デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第6-6話,追想Ⅴ 一区切り

 あの祭りの日から更に数週間の時が流れた。トーマたちにあの時絡んできた記者が接触してくるという事は基本的に泣く平和な毎日を過ごしている。そんなある日、トーマは足りなくなった食材を買いにスーパーまでやって来ていた

 

「っと、急を要して必要なのは長ネギに油揚げ……って、おっちゃん味噌汁でも作る気かよ」

 

 それ以外にもメモ書きに書かれている食材を吟味しているトーマだったが、背後から近づいてくる気配を感じる。最初は自分と同じ野菜売り場に来た人かとも思ったのだが、視線を少し後ろに送ってみるとこっちに歩いてきているのはスーツ姿の男だった。男はトーマから少しだけ離れた場所で立ち止まると商品を見る振りをしながらこちらに視線を向けてきている

 

「さてと、次は醤油か……デカい奴ってせめてどこのメーカーの奴かは書いといてくれよ」

 

 そんなことを言いながら野菜売り場から調味料売り場に場所を移動するとトーマの元に向かってきていた男もその後をついてくる。ここまでなら偶然の一致で済ませることも出来たのだがそれより後、肉やら魚やらを選んでいる時も男は一定距離からこちらを見ているのは変わらない

 

『……厄介事、ぱっと思いつくのは美九の事だが』

 

 とりあえずこのままだと埒が明かないと思ったトーマはメモ帳に書かれていたものをパパっと買うと会計を済ませてスーパーから出る。話をするのか荒事になるのかわからないがあまり人目の多い場所で荒立てるのはどうかと思ったトーマはある程度の所までやってくると一度立ち止まる

 

「…………」

『──やっぱついてきてるか』

 

 偶然の一致じゃない事をほぼ確信したトーマは、その場で軽く息を吐くと荷物片手に走り出す。それに釣られる形で男も走り出したことを確認すると路地を曲がってその場で待ち伏せる。昨日のように剣を使う訳にもいかない以上とりあえず荷物に被害が及ばないよう地面に置き男が来るのを待つ

 それから数分後、同じく路地を曲がってきた男の片手を掴み地面に叩きつけ拘束する

 

「いててててっ」

「お前、さっきからオレの後をつけてたな。何が目的だ」

「は、離せっ! 警察呼ぶぞ!」

「良いから黙って答えろ、お前は何者だ? 何が目的でオレの後をつけた」

「いてててっ! わかった! 話す! 話すからまずはその手を放してくれ!」

 

 今までよりもきつく締めあげてからすぐに男は音を上げる。正直ここで手を離しても良かったのだが相手が信用できない以上少し緩めるだけで済ませる

 

「悪いが、オレはお前を信用できない。そのまま話せ」

「……わかった、俺は宵待月乃のマネージャーだ」

「宵待月乃の……マネージャー」

 

 その言葉を聞いたトーマは相手が逃げないようにより警戒心を強くする

 

「その宵待月乃のマネージャーとやらが、一体オレに何の用だ」

「と、とある記者から聞いたんだ! 君が月乃と一緒にいるのを見たって!」

「それで」

「き、君も知ってるだろ、今の彼女はスキャンダルで休業中……事務所も必死に対応しようとしてる! なのに肝心の本人が見つからなかったら──」

「嘘だな」

「へっ?」

 

 必死に言葉を続けていた男の言葉をトーマはあっさりと否定する。トーマにとって肝心なのは目の前にいる男の言葉ではなく彼が自分に接触してきた目的。それに散々スキャンダルの際には無視を決め込んでいた事務所が今更彼女の事を助けると、トーマは思えなかった

 

「正直に答えろ、お前の目的は何だ? 何を狙ってオレに接触しようとした」

「そ、それは──」

 

 言葉を詰まらせている言葉に痺れを切らしたトーマはもう一度締めあげている腕の力を強めようとした瞬間、背後に複数人の気配を感じその場から飛び退く。男の拘束は解いてしまったが眼前に居る屈強な三人の男を見て何となくだが穏便に事を済ませることが不可能であるとトーマは感じた

 

「団体さんか」

「お、お前が悪いんだからな! この俺に手を出すから……やっちまえ!」

 

