デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第1-4話, 実地訓練

「どんなもんじゃーいッ!」

「ついにやりきったな……士道」

 

 士道は左手のコントローラーを掲げながら宣言し、その様子を見ていたトーマもかなり疲れた様子でそれを見ながら一言かけた

 この訓練を初めてから、休日も含めて既に一週間と少しの時が経っていた

 

「……ん、まぁ少し時間はかかったが、第一段階はクリアとしておくか」

「ま、一応CGコンプしたみたいだし、とりあえず及第点かしらね。……とはいっても、あくまで画面の中の女の子に対してだけだけど」

 

 一応及第点には達しただろうという様子の琴里と令音の様子が、二人の目に入った

 

「じゃ、次の訓練だけど……もう生身の女性にいきましょ。時間も押しちゃったし」

「……ふむ、大丈夫かね」

「平気よ。もし失敗しても、失われるのは士道の社会的信用だけだから」

「何さらっと不穏なこと言ってんだてめぇ」

 

 流石に士道が口を挟む

 

「やだ、盗み聞ぎしてたの? 相変わらず趣味悪いわねこの出歯亀ピーピング・トム」

 

 酷い言われようである、因みにピーピング・トムとは覗き魔と言う意味である

 

「目の前で喋ってて盗み聞ぎもあるかっ!」

「はいはい……それで、士道。次の訓練なんだけど」

「……びっくりするほど気が進まんが、なんだ?」

「そうね……誰がいいかしら」

「あ?」

 

 士道が首を傾げてる横で、令音がコンソールを操作し始めると机の上に並べられたディスプレイに学校内の映像がいくつも映し出された

 

「……そうだね、まずは無難に、彼女などどうだろう」

「──あぁ、なるほど。いいじゃない、それでいきましょう」

 

 琴里が邪悪な表情を浮かべていることに気づいたトーマだったが、今までの疲れもあり会話に参加することもできない

 

「……シン、次の訓練が決まった」

「ど、どんな訓練ですか」

「……あぁ。本番、精霊が出現したら、君は小型インカムを耳に忍ばせて、こちらの指示に従って対応して貰うことになる。一回、実践を想定して訓練しておきたかったんだ」

「で、俺にどうしろと?」

「……とりあえず、岡峰珠恵教諭を口説いてきたまえ」

「はァっ!?」

 

 まさかの出来事、失敗したら社会的信用と同時に学校での信用も失うことになる大博打である

 

「何か問題でもあるの?」

「大ありだろうが……ッ! んなッ! できるわけ……っ!」

「本番ではもっと難物に挑まなきゃならないのよ?」

「──っ、そりゃ、そうだけど……っ!」

 

 そんな士道の様子を見た令音は少し頭をかいた

 

「……最初の相手としては適切かと思うがね。恐らく君が告白したとしても受け入れはしないだろうし、ぺらぺらと言いふらしたりもしなさそうだ。……まぁ、君が嫌だというのならば女子生徒に変えてもいいが……」

「う……ッ」

 

 確かに普通の女子生徒に比べると、教師であるならば社会的な問題もあるし安易な返事はしない……筈である。複数のケースを想定して色んな女子生徒を口説いた結果、士道の学校で何股もしているクソ野郎みたいなレッテルを貼られるのが目に見えている

 

「で、どうするの? 本番での失敗はすなわち死を意味するから、どっちにしろ一回予行練習するつもりだったけど」

「……先生で頼む」

 

 琴里の言葉に対し、士道はイヤな汗をかきながら了承する

 

「……よし」

 

 小さくうなずいた令音は机の引き出しから小さな機械を取り出し士道に渡す。それに続いてマイクにヘッドフォン付きの受話器っぽいものを机の上に置く

 

「これは?」

「……耳につけてみたまえ」

 

 言われるがままに機械を右耳に付ける

 

『……どうかね、聞こえるかな?』

「うぉっ!?」

「ッ!?!?」

 

 士道は耳の中に突然響いた令音の声によって声を上げ、意識が夢の中に向かいかけてたトーマも士道の声で体を跳ねあがらせた

 

