デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第5-A 5話, それぞれの戦い《上》

 森の中に避難した士道たちは、木の影に身を隠すと息を吐く。セイバーも本を閉じてトーマの姿に戻ると木に背中を預け息を吐いた

 

「あいつら、一体何なんだ……」

「……多分、アイツらがDEMインダストリーって奴だ」

「DEMインダストリー?」

「修学旅行前に琴里たちから一応警戒しとけって言われてた会社だ。フラクシナスの後ろ盾以外で顕現装置(リアライザ)を作れる会社で理念も正反対だから気を付けろって事らしいがここまで直接的に仕掛けてくるとは思わなかった」

 

 だが、あの口ぶりだと精霊を殲滅するというよりも何か別の目的があるような気がするが──

 

「しかし解せぬな。十香が精霊だというのは元より感じておったが」

「質問。何か狙われるような心当たりはないのですか?」

「狙われる心当たり……思いつかないぞ、少なくともシドーたちと出会う前に襲ってきた奴等の中に姿はなかった」

 

 耶倶矢と夕弦、二人に問いかけられた十香だったが本当に心当たりがないと言った様子だった

 

「けど、流石にこのままって訳にはいかないか」

「そうだな、ひとまず戻って令音さん達に事情を──なんだ!?」

 

 士道が言葉の途中で、上空が光り輝き結界が森を覆っていく

 

「な、なんなのだあれはっ!?」

「先手を打たれたか」

 

 そうこうしている間に結界は完全に完成してしまった、こうなってしまうとココカラ出る方法は結界を破壊できるほどの力をぶつけるか術者を倒すかの二つだ。などと考えている間に自分たちの周囲を何かが包囲していることに気付く

 

「囲まれてる……か」

「応戦。戦闘態勢です」

「かか、颶風の巫女に挑もうとは良い度胸だ。姿を見せよ!」

 

 耶倶矢のその声を聞いたか否かは知らないがゾンビのようで足取りで現れたのはバンダースナッチではなくシミーの方だった

 

「こやつら、新手か!?」

「十香、お前は士道を守ってくれ。他はオレたち三人で何とかする」

 

 トーマはベルトに収まっている火炎剣に手をかけたところで、耶倶矢と夕弦は何かを思い出した軽く目を開くと本を取り出してトーマへと差し出してくる

 

「そうだった、トーマ。忘れてたけどこれ」

「進上。使ってください」

「良いのか?」

「うん、元々それはトーマが集めてるものなんだし」

「……わかった、有り難く使わせてもらう」

 

 キングオブアーサーの本を外すと、二人から受け取った二冊の本をベルトにセットする

 

【ストームイーグル】

【こぶた3兄弟】

 

 三冊の本が装填されているベルトから、トーマは火炎剣を引き抜き、斬撃を放つ

 

『烈火抜刀!』

 

 眼前のシミー達を焼き尽くしたその斬撃は途中で制止すると、逆方向に移動し炎に包まれているトーマへとぶつかり炎を晴らした。トーマが炎を纏いその姿をセイバーへと変えるのと同時に八舞姉妹も風邪を身に纏い自身に霊装を顕現させた

 

「それじゃ、行くぞ」

 

 セイバー、耶倶矢、夕弦の三人は目の前にいるシミーに対して攻撃を仕掛ける。耶倶矢と夕弦は風を用いてシミーを吹き飛ばしセイバーも火炎剣で次々とシミーを切り裂いていく

 少しずつではあるが順調に数を減らしていっているものの、それでもシミーの母数が多いためどれだけ倒しても終わりが見えない

 

「こいつら、一体一体は大して強くないのか」

「けど、こうも数が多いときりがないし!」

「士道! 十香! そっちは大丈夫か!?」

「うむ、こっちはまだ大丈夫だ!」

 

 セイバーの問いかけに答えた十香は、まだ余力がある様子で声をかけてきた。この調子なら問題ないと思いかけてすぐに上空から飛来したバンダースナッチによって攻撃を仕掛けられた

 

「ぐぁ……っ」

 

 背後からの攻撃によって一瞬の隙が生まれてしまったセイバーに対して周りにいたシミー達が次々と群がってくる

 

