デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

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第6-9話,追想Ⅷ 決着

 誘宵美九との再会から数か月、再びアイドルとして復帰した彼女をテメディアで見ない日はなかった。彼女は瞬く間にファンの数を増やしあっという間に大人気アイドルとなり今や買い物に出かけたら彼女の事を見ない日はない

 

「……瞬く間にとは、なんとも言えないな」

 

 彼女がこれほどの短期間で人気アイドルへと返り咲いたのは彼女の天使──破軍歌姫と彼女の持っている素質の高さだろう、元々宵待月乃というトップアイドルとして活躍していた美九にはアイドルとしての素養がある

 

「美九の素養と彼女の天使の相性……敵に回ると最悪以外の何物でもないな」

 

 嫌になる程真っ青な空を見ながら、トーマは彼女の待つスタジアムに向けて足を進める

 

 

 

 何故トーマがスタジアムに向かっているのか、それは美九が大人気アイドルへと返り咲いてから数週間後、現在から遡る事3か月前まで遡る

 

「坊主、荷物届いてんぞ」

「えっ? 別に何も頼んでませんけど……」

「そうは言っても間違いなくお前宛てだろ、ほれ」

 

 いつものように仕事をしていたトーマはおっちゃんが手に持っていた小包を投げ渡してくる。咄嗟の事で落としそうになるが何とかキャッチしたトーマが届け先を見ると確かに自分の名前、送り主の名前は聞き覚えの無い会社名

 

「確かに、オレ宛てですね」

「だろ? 忘れてるだけでなんか頼んでたんじゃないか?」

「ですかねぇ、とりあえず仕事終わったら確認します」

 

 その後、いつものように仕事を終わらせたトーマは、店の戸締りをしてから自分の部屋で届いた荷物を開ける

 

「手紙と……チケット?」

 

 中に入ってたのは手紙とチケット、手紙の方は身に覚えないがチケットの方に誘宵美九と書かれているあたり手紙も彼女からなのだろう。そんなことを考えてトーマは手紙を見て少しだけ目を見開く

 

「この手紙、ゆきさんから?」

 

 意外な人物からの手紙の内容に目を通すと、そこに書かれていたのは自分たちの近況と最近の美九を心配するような内容だった。黙々と目を通していたトーマだったが彼女の書いた最後の文に目が留まる

 

 ──最近の美九は、どこか無理しているようで見ていて不安になります

 ──お時間が取れるのであれば、彼女と会って相談相手になってあげてください

 ──美九が一番信頼しているあなたへの、お願いです

 

「無理をしてる……か」

 

 彼女がどうして精霊になったのか、それ以上に精霊になってから何を考え、今に至るまで生活をしているのか……それを知るすべは今のトーマには存在しない。唯一出来る方法は美九本人の口から聞く以外の方法はない

 

「……行くか」

 

 トーマは手紙を置くと、チケットとその近くに貼られていた絶対に来てくださいね。と書かれた紙を見つめながらそう言う

 

「美九に会うなら……少し準備が必要かもしれないな」

 

 そう思ったトーマは来たるべき日に備えて準備を開始する

 

 

 

 

 

 そして時間は戻り現在、美九のファンたちに紛れてチケットを見せると、トーマだけ関係者用通路まで案内される。パッと見普通のチケットだったようだが実際には関係者席の方に案内されるようだった

 

「あっ! おにーさん! 来てくれたんですね!」

「……あぁ、折角呼ばれたからな」

「来てくれなかったらどうしようって思ってたけど、来てくれてよかったです。今日はおにーさんの為に頑張るので、楽しんでくださいね!」

「……楽しみにしてるよ」

 

 ──みんなの為に、じゃないんだな

 

 今の彼女にとって、本当にアイドルとして活動しているのが正しいのか、それがわからなくなってくる。そんなことを考えながら関係者席まで移動する。それから程なく、ライブが始まった

 

『みなさーん! 今日はきてくれて、ありがとうございまーすッ!』

 

 美九が観客の前に現れると、スタジアム全体で聞こえてくるのは歓声。それは何処を見ても変わりなく。今この場の会場そのものを支配しているのはステージ上に立つ彼女である事実をひしひしと感じさせる

 そこから彼女は現在発売しているアルバム、そしてまだ未発表の新曲をアンコールで歌うっていうサプライズを行い彼女のライブは幕を閉じる。ファンから見たら大成功なのだろうがトーマにとっては──ここからが本番だ

 

 

 

