デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー   作:SoDate

74 / 128
第7‐12話,現代Ⅻ 反転

 鏖殺公が顕現し、窮地を脱した士道は一人、十香を助ける為に上の階を目指す

 

「はぁぁぁぁッ!」

 

「ぐぁっ!」

 

 目の前に現れる追手を鏖殺公で無力化していった。そこから更に少し進み、新たに現れたウィザードを無力化したが、そこでついに士道は膝をつく

 士道の使っている天使は本来であれば精霊が使用する超常の力。霊力を自身の身体に封印することの出来る士道ではあるが、基本的には普通の人間と変わりない。実際に今の士道は鏖殺公を振るうたびに損傷する肉体を回復能力で回復させて何とか保っているに過ぎない

 

「あっ……」

 

 ボロボロになった身体を動かそうとした士道だったが、身体に力が入らなくなりその場に膝をつく。辛うじて剣を取り落とすことはなかったがそれでも意思とは反して身体が動かすことが出来ない

 

「随分と手間取らせてくれたな」

 

 そう言いながらウィザードたちが士道に近づいてきた。人数は八名、警戒を解かないまま士道の近くまで来ると、完全に退路を塞がれる

 この状況を打開する策を考える前に、急に息が苦しくなる。まるで見えない何かに鼻と口を塞がれるかのように息が出来ず、少しずつ視界が霞み始める

 

「く、うぁ、ぁ……っ!」

 

 意識が途切れそうになるが、自分の目的を思い出すことで何とか意識を保つ……しかしそれも急場しのぎ、いよいよ意識が闇に呑まれようとした瞬間────

 

 

 

 ピシリと亀裂が入るような音が聞こえた

 

 

 

「うわっ!」

「な、どういうことだ!?」

 

 士道が意識を失う直前、窓ガラスが一気に我、破片が雨のように降りそそぐ。突然の事態にウィザードたちが狼狽していると、追い打ちをかけるように風圧は襲い掛かり、士道の近くに居た三人を吹き飛ばした

 

「な……っ!? 随意領域(テリトリー)が──」

 

 突然の事態に状況を把握する時間もなく、次は周囲の気温がぐんと下がる。常温だった筈の場所が周囲を冷蔵庫だと錯覚させるほどに冷え切り、ウィザードたちの展開していた随意領域が凍り付いていく

 

「て、随意領域(テリトリー)を解除しろ!」

「りょ、了解!」

 

 ウィザードたちが随意領域を解除すると同時に、士道の感じていた息苦しさが消える

 

「え……?」

「大事ないか、と聞くまでもないな」

「救援。助けに来ました」

「……大丈夫……ですか?」

「耶倶矢、夕弦、四糸乃……どうしてここに」

 

 ようやく立ち上がる事の出来た士道の近くに現れたのはフラクシナスで治療を受けている筈の耶倶矢たち三人

 

「そうやら旗色が悪いようだからな、琴里に無理言って馳せ参じた」

「助力。微力ですが、夕弦たちもお手伝いさせていただきます」

 

 耶倶矢と夕弦の二人がそう言うと、士道の隣に来ていた四糸乃も同調するように頷いた。心強い援軍がやって来てくれたことようやく認識した士道は三人に向けて頭を下げる

 

「すまん、恩に着る」

「訂正。こういう場面だと謝罪ではなく感謝が適切です」

「……ありがとう」

「呵々、それでよい。では行くぞ、我が眷属を助けに!」

「……あぁ!」

 

 耶倶矢たちと合流した士道は、全員で協力しながら進んでいくと、一際厳重な扉が士道たちの前に現れる。途中で倒したウィザードから手に入れたIDを使用し、警戒しながら中に入る

 

「……!」

 

 どうやら部屋の中は研究区画になっているらしく、要所要所がライトで照らされ部屋全体をほの暗い光で照らされている。そして進んでいった先に十香はいた。椅子に手足を拘束され顔をうつ向かせている

