デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
アスモデウスとの戦いが終わったと、トーマもまた意識を失い、気が付くと荒野の中心に立っていた。動物の姿は何処にも見えず、視界に入るのは夜空のみ
ここが何処なのか、どうして自分がこんな所にいるのか、それがわからずただ歩き続けていると彼の視界に微かな灯が映った。灯の方に進んでいくとそこにあったのは弱々しい炎で周囲を照らしている焚き火
「焚き火?」
「……来たか、炎の剣士」
「お前、アスモデウス?」
トーマがかけられた声の方に視線を向けると、そこに立っていたのは消滅したはずのアスモデウス。彼はトーマの方を一瞥すると焚き火の前に座り薪をくべていく
「どうした、座らないのか?」
「…………」
警戒するトーマを気にした様子もなく、彼はそう告げるとトーマも周囲に注意を向けながら焚き火の前に腰を掛け、言葉を発する
「お前、消滅したはずじゃないのか?」
「そうだな、俺はお前に負け消滅した。今の俺は残滓だ」
「残滓?」
「あぁ、身体は塵となり消滅したがあの本を使ったのが原因だろうな。俺と言う存在の微かな欠片が本の中に残った……その欠片も、お前らがどうする必要もなく消滅する小さなものだがな」
「じゃあ──」
「放っておいても俺は消える……むしろ、こうしてお前と話すという行為は消滅を早めるだけだ」
「ならどうして、こんな事を」
「深い意味はない、ただ敵としてではなく一人の剣士としてお前と話がしたかった」
そう言うとアスモデウスは焚き火に向けていた顔をトーマの方へと向ける。その表情はトーマが敵として相対していた時とは異なり、とても穏やかで人間らしい表情だった
「炎の剣士、お前に一つ問いたい。お前はどうして剣を振るう?」
「どうして?」
「あぁ、お前の剣は軽い。お前がどれだけの想いを込めて剣を振るおうとも……どうしようもなく軽かった」
アスモデウスは尚も言葉を続ける
「そして、お前と打ち合いながら俺は感じた。お前は酷く矛盾している……剣士としての在り方、心の底から守りたいと思う者の存在、それは確かにお前の中にある。しかしそれでも尚、お前の剣は軽かった……お前の中の何かが欠落してしまっていると思わなければならない程に」
「俺の中の何かが、欠落してる」
「先の事を言葉にしたうえでもう一度問う、お前は何のために剣を振るう」
「それは────」
その問いに対して、トーマはすぐに答えを出すことが出来なかった。自分の中にある守りたい者達の存在を認識しているにも関わらず、守るために剣を振るうという答えを出すことが出来なかった。その代わり、彼の中に浮かんだ回答は──
「──取り戻す、ため」
「ほう?」
「オレには、記憶がない。気が付いたらあの街にいて。彷徨ってるところを恩人に拾われて、それから色々あって今の生活に落ち着いた……もちろん、オレが守りたいと思う人達の為に剣を振るうって思いもある。けど……一番は、オレが何だったのか、それを取り戻したいんだと思う」
「……そう言うことか」
トーマの回答を聞いたアスモデウスは、納得したような表情になり軽く頷いた
「炎の剣士……いや、トーマ。お前の剣が軽かった理由、今理解できた」
「そうか」
「あぁ、お前の剣に足りなかったものはお前自身……そう言うことか、ならば──」
「アスモデウス?」
アスモデウスは立ち上がると何処からともなく二本の西洋剣を取り出すと、その一本を自分が握りもう一本をトーマへと投げて渡す
「──剣を取れ、残された時間……俺がお前を鍛えてやる」
「……よろしくお願いします」
トーマもまた、剣を取ると立ち上がり、目の前にいるアスモデウスと向かい合った。今度は敵としてではなく、一人の剣士として────
少しずつ、意識が浮上する感覚と共に目を開けると、視界に入ったのは真っ白な天井
「……ここは」
「目、覚めたんだ」
軋む身体を少し動かして声のした方を見ると、そこには万由里がいた
「大丈夫?」
「あ、あぁ……大丈夫だ。それよりここは一体」
「琴里が手配してくれた病院……トーマ、アスモデウスと戦った後倒れてそのままここに運び込まれたの」
「……そうだったのか」
トーマは身体を起こすと、近くに置かれていたジャオウドラゴンとエモーショナルドラゴンの本に目を向ける
「アスモデウスは、本当に消滅したんだよな」
「うん……もしかして何かあった?」
「あぁ、実は────」
トーマは万由里に夢の中であったことを伝えた。目を覚ますと夜の荒野に立っていた事、その荒野でアスモデウスと出会い、彼に鍛えられたこと
「そっか、彼がそんなことを」
「……万由里、あの人は──―」
「うん、アスモデウスは元々ソードオブロゴスの剣士だった。自分の為じゃなく誰かの為に剣を振るえる……そんな剣士」
「あぁ、なんとなくだけど……わかる気がする」
鍛錬の中、剣をぶつけ合ったトーマは彼の剣がとても重かったのを覚えている。そしてその剣の中に優しさがあったことも、身体ではなく他ならぬトーマの魂に刻まれている
「……っと、そうだ。私そろそろ戻らないと」
「戻る?」
「うん、いつまでもノーザンベースに戻らないわけにはいかないし……この本の事もあるから」
「何かあったのか?」
「この二冊から、もう力を感じないの、だから一度ノーザンベースに持ち帰って保管しておくことにしたの」
「そうか」
「うん、ブックゲートは繋がってるからいつでも遊びにきて」
「わかった、また遊びに行かせてもらうよ」
「それじゃあ、またね」
病室から万由里が出て行ったのを確認したトーマは、ベッドに倒れこみ瞳を閉じる。
こうして、一人の少女との出会いから始まったお話は幕を閉じた。しかしこれはあくまでも出会いの物語、五河士道と精霊たちの物語はまだ終わらない、トーマと精霊たちの物語は……まだ終わらない