デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
時刻は、十七時二十分
人目を避けながらフラクシナスに移動した四人は艦橋スクリーンに表示された様々な情報に視線を送る、一方で士道もトーマの画面に映し出された数値は何のこっちゃなので話には口を出さないでおく
「なるほど、ね」
艦長席に座ってチュッパチャップスを舐めながらクルーと言葉を交わしてた琴里は小さく唇の端を上げた
「──士道」
「なんだ?」
「早速働いてもらうわ。準備なさい」
「……っ」
「トーマも、万が一があった場合に備えておいて」
「了解」
「──もう彼を実践登用するのですか、司令」
艦長席の隣にいた神無月が、スクリーンに目をやりながら声を発した
「私の判断にケチをつけるなんて、偉くなったものね神無月。バツとして今から良いと思うまで豚語で喋りなさい」
「ぶ、ブヒィ」
とてつもなく変な光景みたいだが、トーマはスルーする
「……いや、琴里、神無月さんの言う事ももっともだと思うんだが……」
「あら、士道ったら豚語が理解できたの? さすが豚レベルの男ね」
「ぶ……っ、豚を舐めるなよ! 豚は意外とすごい動物なんだぞ!」
「知っているわ、きれい好きだし力も強い。なんでも犬より高度な知能を持っているという説もあるとか。だから有能な部下である神無月や、尊敬する兄である士道に、最大限の経緯として豚と言う呼称を使っているのよ。豚。この豚」
「……ぐぐっ」
論点が逸れている気もするが、琴里も二人の不安を理解しているようだ。キャンディの棒をピンと上向きにし、スクリーンを示す
「士道、あなたかなりラッキーよ」
「え……?」
琴里の視線を負うように目を向けると、意味不明な数字が躍っていたが──右側の地図には先ほどとは変わった所が見受けられる。高校には赤いアイコンが一つ、そして赤いアイコンの周囲にはいくつかの小さな黄色いアイコンが表示されている
「赤いのが精霊、黄色いのがASTよ」
「……で、何がラッキーだってんだよ」
「ASTを見て。さっきから動いてないでしょう?」
「あぁ……そうだな」
「精霊が外に出てくるのを待ってるのよ」
「なんでまた、突入しないのか?」
「……あんな火力押しみたいな戦闘をメインにしてるなら、建物の中で迂闊に戦うのは不得手なんだろ」
「トーマ、半分正解って所ね……そもそもASTの使うCRユニットは、狭い屋内での戦闘を目的として作られたものではないのよ。いくら
琴里が指をパチンと鳴らすと、それに応じるようにスクリーンに表示されていた画像が実際の高校の映像に変わる
校庭に浅井すり鉢状のくぼみが出来ており、その周りの道路や校舎の一部もきれいに削り取られてる、空間震が起きた際によく見る光景だ
「校庭に出現後、半壊した校舎に入り込んだみたいね。こんなラッキー滅多にないわよ。ASTのちょっかいなしで精霊とコンタクトが取れるんだから」
「……なるほどな」
士道は一応納得したのだが、どことなく引っかかりを覚えジトッと半眼を作った
「……精霊が普通に外に現れてたら、どうやって俺を精霊と接触させるつもりだったんだ?」
「ASTが全滅するのを待つか、ドンパチしてる中に放り込むか……トーマにASTぶっ潰させてから優雅に精霊と接触する、のどれかね」
「……」
その言葉を聞いて、現在の状況がどれだけ有り難いものかを理解できた
「ん、じゃあ早いところ行きましょうか。──士道、インカムは外してないわね?」
「あ、あぁ」
「よろしい。カメラも一緒に送るから、困ったときはサインとして、インカムを二回小突いてちょうだい」
「ん……了解した。でもなぁ……」
士道はさっきまでやってきた訓練の経験から中々に信用ならないものらしい