 

「十香!」

 

 士道は十香に向かって叫ぶがこちらの声が聞こえていないようで反応はない。反応がないのを確認した士道は急いで十香に近づこうとして……その途中で動きを止めた

 

「おや、彼ではなく君の方が先に来ましたか。五河士道」

「お前はあの時の……」

「覚えていてくれて光栄です……ですが、私一人で話をするのもアレでしょう。そろそろ貴方も挨拶をしたらどうです?」

「そうだね、そうさせてもらおうか」

 

 目の前に現れた男、イザクがそう言うと暗闇の中からもう一人、男が姿を現した。くすんだアッシュブロンドの髪に長身、そして猛禽類を思わせる鋭い双眸が特徴のその男はイザクの横に並び立つと、士道たちに頭を下げる

 

「初めまして。お初にお目にかかるね、私がDEMインダストリーのアイザック・ウェストコットだ」

「アイザック……ウェストコット」

 

 DEMインダストリー業務執行取締役 アイザック・ウェストコット。テレビを見たり新聞を読んだりしていたらどこかで目にする機会のある人物だ

 

「よく来てくれたね。ベルセルク、それにハーミットと────」

 

 最初は士道の近くに居た精霊たちに向けていたであろう視線を士道の方に向けたウェストコットは、一瞬だけ呆けたような表情を見せた後、訝し気に眉をひそめる

 

「君は……何者だ?」

 

 士道にその問いかけをした後、何かを思案するように口に手を当てる。士道も突然の行動に眉間を寄せるが、言葉を返した

 

「俺は──五河士道。ここに、十香を助けに来た! 今すぐ十香を解放しろ!」

「イツカ……シドウ。そうか、君が」

 

 士道と彼の持つ天使を見たウェストコットは、少し再び呆けた表情を見せた後、くつくつと喉を鳴らし始める

 

「……くく、精霊の力を扱うことが出来る少年……イザクやエレンから話を聞いた時はまさかと思ったが、なるほど。そう言うことか。くく、はは、はははははははははッ!」

 

 突如笑い始めたウェストコットに対し士道たちが警戒を強めると同時に、隣に立っていたイザクは少々呆れた表情を作る

 

「少し笑い過ぎですよ。五河士道たちが変に警戒してしまっています」

「はは、あぁ、すまない。だが実に滑稽じゃないか。精霊の力を扱う少年に聖剣の使い手。結局──全てはあの女が描いた物語の上だったというわけだ」

 

「……呆けたかと思えば笑い出す。不気味な奴だ」

「……少し、怖いです」

 

「あんたが笑い上戸なのはどうでもいい。それよりも十香を解放しろ!」

「もしもその言葉に従わなかったら、どうなるのかな?」

「……悪いが、無理矢理にでも従ってもらう」

 

 士道が鏖殺公をウェストコットに向けると、彼はくつくつと笑う

 

「できるのかな、君に?」

「……できるさ、十香を助ける為なら。何だって」

 

 士道がそう言うとウェストコットは肩をすくめ。その様子を見ていたイザクも取り出そうとしていた本を懐に仕舞う

 

「冗談だよ──私はエレンのように強くもなければ、イザクのように怪物を使役する力ももない。精霊三人と、天使を扱う少年では少々分が悪い。それはイザクもそうだろう?」

「……えぇ、残念ながらこちらも使える手札は殆ど切った後ですからね」

 

 イザクがそう言い終わった後、ウェストコットは近くにあったコンソールを操作した。するとほの暗かった部屋がふっと明るくなり、十香の手足を拘束していた錠がガチャリと音を立てて外れた

 

「十香!」

 

 士道が彼女の名前を叫ぶと、椅子に座っていた十香がふっと顔を上げる

 

『シ……ドー……?』

 

 少し微睡んでいた意識が完全に覚醒したらしい十香は、士道の方に目を向けると、身体中に貼られていた電極を剥がし、士道の方に走ってくる

 

