幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
「しょ、勝者、リオン・フォウ・バルトファルト!――急ぎ医者の手配を!早く!」
結果から言うとジャリエールはグッタリして意識を失っていた、完全に戦闘不能と見做されナルシス先生がKOを宣言して止めた。
理由としてはピエールと違って共和国比では無駄にスペックが高く心が折れるのも遅かった為であった、弱音を何回か吐いてもその後には抵抗したり朦朧とした意識の中で弱々しくリオンを殴ったりと下手に根性を見せた、いや見せてしまった。
散々高圧的にイジメ抜いてくれた奴にまだ抵抗の意志があると分かったらリオンがどうするかなんて明白。徹底的に100倍返しにするに決まっている、まあ俺でもそうするが。
今まで散々いたぶられてきた奴らを中心に徐々にボルテージの上がる共和国のモブ達を他所に逆にこっちがちょっと引いていたのは内緒である、あんな魔王じみたリオン見たら王国組は誰でもゾッとするって。
しかし終わったら終わったでさっさと観客は撤収するしで、本当に1コンテンツとしてしか見てないのなこの決闘の事。なんか途中でフェーヴェル領地が内紛状態って聞いてから恐らくその領地にいた貴族子息だろう観客は青ざめていたが。
「そんなバカな!?ま、待ってくれ!!ぼ、僕様の負けで良い!!だから時間をくれ!!た、頼む!!少しだけ、す、数日で良いんだ!!」
「はぁ……俺言ったよね?『今すぐ持ってこい』って」
あ、ジャリエールが起きて土下座して懇願してる。
どうやら今すぐにはアインホルンを持って来れないのを悟ってタイムリミットを伸ばしてほしいと懇願している、まあそんな事したところでもう終わりなんだけどね。
「土下座して許しを請う、か。そんな相手、お前だったらどうするんだろうなあ〜。――まあもっとも、俺の判断の前にもう聖樹様はお怒りらしいがな」
「う、嘘だ……」
怒りの赤い魔法陣が展開される、俺はマリーを抱え、マルはステファニーとラウダ、リオンもルーデ、ルイーゼ、ノエルを連れて退避。これから下される審判を少し遠目に見守る。
しっかし勝手に期待して勝手に裏切るとか、聖樹のシステムも随分と自分本位なものだと呆れて見つめてしまう。それが共和国全体の歪みにもなってると言うに、上位存在には世界の歪みとかそういうのは我関せず好き放題やるらしい。
「ありえない!!こんなことがありえて堪るものか!!クソッ!!クソおおおおおおおおおおお!!!」
発狂してもまだ抵抗するつもりなのか加護無しで迫ってくるツタを必死に燃やしていた、さすがについさっきまで次期当主だっただけあって結構頑張っている、頑張ってはいるが……まあ上位存在の審判に人間が敵うはずもなく。
「ふざけるなよおおおおお!!こんなところで、こんなところで僕様は終わって良い人間じゃない!!離せ!!離せええええええ!!!こんなところで終わる訳にはア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!」
やがて押され始めたジャリエールは四肢をツタに捕まり抵抗虚しく右手の甲を侵食され……まあ、あっさりと聖樹の加護は剥奪されましたとさ。
その根性とかスペックをもっと別のことに使う頭さえあれば、もしかしたら再起不能にはならずに済んだかもしれないのに。
だが俺達を侵害しようとしたのなら徹底的に潰す、潰さないとならない。貴族社会なんてここまで敵対したら生きるか死ぬかみたいなもんなんだから命があるだけ救いがあると思ってもらいたい。
「あぁ……あ、あ……」
自分の身に何が起きたのかさすがに理解しているのだろう、ジャリエールは無気力に涙を流し続けるだけだった。それを見てヘラヘラしているのは俺とリオンくらいなものだろう、前世から一緒のマリーでさえ呆れて首を横に振ってるし王国組は全員ジャリエールの末路と言うよりもリオンと敵対せずに今ここにいることに心の底から感謝しながらドン引きしていた。
共和国のモブ連中はこれ見たらどういう反応したのかね。
少なくとも今いる共和国一同みたいに絶句とかはしてないと思う、そういう能天気な連中っぽいし。
「お前がどうして紋章を奪われたのか分かるかな?」
奴は何も答えない。
と言うよりも答えられないんだろう、まあここは俺の出る幕でもないから良いが。
最高にあくどい笑みを浮かべるリオンを見ながらあくびを1つ。
「調子に乗らずに俺達を無視していればこんな事にはならなかったんだよ。残念だよ、俺達にさえ関わらなければここまではしなかったのに。まあ盛大に喧嘩売られちゃったら俺は断れないからねえ、この結果はせいぜい今後に有効活用させてもらうぜ」
まあ一言一句同じこと思ってたし、実際出ていかなくても良かったな。俺は俺で仕事したし?ここで見ててもリオンの腰巾着にはならないはずだ。多分。
「あ、それはそうとお前に1つ言っておきたい事があったんだ――ありがとよ、ジャリエール。盛大なピエロになってくれて。お陰で楽しかったからな。素晴らしい時間だったぜ」
「うあぁ……あぁ……」
完全に心を折ったなあアレは。決闘に負けて、奪った船は暴走して、聖樹の加護も無くなって、そこまでやって折れない奴がいたらそれはそれで頭おかしいと思う。
こうして俺達の長い長い復讐と喜劇は幕を閉じた。
「っだー!つっかれたー!」
「はいはいお疲れ様。ほんと怪我が無くて良かったわよ、無茶したらダメなんだから」
