デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第5-A 2話, 開幕、修学旅行

 七月十六日、トーマは或美島にある空港から外に出ると夏場特有の日差しが襲いかかる

 

「トーマっ!」

 

 額に浮かぶ汗を拭ったトーマの耳に、自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。そちらの方を向くとトーマの元に向かってくるオレンジに近い髪色をした二人の少女──八舞耶倶矢と八舞夕弦の姿が見えた

 

「久しぶりっ」

「挨拶。久しぶりです、トーマ」

「あぁ、二人とも久しぶりだな。元気だったか?」

「うん、結構楽しく生活させてもらってる」

「同意。中々に充実感のある毎日です」

 

 銅最後にあった時から一年、偶に連絡を取る機会はあったのだが直接会う機会がなかった以上大丈夫なのかと心配していたトーマだったがとりあえず大丈夫そうで一安心だ

 

「そういえば二人とも、婆さ──フミさんがどうしてオレを呼んだのか聞いてたりするか?」

「ううん、私たちはトーマがまたこっちに来るから迎えに行ってやれって言われただけだし」

「同調。耶倶矢の言う通りです、夕弦たちは特に理由は知らされていません」

 

 耶倶矢と夕弦からそう聞いたトーマの頭の中には疑問符が浮かぶ。おっちゃんから聞いている御手洗フミと言う人物は相談事がある場合最低限の情報は話す人物らしい。

 だからこそ、一年一緒に過ごしフミにとって身内のような立ち位置になっているであろう耶倶矢と夕弦には相談事が何なのかを話しているものだとトーマは思っていたのだが、どうにもそれは間違っていたらしい

 

「トーマ、どうかした?」

「質問。考え事ですか?」

「……あぁ、いや。なんでもない、あんまり待たせるのも嫌だしそろそろ行くか」

 

 そう言ったと、トーマたちは夏の日差しが肌を照らすなかを歩き出した

 

 

 

 

「やっと来たかい、坊主」

「お久しぶりです。フミさん」

「はっ、いちいち畏まんなくていいさ」

 

 相変わらずの口調の悪さに安心しつつ、トーマたちは飯屋の中に入る

 

「耶倶矢、夕弦。アンタらは仕事だよ、これからの時間が忙しくなるんだからね」

「わかってる……我ら颶風の巫女に任せておくがよい!」

「必勝。耶倶矢と夕弦がいれば今日の売り上げも大勝利間違いなしです」

 

 スイッチを切り替えるように芝居がかった口調になった耶倶矢といつもの調子の夕弦は椅子にかけてあったエプロンを手に取って表に出て行った

 

「すっかり馴染んでますね、あの二人」

「元々お前さんが連れてきた二人だけどね……でも、しっかりやってくれてるよ」

「そうですか、そういえば相談事って何ですか?」

「詳しいことは奥で話す、付いてきな」

 

 トーマとフミは一年前に寝泊まりをしていた部屋に入り、中央にあるちゃぶ台を挟むような形で座ると、フミは手に持っていたカバンから封筒を取り出す

 

「坊主、まずはこれを見な」

 

 差し出された封筒に目を向けると表面には都立来禅高校の文字があった。開封済みの封筒から中に入っているクリアファイルを取り出すと編入届の文字が見える

 

「これって、来禅への編入届けですか……でもなんで」

「……耶倶矢と夕弦のやつさ」

「えぇ、それは見ればわかるんですけど。どうしてオレにこれを見せたんですか?」

 

 トーマがそう聞くとフミは少し頬をかいてから話始める

 

「私はね、あの子たちをこのままここに置いといて良いのかわかんなくなっちまったんだよ」

「ここに置いておいてって……どういう意味ですか」

「勘違いするんじゃないよ、私は別に二人がいて迷惑だって思ってるわけじゃない。むしろその逆さ」

 

 フミの言葉を聞いたトーマは少しだけ視線を細めたが、その後の言葉を聞くとフミが次の言葉を放つのを待つ

 

「……最初はアンタがどっかで拾ってきたよくわからん家出娘くらいに思ってたんだけどね……あれからかれこれ一年だ、あの子たちの良いところも悪いところも自ずと見えてくる。だからこそ私は分かんなくなっちまったのさ、あの子たちをここで働かせたままで良いのかってね」

「……だから、それをオレに頼むと?」

「そう言うことさ……いざ自分で聞こうと思っても寸での所で聞きそびれちまう」

 

 それはきっと、フミの心にも迷いがあるからなのだろうとトーマは思う。耶倶矢と夕弦がここでの暮らしを楽しんでいるのと同じようにフミも二人との生活を楽しんでいるのだろう……だから迷うし、どこかで踏ん切りがつかないでいる

 

「できれば力になりたいですけど、それはオレじゃなくてフミさん本人が言うべきだと思います。それでケンカになっても、何度も何度も話し合ってから決めるべきです」

「…………」

「だから、オレはそのことに協力は──」

「だろうね」

「へ?」

 

 その言葉を聞いたトーマは素っ頓狂な声を上げると、フミは呆れたように少し笑い言葉を続ける

 

「断られるこたぁわかってたさ、これは私とあの子らの問題だからね。だから私がアンタを呼んだのは説得を手伝って欲しいからじゃない。絶対に私はあの子らと喧嘩するからね、そうなったらアンタにはあの子らの話を聞いてやって欲しいんだよ」

「……わかりました」

「頼んだよ」

 

 

 

 フミさんとの話を終えたトーマはその後調理場で仕事をした後、一日を終える……と思っていたのだが、夜も更けてきたころに裏口を激しく叩く音が聞こえてくる

 

