幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第百一話『話し合いという名の一方的な要求押し付けは専売特許』

「なぁリオン、俺ここに必要なの?」

 

「昨日俺に色々押し付けてったのはどこの誰だってんだ。今日くらい一緒に針のむしろになろうぜ?」

 

「うっわー鬼畜だこと。しゃーね、じゃあ俺も遊ばせてもらうとしますよ」

 

「そう来なくっちゃ」

 

 翌日、リオンと俺vs六大貴族当主の交渉の場。

 いやほんとは俺は屋敷で寝ていたかったんだがリオンに引っ張り出されてきた、ま昨日はマリーと久々にしっぽりイチャイチャしてたからそれのちょっとした報復も兼ねられているんだろう。何せリオンの現妻達は全員王国に置いてきているからな、俺だけイチャイチャしやがってとか思ってんだろうな。何もかも当たってそうだから否定出来ない。

 

「あ、で?なんだっけ?」

 

 ちなみに俺との話に夢中でフェーヴェル家現当主のオッサンことランベールの話を半分聞いていなかった、何とも舐め腐っている。

 俺が舐め腐っていないかと言われれば鼻で笑い飛ばすくらいにはリオンと同族だが。

 

「貴様ら!!フェーヴェル家を侮辱する気か!!何度も言わせるな!お前の飛行船が暴れ回りフェーヴェル家は大損害を負ったのだ!!その賠償を貴様に請求するのだ!」

 

「聞こえないな〜」

 

「そもそも勝手に奪ったのはお宅のジャリエールでしょ。それに暴れてた時はリオンに所有権は無い、完全にアンタらのとこのやらかしなのにそれを押し付けられるのはどうなんでしょうかね。流石に王国を舐め腐りすぎなのでは?」

 

「き、貴様〜!共和国と戦争になっても良いと言うのか!?」

 

 いやいや戦争になっても良いのかってのはこっちが聞きたいが。

 だってアインホルン一隻にとんでもない損害出たんでしょ?だとしたら間違いなく戦争になった時不利になるのは共和国でしょうに、そういうところを理解してないから俺に内心でバカにされるんだよ。

 あ、ランベールは内心じゃなくてちゃんとバカにしてたわ。

 まあ他の連中もラウルト家当主以外はあまり期待出来ないと思ってるというかさっき言った通りちゃんと内心見下してはいる。理由は見下されてるから。

 

「え?良いよ?そもそも俺らに責任押し付けようとしてんの気に食わないから本当にそれで良いのかって言いかけてたところだしな」

 

「ふざけるなよ王国風情が!!」

 

「ランベール殿、まずは彼の話も聞いてみるべきではないだろうか。さて、バルトファルト伯爵、そしてディーンハイツ子爵は自分に責任を求めるというのは筋違い、そう言いたいのかな?」

 

 ランベールと違ってラウルト家現当主のアルベルクは冷静に話をする気はあるみたいだ、さすが唯一大きく評価してる共和国の当主だ。

 これで円滑に話が進められそうだ。

 

「当たり前だろ、騙し討ちで次期伯爵のブラッドを暴行、それに現伯爵リオンの所有船アインホルンを奪った挙げ句制御不能で暴れさせておいてお咎めがあるのは俺達だけ?」

 

「そうだな、俺達は被害者なのに加害者のジャリエールにお咎め無しでこっちに責任を擦り付けるのは道理が通らないんじゃないのか?それに俺はアインホルンの暴走をちゃんと止めてやったのに、恩を仇で返すとは共和国の皆様方は余程傲慢な様子で」

 

 円滑に進めるとは言ったがこれは一方的な話し合いだ。

 アルベルクには少し同情するが容赦なくやらないとこっちが危ないんでね、隙なんて見せずに徹底的に責め立て脅し立てる、それが俺達流話し合い術『ODOSHI』である。

 