『シドー……シドー、シドーっ!』

「おう……悪いな十香、待たせちまって」

 

 士道の言葉に十香がぶんぶんと首を横に振る。その仕草に士道が少し緩めた瞬間、後方にいた耶倶矢の声が飛んでくる

 

「士道! 後ろだッ!」

「え──ッ!?」

 

 直後、士道は咄嗟に鏖殺公を使い後方からの攻撃を弾く。十香に意識を取られて気が付かなかったが。いつの間にかシミーが士道たちを囲むように出現していた

 

「お前──ッ!」

「おや、私は知らないよ。イザクは何か知っているかい?」

「いいえ? 恐らく外に放っていたのがここに帰ってきたんでしょう」

「だそうだ」

 

「ふざけんな!」

 

 十香の元に向かってしまったため、士道の今の位置は耶倶矢たち三人からも離れ完全に孤立してしまっている。攻撃をしてくるシミーを鏖殺公で切り裂いていると、後方からウェストコットの声が聞こえてくる

 

「あぁ──そうそう、一つ言い忘れていたが、イツカシドウ」

 

 士道がウェストコットの方に視線を向けた瞬間

 

「──そこに留まっていると、危ないよ」

 

 何かが突き刺さる音と共に、士道は自身の胸に温かい感触が生まれた

 

「え──?」

 

 自身の身体に何が起こっているのかわからず少しの間呆然としていた士道だったが、胸から突き出ているレイザーブレイドを見た瞬間。口から大量の血が溢れ出た

 

「がはっ……」

「少し周りに気を取られ過ぎましたね、イツカシドウ」

「え……レ、ン……」

 

 士道が自分を指した人物の名前を呟くと同時に、レイザーブレイドが引き抜かれ。血の跡を残しながらその場に倒れてた。エレンはウェストコットの方に少し目を向けた後、士道にとどめを刺そうとレイザーブレイドを振り上げる

 

「士道ッ!!」

「焦燥。急いで救助を────」

 

 夕弦がそう言った瞬間。背筋が凍りつくほどに冷たい霊力が、十香を中心に溢れ出していた

 

「なっ……何が起こって」

「戦慄。とても恐ろしいものを感じます……」

「……怖い、です」

 

 その場にいる、十香以外の精霊たちが突如として起こった事態に恐怖を感じる中、ウェストコットは哄笑をする。周囲の出来事等お構いなしに、十香の身体を闇が塗り潰し、輝く

 

「王国が、反転した。さぁ、控えろ人類──」

 

 ウェストコットは、その光景を見ながら、万感の言葉にのせる

 

「──魔王の、凱旋だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トーマと美九が士道たちの居る階に辿り着いた時、眼前に広がっている光景は想像を絶するものだった。周囲には雑兵(シミー)の残骸らしきものが転がり、耶倶矢たちは呆然としたまま一点を見つめている

 

「一体、何があったんでしょう……」

「わからない……それより、あれは──」

 

 耶倶矢たちの見ている方に視線を向けたトーマが見たのは、漆黒の霊装を身に纏い、鏖殺公よりも禍々しい剣を握った十香の姿だった。彼女に視線を向けた後、周囲を見回すと血だまりの中心にいた士道も同じように十香を見つめている

 

「……美九、士道たちを頼む」

「えっ? お兄さんはどうするんですか?」

「決まってるだろ、やるべきことをやる」

 

 トーマが美九にそう言ったのと同じタイミング、少し離れた場所にいたウェストコットもまた、口を開く

 

「素晴らしい。こうも見事な反転体を見たのは始めてだ──見ろ、エレン。あれが我らの夢だ、我らの悲願だ」

 

 そう言うと、近くに来ていたエレンの肩をウェストコットが叩く

 

「さぁ、仕事だ。ようやく君の前に君が倒すべき相手が現れた、さぁ、最強の魔術師(ウィザード)よ。今こそ悪逆の魔王の首を刎ね、我らの道の礎としよう」

「──えぇ、わかっています。アイク」

「……さて、私も少々手を貸しましょう。無粋な観客はお任せを」

 

