デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第5-A 6話, それぞれの戦い《下》

「これは──鏖殺公……?」

 

 士道が右手に握っている剣を凝視しながら、その名を呟く

 

「シ、ドー……? な、なぜ鏖殺公をシドーが……!?」

 

 士道が鏖殺公を使っていることに困惑していたのは十香も同じ、エレンに砕かれた筈の鏖殺公が士道の手の中にあるのだから

 そんな状況の中、士道は困惑と同時に今の状況を冷静に考えることも出来ていた。元々士道の持っている治癒能力は士道本人に由来するものではなくあくまでも琴里の霊力を封印しその力を借り受けているだけ、それならば自分が封印した他の精霊の力を借り受け、士道自身がその力を扱うことが出来るのではと、考えられていた

 そしてその仮説は、十香の天使──鏖殺公の顕現によって確かに実証された

 

「天使……? しかもプリンセスのそれと同じ……? まさか、それはつい今し方私が砕いたはずです。それ以前に、なぜあなたはそんなものを──」

 

 天使を顕現させた士道に対し、さっきの興味なさげな瞳とは打って変わり、好奇の色が映る瞳で士道を見つめている

 

「五河──士道といいましたね。あなたは一体何者です」

「……人間さ。一応な」

 

 士道の言葉を聞いたエレンは眉をひそめると、手を空に掲げる。それが合図となったのか周囲にいたバンダースナッチ部隊は姿勢を低くして警戒態勢にうつる

 

「気が変わりました。五河士道。あなたも来ていただきます。抵抗はお勧めしません」

「ぐ……」

 

 士道は鏖殺公を強く握り、渋面を作る。今の士道にはバンダースナッチを停止状態に追い込むだけの力がある……しかしそれは相手が警戒していない状態での不意打ちだったから、警戒態勢に移行された上今までよりも数が多いのに加え限定的にとは言え霊装を纏った十香を倒したエレンと言う存在も後ろに控えている

 この状況は一レベル単騎でゲーム終盤に出てくる撤退ミッションに挑むのと同義、どれだけ無理ゲーかわざわざ考える必要もなかった

 

「バンダースナッチ対。彼を捕らえてください。抵抗するようであれば手足くらい折っても構いません」

 

 その言葉と同時にエレンは掲げていた手を士道に向かって振り下ろす。同時にバンダースナッチが一斉に士道に向かって襲い掛かってくる

 

「くっ、この……!」

 

 士道もそれに応戦するために必死に鏖殺公を振り回すのだが先ほどのような斬撃は発生せず淡く輝く刀身が軌道を描くのみである。斬撃が放てなければ素人の攻撃、そんなものにバンダースナッチが当たる訳もなく士道の方に向かって腕を伸ばしてきた瞬間

 ばちっという音と共に二人の事を取り囲んでいたバンダースナッチたちは頭部から火花を上げて身をよじる

 

「なんだ、一体……」

 

 訝しげに眉をひそめた士道は、錆びついた人形のような挙動になっているバンダースナッチたちを見る。そんな機械人形たちの様子を見たエレンも不可解そうに顔を歪め、すぐに耳に手を当てて唇を動かす

 

「バンダースナッチ隊の反応が乱れています。何かありましたか」

 

 それを聞いてから程なく、エレンはうめくように喉を震わせる

 

「──コントロールルームに被弾? どういうことですか。……ッ、空中艦と戦闘? そんな指示を出した覚えは──」

「……!」

 

 この瞬間を好奇だと理解した士道は地面を蹴り、十香の手を取ると一目散にその場から逃げ出した

 

 

 

 

 

 少し時間は遡り耶倶矢と夕弦は己の出現させた天使を使ってカリュブディスに攻撃を仕掛ける

 

「ぶっ壊れろ!」

「殲滅。さっさと壊れてくださいッ!」

 

 暴風を纏ったその一撃を避け続けていたカリュブディスだったが、精霊の攻撃の余波はよっぽど強いものだったのか皮膚の表面は剥がれ、すぐに再生していく

 

「ちっ、あぁも再生されちゃキリがないし」

「思案。何か弱点でも見つけられればいいのですが──!」

 

 そう言いながらチラリと後方に視線を向けた夕弦は、後ろで意識を失っていたセイバーの指先がピクリと動いたことに気付き、そしてとある案を思いつく

 

「提言。耶倶矢」

「な、なに?」

 

 夕弦は耶倶矢の耳元に口を持っていくと、先ほど思いついた考えを伝える

 

