰教諭は、少し上擦った声で話を続ける

 

「だ、大丈夫ですよぉ。変更後の場所も、とっても素敵な所ですから」

「だから、結局どこになったんですか?」

「えぇと……或美島です」

 

 変更後の行き先を訊いたクラスの半数以上が納得の声を上げてもう半分が首を傾げる

 

「或美島っていうと……伊豆の方だっけ?」

「なんだよ近場になってんじゃん。グレードダウンかよ」

「いや、そうとも言えないぞ。観光地としちゃ悪くない」

「はいはい! 静かにしてくださぁい」

 

 岡峰教諭の声で一応静かになったクラスの面々の様子を見るに、一応海がなくならなかっただけ良しと考えているらしい……因みに或美島も観光地としては悪くない部類に入る、丁度一年前から始まったリゾート開発もひと段落して療養地としてそこそこの人気を誇っている場所だ

 

「細かい部分の説明は改定後のしおりができてから行いますので、とにかく今は部屋割りを決めちゃいましょぉ。好きな人同士で四、五人くらいの班を作ってください」

 

 岡峰教諭の声を聞いたクラスメイト達は一瞬周囲の様子を確認するよう視線を巡らせてから、自分の席を立って仲の良いグループを作り始めた

 

「おう五河、部屋組も──」

「シドー!」

 

 士道の方にも殿町が歩いてきて声をかけたのだがその声は右から聞こえた十香の声にかき消された。十香の方を見てみると彼女は目を輝かせて机から身を乗り出している

 

「その部屋割とやら、一緒に組むぞ!」

「え…………えぇっ?」

 

 思わず眉を寄せ素っ頓狂な声を出した士道の事を、十香はなぜ驚いたのかわからないと言った様子で首を傾げる

 

「ぬ? どうかしたのか?」

「いや、さすがにそれはマズいだろ」

「なぜだ? 五人一組なのだろう? ならば問題ないではないか」

「だ、駄目ですよ夜刀神さん。男子と女子は別々に組んでください」

 

 会話が聞こえたらしい岡峰教諭が、十香たちの元までやってきてそう言ってきた

 

「むぅ……なぜだ? シドーと一緒がいいのだが」

「な、なぜって……それは」

「あんま先生を困らせるなって。とにかく、部屋は男女別じゃないといけないんだ」

「ぬ……そうか」

 

 十香は残念そうに肩を落とす。が、すぐにバッと顔を上げて何かを思いついたらしく教室から出て行った、嵐のような出来事にクラスメイト達も少し呆気に取られていると、程なくして十香が戻ってくる──スカートの代わりにジャージを穿いて、髪を後ろで一纏めにした状態で

 

「……十香?」

「違う。わた──俺は、十……とお、そう、とーまだ」

 

 とから始まり響きの似たような声で思いついたであろう知人の名前を夜刀神とーま(自称)さんは使用する。まぁこれは十香の意図を察するとしたら男装したら実質男だからセーフじゃね? 理論である

 

「というわけだ。タマちゃん先生、俺は今日から男だ。これで問題なかろう」

「大ありですっ!」

 

 むしろ問題しかない

 

「むぅ……これでも駄目なのか……」

「──待って」

 

 肩を落とした十香の援護射撃を行ったのは予想外の人物、折紙だった。

 

「夜刀神十香の言い分を認めてあげて欲しい。是非柔軟な対応を」

「え……えぇっ!?」

 

 犬猿の仲の人物を援護射撃にはクラスメイトもビックリである

 

 

「貴様……何が目的だ?」

「あなたの諦めない姿勢に感銘を覚えただけ。あなたには男子の部屋に入る資格がある」

「……れ、礼は言わんぞ!」

「必要ない」

「ちょ、ちょっと待ってください! 何二人で話を進めてるんですかぁ! 駄目ですよぉ!?」

 

 映画とかでよくある共闘展開をやっていた二人を岡峰教諭が静止するが、折紙は気にする様子もなく言葉を続ける

 

「──しかし、女子が一人男子になってしまったのは非常に重大なイレギュラー。きちんと補完をする必要がある」

「は……? それってどういう……」

「男子が増えてしまった以上、士道には女子になってもらう他ない」

「いや意味がわかんねぇよ!」

 

 ここで折紙の狙いがようやく理解できたもののこちらはこちらでビックリするほど訳のわからん理論である

 

「一緒に洗いっこしよ、しど美」

「それ俺の名前」

 

 士道は叫び、優等生の言うことだから正しいのだろうと聞いていたクラスメイト達も思わず首を傾げると、十香はハッと目を見開いた

 

「ちょっと待て! シドーが女子になったら、私と一緒の部屋になれないではないか!」

「あなたは檀氏として強く生きて。応援している」

「う、うぬぅぅッ、図ったな、鳶一折紙!」

「あーもう落ち着けッ! とにかく男女は別部屋だ! 性別入れ替えもなし!」

 

 士道は今まで一番大きな声を上げると二人もようやく大人しくなった。その様子を見ていた岡峰教諭はほっと胸を撫でおろし

 

「ま、まぁ、お部屋は一緒という訳にはいきませんけど、飛行機の席順は自由ですからね。そっちなら隣でもいいですよ?」

 