 ライブは大成功に終わった後、美九に呼び出されたトーマは一人、スタジアムの近くにある公園までやって来る。ライブ終わりということもあり本来ならもう少し人は居てもおかしくない筈なのだが公園内はビックリするほど閑散としていた

 

「お待たせしました、おにーさん」

「いや、後片付けとか色々大変だったんだろ、気にしなくていい」

「そうですか、それよりどうでした? 私のライブ」

「凄かったとは思う……けど、今日のライブは、本当にお前のやりたかったことなのか?」

「どういう、意味ですか?」

 

 トーマの言葉jの真意が理解できなかった美九に対して、トーマは言葉を続ける

 

「精霊の力を手に入れて、お前はアイドルの道に返り咲いた……けど、それが本当にお前のやりたいことなのか?」

「当たり前じゃないですか、私はやりたいからアイドルをやってるんです」

「なら、どうしてライブの直前、おにーさんの為に頑張るって言った? 俺の知ってるお前……いや、宵待月乃は、ファンの笑顔の為にステージに立ってたんじゃないのか?」

「それは……」

「俺はお前の、本当の心が知りたい……お前の本当にやりたいことは、こんな事なのか?」

「……当たり前じゃないですか、変な事言わないでくださいよ」

「──ならどうして、そんなにひどい表情してるんだ」

 

 そう言っている美九だったが、その表情は発した言葉とは程遠いものだった。それを見たトーマは少しの間目を閉じて、呼吸を整える

 

「美九、オレはお前を救う……お前の中にある本当の気持ちに、手を伸ばす」

「わけわからない事言わないでくださいッ! 何ですか本当の気持ちってッ! おにいさんに私の事がわかるわけないじゃないですかッ!!」

「あぁわからない! わからないから……それを言葉にするんだ。だから俺は……誘宵美九(本当のお前)の為に宵待月乃(お前の偶像)を斬る」

 

 トーマは自身の手元に出現したブレードライバーを腰に巻き、ワンダーライドブックを装填し、無銘剣をドライバーから引き抜くと、構えを取った。対峙している美九も自身の胸に手を当てると霊力の奔流が彼女の身体を包み込む

 

「──変身ッ!」

 

 その掛け声と共に、トーマの周りに渦巻いていた炎が彼自身を守る鎧へと変わり。姿をファルシオンへと変化させる

 

「──神威霊装・九番ッ!」

 

 美九が放つその言葉と共に、彼女の身体を包んでいた霊力の奔流は青白い炎へと変わり、霊装を顕現させた

 

「来い、美九ッ!」

「破軍歌姫──【剣盤】ッ!」

 

 トーマの手に持つ無銘剣と美九が顕現させた破軍歌姫の鍵盤がぶつかり合い、閑散とした公園の中に甲高い音が響く。美九は踊るように鍵盤を振るいトーマにダメージを与えようとしてくる。対してトーマは美九の攻撃を防ぐだけで決して自分から美九に向かって剣を振るおうとしない

 

「どうしてッ! 私に攻撃をしてこないんですかッ! 貴方の力なら、私なんて簡単に倒せるはずでしょうッ!」

「そうだな……でも、オレの目的はお前を助けること……だからオレはもう、お前に対して剣は振らないッ!」

 

 互いの鍵盤と刀身がぶつかり合い、甲高い音が鳴り響く中で、美九はトーマから距離の全てを顕現させ、その力を使う

 

「破軍歌姫──【小夜曲(セレナーデ)】!」

 

 前回も受けた攻撃、音を使う攻撃に対してトーマは明確にそれを防ぐ手段はない。だからこそ……その攻撃を受け入れる。一度瞳を閉じて、眼前に浮かび上がる光景に目を向けた。前回同様目の前に現れた少女を真っすぐ見つめ、彼は言葉をかけた

 

「すまない、もう少しだけ待っていてくれ……土産話は、向こうで腐る程聞かせるから」

 

 その言葉に対して少女は笑顔を浮かべ、頷くと目の前が光に包まれた

 光が晴れ、トーマの視界に映ったのは少し驚きの表情を浮かべていた美九。彼女に対してトーマは一歩ずつ足を進めると美九は一歩ずつ後ずさっていく

 

「ど、どうして……」

「言っただろ、お前を助けるって……だから──」

 

 そこまで言うとトーマは、美九ん向かって駆けだす

 

「こ、こないでッ!!」

 

 美九は音の衝撃波をトーマに向かって放ってくるが、彼はその攻撃を受けるながら真っ直ぐ進み続ける。その衝撃波を完全にのけたトーマは美九の眼前まで行くと、ファルシオンからトーマの姿へ戻り、無銘剣を投げ捨てる