『……よし、ちゃんと通っているね。音量は大丈夫かい?』

「は、はぁ……まぁ、一応」

「……ん、うむ。こちらも問題ないな。拾えてる」

 

 机の上に置かれていたヘッドフォンを耳にあてた令音は確認を終えたらしくそう呟いた

 

「え? 今の声拾えてたんですか? こっちにはマイクっぽいのついてませんけど……

「……高感度の集音マイクが搭載されている。自動的にノイズを除去し、必要な音声だけをこちらに送ってくれるスグレモノだ」

「はぁー……」

 

 感嘆している士道に対して、机の奥からもう一つの小さい機械部品を取り出しピン、と指ではじく

 

「な、なんですかこれ」

「……見たまえ」

 

 令音が捜査したコンピュータの画面には士道たちのいる物理準備室の様子が映し出されていた

 

「これって……」

「……超小型の高感度カメラだ。これで君を追う。虫と間違って潰さないようにしてくれ」

「はぁー……すげぇな、こりゃ」

「なんでもいいから早く行きなさい鈍亀。ターゲットは今、東校舎の三回廊下よ。近いわ」

「…………あいよ」

 

 力なく首肯した士道は物理準備室を出て行った。それを見届けた琴里はトーマの元に近づいていく

 

「ほら、あなたも仕事よ」

「……ん? あぁ……了解」

 

 若干意識が朦朧としているトーマだったが、頬を軽く叩いて画面の前まで行くと、士道に付けられている高感度カメラの様子が映し出されていた

 

「これ、今どうなってんだ?」

「士道に付けた高感度カメラの映像よ、今は訓練第二段階の最中って感じね」

「なるほど……」

 

『あれ、五河君? どうしたんですかぁ?』

『……っ、あ、あの──』

「──落ち着きなさいな、これは訓練よ。しくじったって死にはしないわ」

 

 少し緊張していたらしい士道に対して、マイク越しに琴里がそう言う

 

『んなこと言ったって……』

『え、なんですか?』

『あ、いや、なんでもありません……』

「士道、トーマだ……とりあえず深呼吸だ」

 

 返事はしないまでも了承したであろう士道は軽く深呼吸をした

 

「とりあえず無難に、相手を褒めてみなさい」

 

 このままじゃ埒が明かないと思ったのか、琴里が指示を出した。少しの間考えていた様子の士道だっただついに口を開く

 

『と、ところで、その服……可愛いですね』

『え……っ? そ、そぉですかぁ? やはは、なんか照れますねぇ』

『はい、先生にとても似合ってます!』

『ふふ、ありがとぉございます。お気に入りなんですよぉ』

『その髪型もすごくいいですね!』

『え、本当ですかぁ?』

『はい、それにその眼鏡も!』

『あ、あははは……』

 

 流石にやりすぎである

 

『その出席簿も滅茶苦茶格好いいです!』

「士道、そろそろブレーキかけろぉ」

「やり過ぎよこのハゲ、生ハゲ」

 

 とりあえずストップをかけると次の話題が見当たらなかったのか会話の間が空く

 

『ええと……要は終わりましたかぁ?』

 

 流石にこのままじゃまずいと思ったのか令音が口を話し始めた

 

「……仕方ないな。では私の台詞をこのまま言ってみたまえ」

 

 令音の指示に従って士道が話を始める

 

『あの、先生』

『なんですか?』

『俺、最近学校来るのがすごい楽しいんです』

『そぉなんですか? それはいいことですねぇ』

『はい……先生が、担任になってくれたから』

『え……っ?』

『な、何言ってるんですかもぅ。どうしたんです急に』

『実は俺、前から先生のことが──』

『いやはは……駄目ですよぉ。気持ちは嬉しいですけど、私先生なんですからぁ』

 

 流石は教師、公私混同はしていないようだ

 

「……ふむ。どう攻めるか」

「大まかな口説き方は分かっただろうし、そろそろ止めてもいいんじゃないか?」

「士道は一番重要な告白を経験してないわ、だから続行よ」

 

 言われてみればそうなんだが、それでいいのだろうか

 