「安心なさい士道。フラクシナスクルーには頼もしい人材がいっぱいよ」
「そ、そうなのか?」
疑わしい顔で士道が返すと上着をバサッと翻して立ち上がった
「たとえば、五度もの結婚を経験した恋愛マスター・
「いやそれ四回は離婚してるってことだよな!?」
「二度ある事は三度あるってレベルじゃないな」
「夜のお店のフィリピーナに絶大な人気を誇る
「それ完全にお金の魅力だろ!」
「マネーイズパワーだろうからな」
「恋のライバルに次々と不幸が。午前二時の女
「絶対呪いかけてるだろそれ!」
「想いは時に呪いになるって言う感じだな」
「千人の嫁を持つ男
「ちゃんとz軸のある嫁だろうな!」
「次元越えてるし、九割画面の向こう側だろうな」
「その愛の深さゆえに、今や法律で愛する彼の半径五百メートル以内に近づけなくなった女
「なんでそんな奴等ばっかなんだよ!」
「ビックリするほど不安になる面子だな」
「……皆、クルーとしての腕は確かなんだ」
正直信用ならない……と言うより碌でもないといった風の二人に対して、艦橋下から令音の声が聞こえてくる
「そ、そう言われましても……」
「いいから早いところ行ってきなさい。精霊が外に出たらASTが群がってくるわ」
その言葉と共に発破をかけるように士道の尻を琴里がボンっと勢いよく蹴る
「……ってッ、こ、このやろ……」
「心配しなくても大丈夫よ。士道なら一回くらい死んでもすぐニューゲームできるわ」
「っざけんな、どこの配管工だそれ」
「マンマミィーヤ。妹の言う事を信じない兄は不幸になるわよ」
「兄の言うこときかない妹に言われたかねぇよ」
士道と琴里の会話を心のどこかで懐かしいとトーマが感じていると、士道は大人しく艦橋のドアを足に向けていた
「グッドラック」
「おう」
士道が転送されたのを確認すると、琴里はトーマに士道と同じタイプのインカムとタブレット端末を渡してきた
「トーマも現地で待機をしておいて」
「了解、インカムの方は分かるが……なんだこのタブレット」
「現地待機だと映像は分かりずらいかも知れないから、映像はそれで確認して頂戴」
「わかった」
その言葉と共にトーマも現地に送られた
トーマが送られたのは来禅高校の丘に転送される
『どう、トーマ……そこからなら確認できる?』
「ASTの様子は見えるから問題ない、
『わかったわ、士道は精霊に接触する為に移動中よ』
「了解、映像確認したら後はこっちで動くから、連絡は士道の方に集中して貰って構わない」
そう言ってからすぐにタブレットを起動して士道の映像を確認すると既に接触間近と言った感じだ
『──ここ、二年四組。俺のクラスじゃねぇか』
『あら、そうなの。好都合じゃない。地の利とまでは言わないけど、まったく知らない場所よりよかったでしょ』
「そうだな、知らない場所より見知った場所の方が動きやすい」
等と言ったところで、そういえばまだ四月だからそこまで地の利もないのでは? とトーマは思ったが……今さら言っても仕方ないだろう。映像を見ているとついに士道が精霊と接触するところだった
『……やぁ、こんばんわ、どうしたの、こんなところで』
映像越しに見ても夕陽に照らされる少女の姿は幻想的に見える
『──ぬ?』
『……ッ! や、やぁ―』
士道に対して開幕の一発、画面外から瓦礫の音が聞こえてくるあたり壁が崩壊でもしたのだろう
『ぃ……ッ!?』
『士道!』
士道が咄嗟に身を隠した直後、さっきまでいた場所を光の奔流が駆け抜け、校舎の外壁を突き破った。その後も何度は黒い光は放たれ続ける
「動くか?」
『今刺激するのはマズいわ、もう少し様子を見て』
「了解」
『ま……待ってくれ! 俺は敵じゃない!』
士道の言葉が通じたのか放たれ続けた光線が止まる
『は、入って大丈夫なのか……?』
