デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
「いたぞ、この中だ」
「ここに士道たちがいるの──か?」
耶倶矢と夕弦の案内で音楽室までやってきたトーマがその中を見ると、その中にいたのは十香と彼女の友人でもある亜衣、麻衣、美衣の三人娘、それに折紙と……青い長髪の少女だった
「士道……いるか?」
「いるではないか、しっかりと」
「同意。トーマの目にもはっきりくっきり映っている筈です」
「はっきりくっきりって──まさか」
トーマが辿り着いたのは、見慣れない青髪の少女が士道であるという可能性……というかその可能性以外ないだろう。ならば何故士道が女装しているのかなのだが、とりあえずその部分は置いておいても大丈夫だろう
「……とりあえず、行ってくる」
「うむ、しっかり話をつけてくるがよい」
「了承。頑張ってください」
「あぁ、とりあえず言うだけ言ってみる」
二人と別れたトーマは音楽室の扉をノックしてから中に入る
「む? おぉ! トーマではないか!」
「久しぶり……って程でもないか」
急に音楽室に入ってきたトーマを見た十香は反応を示したが残りのメンツは不思議そうにトーマの方を見ていた……最も、青髪の少女だけは何故かトーマと目を合わせようとしていないがそれに関して仕方ないと言えば仕方ないのだろう
「それで、今日はどうしたのだ?」
「あぁ、実は少しだけ頼みがあってな──突然の申し出で悪いと思ってたんだがバンドの練習をしてるなら丁度いいか」
そう言ったトーマは改まって言葉を口にする
「君ら、竜胆寺女学院……というか美九と合同ライブをやってみる気はないか?」
「「「「「「えっ?」」」」」」
唐突な提案に固まってしまった六人を他所に、とりあえずトーマはどうして自分がこんな事を提案しているのかを振り返る
事の発端は、昨日の夜。彼女からのお願いを聞いた事──彼女からの願いと言うのが他でもないどこかと合同ライブが出来ないか、というものだった
とは言え流石のトーマもそこまで広い人脈を持っている訳ではない。そこで白羽の矢が立ったのがパンや弁当を配達しており、顔なじみも多い来禅高校……その中でも美九とも交流がある士道たちというわけである
──せっかく活動を再開するんなら、盛大に、楽しくやりたいんです
彼女はトーマに願いを伝えた際にそう言っていた、それを聞いたトーマもまた、全力で彼女に手を貸そうと決めた次第である
「……というか、どうして貴方がそんな事を?」
「あーっと、それは、なんというか、結構前から美九とは交流があってな」
流石に休止中の大人気アイドルと一緒に暮らしていますなんて言ったら自分の立場を危うくしかねないトーマは要点をぼかしつつそう言うが三人娘の方から向けられる視線が疑いのものに変化していった
このままだと只の不審者になりかねない事を察するトーマは証拠代わりに何年か前に一緒に撮った写真を見せる。疑いの目が晴れたあたり一応信じて貰えたらしい
「それで、どうだろうか? 一緒にやってもらえると有難いんだけど」
「……よっしゃ! せっかくやるなら盛大な方がいい! やってやろうじゃないの!」
「せっかく人数も揃ったわけだしね」
「そだね、それじゃあやりますか、追加要因も三人いるし」
「え?」
どうやらまとまったらしい話を横で聞いていたら、最後に放った麻衣の言葉で青髪の少女は首を傾げる
「あ、いや、十香……さんと折紙さんは私の付き添いで……」
「そうなの? そのわりには……」
麻衣が後方を指さすと、そこにいたのは既に楽器を運び始めている十香と折紙の姿。十香は兎も角、折紙も案外やる気なようでその姿を見た青髪の少女は苦笑している
「え、えぇと……おまえら、じゃなくてあなたたち……」
「……そう言えば、君。名前は?」
「え? 俺、じゃなくて私は……士織……です」
とりあえず名前を聞いてみたが思った以上にしっかりとした名前が返ってきた。トーマ的にはてっきりシド美とかあからさまに適当な名前を付けられるものだと思っていたから以外だった
「それじゃあ全員で、張り切ってやろーう!」
「……じゃあ、オレはこれで。色々と準備しないといけない事があるんで」
そう断りを入れたトーマは張り切っている彼女たちに背を向けて音楽室を後にする。これからかなり忙しくなることを覚悟しながら昇降口に向けて歩いていると、丁度クラスの準備をしていたらしい耶倶矢と夕弦に遭遇した