 どうやら宵待月乃のマネージャーを名乗った男は中々の立場の人間だったらしい。こっちに向かってくる屈強そうな男だがステータスをパワーに振っているからか動きは緩慢。こちらに向かって振るわれた拳をいなしてみぞうちに肘で一撃をくらわせる

 

「うぐっ!?」

 

 いくらガタイ負けしているとは言え動きが緩慢ならトーマは十分対処可能だ、続けて襲い掛かってきた男の一撃を避け壁の方まで全力で走っていき三角飛びのからの蹴りを相手の顔面に向かって放つ。側頭部に当たった蹴りによって相手は脳震盪を起こしたのかそのまま地に伏せた

 そして残り一人、仲間二人がやられたことが想定外だったのか少し怖気づきながらこちらに放ってきた拳を掴み背負い投げの要領で地面に叩きつけ、男三人を全員倒しきる

 

「う、嘘だろ……」

「さぁて、さっきの口ぶりから案外良い役職についてる感じだが……いい加減吐いてもらおうか、何が目的でオレを」

 

 言葉を続けていたタイミングで男のスマートフォンが鳴る。ビクビクしながらその画面を見た男はさっきまでの態度から一転させニヤついた笑みでトーマを見てくる

 

「へ、へへっ。何だよ、問題ないじゃないか……」

「何?」

「こ、これを見ろ」

 

 画面に映し出されていたのはトーマの仕事場兼下宿先の店、その場所には当然美九もいる。

 

「お前、まさか」

「しゃ、写真さえあればお前の務めてる店を特定するなんて簡単なんだよ! よ、宵待月乃を確保したって連絡はさっきあった。お前はその場で自分の無力さ──を?」

 

 びくつきながらそう言っていた男の身体は、気がつけば宙を舞っていた。そのまま地面に叩きつけられた男にトーマは拳を一発放つ

 

「宵待月乃は何処に連れていかれた」

「そ、そんなの言うわけ──ぐはっ!」

「答えろ、彼女を何処に連れていった」

「そ、それは……」

「早く答えろ」

「ま、街の外れにある倉庫だよっ! ぱ──社長から連れてくるようにって」

「そうか」

 

 その言葉の後、トーマは男を気絶させ須藤ゆきの電話に連絡をする

 

『もしもし、どうかした──』

「美九が連れ去られた」

『……それ、どういうこと?』

「さぁな、急に男何人がかりで襲い掛かって来たから返り討ちにしたら男の一人がそう言った」

『……美九は、何処に連れていかれたの』

「街外れの倉庫って言ってた。一応主犯格っぽいのを含めた男四人の財布と携帯は確保したが……」

『わかったわ、とりあえずあなたはその場で──』

「いや、美九は責任もってオレが助ける。だからあんたは告発用の情報集めに専念してくれ」

『ちょ、それってどういう』

 

 そう言っているが今回の不手際は自分のミスだ、そう考えたトーマはゆきにそれだけ伝えると電話を切って彼女の所属していた無銘剣を呼びだした

 

 

 

 

 

 

 

 突如として店の中に押し入ってきた男たちに掴まった美九が連れてこられたのは、どこかわからないが倉庫。困惑している彼女が身体を動かそうとしたが両手と両足を縛られて動くことが出来ない

 

『なんで、どうしてこんな所に連れてこられてるの?』

 

 未だ思考が定まっていない美九の耳に聞こえてきたのは複数の足音、音の聞こえた方に目を向けようとした瞬間薄暗かった倉庫に明かりがつく

 

「手筈通りやったみたいだな」

「はい、上手くいきましたよ」

 

 美九の耳に聞こえてきたのは二人の男の会話。そのうち片方はやけに聞き覚えのある声だ

 

『あの声……社長?』

「目を覚ましたみたいだなぁ、宵待」

 

 美九の疑問に答えるように彼女の元に近寄ってきたのは見覚えのある男、彼女の所属している事務所の社長をしている男だ。一見優しそうな風貌をしているがその瞳には何の感情も点っていなかった

 

「手間かけさせやがって、お陰で余計な手間が増えちまったじゃねぇか」

「──っ」

 

 社長は美九の顔を少しだけ持ち上げると、そのまま離した。受け身を取ることのできない美九は顔は地面に落ち、ぶつかった部分から痛みが広がる

 