「確か彼女は、今年で二十九歳だったね。──ではシン、こう言ってみたまえ」

『俺、本気なんです。本気で先生と──』

『えぇと……困りましたねぇ』

『本気で先生と、結婚したいと思ってるんです!』

 

 とある二文字を聞いた瞬間、岡峰教諭の頬が微かに動いた

 

『……本気ですか?』

『え……っ、あ、はぁ……まぁ』

 

 急に雰囲気の一変した岡峰教諭に対して、士道も少し困惑気味だった

 

『本当ですか? 五河君が結婚できる年齢になったら、私もう三十歳越えちゃうんですよ? それでもいいんですけ? 両親に挨拶しにきてくれるんですか? 婿養子とか大丈夫ですか? 高校卒業したらうちの実家継いでくれるんですか?』

『あ……あの、先生……?』

 

「結婚は流石にこれは禁じ手だったんじゃ……」

「……ふむ、少し効き過ぎたか」

 

『ど……どういうことですか?』

 

 目の前で暴走する彼女に聞こえないくらいの声で、士道は令音に聞いてくる

 

「……いや、独身・女性・二十九歳にとって結婚と言うのは必殺呪文らしい。かつての同級生は次々と家庭を築き始め、両親からせっつかれ、自分に関係ないと思っていた三十路の壁を今にも超えそうな不安定な状況だからね。……にしても、少々彼女は極端すぎるな」

「……よっぽど焦りがあるんだろうなぁ」

 

 士道の様子を見ていたトーマは、だんだんと自分がプロレス中継を見ているような気分になって来ていた

 

『そ、それはいいんですけど、どうしろってんですかこれ……っ!』

『ねぇ五河くん、少し時間いいですか? まだ婚姻届を書ける年齢ではないので、とりあえず血判状を作っておきましょうか。美術部から彫刻刀でも借りてきましょうね。大丈夫ですよ、痛くないようにしますからね』

 

「あぁー……これはガチだな」

「必要以上に絡まれても面倒ね。目的は達したし、適当に謝って逃げちゃいなさい」

『す、すいません! やっぱりそこまでの覚悟はありませんでした……! どうかなかったことに……!』

 

 叫びながら駆け出した士道の事をモニター越しに見ながら、トーマは心の底から思った

 

「……今期と三十路で板挟みになった人って、あそこまで怖いもんなんだな」

「いや、流石に彼女は極端な例だと思うわよ……それにしても、なかなか個性的な先生ねぇ」

 

 トーマに対して冷静に突っ込んだ琴里はのんきに笑っていた

 

『ざっけんな……っ! 何を呑気な──』

 

 士道が何か言いかけた瞬間、前から歩いてきた生徒とぶつかって転んでしまった

 

『っつつ……す、すまん、大丈夫か?』

 

 そう言いながら身を起こした士道が見たのは、転んだ時にM字開脚の体勢になってしまった鳶一折紙の姿だった

 

「彼女。確か精霊と戦ってる中にいたよな」

「そうね、彼女はASTの一員で間違いなわ」

「……奇妙な縁もあるもんだな」

 

『平気』

 

 特に気にした様子の無い折紙は立ち上がると士道に訪ねてきた

 

『どうしたの』

『……いや、気にしないでくれ。絶対にないと思ってたシチュエーションに遭遇してしまったのがショックでな‥‥』

『そう』

 

 一番気にするのそこかよ、とトーマが思っていると琴里がマイクで話しかける

 

「ちょうどいいわ士道。彼女でも訓練しておきましょう」

『は……はぁッ!?』

「お前、正気か?」

「正気も正気よ。やっぱり先生だけじゃなく、同年代のデータも欲しいしね。それに精霊とは言わないまでもAST要員。なかなか参考になりそうじゃない。見る限り、彼女も周囲に言いふらすタイプとは思えないけれど?」

『おまえ……ッ、ざけんなよ……?』

「精霊と話したいんでしょ?」

 

 その言葉を聞いた士道は息を詰まらせた後、覚悟を決めたらしい

 

「……流石に酷なんじゃないか?」

「精霊はどんなタイプが現れるのか予想出来ない、士道が安全に精霊と対話をするためには……この訓練も必要な事なのよ」

「……一応、納得しておく」

 