「耶倶矢、夕弦」
「おぉトーマ、その様子だと上手くいったようだな」
「おかげさまでな」
「安堵。良かったです」
「二人も音楽室の場所を教えてくれて助かった」
「呵々、気にするな。我らとトーマの仲だからな」
「同意。もっと気にせず頼ってください」
「あぁ、何かあったらそうさせて貰う……それじゃあ」
それだけ言って耶倶矢、夕弦と別れたトーマは来禅高校を後にし、美九の携帯に連絡を取ると、そこまで時間はかからずに美九の声が聞こえてくる
『はーい、美九ですよぉ』
「美九、今時間大丈夫か?」
『はい、大丈夫ですよ、それでどうかしたんですか?』
「こっちは連絡取れたぞ、問題なしだ」
『本当ですか!?』
「あ、あぁ。それで……そっちは大丈夫だったのか?」
『はい、こっちも問題なしです。何とか時間作れましたから後は本番までひたすら練習ですね』
「そうか、それなら良かった……練習するって事は、今日は帰り遅くなるのか?」
『そうですねぇ、いつもより遅くなっちゃうと思います』
「わかった、そんじゃ帰るって時に連絡くれ……時間に合わせて飯作り始めるから」
『別に先に食べててもいいんですよ?』
「飯ってのは一人より二人で食べた方が美味くなるからな。気にすんな」
それだけ言い残し、トーマは美九との通話をきる
「さてと、それじゃあ早速材料買いに────」
「あらあら、随分と楽しそうですわね」
その声が聞こえてきた瞬間、周囲の空気が変わった
「……一体何の用だ、時崎狂三」
「つれないですわねぇ、貴方と私の仲ではありませんの」
「そんな事言われるほど、お前と仲良くなった覚えはないな……それで、何の用だ」
「全く、さっさと本題に入ろうなんて、淑女の扱いを心得ておりませんの?」
狂三の放ったその言葉に対して、トーマは普段とは全く違う好戦的な表情を見せる
「淑女って柄じゃねぇだろ、殺人鬼。いいからさっさと要件を話せ」
「……仕方ありませんわねぇ、今日はただこれを渡しに来ただけですわ」
そう言いながら狂三がトーマに差し出してきたのは二冊のワンダーライドブック──トライケルベロスと昆虫大百科の本だった
「お前、どこでこれを……」
「さぁ? 私にもさっぱり、気が付いたら持っていた……と言う方が正しいかも知れませんわね」
「気が付いたら、持っていた?」
トーマから見ても不可解な話だ、精霊の力の中にエネルギー状態になっているのはトーマも知っている、そして精霊と一体化しているワンダーライドブックは精霊の霊力を封印しない限り分離するはずない……しかし、目の前にいる時崎狂三が握っているのは本物のワンダーライドブック
「それをオレに渡しにきた……って訳か、でもわからないな。何故それをオレに渡す」
「私が持っていても無用の長物でしかありませんから。持っていても邪魔になるだけ……ならそれを必要としている方に差し上げるのが優しさ、というものでしょう?」
「そいつはどうも、有り難くもらっとくよ」
「えぇ……ですが、渡す前に一つ訊いてもよろしくて?」
「……なんだ」
「トーマさん、貴方はどうしてその本を──力を求めるんですの?」
狂三がしてきたその問いは、トーマにとっても答えを出すことのできない部分だった。意識を取り戻してから自身に刻み込まれている使命であるからそうしているだけ、それに加えて精霊からワンダーライドブックを分離することは彼女たちの霊力を封印する行為に繋がることから力を集める理由は特に考えていなかったというのが正しい所だが──今のトーマは、ただ一言、こう答えるしかなかった
「……ただ、そうしないといけない気がしたからそうしてるだけだ」
その言葉を聞いた狂三は怪訝そうな表情を浮かべるが、トーマの言っているのが本心であると察すると二冊のワンダーライドブックを渡すとその場から姿を消す。トーマは受け取ったワンダーライドブックに目を向けるがそこから狂三の霊力は感じることはできない
どうして彼女の元にこの本が現れたのか、それを考えたが結局答えが出ないという考えに辿り着いたトーマは、思考を切り替えてその場を後にした
そして時は進み九月六日、土曜日。いよいよ天央祭が開幕する
Data Archiveの精霊と聖剣、WRBの対応に今日登場した二冊を追加しました