『見たところ。迎撃準備はしてないわ。やろうと思えば、壁ごと士道を吹き飛ばすなんて容易いはずだし。──逆に時間を空けて機嫌を損ねてもよくないわ。行きましょう』
「すぐ殺せるのに殺さなかった辺り、人を殺すという絶対の意志はないみたいだからな」
改めて士道は扉の無くなった教室の前に立った。士道に向けられる視線は猜疑と警戒が満ちている
『とーとりあえず落ち着い―』
『―止まれ』
一歩踏み込もうとしたところで光弾が足元の床を焼く
『おまえは、何者だ』
『っ……あぁ、俺は──』
『待ちなさい』
トーマにもインカム越しに琴里の声が聞こえてから程なくしてタブレット端末に選択肢が表示される
『これだと思う選択肢を選びなさい! 五秒以内』
➀「俺は五河士道。君を救いにきた!」
②「通りすがりの一般人ですやめて殺さないで」
③「人に名を訊ねるときは自分から名乗れ」
このなかで選ぶとしたら➀が安全牌だろう……と言う事でトーマは➀を選択する、そして一番多いのは③だった
「いや何故③」
『──みんな私と同意見みたいね』
「そう言うものなのか」
若干困惑しているととりあえずインカムの向こう側から参考意見が聞こえてくる
『➀は一見王道に見えますが、向こうがこちらを敵と疑っているこの場で言っても胡散臭いだけでしょう。それに少々鼻につく』
『……②は論外だね。万が一この場を逃れることができたとしても、それで終わりだ』
トーマは神無月と令音の理由を聞いて納得をするが……正直③は鼻につく以前に失礼に当たるのではと考える
『そうね。その点③は理に適っているし、上手くすれば会話の主導権を握ることもできるかもしれないわ』
『お、おい、なんだってんだよ……』
『……もう一度聞く。おまえは、何者だ』
短時間とは言え、流石にあ、あまり待たせる訳にはいかないか
『士道。聞こえる? 私の言う通りに答えなさい』
『お、おう』
『──人に名を訊ねるときは自分から名乗れ』
『”──人に名を訊ねる時は自分から名乗れ”……って』
画面越しだが真っ青になってるのはトーマにも理解出来た
『な、何言わせてんだよ……っ』
時すでに遅し、と言う言葉が正しいのだろうか、目の前の少女は不機嫌そうな表情になり両手で光の球を作り出した
『ぃ……ッ』
ぶん投げられた光の球は一階まで貫通するような大穴を開け、士道はその衝撃はで吹き飛ばされて教室の端まで転がった
『……っぐあ……』
『あれ、おかしいな』
『おかしいなじゃねぇ……ッ、殺す気かっ』
「そろそろ士道と合流した方が良いか?」
流石にそろそろ不味い気がする、ただでさえASTが警戒してるのに中でドンパチ音立ててたら建物を破壊してると勘違いしかねない、そうトーマは考えているのだが琴里からは未だストップが入る
『これが最後だ。答える気がないのなら、敵と判断する』
『お、俺は五河士道! ここの生徒だ! 敵対する意志はない!』
『──そのままでいろ。お前は今、私の攻撃可能圏内にいる』
士道が両手を上げて攻撃の意志はないことを示すと、一応少女と対話可能な状況までもっていくことができた
『……ん?』
近づいてきた少女は士道の顔を少しの間凝視していると少しだけ眉を上げた
『おまえ、前に一度あった事があるな……?』
『あ……っ、あぁ、今月の──確か四月十日に。街中で』
『おぉ、思い出したぞ。何やらおかしなことを言っていた奴だ』
少し警戒を解いた矢先、士道の前髪が掴まれ顔を上向きにさせられた
『……確か、私を殺すつもりはないと言っていたか? ふん──見え透いた手を。言え、何が狙いだ。油断させておいて後ろから襲うつもりか?』
『……っ──人間は……おまえを殺そうとする奴等ばかりじゃ……ないんだッ』
士道の言葉を聞いた少女は目を丸くしながら手を放す