「――んじゃ建前はこれくらいにしておこうか。俺らの責任にするなら覚悟くらい出来てんだよな?」

 

「覚悟だと!!」

 

「たった一隻の船に領地を蹂躙されたのはどこの誰でしたっけね。これをジャリエールの責任で終わらせるならフェーヴェル家領地での暴動程度で話は済む、だが俺らに責任を押し付けてみろ。共和国は終わりだ。不敗神話も防衛戦無敗記録もここで全部終わる、その意味が分かるか?」

 

 実際やらかしたのはアイツなんだから個人に責任を問えば終わりなのに、こういうところで引き下がらないのがThe貴族って感じでやっぱ嫌だわ。

 プライドで飯が食えるかっつーの。

 

「それはどうだろうか。実際に君達は戦っていないし勝負は付いていない。途中で切り上げたようなものだよ、良くて引き分けではないかな?」

 

 ここで割り込んで来たのはフェルナン。コイツの情報はほぼ持ってないがどちらにせよ期待するだけ無駄だというのは知ってる、あと多分このまま全面戦争になればフェルナンは死ぬだろう。何せWeb版ではあっさり戦死してたし。

 

「なら俺達に責任を問えば良いだけだ。その瞬間お前らは終わりだ、全員後悔することになる。アインホルン一隻にお前らはどれだけ沈められた?王国の船たった一隻にだぞ?それに手も足も出なかった、違うか?――それに王国にアインホルンが一隻だと誰が言った?あと隣のコイツ、コイツ自身も俺に匹敵するくらい強いぞ、俺より人的戦力も大量に持ってるしな」

 

「いやリオン並は言い過ぎだろ。まあ人海戦術だけはリオンより数段上という自覚はあるがな。俺の仲間や部下はアンタらの子息より強いからな、こっちはしたくもないが戦争をしたいなら徹底的にやるとだけは伝えておく」

 

 てかリオンは自分の戦力を大きく言うのは良いけど俺の事まで大きく言わないでくれ、自分で言うならまだしも他人に言われるのはなんか嫌。でも直轄の仲間や部下の数なら確かに俺が格段に上だし一番ランクが下の親衛隊騎士2人でも聖樹の加護無しなら1v1で六大貴族子息程度一蹴出来る。これに関してはべらぼうに騎士が強いというのは当たり前だがシンプルに共和国連中が弱いのもある。

 

「英雄殿らは気が短いようだ」

 

「はは、気が短い?本当にそうなら今頃フェーヴェル領は火の海になって再起不能になってるがな」

 

 ピリピリとした空気が漂う。フェルナンは口調こそ大人しいがちゃんとこちらを見下しているのが見える、さすが共和国の貴族様だ。

 

「分かった、言いたい事は理解した。それで、君達は我々に何を要求するのかね?」

 

 見かねたアルベルクが交代してもう一度対話してくる。やっぱこの人じゃないと話し合い進まないんじゃないの?

 

「賠償金かそれに準ずる現物だな。お前らの身内で起きた争いだって認めてやるから対価に今回の損害を口止め料込みで支払ってもらおうか。もちろん王国に対する正式な謝罪込みで、な」

 

「ええいさっきから聞いておれば好き勝手に言いよって!我々は今まで王国に負けた事など無い!」

 

「ちっ、じゃあ今すぐやるか?戦争。俺ら王国はそれを謝罪と賠償で許すって言ってんの、分かる?それが出来ないなら――」

 

「ま、防衛戦ですら無敗の称号は地に落ちるよな?頭の良いラウルト家のご当主なら分かると思うが、こんな戦争に共和国側の価値なんてほぼ無いのは明白だ。何せそれでメリットがあるのはフェーヴェル家のみ、それも勝った場合のみだ。他の家は巻き込まれ損、じゃあ答えは出てるんじゃないのか?」

 

