デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第6-2話,追想Ⅰ 出会い

 時間は遡り1年前の天宮市──この街に辿り着いた一人の青年、トーマは下宿先の定食屋での仕事を終え、一息つく

 

「じゃあ坊主、しっかり戸締りはしろよ」

「はい、お疲れさまでした」

 

 この店の店主であるおっちゃんに挨拶をしたトーマはそのまま正面入り口に鍵をかけて裏口の施錠を確認しに行く

 

「そういえば、洗顔料切らしてるんだっけ」

 

 裏口まで行く途中で自分の使っている生活必需品が切れていることを思い出したトーマは一度自分の部屋に行って財布を取ってくると、改めて裏口へと向かう

 

「時間が時間だし、とりあえず近場のコンビニで間に合わせるか」

 

 時刻は現在21時、今からディスカウントストアに行くにしても今のトーマは足を持っていない為徒歩で向かう事の出来るコンビニへと足を向けた。コンビニまでは特にトラブルに巻き込まれると言ったこともなく、無事洗顔料を買った帰り道、彼の視界の隅に映ったのは路地裏で体育座りをしている一人の少女だった

 この時間、そして薄暗い路地裏に不釣り合いなきらびやかな衣装を着ていたその少女を見たトーマは、自然と彼女の方へ足を向けた

 

「大丈夫か?」

「…………」

 

 体育座りをしているトーマにそう声をかけるが、少女はトーマに目線を向けるだけで言葉を発そうとしない。しばらくの間返事を待ってみたが一向に言葉が返ってこない事に流石のトーマも不信感を覚える

 

「おい、本当に大丈夫か?」

「──っ、──っ……」

 

 もう一度声をかけたトーマに対して少女は喉を触って口をパクパクさせているが、一向に言葉は発せられない。その様子を見たトーマは流石に今の少女の状態が異常であることに気付く。そして今の少女の状態が喋らないのではなく、喋れないだと仮定した場合、彼の中に会ったピースがピタリと嵌る

 

「もしかして、喋れないのか?」

「っ! っ!」

 

 その言葉に力強く頷いた少女を見たトーマは少しの間思考を巡らせた後、少し頭を掻いて腹をくくる

 

「……とりあえず、この場所だと目立つ。この近くに俺が下宿してる店があるんだがひとまずそこに行こう」

 

 それを聞いた少女は、銀色の瞳に恐れの感情を映し出した、見ず知らずの男にそう言われたら怯えるのは当たり前かと考えたトーマは少しだけ考えた後、彼女と同じ目線になるようにしゃがみ込む

 

「?」

「約束する、俺は何があっても君に変な真似はしない。もしもその約束を破ったら警察に突き出すなり君の好きにしてくれて構わない」

「────」

 

 大きく目を見開いている少女に対してトーマは小指を立てた右手を少女の方に向ける

 

「書類とか持ってないから、今は指切りで勘弁してくれ」

 

 少女はトーマの差し出した小指に恐る恐る自分の小指を重ねる

 

「指切りげんまん、約束を破ったら……とりあえず切腹する、指切った」

 

 さっきは彼女の好きにしてくれて構わないと言ったトーマだったが、指切りする際に何て言っていいのかわからなかったから取り合えず約束破ったら自分が切腹をするという条件で指切りを成立させる

 

「よしっ、とりあえずこっち。あとその服目立つから、上着使っていいよ」

 

 上着を少女に渡したトーマは、ゆったりとした足取りで定食屋までの道を歩く、少女はそんなトーマの少し後をついてくる。彼女が声を発することのできないということもありお互いに無言でまで戻ってくると裏口の鍵を開けて中に入る

 

「とりあえず、適当な所に座っといてくれ。外は寒かったから茶でも入れる」

 

 遠慮するような動作をしている少女の事を無視したトーマは厨房から個人用に買った急須とお茶っ葉、そして自分用の湯呑と客用のコップを一つ取り出して彼女の居る場所まで戻る

 

「今淹れるから少し待っててくれ……にしても、少しコミュニケーションが取りづらいのは難点だな」

 

 急須にお茶っ葉を入れてお湯を注ぎながらどうにかしてコミュニケーションを取る方法を考えていると、つけっぱなしにしていたテレビから流れていた映像をトーマは思い出す。お茶を客用のコップに注ぎ終えるとそれを少女の前に差し出し。もう一度席を立つ

 

「少し待っててくれ」

「?」

 

 早足で階段を上がっていったトーマは程なくして少女の元に戻ってきた。彼が取りに行っていたのは何枚かの紙の束とシャーペン、それを少女の前に置き改めて座り直す

 

「とりあえず、何か伝えたいときはその紙とシャーペン使ってくれ」

「──」

 

 それを聞いた少女はさっそく紙にシャーペンを走らせ、トーマに見せてくる

 

どうして助けてくれたんですか? 