『……そうなのか?』
『あぁ、そうだとも』
『私が会った人間たちは……一人人間と言っていいのかわからない奴もいたが、皆私は死なねばならないと言っていたぞ』
『そんなわけ……ないだろッ』
人間と言っていいのかわからない奴とは自分の事を指してるんだろうな、と会話を聞きながらトーマは思う
『……では聞くが。私を殺すつもりはないのなら、お前は一体何をしに現れたのだ』
『っ、それは──えぇと』
➀「それはもちろん、君に会うためさ」
②「なんでもいいだろ、そんなの」
③「偶然だよ、偶然」
トーマも含め選択をすると、今回は安定の➀が人気だった
『②はまぁ、さっきの反応を見る限り駄目でしょうね。──士道、とりあえず無難に、君に会う為とでも言っておきなさい』
『き、君に会うためだ』
『……?』
士道の怪盗を聞いた少女は、少し不思議そうな顔をする
『ワタシに、一体何のために』
➀「君に興味があるんだ」
②「君と、愛し合うために」
③「君に訊きたいことがある」
『んー……どうしたもんかしらねぇ』
『ここはストレートに言っておいた方が良いでしょう、司令。男気見せないと!』
『はっきり言わないとこの手の娘はわからないですって!』
「下手打つと機嫌損ねるだろうし、ここは③がいいんじゃないか?」
とりあえずトーマも意見は出しておく
『まぁ、いいでしょ。➀や③だとまた質問を返されるだろうし。──士道。君と、愛し合う為に、よ』
士道の肩がビクリと震えたのはカメラで分かった、そしてトーマの意見は完全にスルーされた
『あー……その、だな』
『なんだ、言えないのか。おまえは理由もなく私のもとに現れたと? それとも──』
『き、君と……愛し合うため……に?』
その刹那、少女は抜き手にして、横薙ぎに振り抜く。すると士道の頭のすぐ上を風の刃が通り抜け──教室の壁を切り裂いて外へと抜けていいった。ついでに士道の髪が数本、中程で切られて風に舞う
『ぬわ……ッ!?』
『……冗談はいらない』
その刹那、少女の顔が再び曇る。それを見ていた士道は思わず思ったままを口にする
『俺は……ッ、おまえと話をするために……ここにきたッ』
『……どういう意味だ?』
『そのままだ。俺は、おまえと、話がしたいんだ。内容なんかはなんだっていい。気に入らないなら無視してくれたっていい。でも、一つだけわかってくれ。俺は──』
『士道、落ち着きなさい』
「……いや、お前の好きなようにやれ! 士道!」
届いてるか届いてないかなんて関係ない、普段なら出さない声量で士道に言った
『俺は──お前を、否定しない』
一言一言を区切り、丁寧にそう言った。
それからしばらくの間沈黙があったが、少女の唇を小さく開く
『……シド―。シドーといったな』
『──あぁ』
『本当に、おまえは私を否定しないのか?』
『本当だ』
『本当の本当か?』
『本当の本当だ』
『本当の本当の本当か?』
『本当の本当の本当だ』
間髪入れず士道が答えると少女は神をくしゃくしゃと書き、鼻をすするような音が聞こえ、顔の向きを戻してきた
『──ふん、誰がそんな言葉に騙されるかばーかばーか』
『っ、だから、俺は──』
『……だがまぁ、あれだ。どんな腹があるかは知らんが、まともに会話をしようという人間は初めてだからな。……この世界の情報を得る為に少しだけ利用してやる』
『……は、はぁ?』
『話しくらいしてやらんこともないと言っているのだ。しy、情報を得るためだからな。うむ、大事。情報超大事』
『そ、そうか』
少なからず少女の表情も和らいだのも確認してトーマもわずかに警戒を解く
『──上出来よ。そのまま続けて』
『あ、あぁ……』
『ただし不審な行動を取ってみろ。おまえの身体に風穴開けてやるからな』
『……オーケイ、了解した』
