デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
それから、士道たちはバスに揺られて本日の宿泊予定場所までやってきたのだが、各々の部屋に行く前に岡峰教諭に集められる
「えーっと……ほんとうに急なんですけどぉ、修学旅行の間新しいお友達がやってきまぁす」
岡峰教諭がおずおずとそう言うと、クラスメイトが少し騒めく。修学旅行から新しいクラスメイトが増えるというのは本来ならば絶対にありえない状況ゆえに仕方ないだろう
「新しいって……つまり転入生?」
「あぁ」
クラスの誰かが言ったであろう言葉に首肯したのは令音だった
「……本来ならば夏休み明けにと言う話だったのだがね。親御さんがどうしてもと言うので現地合流する手はずになっていたんだ」
そう言うと令音は少しだけ横に移動すると、令音の後ろにいた二人の少女がクラスメイトの前に現れる
「八舞耶倶矢だ、よろしく頼む」
「同調。八舞夕弦です、よろしくお願いします」
来禅高校の夏服を身に纏った瓜二つの少女──耶倶矢は芝居がかったように少々大袈裟に、夕弦は少し特徴的なしゃべり方だがかなり丁寧にあいさつをした
そして、場所は代わり令音に呼ばれた士道が彼女の部屋に向かっていくとそこには令音一人ではなくもう一人、見慣れた人の姿があった
「令音さんに……トーマ?」
「あぁ、急に呼び立てて悪いな。士道」
「いや、それは良いけど……何かあったのか?」
「二人の事で、少しな」
トーマにそう言われた士道は少し思考したのちに、彼の言った二人と言うのが今日来た耶倶矢と夕弦の事であると理解する
「その二人って、耶倶矢と夕弦の事だよな?」
「あぁ、あの二人は少しだけ訳アリでな……編入するしないで家族と揉めてな。そんで無理くり頼んだって訳だ」
「訳アリって──」
「……シン、彼女たち二人は精霊だ」
トーマと士道の話を遮る形で話に入ってきた令音の言葉を聞き、士道は目を見開いてトーマの方を見た
「ど、どういうことだよ!?」
「まぁ……一年前にちょっと成り行きでな。それからあの二人は或美島で暮らしてたんだが少し意見の食い違いがあって今に至る」
「……よくわからんのだが」
「まぁ、とにかく修学旅行中二人の事を気にかけてやって欲しい」
そう言って頭を下げているトーマのことを見ながら、士道は複雑そうな表情で頭を掻いた。その近くで小型端末を操作していた令音は一度操作をやめ、ふむと息を吐いた
「……やはり駄目か」
「どうかしたんですか、令音さん」
「さっきからやけに厳しそうな顔してますけど……」
「……あぁ、フラクシナスとの通信が途絶えているんだ」
「どうして急に?」
「……現状では不明だ。少し調べてみるよ」
そう言った令音は再び端末の操作を始める
「オレの方でも、何か異変を感じたらすぐに連絡する……とりあえず、変な気配はなさそうだが一度島を見て回ってはくるかな」
「わ、わかった」
そう言うとトーマは部屋を後にした
部屋から外に出たトーマは、とりあえず島に何か不審な場所はないか見て回ることにする
「さてと、とりあえず怪しそうな場所を適当に探してみるか」
まず最初にトーマが探しに行くのは市街地。ここを選んだ理由としてはまず人が多いという点があげられるだろう。木を隠すなら森の中と言う諺もある通り不審人物も仕掛ける場合は市街地の可能性を捨ておくわけにはいかない
「……という訳で、来てみたが。ぱっと見不審な所はなさそうだな」
大雑把にあたりを見回してみたトーマだったがさして変わった様子もないし、不審な霊力が流れている気配はない。ここはハズレかと思っていたところで霊力とは違う不審な気配を感じ、そちらの方に目を向けると建物の影に入っていく人影を見つける
その影を追って建物の裏手に入った瞬間、上空から何者かの襲撃を受ける
「……ッ!」
寸前でそれを避けたトーマが襲撃者の方を見るとそこにいたのは胸に黄金のチャックを付けた鎧を思わせる白い怪物だった
「何だ、こいつ……」
「──────―」
トーマの目の前にいた怪物は巨大鉈を取り出すと再びトーマの方へと襲い掛かってくる
「あぶねっ……ッ」
「──────―」
その攻撃を避けながら手元に無銘剣を出現させたトーマは振り下ろされた鉈を受け止めると怪物の腹に蹴りを食らわせる