 改めて士道の方に思考を戻す

 

『その服、可愛いな』

『制服』

『……ですよねー』

 

「なんで制服をチョイスしたのよこのウスバカゲロウ」

「……パターン化するにしてもそれは無いと思うぞ、士道」

「……手伝おうか?」

 

 再び令音の助け舟、さっきの一件で士道にも不安はありそうだが小さく頷いた

 

『あのさ、鳶一』

『なに』

『俺、実は……前から鳶一のこと知ってたんだ』

『そう……私も、知っていた』

 

 士道が折紙からのカウンターを受けている様子を見ていたトーマは、一瞬だけ彼女の雰囲気が変わったように感じた

 

『──そうなんだ。嬉しいな……それで、二ねんで同じクラスになれてすげぇ嬉しくてさ。ここ一週間、ずっとおまえのこと見てたんだ』

 

「それは一種のストーカーなのでは?」

 

 士道も思っていたのはどこかからグサリと言う音が聞こえたが特に気にしない

 

『そう……私も、見ていた』

『ほ、本当に? あ、でも実は俺それだけじゃなくて、放課後の教室で鳶一の体操着の匂いを嗅いだりしてるんだ』

 

「あんた、士道になんか恨みでもあるの?」

「……? 別にないが」

 

 恨みが無いのにあの台詞を士道に言わせる辺り、もしかしてこの人は天然サディストなのでは

 

『そう』

 

 モニター越しに見ている側もさすがに引いていると思ったが、次の言葉でそんな事なかったのだと理解する

 

『私も、やっている』

『……!?』

 

 それが事実ならドン引きである

 

『そっか。なんか俺たち気が合うな』

『合う』

 

「嫌な気の合い方だなぁ」

 

 士道ももはややけくそである

 

『それで、もしよかったらなんだけど、俺と付き合ってくれないか──って急展開すぎんだろいくらなんでも!』

 

 傍から見たら変な奴すぎる

 

「……いや、まさか本当にそのまま言うとは」

『そのまま言えっつったのあんたじゃねぇか!』

 

 士道の持っていた怨嗟を声に乗せて発してす倶、目の前に折紙がいることを思い出した士道は彼女に向き直る

 

『あ、その、なんだ……すまん、今のは──』

『構わない』

『…………は?』

 

 鳶一折紙さんの返事に士道だけでなく流石のモニター室も呆気に取られていた

 

『な……なんて?』

『構わない、と言った』

『な、ななななななにが?』

『付き合っても構わない』

 

 その瞬間、士道の身体からぶあっと汗が噴き出した

 

『あ、あぁ……どこかに出かけるのに付き合ってくれるってことだよな?』

『そういう意味だったの?』

 

 一応確認する為に聞いたであろう士道の問いに対して、折紙は首を傾げてそう返答した

 

『え、あ、いや……ええと、鳶一は、どういう意味だと思ったんだ……?』

『男女交際の事かと思っていた』

 

「どうしてあのやり取りで男女交際のやり取りだと……と言うよりなんでアレで了承出来る?」

「ホント、何でかしらね……」

 

 モニター室もさすがに理解は出来ない

 

『違うの?』

『い、いや……違わない……けど』

『そう』

 

 ここで違うと言えばそれで押し通せたのに違わないと答えてしまった……あの状況ならまだ勘違いで通せたのになどと考えていると

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──────

 

『っ!?』

 

 何の前触れもなく、あたりに警報が鳴り響く

 

『──急用が出来た。また』

『お、おい──』

 

 折紙は士道を置いてどこかに走って行ってしまい士道は一人取り残された

 

『ど、どーすりゃいいんだ、これ……』

 

 警報の確認をしていた琴里がマイクに話しかける

 

「士道、空間震よ。一旦フラクシナスに移動するわ。戻りなさい」

『や、やっぱり精霊なのか……?』

「えぇ、出現予測地点は──来禅高校(ここ)よ」

 




混沌を極めた実地訓練の最中
誤解を解く暇もなく現れる精霊

果たして士道は彼女の心を解きほぐすことが出来るのか
精霊を口説き落とすことが出来るのか

次回、少年と少女は再び出会う
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