士道の返事を聞きながら、少女がゆっくりと教室に足音は響かせていく
『シドー』
『な、なんだ』
『──早速聞くが。ここは一体何なんだ? 初めて見る場所だ』
映像越しに見えるのは倒れてない机をペタペタと触っている少女の姿だった
『え……あぁ、学校──教室、まぁ、俺と同世代くらいの生徒たちが勉強する場所だ。その席に座って、こう』
『なんと』
少女は驚いたように目を丸くする
『これにすべて人間が収まるのか? 冗談を抜かすな。四十近くはあるぞ』
『いや、本当だよ』
普通の人間では当たり前の事でも、精霊の少女にとってはすべて見ること聞くこと初めての事だろう、それに……精霊と人間は置かれた境遇が違い過ぎる
『なぁ──』
『ぬ? ……そうか、会話を交わす相手がいるのなら、必要なのだな』
言葉を詰まらせた士道に対して、彼女も気が付いたのだろう
『シドー・──おまえは、私をなんと呼びたい』
『……は?』
士道の問い返しに対して少女はふんと腕を組み、尊大な調子で続けた
『私に名をつけろ』
『……』
沈黙の中に士道、心の叫びが聞こえた気がしたが……気にしたら負けだろう
『お、俺がかッ!?』
『あぁ。どうせお前意外と会話をする予定はない。問題あるまい』
『うっわ、これまたヘビーなの来たわね』
『……ふむ、どうしたものかな』
サイレンはなってるが選択肢が表示されていないのはトーマのタブレットもフラクシナスのモニターも変わらないだろう
『落ち着きなさい士道。焦って変な名前言うんじゃないわよ』
「間違ってもさっきまでやったゲームのヒロインの名前つけたりすんなよ」
『総員! 今すぐ彼女の名前を考えて私の端末に送りなさい!』
「俺もか?」
『当たり前でしょ』
トーマは悩んだが、正直なんでもいいので
『ええと……川越! 美佐子って別れた奥さんの名前じゃない!』
『す、すみません、思いつかなったもので……』
『……ったく、他は……麗鐘? 幹本、なんて読むのこれ』
『
『あなたは生涯子供を持つことを禁じるわ』
『すみません! もう一番上の子が小学生です!』
『一番上の子?』
『はい! 三人います!』
『因みに名前は』
『
「ひでぇ以外の言いようがないな」
『一週間以内に改名して、学区外に引っ越しなさい』
『そこまでですか』
※そこまでです
『変な名前つけられた子供の気持ちを察しなさいこのダボハゼ』
『大丈夫ですよ! 最近はみんな似たようなものですから』
※最近みんな似たようなものでもないです
『……因みに、まともそうなトーマの月乃って、どこから取ったの?』
「同居人のハンドルネームみたいなのを使わせてもらった」
『そう、今すぐ同居人に謝ってきなさい』
「……全部終わったら謝ることにする」
まともなものからあからさまに地雷だとわかるもので中々決まらない……が、唐突に琴里に天啓が下りる
「トメ」
『トメ! 君の名前はトメだ!』
士道が言葉を発した瞬間、トーマの耳にけたたましいサイレンが聞こえてくる
『パターン青、不機嫌です!』
ついでにマシンガンみたいな音と士道の絶叫もトーマの耳には聞こえてきた
『……琴里?』
『あれ? おかしいわね。古風で良い名前だと思ったんだけど』
一方でマシンガンを喰らっていた士道の目の前にいる少女は額に血管を浮かばせていた
『……なぜかわからないが、無性に馬鹿にされた気がした』
『……ッ! す、すまん……もうちょっと待ってくれ!』
「士道、この際だからパッと思い浮かべてお前が一番いいと思った名前を付けろ」
トーマは仕方ないのでここは本人に任せることにする。正直サポート頼るよりも士道本人が自分で考えた方が速い気がしたからだ
『──と、十香』
『ぬ?』
『どう……かな』
少女は暫く沈黙したあと
『まぁ、いい。トメよりはマシだ』