『痛い……』

「お前が最初から会社の指示に従ってればこんなことにならなかったのによ」

 

 文句を言いながら社長は彼女に向かって蹴りを放つ、普段なら感じることのない衝撃と痛みが彼女の身体に襲い掛かる

 

『痛い……痛い……』

「社長、あまりやり過ぎるのは」

「っと、そうだな。あんま傷つけ過ぎると偽装が面倒だからな」

『偽装……? 偽装ってなに? 私はどうなるの?』

「っと、教えといてやんねぇとな。お前はこれから死ぬんだよ……スキャンダルを苦に命を絶った元人気アイドルって筋書きの通りにな」

『死ぬ? 嘘、私死ぬの? 殺される? ここで……いやだ、怖い、怖い怖い怖い』

 

 怯える彼女の事を気にした様子もない男たちは着々と準備を進めている。それを見て完全に思考が恐怖に染まった彼女が思い浮かべたのは自分を助けてくれた男の姿だった

 

『怖い、助けて、助けて────た、す……けて」

 

 彼女の口から出たのは誰に聞こえる訳でもないか細い声。しかし、その声を発した次の瞬間倉庫の天井がオレンジに染まり、炎の斬撃が地面に叩きつけられる

 

「助けるさ、言われなくても」

 

 聞きなれた声と共に姿を現したのは全身をオレンジと黒の炎に包んだ剣士の姿だった。フェニックスを思わせるような装飾を身に纏ったその剣士の片手には漆黒の刀身にオレンジのエンブレムが付けられた剣が握られている

 

「な、何だお前……」

「その子を、助けに来た」

「は、はぁ? 何を言って──」

 

 社長の周りにいた男が声を発しようとした瞬間、倉庫の上半分が塵となって消滅する

 

「ひ、ひぃ……」

 

 謎の剣士が見せた圧倒的な力に完全に怯え切った男たちはその場にへたりこんだ、唯一正気を保っていた社長は震える手で懐からとあるものを取りだす

 

「う、動くな!」

 

 彼の取り出したのは拳銃、それを美九に向け剣士に指示を出す

 

「動くなよ! 動いたらコイツの命はないぞ!」

「……美九」

 

 男の言葉を無視した剣士はゆったりとした足取りで二人の元に近づいていく

 

「動くなって言ってるだろ!」

「……絶対に助ける、約束だ。だから俺を信じてくれ」

「……はいっ!」

 

 剣士の言葉に美九が自分の声でそう答える。美九には剣士が仮面の向こう側で笑みを浮かべているように見えた

 

「う、うぁぁぁぁぁっ!」

 

 狂乱状態の社長が拳銃の引き金を引こうとした瞬間、いつの間にか距離を詰めていた剣士が拳銃の銃身を真っ二つにすると美九の事を奪い取った。人質も奪われ自衛手段すら失った社長はあまりの恐怖に意識を失ったのか、その場に倒れこむ

 

「……すまなかった、助けるのが遅くなって」

「いいんです、こうやって……ちゃんと助けてくれましたから」

「美九、お前声が──」

「──はい、なんか、喋れるようになっちゃいました」

「そうか、初めて聞いたが……綺麗な声だな」

「ふふ、ありがとうございます」

 

 凄惨な現場とは酷く不釣り合いな会話をしていた二人だが、現状がどうなっているのかを改めて理解し野次馬が来る前にその場から離脱する

 

 

 

 

 

 

 その後、美九の元々所属していた事務所は元所属芸能人やスタッフの告発によってこれまでの不祥事が明るみになり、破産という結果に追い込まれた。宵待月乃というアイドルのスキャンダルも真っ赤な嘘であったことが判明、今まで彼女の事を攻撃していたファンたちは掌を返したように彼女の芸能界復帰を求めたが、宵待月乃はそのまま芸能界を引退……彼女に関する騒動は幕を閉じた

 トーマと美九の二人も、後処理などで会う時間は取れず……次に再会するのは半年後、精霊となった美九の元に彼女の霊力を感知したトーマがやってくるところから始まる





駆け足気味になってしまいましたが精霊になる前の少女”誘宵美九”とトーマのお話はこれにておしまいです

過去編がかなり長めになってしまっていますが
次回からは精霊となった少女”誘宵美九”とトーマのお話です
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