デート・ア・ライブ feat.仮面ライダーセイバー 作:SoDate
翌日の正午、昨日起こった事を現実世界にいる琴里たちへ伝える為、トーマは鞠亜と共に再び通信を繋げていた
『……成る程ね、それじゃあそっちの世界には私たちの知ってる或守……鞠亜とは別の或守が存在する可能性があるって訳ね』
「あぁ、明確に別の個として存在するのか、それとも鞠亜の中にもう一つ人格があって夜になるとそれが活動しているのかは定かじゃないがな」
トーマがそう言うと画面の向こうにいる琴里は何かを考えるように顎に手を当てた後、鞠亜に問いかける
『鞠亜、貴方自身そのもう一人の或守に心当たりはないのよね?』
「……はい、存在するとされるもう一人の或守がどういった存在なのか。それは私にもわかりません」
『目的もその存在自体も不透明……お手上げね。このことを士道たちには?』
「一応伝えてはいる。オレに接触してきた以上、士道たちに接触しないとも限らないからな」
そう言いながら、トーマはどうしてもう一人の或守が自分に接触してきたのかを思考する。現状のトーマと士道たちの違いはこの世界に囚われているかそうでないか
「琴里、一つ聞きたいことがある」
『何かしら』
「士道たちがこっちに来た時に現実の様子は聞いたが、フラクシナスのメインコンピュータ内部で見つかったイレギュラーについてどうなってる?」
『それに関してだけど。こちら側の見解としてはイレギュラー存在=或守って結論になったわ。そう結論づけたのもついさっきだけどね』
「? それなら禁書についてはどう説明付けるんだ。鞠亜はこの本の存在を知らないようだったが……」
『トーマ、私が言ってるのは鞠亜じゃなく或守よ』
琴里の言った言葉を聞いたトーマは、彼女の言っている或守は鞠亜の事ではなくもう一人の或守であると理解する
「成る程、じゃあフラクシナスの内部にいるイレギュラーはもう一人の或守で禁書も鞠亜じゃなくそっち関連って感じで話は動いてるんだな」
『そう言うこと、だからイレギュラーが混入してる箇所は一時的に遮断、そして本来その場所が担っていた作業は別の個所を使って代用中よ……結果として一部システムが使えなくなってるけどね』
「大変そうだな」
『そうでもないわ、精々シャワーの水がお湯に変わらなくなってる程度よ』
それはそれで問題が出るのではないかと考えたトーマだったが、今その話を深堀すると更に話が脱線しそうだと感じたため思考を止める
「じゃあイレギュラーの方は問題ないんだな」
『応急措置だから、イレギュラーを無効化しないと危険なのには変わりないけどすぐにとはならない筈よ』
トーマに向けられたその言葉は、ひとまず現実での問題はないからこっちはこっちで禁書をどうにかしろと言われているように聞こえた
『とにかく、こっちもまた何か分かったら連絡するから。トーマも進展があったら報告頼むわね』
「了解」
通信を切った後、トーマは改めて机の上に置いてあるプリミティブドラゴンの本へと視線を向ける
「……寂しくて泣いちゃう、なぁ鞠亜。本にも心は宿ると思うか?」
「本に心……ですか」
「あぁ」
「私は、宿ると思います」
もう一人の或守の言っていた言葉、そして意識を失っている時に感じた孤独。それに引っかかりを感じていたトーマは思わず鞠亜にそんなことを問いかけてしまう。どうしてそんなことを聞いてしまったのかと思ったトーマだったg、以外にも或守は真面目に言葉を返してきた
「なんでそう思うんだ?」
「もしかしたら私自身が……」
「或守自身が?」
「……いえ、何でもありません。ですが、付喪神という概念が存在するのですから本に心が宿っても不思議ではないかと」
「なるほど」
一瞬言葉を濁した鞠亜を見て、頭に疑問符を浮かべたトーマだったがその後の言葉を聞いて改めて本に視線を向け目を閉じる
「…………」
「トーマ?」
目を閉じたトーマは、プリミティブドラゴンから何かを感じ取ることが出来ないかを試してみるが特に何も感じとる事は出来ない
「やっぱりダメか」
「何をしていたのですか?」
「もしかしたら何か感じ取れるものがあるんじゃ……って考えたんだがそう上手くはいかないな」
目の前にある本を制御する、どうにかする方法を見つけるのが最優先である事はわかっているものの。一番確実な方法である変身して試すという行為は危険性が高く出来ない
「……鞠亜、少し外に出ようか」
「買い物ですか?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけどさ。こうして座って考えてても思いつかないし気分転換でもするかと」
「つまり、デートと言うことなのでしょうか」
「男女二人で出かけるんなら……そうなるか」
「そうなりますね、それでは行きましょう。トーマ」
自分へ向けて伸ばされた或守の手を取り、二人のデートが始まった
「さてと、気分転換で出かけたわけだが……どこに向かうか」
「色々と見てまわるのはどうでしょう」
「そうだな、なんだかんだ鞠亜と出会ってからはスーパーくらいにしか行ってなかったしな」
商店街の中を二人で歩きながら、昨日の事を改めて思い出す
「にしても、ホントに現実じゃないんだよな」
「急にどうしたのですか?」
「いや、ここら辺で戦ったはずなのにその痕跡が一切ないのが不思議でさ」
そう言う環境に慣れてしまったから、と言ったらそれまでだがトーマにとってそれが普通になってしまっているし、精霊との接触やメギドとの戦闘で住んでいる場所の近くなら痕跡が残っていることもある。それ故にここまで何もなかったように修正されると逆に違和感を覚えてしまっている
「むぅー……」
「どうした?」
「いえ、何でもありません」
「そうか?」
「はい、それよりも早く行きましょう」
「あ、あぁ」
少しだけ機嫌の悪くなった鞠亜に手を引かれながら歩き始めると、暫くした所でふと立ち止まる
「どうした?」
「トーマ、アレはなんでしょう」
「屋台だな、今川焼きの」
「今川焼き? 大判焼きと書かれていますが」
「あの食べ物は人によって呼び方が違うんだ。場合によっては友人間における争いの火種になったりもする」
「そんなに恐ろしい食べ物なのですか?」
「いや、アレ自体は普通にうまい。少し待ってろ」
鞠亜にそう言ったトーマは屋台に近づき今川焼きを二つ買って彼女の元まで戻る
「ほれ」
「ありがとうございます……はむ」
トーマから渡された今川焼きを一つ食べると、鞠亜は目を見開いてトーマの方を見る
「美味しいです」
「だろ? 今川焼きに問わず世界にはうまい食べ物がいっぱいある」
「そうなんですね……まだまだ私の知らないことばかりです」
「これから色々知って行けばいい。幸いなことにこの世界なら時間は大量にあるからな。そんじゃオレも……ってあれ?」
トーマも自分の分の今川焼きを食べようと視線を落としたのだが、気が付けば手の中にあった筈のモノが消滅していた
「オレの今川焼き……どこいった?」
「……恐らく、彼? が食べたのかと」
そう言って鞠亜が指を差した場所を見ると、懐から青い骸骨の龍が頭だけ出して口を咀嚼していた。二人が自分の事を見ているのに気付いたらしいその龍は何事もなかったように懐に引っ込んでいった
「……え?」
「驚きました、あのような動物は見た事ありません」
「いや、オレも骸骨の龍は初めて見た……って言うかさっきのはまさか──」
懐から取り出したプリミティブドラゴンのブックの隅には、僅かにだが今川焼きの餡子が付着していた