どうしてその名前が思いついたのかわからなかったトーマはとりあえず、これからの話に思考を凝らす
『……なーにやってんだ、俺』
『何か言ったか?』
『あぁ、いや、なんでも……』
深く追及してこなかった少女は士道の前に近づいてくる
『それで──トーカとは、どう書くのだ?』
『あぁ、それは──』
士道は十香の名前がどう書くのかを教える、中々にいい雰囲気である
『ふむ』
『あ、いや、ちゃんとチョークを使わないと文字が……』
『なんだ?』
『……いや、なんでもない』
『そうか』
暫くの間自分の名前をじっと見つめていた少女が小さく頷いたのが士道のカメラ越しに見えた
『シドー』
『な、なんだ?』
『十香』
『へ?』
『十香、私の名だ。素敵だろう?』
『あ、あぁ……』
ほんの少しだけ心が通じ合った、それを感じてすぐ──校舎を凄まじい爆発と振動が襲った
『な、なんだ……ッ!?』
『士道、床に伏せなさい』
『へ?』
『いいから、早く』
「急がないと下手したらハチの巣だ、伏せろ」
何のことかわかっていなかった士道も、けたたましい音と共に一斉に割れたガラスと壁に刻まれる銃痕である程度は理解する
『な、何が起きた……ッ!』
『外からの攻撃みたいね。精霊をいぶり出すためじゃないかしら──あぁ、それとも校舎事潰して、精霊が隠れる場所をなくすつもりかも』
「おそらく前者、事故であわよくば後者って感じだと思うぞ、破壊するなら柱を狙う」
『どっちにしても……無茶苦茶すぎるだろ……ッ!』
『今はウィザードの災害復興部隊がいるからね、すぐに直せるなら、一回くらい壊しちゃっても大丈夫って事でしょ。──にしても予想外ね。強硬策に出てくるなんて』
「存在を秘匿してるなら、これ以上長引かせるのも不都合なんだろう……今回に関しては、俺達が精霊──十香と話してるせいでいつもよりも長時間の睨み合いなってるみたいだし」
『なるほどね、確かにそう考えれば辻褄は合うか』
『──十香ッ!』
士道の声が聞こえたトーマは改めて画面に集中しつつ、無銘剣を出現させておく
『早く逃げろ、シドー。私と一緒にいては、同法に討たれることになるぞ』
『選択肢は二つよ。逃げるか、とどまるか』
十香と琴里、二つの言葉を聞いた士道は少しだけ考えた後
『……逃げられるかよ、こんなところで……ッ!』
押し殺した声でそう言った
『馬鹿ね』
『……何とでも言え』
『褒めてるのよ。──素敵なアドバイスを上げる。死にたくなかったら出来るだけ精霊の近くにいなさい』
「俺もお前の緊急離脱ように備えとく……今まで通りやりたいようにやれ」
『……おう』
決意をしたであろう士道が動くと、カメラが乱れる
『は──?』
そして次に聞こえてきたのは十香の戸惑いの声
『何をしている? 早く──』
『知った事か……っ! 今は俺とのお話しタイムだろ。あんなもん、きにすんな。──この世界の情報、欲しいんだろ? 俺に応えられることならなんでも答えてやる』
そう言うと、カメラの視界が今度は下がった。そして互いに座り士道と十香が話を始めてすぐの頃、トーマも琴里に話しかける
「琴里」
『どうかした?』
「俺もそろそろ表に出られるよう待機はしておく」
『まだ駄目って言いたいところだけど……そう悠長にしてる暇はないわね』
「その件で色々と聞きたい事はあるが、後にさせて貰う」
それから程なく、士道と十香もある程度話が出来たころだろう
『──数値が安定してきたわ。もし可能だったら、士道からも質問してみて頂戴。精霊の情報が欲しいわ』
いよいよこちらから仕掛ける番が来たようだ
『なぁ―十香』
『なんだ』
『おまえって……結局どういう存在なんだ?』
『む?』
士道の問いに対して、十香は答える
『―知らん』
『知らん、て……』