「トーマっ! ──このぉっ! 颶風騎士(ラファエル)──穿つ者(エル・レエム)!」

「殲滅。颶風騎士(ラファエル)──縛める者(エル・ナハシュ)!」

 

 耶倶矢と夕弦の二人は自身の手元に天使を顕現させるとそれを思い切り振るいセイバーの周りに纏わりついていたシミーやバンダースナッチを消し去っていったところで、動き回っていた筈のシミーとバンダースナッチが動きを止める

 

「なんだ?」

「燃料切れ……って事はないよね」

「困惑。ですがピクリとも動きません」

「……とりあえず、士道たちのところまでもど──」

 

 そこまで言ったところで、セイバーたち三人の耳に足音が聞こえ、シミー達を避けるように一人の男とカリュブディスが現れる

 

「お初にお目にかかります……と言った方がいいんでしょうかね」

「お前は……あの時の」

 

 優雅に、しかしどこか芝居がかった風に頭を下げた男にセイバーは身に覚えがあった今朝とは違い赤い髪をオールバックにしている東洋系の男。トーマがすれ違いファルシオンの名を口にした男だ

 

「では改めて自己紹介を。私の名はイザク──イザク・L(ロゴス)・クラーク、以後お見知りおきを」

「……名前なんざどうでもいい、アンタ。何が目的だ」

「目的……ですか、そうですねぇ。強いて言うならあなたの持つ力ですね」

 

 そう言いながらはセイバーの持っている聖剣を指さした

 

「あなたの振るっている力、その聖剣は元々我らが手にするはずだったモノ。それがどういう因果か今はあなたの手元にある……なので、その力を我々に返還して頂きたいのです」

「断ると言ったら?」

「あぁ安心してください。これはお願いではなく目的を話しただけ……最初からあなたの命ごと奪い取るつもりでしたので──カリュブディスッ!」

 

 イザクの声にしたがったであろうカリュブディスがセイバーたちに向かってきた。それと同時に回りで固まっていたシミーやバンダースナッチも動きだし三人へと攻撃を仕掛けてきた

 三人はその攻撃を上空へと逃げることで避けるが、ワンテンポ遅れてしまったセイバーはカリュブディスの伸ばしてきた槍に叩きつけられ地面へと落ちる

 

「トーマッ!」

「焦燥。今すぐ救出を──」

「オレは大丈夫だ。お前らはそれよりも士道たちの方に行ってくれッ!」

 

 カリュブディスの槍を受け止めながらセイバーはそういうと鍔迫り合いを続けたままその場から移動する。耶倶矢と夕弦は少し顔を見合わせた後その場から移動しようとして周囲をバンダースナッチが囲んでいることに気付く

 

「流石にここまで来るといい加減うざったい」

「立腹。いい加減目障りです」

 

 普段よりも激しい風を纏わせた耶倶矢と夕弦は自分たちの周囲を覆っているバンダースナッチの蹂躙を始めた

 

 

 

 

 

 

 一方、セイバーたち三人と少し離れた場所にいる十香は限定霊装を展開し、その手に顕現させた鏖殺公で迫ってくるバンダースナッチを次々と切り裂いていくと、木の影から再びエレンがその姿を見せた

 

「流石はプリンセス、圧倒的な戦闘能力ですね……どうですか十香さん、私とともに来ていただけませんか。最高の待遇をお約束します」

「──ほざけッ!」

 

 エレンの誘いを完全に拒絶した十香は鏖殺公の切っ先を向ける

 

「お、おい十香、いくらなんでも生身の人間に鏖殺公は──」

「違う」

「え……?」

 

 そう問い返しながら十香の方を見た士道は、彼女の表情が今までにない程の緊張感で満ちている事がわかる

 

「向かい合ってみて初めて気づいた。──あの女、もの凄く嫌な感じがする。そう……ASTの気配を極限まで濃くした感じだ」

「面白い表現をしますね」

 

 そう言いながらも、エレンはその場で優雅に両手を広げると同時に、身体が淡い輝きに包まれ、その身にワイヤリングスーツとCR-ユニットが装着されていた。ASTのものとは全く異なるそれを見た士道たちは身構える

 

「バンダースナッチ隊、しばらく手を出さないでください。音に聞こえたプリンセスがどれほどのものか、少し試させていただきます」

 