「説明。夕弦が先行してあの怪物の相手をするので、耶倶矢は隙をついて怪物を颶風騎士で貫いてください」

「でも、それじゃあまた再生されちゃうんじゃ──」

「微笑。大丈夫です、夕弦”たち”を信じてください」

「! わかった……信じる」

 

 言葉を伝え終わった二人は改めてあの怪物の方に向き直り、これまでとは逆に夕弦が先に怪物に接敵し、自身の天使を振るった

 

──────―

「徒労。その回避行動は無駄骨です」

 

 カリュブディスはこれまでと同じように夕弦も持つ颶風騎士の鎖を回避する

 しかし、カリュブディスの方に向かって放たれたと思われていた鎖は背後にあった木に巻き付けられた。それを確認した夕弦は持ち前のスピードで先回りして鎖をカリュブディスの身体に食い込ませる

 

「緊縛。その動き──封じます」

 

 元居た場所に戻り、カリュブディスの身体を絡みついた鎖で縛りつけた瞬間、その場で成り行きを見守っていた耶倶矢が地面を強く蹴ってカリュブディスまで向かっていく

 

「このタイミングで良いんだよね──夕弦ッ!」

「首肯。えぇ、流石は耶倶矢。完璧なタイミングです」

 

 その言葉の直後、カリュブディスは持ちうる力の全てを使って夕弦の拘束から逃げるが時すでに遅し、眼前まで迫った耶倶矢によって上半身を貫かれる

 

─—-─―

 

 何ともつかない断末魔の後、機械のパーツやカリュブディス特有の白い肉片をまき散らしながら地面へと落ちていく

 

「回収。報酬ゲットです」

「報酬って……それ、トーマの集めてた本?」

「肯定。あの怪物の胸の中心に埋め込まれているのが見えたので、回収をと」

「な、なるほど……」

 

 二人がそう話していると、背後からぱちぱちと手を叩く音が聞こえてくる

 

「お見事、お二人の力……存分に見せていただきましたよ」

【カリュブディス】

 

 そう言って本を開くと、その中に白い肉片は回収されていく

 

「カリュブディスのどんなものかと言う検証も終わりましたし、私はこの辺りでお暇させていただきますかね」

「逃がすと思ってんの?」

「同調。あなたの知っていることを、洗いざらい話してもらいます」

「おぉ、怖い怖い。あまり怖い顔ばかりしていると想い人に嫌われてしましますよ?」

 

 精霊二人を相手取っているのにも関わらず、イザクの瞳には相変わらず余裕の色が見える。少しの睨み合いのうち、イザクは肩をすくめ二人に背中を向ける

 

「それでは、私はこれで──あぁ、どうせなので置き土産くらいはさせていただきますよ?」

 

 そう言ったイザクは一冊の本を開き、近くに散らばっていた残骸に向かって落とす。落とした本は沈むように残骸の中に入ると、辺りに散らばっている残骸をあべこべにくっつけながら人の形を作り、一体の怪物の姿になった

 

【岩石王 ゴーレム】

 

「あくまでも過去の記述から再現した複製品なので知性の無い化け物に過ぎませんが……ぜひお相手をしてあげてください」

 

 その言葉と共にイザクは姿を消し、ゴーレムが耶倶矢と夕弦に襲いかか──ろうとした所で炎の斬撃によって後方へと吹き飛ばされた

 

「いっつつ……あの白い奴、随分派手にやってくれやがって」

「トーマ、大丈夫!?」

「あ、あぁ……重いの一発貰った以外は」

「苦笑。もう少し早く起きると思っていたのですが予想が外れました……もう夕弦たちが終わらせてしまいましたよ」

 

 呆れたような笑みを浮かべながらこちらを見てくる夕弦を少し見た後、立ち上がると軽く肩を回して身体をほぐしていると夕弦が先ほど手に入れた本を手渡してきた

 

【西遊ジャーニー】

 

「贈呈。先ほど回収した本です、どうぞ」

「いいのか?」

「うん、正直連戦で疲れちゃって……だから後はお願い」

 

 夕弦から本を受け取り、耶倶矢からそう言われたセイバーは頷き、二人の一歩前に出てゴーレムメギドの方を見る。錆びついたような動きのゴーレムメギドだがその名の通りの固さだったらしく炎の斬撃を食らった箇所は少し焦げているだけだった

 

「……よし」

 

 火炎剣をベルトに納刀し、こぶた3兄弟の本を引き抜いたセイバーはそれをホルダーにしまって夕弦から受け取った本を開く

 

【とあるお猿さんの冒険記、摩訶不思議なその旅の行方は……】

 

 本を閉じ、ベルトに装填し力強く剣の柄を握ると──思い切り振り抜く

 

『烈火抜刀! 語り継がれし神獣のその名は────クリムゾンドラゴン! 