【カリュブディス】

 

「行きなさい、カリュブディス」

 

 

 

 

 

 

 刹那、トーマ、エレン、カリュブディスの三人が同時に動く。トーマはドラゴニックナイトのブックを装填し走り出す

 

『烈火抜刀! Don`t miss it!』

 

 ドラゴニックナイトへと変身したセイバーがエレンの元に向かう途中でカリュブディスに進路を塞がれた瞬間。十香の元に辿り着いたエレンのレイザーブレイドが振るわれ、十香の持つ剣とぶつかり合う

 それによって発生した衝撃波は、士道たちの事を吹き飛ばし。セイバーとカリュブディスの体勢を崩させる

 

「くっ……邪魔だッ!」

 

 体勢を崩しながら攻撃を仕掛けてきたカリュブディスの攻撃を防ぐと逆に斬撃を放つ。その一撃を受けたカリュブディスの腕は真っ二つに切られ。その姿を消失させる、それを見たイザクは驚愕の表情を浮かべ、手元の本を見る。本の表紙には僅かではあるがヒビが入っていた

 

「……まさか、聖剣の力が増しているとは。これは予想外でしたね。すみませんアイク、ここは──」

「あぁ、構わないよ。目的は達しているからね」

 

 カリュブディスが消滅したのを確認したセイバーは、そのまま眼前で戦う十香とエレンの元に向かい、刃を振るう

 

「む──」

「ッ!」

 

 振るわれた刃は二人を分断し、セイバーを含めた三すくみが完成する

 

「邪魔者ですか」

「あぁ、悪いがお前の目的は邪魔させてもらう、それで──―」

「貴様、その姿はなんだ」

「──そっちは、普段とは少し違いそうだな」

 

 それ以上、言葉は続かず、エレンとセイバーの二者がそれぞれの剣を構え、動き出す。十香へと向けられた斬撃をセイバーが受け止め、空いている方の腕で打撃を放つエレンは火炎剣の上で自身の持つ剣の刃を滑らせながらそれを回避すると、そのまま十香へと向けて攻撃を仕掛けた

 通常の人間なら避けることの出来ない太刀筋、それを完全に見切っていた十香は完全に捌ききる。しかしその一瞬の間に生じた隙を見逃さなかったエレンは左背に背負った武器を可変させると、先端に光を収束させる

 

「貫け、ロンゴミアント」

 

 眩い閃光が十香へ向かって放たれ、十香諸共ビルの天井や壁を消し飛ばす。その一撃が消滅するとエレンは軽く息を吐く……そして、本来十香の立っていた場所に彼女はいなかった

 後方から士道の十香を呼ぶ声が聞こえてくるが、それでもセイバーは気を緩めずにエレンと、彼女が視線を向けている上空に目を向ける

 

「……なるほど、口だけではないようだ」

 

 その言葉と共に、十香は右手に持った剣を振るおうと動かす。エレンはそれを止める為彼女の元に向かっていくが、セイバーは背を向けて士道たちの方へと向かう。その直後

 

「──暴虐公(ナヘマー)

 

 その声と共に、強大な一撃が振り下ろされる。その一撃が向かったのはエレン……ではなく後方にいたウェストコット。放たれた斬撃はその延長にとてつもない衝撃波を発生させる

 

『ワン リーディング! フレイムスパイシー!』

 

 士道たちの前に立ったセイバーはドラゴニックブースターに玄武神話をリードし、亀の甲羅上のシールドを展開する。衝撃波が止むと同時にシールドを解除したセイバーは、近くにやってきた士道と共に上空を見つめる

 

「なぁ、トーマ……本当に、十香なのか……あれが──」

「……多分な、それにしちゃ普段と随分感じが違うが」

 

 二人の発するその声には、僅かながらの戦慄が含まれていた

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。