デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
朝、聞こえてくる電子音と共にトーマは目を覚ます
「……時間か」
少し固まっていた身体を起こしたトーマはその場で身体を伸ばし、タオルケットを畳んで一度二階へと上がる。物音を立てないよう部屋に入ってタオルケットを置くと厨房に入って下ごしらえを始める
「おう、坊主。相変わらず早いな」
「おっちゃんこそ、もう少し遅く来ても構わないのに」
「馬鹿野郎、半人前のお前さんにウチの店任せるわけねぇだろ」
そんなこと言いながら二人で下ごしらえをしているとトーマは昨日の事を言っていなかったことを思い出して口を開こうとしたところで、上の階から物音が聞こえてくる
「ん? なんだ?」
基本この時間に上の階から物音が聞こえてくることはない為、少し不信そうな顔をしたおっちゃんはトーマの方を向く
「お前さん、まさか猫でも連れ込んでるんじゃないだろうな」
「流石に猫は連れ込んでないよ」
「猫はってどういうこった?」
「実は──」
トーマは昨日、宵待月乃と言う少女と出会い、ひとまずここで保護したこと。その保護した少女が現在言葉を話すことが出来ない等を話す
「成る程な、それで今その嬢ちゃんが上で休んでるって訳か」
「はい、本当は昨日のうちにと思ったんですけど時間が時間だったので」
「ったく、お前さんは俺に対していちいち律儀なのは何なんだ……まぁいいや、そんでその嬢ちゃんどうするつもりだ?」
「ひとまず様子を見ようと思います……」
トーマも昨日の記事の内容を見る限りこの一件を放置しておくわけにもいかないだろうと判断している為勝手に放りだすなんてことはしない……と言ってもあくまでも本人の判断を優先するというのは当たり前だが
「とりあえず坊主、朝飯持ってってやんな」
「わかりました」
おっちゃんの用意してくれた朝食を持って二階まで上がると、丁度布団を畳んでいる所だった月乃と目が合う
「おはよう、早起きだな」
[おはようございます]
「朝飯、持ってきた」
トーマの言葉に軽く頷いたのを確認すると、手に持ったおぼんを机の上に置く。トーマがその近くに置いてあった時計で時間を確認すると、彼女から離れた入口の近くに座る
「何のことかわからないが謝らせて欲しい、すまなかった」
[急にどうしたんですか? ]
「君について、少しだけ調べさせてもらった」
「──っ」
「けど、調べてみると君がそんなスキャンダルを起こすような人には思えなかった……無論、これは昨日会ったばかりで君の事をよく知らない人間の感想だ」
その言葉を聞いた月乃は最初こそ同様したような表情を浮かべていたがその後の言葉を聞き、何処か安心したような、それでいて驚いたような表情に変わった
[信じないんですか? ]
「噂なんてそいつのこと知らんかったら信じる価値もない与太話だ。なのにそいつの人柄を知ったならオレは噂よりも自分の直感を信じる」
「…………」
「何だその目」
[あなたみたいな人もいるんだなと思って]
「そりゃあオレみたいなのも一人や二人いるだろ……っと、そろそろ仕事の時間だ」
そう言ったトーマは立ち上がると部屋から出ていこうとするが、扉を開けたところで一旦足を止める
「……言い忘れたが、ここの家主には許可取ったから事が収まるまではこの部屋を使って構わないとさ、どうする?」
その言葉を聞いた月乃はしばらくの間考えたように首を左右に振ったあと、紙に文字を書き始める
[それなら、しばらくここにおいてください]
「わかった、家主にはそう伝えとく」
トーマはそれだけ伝えると、一階に戻って仕事を再開する──前に下ごしらえの続きをしている途中だったおっちゃんに声をかける
「おっちゃん、今日夕方くらいから早上がりさせて貰っても良いですか?」
「構わねぇが、どうしてだ?」
「ほら、生活必需品とか色々買わないとだし」