「……なんだ?」

 

 布団を敷いていたトーマが裏口の扉を開けるとそこに立っていたのは耶倶矢と夕弦の二人。その表情は普段とは違い少し曇っているところを見ると、どうやらフミさんはあの話をしたらしい

 

「……とりあえず、二人とも中に入るか?」

 

 こくりと頷いた二人をとりあえず中に入れたトーマは、お茶を入れて二人に差し出した

 

「それで、何があったんだ……?」

「……実は──」

 

 トーマは耶倶矢と夕弦の話を聞いたところによると、二人はフミから編入云々の話を聞いたらしい。今の生活が気に入ってる二人にとってその事を唐突に言われ反発してフミの家から出てきてしまったらしい

 

「成る程……」

「もう、どうしたらいいかわからなくて」

「哀情。フミさんは夕弦たちとの生活が、不満だったのでしょうか」

「それはない、フミさんもフミさんなりにお前らの事を思ってる……それに間違いはないと思う」

「どうして──」

「それが、フミさんからオレへの頼み事だったから……自分たちが喧嘩をしたら、二人の話を聞いてやってくれって」

 

 トーマは自分用に入れたお茶を一気に飲み干して再び耶倶矢たちの方を見る

 

「だから、二人にもゆっくり考えて欲しい。それに……丁度いいイベントもあるしな」

「丁度いいイベント?」

「質問。そのイベントとは一体……」

「それは……修学旅行だ」

 

 夜も更けていく中、トーマは携帯を取り出してどこかに電話をかけ始めた

 

 

 

 

 そして、七月十七日。士道たち来禅高校二年生一行は太平洋に浮かぶ島。或美島に到着した

 

「お、おぉ……!」

 

 空港から出た十香は目の前に広がる景色を見て肩を震わせている。今までは天宮市から出る機会のなかった十香にとって目の前の絶景は初めて見る光景に他ならないのだから

 

「こ、これが……海か!」

「はは……元気だな」

 

 或美島は三十年前の連続空間震によって島の北部が削られ、それを切っ掛けにリゾート開発が行われ、今から一年前にも老朽化した施設等の修繕を含めた開発が行われたらしく所々に近代化の波が見られる

 

「んー……」

 

 と、十香程ではないにしろ士道も目の前に広がる絶景を目にして何も感じないような人間ではないのだがそれ以上に朝が早かった事で若干眠気が勝っている

 

「ぬ……?」

「? どうした、十香」

「……いや、何か誰かに見られている気がしてな」

「え?」

 

 先ほどまではしゃいでいた筈の十香はきょろきょろとあたりを見渡している、それを聞いた士道が首を傾げた瞬間カシャリと言う音とともにフラッシュの光が二人の事を包んだ

 突然の事で思わず顔を覆ってしまった士道は、若干チカチカする目を細めながら光の方向を見ると、そこには大きなカメラを構えた女性が立っていた

 

「えっと……なんですか?」

 

 士道が困惑しながら訊ねると、その女性がカメラを降ろして視線を向けてくる

 

「失敬。クロストラベルから派遣されて参りました、随行カメラマンのエレン・メイザースと申します。今日より三日間、皆さんの旅行記録を付けさせていただきます──無遠慮な撮影、申し訳ありません。気分を害されたようでしたら謝罪させていただきます」

「あぁ、いや、別にそんな」

「お邪魔しました。では」

 

 普段はあまり見かけない海外の女性。士道と十香の物珍しそうにその容姿を見ていると、エレンはもう一度お辞儀をしてみんなの方に歩いていった

 

「なんだったのだ、あやつは」

「さてな……でも、誰かに見られてる気がするってのは正解だったわけだ」

「む、うむ」

 

 そう言った十香は左右に視線をやり、終いには顔を上げる

 

「……まだ、視線が残っている気がするのだが」

「え?」

 

 その言葉に眉をひそめた士道は、十香と同じように上を見上げるがそこには晴れ渡った青空しかなかった

 

 

 

 

 

 先ほど士道たちへと挨拶をした女性、エレンは手に持った端末でどこかに繋げると、向こう側から会話が聞こえてくる、それは今回の標的である少女──夜刀神十香が精霊であるのかを訝しんでいる内容だった。それを暫く聞いた後エレンは口を開く

 

「──くれぐれも油断しないでください、精霊かもしれない。それだけで、第一級の警戒をするには十分な理由です」

『肝に銘じさせていただきますよ』

 

 端末越しに聞こえてくるその声を聞いたエレンは不服そうに眉をひそめる

 

『それで、どうします? いくら精霊とはいえ、バンダースナッチの部隊にかかれば、小娘一人を捕獲するくらい容易いものでしょう』

「そう甘くはありません。慎重にいきましょう。まずは、電波通信を遮断してください」

『了解。アシュクロフト‐β二十五号機から四十号機まで並列軌道、恒生随意領域(パーマメント・テリトリー)を展開。目標は──或美島全域』

 

 その言葉と共に、或美島全域を覆うように、エネルギーのフィールドが形成されていった




或美島へとやってきたトーマ
彼がそこで受けた相談は
互いを思いあう故のもの
悩み、フミと喧嘩した八舞姉妹にトーマがした提案

一方、ついに始まった修学旅行
高校生活の一大行事を楽しむ士道たちの元に迫る影

この行事を終えた先で何が起こるのか
波乱に満ちた修学旅行はまだまだ始まったばかり


次回, 八舞ウィッシュ 第5-A 3話
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