「大丈夫だって、俺はもう1人で何もかもやるような人間じゃない。次期伯爵として部下を使えないとダメだし、俺の命は俺1人の命じゃないからな。俺が死んだら国が困るらしい」
「国だけじゃなくてあ・た・し・も・よ!その辺分かってるのかしらこのポンコツ」
「マリー泣かしたら一生後悔するから、重々承知してる」
その夜、自宅。後のことは全部リオンに任せて俺はマリーの膝の上で休んでいる。そこ、公国の時の色々の発言は良いのかとか言うな、これは表面上で仲良くしてるというムーブだから。
だから俺の発言は間違いじゃない、多分。
……まあ俺の本当の素性を言えないってのが俺の弱さなのは分かってる、分かってるさ。それでも言えないんだから俺がその程度でしか無いって自覚して生きていかないといけない。
目下この先やる事と言えばとにかくイデアルの早期捕獲、これをしない事には帝国との戦争は確実だからどうにかしないと。
「アルー?難しい顔してるわよ?」
「わりわり、この先どうやって共和国を攻略して行こうかって考えてた」
「まったくもう、面倒が嫌で兄貴に全部押し付けて来た癖に、なーに難しい事考えてんのよ。それも奥さんの膝の上で」
「すみませんでした……取り敢えず抱き着いて良い?」
「聞かずともすれば良いじゃないの。今更そういうの聞くような関係性じゃないでしょうに」
「それもそっか」
しかし考えすぎもダメだな、マリーにはお見通しっぽいしな。
今はゆっくりマリーを堪能して心を休めるとしようかな。
――俺の前々世は、今生きている環境とは比べ物にならないくらい平坦で平凡で、それでいて特別悲劇も無ければ大袈裟な喜劇も無かった。
少ししつこいくらいの愛情を振りまいてくる母親、気の優しい父親、親戚や友人達も特に大きな何かがある訳では無いがこの世をのんびりと過ごすには困らないくらいの人格者だった。
その人生の晩年で俺は『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』という作品を知った。俺が存命している内に書籍は完結しなかったものの、子どもの頃から沢山のファンタジー作品を読み、すっかり大人になって老いてきた頃にはなろう系と呼ばれるものも読んできて、中でも本当に最後の数年で出会った作品だった。
雰囲気もキャラも実に個性的で、癖が強くて身体が動かしにくくなってきていた自分の数少ない楽しみでもあった。
「おじいちゃんってさ、『来世』って信じてる?」
近所の子どもに聞かれたこの質問を今でも良く覚えている。
俺には前々世も前世も伴侶はいなかった、そして前世は違うが前々世は友人も親も親戚も、自分より先に亡くなった。
だからそれを聞かれた時、俺は1人だった。
その質問もきっと「死ぬのが怖くないのか」と聞けずにそう聞いてきたのかもしれないと感じた、老人らしくもなく性格は達観も出来なければドッシリも出来ず、一生道に迷った若者のように行く宛ても無く彷徨いながら生き、流行りのライトノベルなんかを読んでいたからそうした事柄にも造詣が深いと思われたのだろう。
「これは自分の考えでしかないけれど」と前置きをし、薄く笑みを浮かべこう答えた。
「来世では、異世界に転生してラノベみたいな恋愛をして派手に生きられるって思って余生を過ごしてるんだぜ。だってそうした方が老いていくのも楽しくなるだろ?」
その子どもはゲラゲラと笑いながら
「おじいちゃんの考え方ってすごいや!ぼくもおじいちゃんになったらそうやって生きてみよっかな。ありがと!」
そう言ってお礼を1つして去っていった。
子どもに生死感を教えろというのも分かるしそうした方が良かったのかもしれない、だが俺にはそれを教えられる程の成熟した精神は無かった。
だからこそ、子どもっぽい理想的な答えで、それでいて信じている生死感で答えた。
きっとこの子どもっぽい精神の未熟さは今この『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』の世界を生きていて尚生きている、生きてしまっているのだろう。
だから初手でユリウス達にあんな事を口走ったり前々世の知識を全開で使いながらも、同時にコンプレックスとして生きている。
そんなめちゃくちゃな、矛盾するような人間になってしまったんだろう。
せめて前々世で伴侶がいれば、大人になる事も出来たんだろうが……そもそも恋人の1人も出来なかった。今思えばそんな事あるのかと不思議に思うが、過去の事だ。
「今は今、だもんな」
1人月光が照らす暗闇の廊下でそう呟く。
いつか俺は『大人』になれるのだろうか、弱い自分を捨てられるのだろうか。月は答えない、俺も答えを持っていない。
俺はきっと前々世も前世も恵まれていた。
前世だって特筆するような事が無い平凡な家庭で過ごしてきて、俺は3度の人生で合算で軽く100年以上生きて、だと言うのにそれでも尚人生の迷子だ。
どこに答えがあるのか。
「だって言うのになあ。……ほんと、情けない」
月はやはり、答えなかった。
アルフォンソ・フォウ・ディーンハイツ 架空設定
『アルトリーベ』世界での転生者がいない場合のアルフォンソの立ち位置の話
勿論オリヴィア達とは一切関わりは無い
影で王国を支え続ける家として堅実に何の面白味も無く真面目に育つ
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