「どうしてって、何となくだよ……あそこで君を放っておくといけない気がしたから助けた、それだけ」

それだけって 信じられません

「信じる信じないは好きにしてくれ……けど、約束した以上俺は君に変なことはしない」

 

 その言葉を聞いた少女は疑わし気にトーマのことを見る、確かに打算があると思われても仕方ないかと思いながらトーマ言葉を発そうとするとクゥーと可愛らしい音が聞こえてくる

 

「~~~っ!?」

「……とりあえず、おにぎりでも作ってくるよ」

大丈夫です

「口……いや、言葉では何とでも言えるが、さっきのを聞いてはいそうですかとはならねぇよ」

 

 苦笑しながら厨房に向かったトーマは炊き終えていた白飯を少しだけ拝借して簡単な塩むすびを作る。だがここで終わらせるのもなんだかなと思ったのか玉子焼き用のフライパンを取り出すと今度は玉子焼きを作り始める

 料理を初めてから気が付くと数十分の時間が経ってしまっていた。最初は白飯だけのはずだったが気が付けば玉子焼き以外に味噌汁まで作ってしまっていたトーマは残りは明日の朝食に回すことを決めお椀や皿を取り出して味噌汁や玉子焼きを盛り付けて少女の前に出す

 

おにぎりだけじゃなかったんですか!? 

「興が乗った、残すのも勿体ないから食べてくれ」

まぁせっかく用意してもらったので食べますけど

 

 少女は一口食べた後、無心でご飯を食べ続けあっという間に食器は空になる。その様子から見るによっぽど腹が減っていたのだろうと思いつつ。やはり自分の作ったものが綺麗に食べられたトーマの表情も自然に綻ぶ。その様子を見ていた少女はトーマの様子を不審に思ったのか再び紙にシャーペンを走らせる

 

どうかしたんですか? 

「何でもねぇよ、ただやっぱり作ったモンを綺麗に食い切ってくれると嬉しいもんでな」

そういうものなんですか

「そう言うもんなんだよ……そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はトーマ、君は?」

 

 トーマのその言葉に対して少女は驚いたような表情を見せる

 

私のこと知らないんですか? 

「ん? あぁ、初対面だし当たり前だろ?」

ホントに知らないんですか? 

「だから知らねぇって」

 

 その言葉が真実だとわかった少女は少し肩を落とした後、再び紙に文字を書いていく

 

宵待月乃って聞いた事ありませんか? 

「名前くらいしか聞いたことないな、有名人ってのは知ってるがあんまテレビとか見ないしどっちかって言うとラジオ派だし」

不覚です、まさかこの現代社会においてテレビを見ない人が存在するなんて

「失礼すぎる……というかキャラ変わってないか?」

気にしないでください、それより驚かないでくださいね

 

 そう書いた後に紙を切り替え、少し深呼吸してから再び文字を書き始める

 

私がその宵待月乃なんです

「へー、有名人だったんだな」

思ったより感想が薄い!? 

「いや、だって有名人だろうが何だろうが人は人だろ、いちいち有名人かそうじゃないかで態度変えてたら疲れるだけだし……それに、オレにとっちゃ君が有名人かどうかなんざ些細なことだしな」

 

 あっけらかんと言ったトーマの言葉を聞いた少女は少し呆然とした後、二・三度目をパチパチとさせてから手に持っていた紙で顔を隠す

 

「どうした」

 気にしないでください

「そうか……っと、もうこんな時間か、とりあえず今日の所は俺の部屋使っていいからそこで寝てくれ。着替えとかも悪いが女物がないからタンスの中にあるTシャツかなんか使ってくれていいから」

 