 

 ベルトと剣が共鳴し、発せられる猛々しい口上と共にセイバーの身に今までとは比較にならない程の炎が纏わりつき、霧散する。その中から現れたのは深紅の鎧を身に纏った一人の剣士。神獣・生物・物語、全ての力が共鳴しその圧倒的な炎で闇を払う──セイバー クリムゾンドラゴンが姿を現す

 

「力が溢れる……が、体力持ってかれるな、これ」

 

 そんなセイバーの言葉をお構いなしに攻撃を仕掛けてきたゴーレムメギドに対して蹴りを放つとバンダースナッチの素材を使っている以上本来のゴーレムメギドよりも更に堅牢になっていた筈のその体表にヒビが入った

 

「はぁッ!」

 

 蹴りから体制を整えたセイバーはそのまま切り裂くと熱で溶かされたようにゴーレムの切られた部分が溶解した

 

「速攻で……決めるッ!」

『必殺読破! ── 烈火抜刀!』

 

 ベルトに納刀し、トリガーを引いたセイバーがもう一度火炎剣を抜刀すると紅蓮の炎を身に纏った刀身の周りに無数の火球が出現する

 

「爆炎紅蓮斬!」

 

 紅蓮の斬撃をセイバーが放つのと同時に火球もゴーレムへと向かっていきその身を溶かす、身体の半分以上が溶解し動けなくなったゴーレムにセイバーの放った斬撃が直撃し、核となっていた本ごとその身を焼き尽くした

 それを確認したセイバーは三冊の本のページを閉じて、引き抜くとトーマの姿に戻る

 

「終わったの?」

「……あぁ、終わった」

 

 耶倶矢の問いにトーマが答えるのと同時に、二つの足音が三人の耳に届く。最初は警戒したが姿を現した士道と十香の姿を見て安堵の息を漏らす

 

「みんな!」

「無事だったか、二人とも」

「あ、あぁ。そっちも無事……で良いのか?」

「見ての通り、スタミナ切れだ──それにしても、あの結界をどうするか」

 

 その場に倒れこんだトーマは未だ森を覆ったままの結界に目を向ける

 

「アレを壊さない事には……俺たちも脱出できないんだもんな」

 

 などと言っていると上空から巨大な黒い戦艦が落ちて来ていた。後部から煙を出しているのを見ると程なくして落ちてくるのは考えなくてもわかるだろう

 

「──なんだアレ」

「ちょっと、流石にアレはマズいんじゃないの!?」

「動揺。このままでは私たちどころかこの島そのものに被害が……」

 

 耶倶矢たちがそう言っている間に、士道は一歩前に出て鏖殺公を構える

 

「シドー?」

「俺が……アレを壊す」

 

 そう言って士道は鏖殺公を空に向かって思い切り振りかぶるが障壁に到達する前に消失した

 

「届かない……ッ!」

 

 そう言ったところで、思わず膝をつきそうになった士道を十香が支える

 

「大丈夫か、士道」

「あ、あぁ……大丈夫だ」

 

 十香はもう一度斬撃を放とうとした士道の手にそっと触れる

 

「十香?」

「シドー、想いを込めて鏖殺公を振るえ」

「想いを……込める?」

「うむ、自分が何をしたいのか、今自分のするべきことが何なのか。その想いを持って剣を振れ。──そうすれば、天使はきっと応えてくれる」

「…………」

 

 十香にそう言われた士道はごくりと唾液を飲み込み、目を伏せて細く息を吐いた。十香に言われた通り、心を落ち着けて呼吸を整える

 このままだと自分たちどころか令音や折紙、クラスメイトたち……いや、ここにきている来禅高校のみんなを危険に晒してしまう、そう考えた士道は奥歯をギリと噛み締めて、柄を強く握る

 

「…………っ!」

 

 伏せていた目をカっと見開いた瞬間、鏖殺公の刀身が強い輝きを放つ。柄を握った士道の手に触れていた十香も力を込め、士道の方を見て頷く。標的は自分たちの上空にある結界と、更にその先にある巨大な鉄の塊を視界に捉え──

 

「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉ──ッ!」

 

 その叫びと共に鏖殺公を空目がけて振り下ろした。

 瞬間、鏖殺公から光が溢れ──その刀身が描いた斬撃を延長するように、空に向かって伸びていった。その斬撃は結界の光の壁を容易く破壊し鉄の塊に直撃するが……後一歩のところで破壊しきれない

 