 そう言った瞬間、十香と折紙の瞳が再び輝いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、珍しく士道から連絡の来たトーマは自分の部屋で通話開始ボタンを押す

 

『トーマか?』

「珍しいな、士道から連絡してくるなんて」

『あぁ、いや……流石に少し愚痴を聞いてほしくて……』

「その口ぶりじゃあ、自分と大変だったみたいだな」

 

 電話を耳に当てたトーマは軽く笑みを浮かべると士道の愚痴を聞いていると、その中で随分と懐かしい名前を耳にする

 

「或美島か……随分懐かしい名前だな」

『行ったことあるのか?』

「あぁ、一年くらい前に仕事で一週間だけな」

 

 一週間ろくに観光できなかったという事実は言わぬが花だろう、それでも景色を見たり夜散歩に出かけるくらいの時間はあったわけだが中々に綺麗な所だったのは覚えている

 

「……まぁ、観光地として悪くないってのは事実だからしっかり楽しんで来い」

『あぁ、それじゃあな』

「おう、また……それで、お前はさっきからそこで何やってんだ。美九」

 

 電話を切ったトーマはその視線を扉の隙間からこちらを覗いている美九の方に目を向ける

 

「お兄さん……浮気ですか」

「浮気ってなんだ浮気って……と言うかお前最近テンションおかしくないか?」

「そりゃあ夏ですからねぇ……流石の私もはっちゃけたくなります」

「それ絶対に夏関係ないだろ」

 

 軽くため息をついたトーマは、美九に伝え忘れてた事があったのを思い出す

 

「そういや美九、七月の十六日から大体三、四日留守にするからその間の飯やらなにやらは自分で何とかしてくれ」

「えっ? どこか行くんですか?」

「あぁ、仕事……と言うか個人的な呼び出しで或美島に」

 

 それを聞いた美九は少し首を傾げるとトーマに質問してくる

 

「個人的な呼びだしって……どういう事なんですか?」

「一年くらい前、仕事で世話になった婆さんがいるんだよ。御手洗フミさんって言うんだけど……そんでその婆さんがおっちゃん経由でオレに相談事があるとかで呼び出されたから十六日くらいから少し留守にする」

「そうなんですかぁ……わかりました」

 

 と、そんな感じで夜は更け一日が終わる……よりも早くトーマの元に今度は琴里から連絡が入った。美九に形態の画面を見せて了承を取ると電話に出る

 

『トーマ、今時間大丈夫かしら』

「大丈夫だけど……兄妹揃ってどうした?」

『兄妹揃ってって……一体何の話よ』

「さっきも士道から連絡がって……それはどうでもいいんだよ。それでなんか急用か?」

『えぇ、悪いけど今からフラクシナスまで来れる?』

「問題はないが……そんなに異常事態なのか」

『一応耳に入れておきたいことがあるってだけよ』

「まぁいいや、今から向かう」

 

 そう言って電話を切ったトーマは椅子から立ち上がり少し身体を伸ばす

 

「という訳で、少しフラクシナスに行ってくる」

「私も行った方がいいですか?」

「いや、オレ一人で大丈夫だと思う」

 

 そう言うとトーマが外に出るとフラクシナスへと回収された

 

 

 

 

「それで、わざわざ呼びだしてまでって一体何の話だ?」

「トーマ、あなた士道たちの修学旅行先が変わったって言うのは知ってる?」

「知ってる……と言うかさっき知ったばっかりだ」

「そ、それなら話は早いわ。実はそれ関連で少しきな臭い情報があるのよ」

「きな臭い情報?」

 

 そう言うと琴里はクルーに指示を出してクロストラベルと言う会社のサイトを表示させる

 

「クロストラベルって……これ何処にでもある普通の旅行会社じゃないのか?」

「そうだったら良かったんだけどね……どうにもこの会社DEMインダストリー系列の会社みたいなのよね」

「DEMインダストリー?」

「そういえばトーマは知らなかったわね……DEMインダストリーはラタトスクの母体になってるアスガルド・エレクトロニクスを除けば世界で唯一、顕現装置(リアライザ)造れる会社よ……けれど目的はフラクシナスと正反対、精霊の積極的な殲滅よ」

「成る程な……それで今回の修学旅行の行き先が変わったことにそのDEMが関わってるって事か?」

「そう言うこと、このクロストラベルがPRのためと称して来禅高校に接触してきたって訳……修学旅行費用全部会社持ちって話でね」

 

 そこまで言って納得した、確かにきな臭い……と言うか殆ど真っ黒な気がする

 

「とりあえず偶然だと思うけどフラクシナスを随行させておくつもりだけど……万が一の事を考えてトーマも──」

「それなら心配ない、オレも野暮用で十六日から或美島に行くからこっちでも警戒はしとく」

「そ、それならお願いね」

「あぁ、任された」

 

 その後トーマはフラクシナスから自分の家に戻り……一日が終わる

 

 

 

 

 

 そして時は進み、七月十六日。トーマは再び或美島の大地に降り立った




次回から、いよいよ始まる修学旅行
裏に潜んでるきな臭い企業

トーマは一足先に或美島の大地を踏みしめ
八舞姉妹と再会する

次回,八舞ウィッシュ 第5-A 2話

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