【エターナルフェニックス】
出現したブレードライバーにライドブックを装填し、そのまま抜刀してその姿をファルシオンへと変化させた
「何だかよくわかんねぇけど……ッ」
「──────―」
ファルシオンは怪物が振り下ろしてくる一撃を避けるとかかと落としで地面に突き刺さった巨大鉈を更に深く突き刺し、動きを止めたところで思い切り両腕を切り裂いた
腕を切り裂かれた怪物は断面からボタボタと黒い液体を垂らしその場に後退する、ファルシオンはそれを好機と感じ取り一気に怪物まで近づき蹴りを放ち怪物を転倒させる
「──────―!? 」
「これで、終わりだ」
『必殺黙読──不死鳥無双斬り』
倒れこみ動けなくなった怪物を見たファルシオンは、炎を纏った斬撃を放ち怪物の身体を完全に焼き尽くす。炎は完全に消え去ったのを確認したファルシオンは、剣を消失させてトーマの姿に戻ると怪物のいた場所に残っていた塵を手に取った
「これ……紙の燃えかすか?」
塵が残っている以上あの怪物を構成していたものはこの紙の燃えかす……と言うよりも紙である事には間違いないのだが、それだとあの体積や武器を構成しているものも紙だったことになる。只の紙でそれが出来るのかは微妙だ
「本当はフラクシナスの研究設備使いたいんだが……令音さんの言ってた通りなら今は無理だろうな」
この場で延々と考えていても仕方ないと思ったトーマはジップロックに怪物を構成してたらしい紙の燃えかすをしまい、その場を後にした
「……アレが、ファルシオン。件の剣士ですか」
トーマが立ち去った後、一人の男が先ほどまで二人の戦闘していた場所に現れる。
「しかし、剣は使えているようですが本の力はまだ完全に引き出せていない……あの様子なら、手早く回収することもできる」
そんなことを呟いていた男は懐から一冊の本を取り出した。ワンダーライドブックに限りなく似た見た目のその本を男が開くと、辺りに散らばっていた塵がその本の中に吸い込まれていく
「お疲れ様です、カリュブディス……本格的に仕掛けるのは、また足並みを合わせてにしましょうか」
男は手の中で胎動している本を撫でながら、そう言葉を紡いだ後……その場からいなくなった
時は進み十八時五十分。あの怪物と戦ったこと以外の収穫は特にない状態で戻ってきたトーマはホテルの露天風呂をお借りして身体を休ませていると、風呂のドアが開かれる
「あれ、トーマか?」
「ん? あぁ……士道か」
自分以外にも人の入っていることに気付いた士道は身体を洗うとトーマの横までやってくる
「それで、なんかあったか?」
「化物が出た以外特になしだな……久々の戦闘でくったくただ」
「怪物って……大丈夫だったのか?」
「あぁ、特に強かったわけでもないからな……不意打ちで少し焦ったがそれ以外は大丈夫だった」
「そ、そうか……」
「案ずるな士道。こやつの丈夫さはこの我ら八舞が保証しよう」
「肯定。トーマの丈夫さは夕弦たち八舞が確認済みです」
「早々、二人も言ってるしそういう……???」
この場には二人しかいない筈だが、何故か士道以外の声を聞いたトーマが顔を上げると何故か隣には耶倶矢と夕弦の姿があった
「耶倶矢に夕弦!?」
「お前ら……なんでここに」
「何故と言われても……我らは暖簾の案内に従いここに来ただけだが?」
「同意。夕弦たちはしっかり女と書かれた暖簾に従いこの場所にやってきました」
恐らくだが、時間によって切り替わるか従業員がたまたま男女の暖簾を掛け違えたのだろう……どちらも限りなく低い確率なのだと思うが、それを引いたと考えるとかなりのラッキー……いや、このタイミングではアンラッキーだ
「トーマ、急いで出よう……嫌な予感がするんだ」
「そうだな。オレたちは出るがお前らはゆっくり──」
「良いではないか、もう少し浸かっていけ」
「指摘。見たところ二人ともお疲れのご様子。もっとゆっくりしていった方がいいと思います」
「いや、それもそうなんだがこのままじゃ──」
「とりゃー!」
士道がそう言ったタイミングで露天風呂の扉が勢いよく開かれ誰かが思い切り湯船に飛び込んできた。その先にいた士道は真正面から水しぶきを受け
「ん?」