「そんな──」

「案ずるな、ここから先は我ら八舞の出番だ」

「同意。あとは夕弦たちにお任せください」

 

 ある程度回復した八舞姉妹はそれぞれの手を握り、天へと向ける

 

「それじゃ、やっちゃおっか」

「首肯。えぇ、やっちゃいましょう」

 

 その瞬間、二人の霊装が淡く輝き──それに呼応するように二人の持っていた風双剣翠風の本も淡い輝きを放つ

 耶倶矢の右肩に出現した羽と夕弦の右肩に出現した羽が合わさり弓を形作る。夕弦の武器だったペンデュラムは羽と羽の先端で結びつき耶倶矢の持つ槍が矢のように番えられる。

 そして淡く輝いた風双剣翠風の本から翡翠色の風が吹き、耶倶矢と夕弦の二人に絡みつく。拘束具のようだった霊装は忍び装束をような霊装へと形を変え、槍の先端に風が渦巻く

 

「「颶風騎士(ラファエル)──天を駆ける者!! (エル・カナフ)」」

 

 翡翠色の風を纏い耶倶矢は右手で、夕弦は左手で。左右から同時にその弓を引き──天高く打ち上げた

 

 瞬間、今までとは比べ物にならない程の強風が辺りに吹き荒れ。その一撃は落ちてくる鉄の塊を容易く粉砕し、空を赤く染めた

 

 

 

 

 

 

 それから時は進み、翌日

 昨日の一件が嘘のように平和になった或美島の定食屋に、耶倶矢と夕弦、そしてトーマの三人はいた。トーマは来るときに持ってきた着替えなどが入ったバッグを、耶倶矢と夕弦の二人は着替えや日用品、私物の入った大きなキャリーケースを持って

 

「お前ら、本当に良いのか?」

「うん、ここを離れるのは少し寂しいけどね」

「同調。それでも、修学旅行の二日間が楽しかったのは事実……だから、これで良いのだと思います」

「そうか……それじゃ、行くか」

 

 三人が定食屋から出ると、既にフミが車を回して待っていた

 

「早く乗りな」

 

 それだけ言うとフミはそそくさと車の中に乗り込む、三人は何とも言えない顔をしてトーマが助手席に、耶倶矢と夕弦は後部座席に乗り込むと車を発進させる

 無言の車内で走る事数十分、空港まで着いた三人は荷物を取り出して改めてフミと向き合った

 

「やれやれ、最初はどうなるかと思ったが……ようやく肩の荷が下りるよ」

「あはは、酷い言われようだ」

「微笑。相変わらずフミさんは口が悪いです」

 

 最初はそんなことを言っていたが程なくして言葉がなくなる。少し時間が流れた後、ようやく耶倶矢が言葉を紡いだ

 

「ねぇ、フミさん」

「なんだい?」

「あのさ……一つ、お願いがあるんだけど」

 

 それを聞いたフミは少し眉を動かした、それを見た耶倶矢は言葉を続ける

 

「あの……またこの場所に帰って来ても、良いですか?」

「質問。夕弦たちは……ここに戻っても良いのでしょうか」

「はぁ、何を言い出すかと思えば──」

 

 そう言うと、フミは二人に近づき──思い切り抱きしめた

 

「当たり前だろう、例え血が繋がってなくてもアンタら二人は──私の大切な娘さ。帰って来たくなったらいつでも帰ってきな」

 

 自分たちを抱きしめてきたフミを抱きしめかえすように二人もフミの背中に手を回し。その温かさを感じていた

 

 

 それから少し時間が経ち、出発時刻が近づいた頃

 

「それじゃあ、二人の事頼んだよ。坊主」

「あぁ、任された」

「それじゃあフミさん──」

「挨拶。フミさん──」

 

「「いってきます!」」

 

「あぁ──いってらっしゃい」

 

 そして、三人は天宮市へと行き。フミは二人の事を見送った

 空港から出た彼女は、車の前で飛んでいく飛行機を見上げ──目に少しの涙を見せながら、満面の笑みを三人の乗った飛行機にむけた




修学旅行、夏休みと学生にとって最高のイベントを終え
来たるは九月、高校十校が合同で行う文化祭――天央祭
実行委員で大忙しの士道の耳に入ったのは
活動休止中のアイドル”誘宵美九”がこの文化祭で復帰ライブを行うという噂

一方、トーマは美九から所在不明の噂の調査を頼まれた
その噂とは”天宮祭で誘宵美九が復帰する”というもの
何処から流れたのかわからないその噂を調査しながら思い出したのは……

トーマと宵町月乃――誘宵美九の出会いの記憶


次章, 宵町/誘宵リコレクション
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