 そう言ったエレンは背中に装備されていたブレードを抜くと、左手の指をまげて十香を挑発する

 

「舐めるな……ッ!」

 

 その叫びと共に地を蹴った十香は鏖殺公を振りかぶり、エレンの脳天に叩きつける……前に彼女の片手に握った剣で、精霊の一撃は易々と受け止められる

 

「おや、そんなものですか?」

「く……ッ!」

 

 苦悶じみた声をもらした十香は連続で鏖殺公を振るうが、攻撃は全て防がれエレンへのダメージはおろかCR-ユニットにさえ傷一つついていなかった

 

「……こんなものですか、プリンセス」

「な、なんだと!?」

「せっかくペンドラゴンまで装備してきたのですが──必要なかったようですね。期待外れです。終わりにしましょう」

 

 エレンは右手に持った巨大なブレードを十香に向かって振り下ろす。その一撃を防御しようと鏖殺公を構えた十香だったが、彼女を守る筈だった鏖殺公の刀身は、いともたやすく砕け散った

 

『え……?』

 

 十香と士道は、目の前で起きた光景を見て呆然とした声が漏れる。しかしエレンはそれに構う様子もなく十香に攻撃を続ける。その攻撃をもろに受けた十香は小さな身体を後方に吹き飛ばし地面に叩きつけられる

 

「くぁ……っ!」

「と、十香!」

 

 地に伏した十香の元に駆け寄ろうとした士道だったが、それを阻むように二体のバンダースナッチが現れる。倒れた十香の方にも幾体のバンダースナッチが群がりはじめその身体を持ち上げようとしている

 

「興覚めです。早く昏倒させてアルバテルに運び込んでしまってください」

 

 その言葉と共に身に纏っていたユニットを消したエレンは顔を背けて腕組みをする

 

「ぐ──ぁ……ッ」

 

 バンダースナッチによって頭からその身体を持ち上げられた十香が苦しそうな声を発する

 

「十香! 何しやがるてめぇらッ! くそッ、退け!」

 

 士道は必至に目の前にいるバンダースナッチを退かそうとするが目の前の機械人形は一向に動く気配が見えない。そうしている間にも士道の耳に十香の口から漏れる苦し気な声が聞こえてくる

 

「十香──!」

 

 叫ぶ士道の中に、どうしようもない無力感と絶望感が溢れ出てくる。今の自分では何もできないという事実、十香たちのような圧倒的な力も、トーマのように敵を切り伏せる剣も、今の士道には存在しない

 自分の持っている精霊の力を封印する能力も、今この場では何の役にも立たない。それ以外は琴里から借り受けた治癒能力のみ

 今この場に──目の前の人形を切り裂いて進める力があればと、士道は考えずにはいられなかった。それと同時に思い出されたのは狂三の時に感じた絶望、あの時も結局士道は狂三を救うことが出来なかった。それが今の状況と不自然なほど被って、士道の目には映った

 

 ──もう二度と、あんな思いはしたくない

 

 そう思った瞬間、士道の中で何かがはじける

 

 ”生涯一度きりで構わない。今この瞬間だけで構わない。今この手に、十香を救う力があれば──! ”

 

「十香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──ッ!」

 

 その想いを込めて士道が叫んだ瞬間、士道の中で何かが繋がり──自然と右手を振り上げていた

 

「え……?」

 

 呆然と声を発する。振り上げた右手に何かが握られている感覚、腕にかかる重さと金属のような冷たさ。それが何かを理解する前に士道は右手を振り下ろし、目の前に立ちふさがっていたバンダースナッチを切り裂いた

 その瞬間、切り裂かれたバンダースナッチの上半身は消え去り、その延長線上にいたもう一機、十香の事を抑えていた個体の頭部も斜めに滑り落ちた

 

「けほ……っ、けほ……っ」

「これ……は」

 

 士道は、自分の右手に握られているモノを見て、声を上げる

 彼の右手に握られていたのは……紛れもなく十香の天使、鏖殺公だった

 

 

 

 

 

 士道が鏖殺公を手にする少し前、先ほどまで戦っていた場所から移動したセイバーとカリュブディスはお互いの得物をぶつけ合い、辺りに火花が散る

 

「はぁッ!」

──────―

「やるずらい……なッ!」

─-─―ッ!? 