『事実なのだ。仕方ないだろう。──どれくらい前だったか、私は急にそこに芽生えた。それだけだ。記憶は歪で曖昧。自分がどういう存在なのかなど、知りはしない』
『そ、そういうものなのか……?』
『そういうものだ。突然この世に生まれ、その瞬間にはもうそれにメカメカ団が舞っていた』
『め、メカメカ団……?』
『あのびゅんびゅんうるさい人間たちのことだ』
十香は奴等の正式名称を知らない以上、少し変な呼ばれ方をしてても仕方ないだろう……向こうは対話をする気などないだろうし、とトーマが考えた瞬間インカムから今までと違う音が聞こえてきた
『! チャンスよ、士道』
『は……? 何がだ?』
『精霊の機嫌メーターが七十を超えたわ。一歩踏み込むなら今よ』
『踏み込むって……何すりゃいいんだ?』
『んー、そうね。とりあえず……デートにでも誘ってみれば?』
『はぁ……!?』
「流石にこの惨状でこの世界は美しい! とか言っても上半身と下半身がバイバイするだけだろうからな、妥当な所だろ」
大声を上げてしまった士道に対して、十香が目を向けてくる
『ん、どうしたシドー』
『ッ──! や、気にしないでくれ』
「……」
誤魔化そうとしたが訝しまれてることに変わりはない
『誘っちゃいなさいよ。やっぱ親密度上げるためには一気にこう、さ』
『.んなこと言ったって、こいつ出てきた時にはASTが……』
『だからこそよ。今度現界したとき、大きな建造物の中に逃げ込んでくれるよう頼んでおくの。水族館でも映画館でもデパートでもなんでもいいわ。地下施設があるとさらにいいわね。それならASTも直接入ってこれないし……最悪トーマをデコイにすれば少しは時間稼げるでしょ』
「……おい」
『さっきから何をブツブツ言っている。……! やはり私を殺す算段を!?』
『ち、違う違う! 誤解だ!』
『なら言え、今何と言っていた』
絶体絶命の大ピンチ、士道の頬にも汗がにじむ
『ほーら、観念しなさいよ。デートっ! デートっ!』
「潔く諦めるしかないみたいだな」
『あーもうわかったよッ!』
聞こえてくるデートコールを極力思考から外して士道にそう言うと観念して叫んだ
『あのだな、十香』
『ん、なんだ』
『そ、その……こ。今度俺と』
『ん』
『で、デート……しないか?』
士道の言葉を聞いた十香はきょとんとした顔をする
『デェトとは一体なんだ』
『そ、それはだな……』
気恥ずかしくなっている様子を聞いていたトーマの耳に少し大きめの琴里の声が入ってくる
『──士道! ASTが動いたわ!』
『は……!?』
「士道の救出に向かう」
『任せた、士道助けたらそのまま離脱して、すぐにフラクシナスで回収するわ!』
「了解」
『――抜刀』
剣を引き抜いてすぐにトーマの姿はファルシオンへと変化し、炎に包まれその場から飛び立った
外にいたASTの隊員がファルシオンの方をみて何か言っていた気がしたが気にせずに士道を拾おうとした瞬間、士道の身体が校舎の外に投げ出された
『ナイスっ!』
「急降下してこのまま拾う!」
纏っていた炎を解除して士道の事を俵担ぎてキャッチすると一度剣を戻し、もう一度引き抜く
『――抜刀 不死鳥無双斬り』
そして、抜刀したことでエネルギーの溜まった刀身から斬撃を地面に向けて放つとあたり一面が土煙に包まれた
「回収頼んだ」
その言葉だけ言うとファルシオンの身体を変な浮遊感が襲い、土煙が晴れるころには二人の姿は既に消えていた
最後の方で少しだけ変身しただけであとは裏方のトーマ君!
今のところ印象に残るのが飯を作ってる所なだけのトーマ君!
十香デッドエンドはすべての始まりだから好きに暴れられないトーマ君!
そんなトーマ君が主役のデート・ア・ライブfeat.仮面ライダーセイバー
次回!いよいよ(士道と十香の)デートの始まりです