 

「えっ──」

 

 困惑する美九に対して、トーマは彼女の手を掴み、そのまま抱きしめる

 

「ぁっ」

「すまなかった」

「ど、どうして謝るんですか」

「最初に美九と再会した時、最初からお前の手を掴めばよかった」

「そんな事で、謝ったんですか」

「あぁ、少しの間でも美九と一緒に過ごしたのに、今の美九が何を抱えてるのか……それを聞いてやれなかったから」

 

 トーマの言葉を聞いた美九は、少し躊躇った後トーマの身体を抱きしめ返し、顔が見えないようにしながら言葉を紡ぐ

 

「……ずっと、怖かった」

「あぁ」

「ステージに立って、またあの視線を受けるんじゃないかって……また、歌えなくなるんじゃないかって」

「あぁ」

「だから、何度も相談しに行こうって、私はステージに立っても良いのかって、でも……考えれば考えるほど怖くなって、気持ちがぐちゃくちゃになって──」

 

 紡がれる美九の言葉に、トーマは耳を傾け続ける

 

「でも、精霊の力を手に入れて……これなら大丈夫って思えた」

「あぁ」

「けど、精霊の力を使えば使うほど……本当に私のしたかった事は何だろうって、わからなくなって、誰の為に良いのかわからなくて……今すぐにでも、すがりたかった、頼りたかった」

「頼ってくれていい、すがってくれていい、美九が一人で大丈夫って思える時まで。オレがお前の手を掴む」

「……ありがとうございます、おにいさん」

 

 トーマの言葉を聞いた美九から流れた一筋の涙が、トーマの腰に巻かれていたブレードライバーに当たると輝きを放ち始め、気が付けば一冊の本がブレードライバーにセットされていた

 

「……これって」

 

【アメイジングセイレーン】

 

「本、ですか?」

「あぁ、新しいワンダーライドブックだ」

「ワンダーライドブック? ──って、なんですかなんですか!?」

 

 ブレードライバーから本を引き抜くと同時にアメイジングセイレーンのが開き、美九の身体から霊力を吸収する。それによって背後に顕現していた天使は消え、霊装は解除された。美九の服装から普通の服装に戻った途端、力が抜けたようにトーマの方に倒れこむ

 

「大丈夫か?」

「はい……でも、ちょっと疲れちゃいました」

「そうか、それなら……今はゆっくり休め」

「はい、そうさせて……もらい……ます……」

 

 その言葉を最後に、美九は寝息を立て始める。それを見たトーマは彼女をお姫様抱っこするとベンチまで向かった

 

 

 

 

 

 

 後日談

 

 美九の霊力がワンダーライドブックに移動した翌日、アイドル誘宵美九は一時的な休業を発表した。事務所としっかり話し合った上で現在受けている仕事がすべて終わったから休業期間に入る

 もう一つ大きな変化があった、それは美九とトーマが一緒に暮らすことになったこと。彼女の精神衛生上の問題というのが一番だったが、それ以外の問題だとトーマが考えたのは霊力の移動したワンダーライドブックにどのような不具合が起きるかわからなかったからだ

 美九以前に霊力を封印した耶倶矢と夕弦の二人は互いが互いに精神の支柱になっていることが大きい。逆を言えば美九にはそれがない為、万が一が起こった際トーマが迅速に対応できるように同居をすることになったのだ

 

「おっちゃん、今までお世話になりました」

 

 店が定休日のある日、荷物をまとめたトーマはおっちゃんに挨拶をする

 

「気にすんな、ここで働くのは変わんねぇしな」

「それでも、記憶がないオレをここに住まわせてくれたのは、本当に感謝してます」

「それなら、感謝は今までよりもバリバリ働いて返してくれ」

「はい」

 

 改めておっちゃんに頭を下げて店の外に出ると、そこにはお忍び仕様の美九が待っていた

 

「挨拶、終わったんですか?」

「あぁ……と言っても、ここで働くのは変わんないんだけどな」

「それでも挨拶は大切ですから……ここのおじさんには、私もいっぱいお世話になりましたから」

「そうだな……よしっ、それじゃあ行くか」

「はい! これからよろしくお願いしますね、おにいさんっ!」

 

 こうして、美九の霊力は疑似的に封印され、二人の同居生活が始まった……そして時は、現代に戻る




かなり駆け足気味になってしまいましたが、美九とトーマの過去の話はこれにて終了
次回より現代編に戻ります
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