 ランベールは横入りして来ないでほしいんだけどな。

 だが今回ばかりはラッキーだ、念押しでアルベルトに話を振る。今度のリオンの話は勝つとか負けるではなく、メリットデメリットの話だ。

 良く良く考えてもみればフェーヴェル家単独でやらかした事なのに戦争になれば他の家はただ巻き込まれ損になるだけだ、果たしてプライド以外で庇う理由があるだろうか。そしてそのプライドで国は守れるだろうか。共和国でもぶっちぎりで賢く良識のある家の当主ならそれくらい分かるよな?とリオンは問いかけているのだ。

 

「ふむ、分かった。いいだろう、共和国側で賠償金を用意しよう」

 

「議長代理!相手の主張を鵜呑みにして要求を丸呑みする気ですか!?」

 

「今回の件は共和国側に非がある。共和国は誠意を持って謝罪する」

 

「え?本当にこっちの要求をそのまま飲むの?」

 

「意外だったかな?」

 

「ま、まあそうですね……」

 

 そしてそのアンサーはというと……驚くほどにあっさりとそのリオンの要求を受け入れ承諾した。これにはリオンも不意打ちだったのかさっきまでの大胆な雰囲気は鳴りを潜めている。

 

 ただこれには明確な理由がある。共和国というよりはラウルト家単体にリオンに溜飲を下げてもらうメリットがあったということだ。

 さすがに俺もアレを書籍で見た時は驚いたが、ラウルト家にはかつてリオンに良く似た……というよりそっくりの息子がいた。

 正に瓜二つといったところだ。

 

 だがその息子は大分昔に死んでしまっている。彼を愛していた家族や使用人達は大層悲しんだそうだ。

 そして月日は流れ今、あまりにもそっくりな人間が留学生として来国してきた。アルベルクはこう考えたのだ、状況証拠からも証言からも非があるのはフェーヴェル家のみ。ここでさっさと要求を全てのんで責任を押し付けてしまえば不利益は存在しない上、亡くした息子そっくりの人間を屋敷に招待出来る。

 

 今何よりも優先されるべきは共和国のやっすいプライドでも六大貴族を無益に庇う事でもなく、リオンだった。たったそれだけだったのだ。

 

「君達留学生には本当に不快な思いをさせてしまったね、申し訳ない。それと、これは個人的な提案なのだが――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――俺は前世、愛を知らなかった。

 

 親にはネグレクトされ、施設に入れられた後も別段状況は良くならず、孤独の中で生きてきた。

 

「ようアンタ、大丈夫か?」

 

 結局施設を退所した俺は、行く宛ても無く彷徨い雨の中呆然と立ち尽くしていた。俺に行き着く場所なんて無い、そんな現実に打ちのめされかけていた。

 そんな時に俺に話しかけて来た人間がいた、俺と似たような年齢の男だった。

 

「ヒロ?どしたのその人?」

 

「なんか一人ぼっちだったから拾ってきた。家も家族もいなくて行く宛ても無いらしいから少しの間俺の家で預かることになった」

 

「……いや、それは」

 

「良いって、困った時はお互い様。旅は道連れ世は情けってな。親父と母さんも良いって言ってくれたし」

 

 その男の周りはあまりにも温かかった。

 幼なじみの女の子も、その兄も、男の両親も、全員が俺を癒し、そして働く為のサポートをしてくれた。

 やがて俺は仕事先を見つけ、住み込みで働く為にそこを去った。

 独り立ちするのが最大の恩返しだと思ったからだ。

 愛を教えてくれた人達の為に、頑張ろう。

 

 そして長期休暇が取れた時には沢山の恩返しをしよう。

 

 なのに、だと言うのに。

 

 女の子の兄も

 

 男の幼なじみの女の子も

 

 ――そして最大の恩人である男さえも

 

 みんな理不尽に死んでしまった。

 

 ああ、こんな想いをするくらいなら。

 

 

「俺は、愛なんて知らなきゃ良かった」

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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