 

【ストームイーグル】

 

 カリュブディスに蹴りを入れて少し距離を取ったセイバーはストームイーグルの本を一度押し込み炎の竜巻を発生させると、それをカリュブディスに向かって放つ。渦に巻き込まれたカリュブディスの身体は所々が解け始め、その場に倒れる

 

「よし、さっさと二人の所に──」

 

 カリュブディスに背中を向けた瞬間、急に吸い寄せられる感覚に襲われ気が付くとカリュブディスのすぐそばまで移動させられていた

 

「なっ──ぐぁっ!」

 

 驚いている暇もなく背後から斬撃を受けたセイバーはその場に膝をつく、それに対してカリュブディスは執拗に攻撃を続ける。その攻撃によってついに耐え切れなくなったセイバーがその場に伏せた瞬間、腹部に思い切り蹴りをいれセイバーの事を吹き飛ばした

 

──────―

「ぐっ……ぁっ──ッ!」

 

 カリュブディスが歩いてくるのを見ながら、セイバーはベルトに剣を納刀しトリガーを引く

 

『必殺読破!』

 

 剣の柄に手を添えたまま、カリュブディスがこちらに近づいてくるのを待つ。数刻の時が流れ、すぐ近くまでやってきたカリュブディスが槍を振り上げたところでセイバーは無防備になった腹に蹴りを入れる

 

─-─―ッ!? 

 

『烈火抜刀! ドラゴン! イーグル! 3匹のこぶた! 三冊斬り! ファ・ファ・ファ・ファイヤー!』

 

 蹴りを受けたカリュブディスが一歩後ろに下がった瞬間、イーグルの羽根で思い切り地面を叩いたセイバーは立ち上がりベルトから抜刀する。淡い緑色の輝きと共にセイバーが分身し、三人になる

 

「「「火炎三連斬りッ!」」」

 

 三人に増えたセイバーは炎を纏った刀身で三方向からカリュブディスを切り裂くと幻影が消え一人に戻る、斬られたカリュブディスは身体から火花が発生させしずつ塵となって消え始めた

 

「おっと、ここでの退場は少々困る。さぁカリュブディス……食事です」

 

 その光景を見てたであろうイザクが持っていたのは機能停止しているバンダースナッチ、普通の人間では持ち上げることのできないであろうそれをイザクはカリュブディスに向かって軽々と放り投げる

 それを確認したであろうカリュブディスは胸から巨大な口を出すとそれを飲み込んだ。そして口が閉じられると同時に塵となって消えかかっていたカリュブディスの身体は再生し、同時に変化を始める

 右腕や頭の半分、身体の所々が機械のように変質し、背中からは蠢きながら飛行ユニットが生えてくる。完全に再生を終えたであろうカリュブディスは新たに出現したセンサーアイでセイバーの方をぎょろっと見ると飛行ユニットを使いもの凄い勢いで接近し地面にたたきつけた

 

「──っ……ッ!」

 

 肺の中にあった空気が一気に吐き出されたセイバーは声にならない声をを上げながらずっと握り続けていた火炎剣をついに手放した

 

「初お披露目とは言えこうもあっさり行くとは少々驚きです。カリュブディス、彼から聖剣と本の回収を」

──────―

 

 頷いたカリュブディスがセイバーのベルトに手をかけた瞬間、機械化していなかった左腕が消し飛ばされ、そのまま木に叩きつけられる

 

「おや」

「あんたら……トーマに何してくれてんだッ!」

「憤怒。夕弦たちの大切な人(おんじん)を、随分と痛めつけてくれたようですね」

 

 怒りの形相で二人を睨みつけている耶倶矢と夕弦を見て、イザクは後方で彼女たちの足止めをしていた筈のバンダースナッチに目を向けると、そこにあったのはスクラップと化した大量のバンダースナッチだったものが転がっていた




十香を圧倒したエレンとバンダースナッチ対
バンダースナッチを食らい新たな姿になったカリュブディス

相対するは

鏖殺公を顕現させた士道
トーマがやられたことに対する怒りに燃える耶倶矢と夕弦

異なる場所で起こっている戦いはいよいよ終盤

次回, 八舞ウィッシュ 第5-A 6話



……なんかトーマ負けてる事がする事多い気がする
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