「わかった、ただしその分は給料からしっかり引くからな」
「追い出されないなら全然いいよ」
おっちゃんに許可を取ったトーマはいつもより気合いを入れて仕事を始めた
時は進み夕暮れ、時間を確認したトーマはおっちゃんに先に仕事から上がることを伝えた後二階へと上がると、体育座りでテレビを見ている月乃の姿があった
「宵待さん、今少し時間大丈夫?」
[どうしたんですか? ]
「ほら、これからしばらくここに世話になるなら日用品とか色々いるだろ? だから買いに行こうと思ってな」
[なるほど、そう言うことならわかりました]
「そっか、じゃあ早速買い────に?」
と言葉を続けようとしたところで月乃はずいっと紙をトーマの顔まで近づける
「えっと、どうした?」
[私の名前月乃じゃないです]
「えっ、でも昨日は宵待月乃って──」
[宵待月乃は芸名です、私の本当の名前は誘宵美九]
「誘宵……美九」
[はい、誘宵美九]
この時、トーマは宵待月乃──誘宵美九の本当の名前を知った
彼女の本当の名前を知り、街に出る。Tシャツにパーカー、ジーンズという格好のトーマと有名人であるため変装用の帽子を被り目立たない恰好の美九。そんな二人が手始めに向かったのは天宮市内にあるショッピングモール、更にその中に存在する洋服屋
「こんなのはどうなんだ? 動きやすくてよさそうだが」
[私的にはちょっと、もう少しかわいいやつのほうが]
「成る程」
基本的に色のある話など一切なく、年頃の女の子の服など選んだことのないうえ基本的にはデザインよりも動きやすさ重視のトーマにとって美九の服を選ぶというのは普段の仕事以上に労力を使う作業だったもののなんとか終わらせることが出来た
結果、部屋着と寝間着を二着ずつに外出用の服を三着買い、その後も下着や化粧品、それに会話がしやすいようにホワイトボードとそれ用のペンを買って二人は買い物を終えた
その日の深夜、美九が完全に眠ったのを確認したトーマは昨日と同様一階でノートパソコンを付けて情報収集を開始する
「美九の所属してる事務所、随分と黒い噂が付き纏ってるみたいだな」
ざっと調べてみただけでも所属しているタレントに裏営業を強要なんて記事が何件か見つかった。自分で手に入れた情報ではなくあくまでもインターネットという膨大な情報の海の中にあった情報だ。どの情報が嘘でどの情報が本当かの精査は結局自分でやらないといけない
「直接相手方に乗り込んで真実を聞き出すことが出来たら手っ取り早いのだが」
そこそこ名の知れている芸能事務所にカチコミをかけるなんてことをした日には自分だけじゃなくてこの店にまで迷惑をかけてしまう
「何より、余計なことをして美九に迷惑までかけちまったらそれはそれで困る」
時々忘れそうになるがあくまでもトーマの目的は彼女の言った情報が本当なのか嘘なのかを確かめること、そしてもし本当であった場合は出来る限りその噂を撤回する方法を探すこと──だとトーマ自身は思っているのだが
「人の噂も七十九日……とも言うからな」
あまり騒ぎすぎるとかえって美九側に不利益を被る結果となってしまう場合を考え、トーマもあまり迂闊に行動しようとしない。さてどうにかして正確な情報を手に入れる方法はないかと考えているとトーマはとある方法を思いつく
「……行ってみるか、美九の元々住んでるマンションに」
ここまでガッツリ炎上してしまっていることを除いても美九が有名人であることに変わりはない。当然住所はどこかしらのタイミングで特定されてしまっているし、そうでなくてもここまでの騒ぎなら彼女から一言話を聞こうとする報道陣で噂になるだろうとトーマは考えた
「案の定、情報はちらほらか」
トーマの考えた通り彼女の家には報道陣が押しかけているらしくSNSで話題になってしまっている
「そうと決まれば……だな」
すっかり忘れていたが明日は定休日、美九を一人にすることに対して少しだけ心配しつつタオルケットを被って眠りについた