聞き馴染んだ声に。夜色の長い髪、美しい曲線で描かれたボディライン、見間違う事も難しいその姿は──紛れもなく夜刀神十香のものだった
湯船に飛び込んできた十香も先客に気付いたらしく。キョトンとした様子で士道を見たのち
「ギャ──────ーッ!?」
「ギャ──────ーッ!?」
二人で顔を見合わせ同じタイミングで声を上げた
「な、なななななななぜこんなところにいるのだシドー!」
「ち、ちちちちがうんだ十香聞いてくれ、これにはやむ終えぬ事情があってだな」
色々と説明しようと思った士道だったが頭の中で様々なものがぐるぐると回った結果思い切り頭を下げて誠心誠意の言葉を紡ぐ
「とにかくすまん! すぐ出ていくから…………!」
「あ……待て、シドー!」
「ど、どうしたんだ?」
「いや……そちらは、まずいと思うぞ」
「へ?」
十香に引き留められた士道が目を点にしているとまたも扉が開き女子一行の入ってくる姿が見える。十香や耶倶矢たちがいる以上今の時間は女子の入浴時間である事には間違いない
「ま、マズいぞトーマ……って、あれ?」
「もしや士道、トーマのことを探しておるのか、奴ならとっくにこの場から離れたぞ?」
「伝言。『済まない士道、絶対に助けるから一度見捨てる』だそうです」
「あ、あの野郎……って、やっべぇ……! どうすんだよこれ……っ!」
見つかったら一生変態の烙印を背負いながら高校生活を送るしかなくなるがどこかに逃げる訳にもいかない。頼みの綱であったトーマも既にこの場から離れて一人安全な場所に避難済み。まさかの詰みである
と、士道がガタガタ震えていると十香や耶倶矢たちが士道の姿を隠すように移動してくる
「と、十香……? それに二人も……?」
「シドーが悪いのではないのだろう……? なら、私の、私たちの影に隠れて早く逃げるのだ」
「神が汝に与えた試練、それを打破するため我ら八舞も助力してやろう」
「微笑。今回は完全に事故なので、今のうちに逃げてください」
「……! す、すまん。恩に着る……!」
「よし……では行くぞ」
「お、おう」
十香たちが壁になりながら湯船の中をゆっくりと移動していくのだが──
「あー、十香ちゃんはっけーん! それと転入生もはっけーん!」
「どうしたの? こんな端っこで」
「ていうかうっわ。三人とも肌きれー」
入ってきた亜衣麻衣美衣の三人娘が十香たちの方に近づいてきた。そして背後に隠れている士道の頭の中に警報音が鳴り響く
「ひ……っ」
「い、いや。なんでもないぞ! 気にするな!」
「う、うむ。少し景色でも眺めようと我が眷属たちと話していたところだ……な!」
「同意。良い景色のようでしたので、せっかくならみんなで見ましょうと……」
そう言っているものの三人娘は着実に近づいてくる。万事休す化と思ったその時──
「は……っ! あんなところに巨大きなこパンが!」
十香がそう言った瞬間三人娘の注意が一瞬だけ逸れる。それに気づいた士道は意を決して岩縁から海に向かってダイブした
落下時独特の浮遊感が士道に襲い掛かってきたが、ちょうど半分まで落下したところでその浮遊感は止み。何かに抱き留められる感覚が士道を襲う
「大丈夫か、士道」
「と、トーマ……助かった」
ファルシオンに変身した状態のトーマに抱き留められたらしい士道は一息つくが、そこで今自分を抱き留めている人物が一度自信を見捨てている事を思い出した
「お前、よくも俺を見捨ててくれたな……」
「こうして助けたんだからそれで勘弁してくれ……それにあの時は必至だったんだ」
そんなことを話しながら一番の避難場所になっている令音の部屋のベランダまでやってきた士道たちは窓をノックすると、ゆっくりと開かれる。士道とファルシオン姿のトーマを見た令音は数刻何かを考えた後、口を開く
「……随分と個性的な夜這いだね」
「「違います」」
その後、二人は無事女湯に残された自分の着替えを回収し事なきを得るのだった
トーマが戦った謎の怪物―カリュブディス
そしてその残骸を回収した男
様々な思惑が蠢きながらも、修学旅行は続いていく
次回,八舞ウィッシュ 第5A-4話
《information》
・カリュブディス
原典の仮面ライダーセイバーに登場するメギドの一体
「幻獣」「生物」「物語」の三属性全てを宿すメギドでありそれは本編でも変わっていない