 トーマはそれだけ言うと、食器を持って厨房へと入っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、一人残された少女──宵待月乃、本名,誘宵美九は不思議と少しだけ早くなっている鼓動を落ち着かせるためにコップに残っていたお茶を一気に飲み干した

 

『なんなんですかなんなんですかなんなんですかっ!?』

 

 トーマの言葉を聞いた時に自分の感じたトキメキの正体が一体何だったのかわからず内心取り乱していた美九だったが深呼吸をして無理矢理自分の心を落ち着かせると改めて乱れた思考をまとめる

 

『そうです、今日はきっと色々あって疲れてるだけ……いろいろ、あったから……』

 

 今日あった事を思い出し、さっきまで晴れていた美九の心に黒い靄がかかる

 

 誘宵美九――宵待月乃は、今までファンを笑顔にするためにステージに立ち歌を歌っていた。しかし芸能界は光だけではやっていけない、光があれば当然闇も存在する。その最たる例が裏営業

 美九自身も事務所から裏営業をするように指示を受けたが当然それを断り続けた。すると今まで自分を支援してくれていたはずの事務所は掌を返したように彼女に対して嫌がらせを始めたのだ、最初は些細なものだったが、嫌がらせは自然と大きくなり現在では事実無根のスキャンダルを世間に流され。事務所内で唯一自分を信じてくれていたマネージャーも事務所の判断でクビにされ、芸能界で美九は完全に孤立した

 

 そして今日、ライブ会場で噂を信じた悪意に満ちた視線(ファンたちの視線)を受けた彼女は────自身にとって一番大切だった声すら失ってしまった

 

 全てを失い、行く当てもなく彷徨っていた彼女は誰の目にも留まらない筈の路地裏へとたどり着き、トーマと出会ったのだ

 

 

 美九は厨房から戻ってきたトーマに案内され、部屋までやってくると彼の言っていたタンスから適当にTシャツと半ズボンを取り出して布団の中に潜り込んで眠りに落ちた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こりゃ、酷いな」

 

 彼女が眠りに落ちたのを確認したトーマは部屋に置いてあったノートパソコンとタオルケットを手に取り部屋を出ると、ネットで宵待月乃について検索をかけてみた。するとトップニュースとして見つかったのは彼女にまつわるスキャンダルについて、それは目を覆いたくなるような酷いものだったがなんとか耐えてその記事を読み終えたトーマの口から出たのがさっきの言葉だ

 

「……だが、これが真実だとは微塵も思えないな」

 

 トーマはさっき話した少女が、この記事に書かれているようなことをする少女だとは思えなかった。それにこのスキャンダル関連では不可解な所がいくつか存在する。その中でも奇妙なのがスキャンダル発覚から事務所の対応が早過ぎるのだ

 

「本人が謝罪をする以前に事務所が謝罪文を出した……見方によっちゃ迅速な対応をしたようにも見えるが、少し捻くれた見方をすると彼女が謝罪をする機会を潰したようにも見える、それに──」

 

──ここまでのスキャンダルを起こしておいて、どうしてライブが中止か延期にならなかった? 

 

 次にトーマの感じた疑問はそこだった

 

──ライブが行われたのは天宮市でも一二を争うほどに大きいステージ、中止にすることはできなかったとも考えられる。だがそれでも事務所側が取れる手段は存在した筈……なのにどうして事務所側は何もしなかったんだ? 

 

「スキャンダルの中でもファン……いや、観客の前に立ちたい、自分の思いを伝えたいという彼女の意思を尊重した。そういえば美談だが」

 

──俺から見ると、事務所側が率先して彼女を……いや、宵待月乃という一人のアイドルを潰そうとしているようにも見えてしまう

 

「駄目だな、ホントに事務所側の取れる手がなかったとも考えられる……俺が悪い方に物事を考えすぎてるのか、それとも人の善性を信じすぎちまってるのか」

 

 ともかく、今のままではどれだけ考えた所でまともな結論に辿り着けないと判断したトーマはノートパソコンの電源を切って。並べた椅子の上に寝転がると意識を手放した




路地裏で出会った少女、宵待月乃と出会ったトーマ
そして宵待月乃の身に起こっている出来事を知ったトーマは、彼女の所属している事務所の対応に疑問を抱き独自に行動を始める

次回,宵待/誘宵リコレクション 6-3話,追想Ⅱ 調査
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