幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第百二話『俺はあと何回胃痛になれば良いんだ』

アルベルトに食事にお呼ばれした……何故か俺もセットで。

 まあそれは良い、リオンがメインなのはそうとして俺も労ってくれるならそれに越した事は無いからな、リオンを呼んだ意味も俺は知ってるし。

 確かラウルト家のリオンとこっちのリオンは好き嫌いも同じだったんだよな、初めて食べる野菜のリアクションでアルベルトが驚いてた感じからしてその辺の事情に変わりはないらしい。

 

 まあうん、そこまでは別に何も無かった。

 このまま今は不在のセルジュの話をちょっとして終わり……だと思っていた、だってそれ以外考えられないし。

 

「セルジュは……不真面目ではないのだがね。ただ、冒険者に没頭し過ぎているというか」

 

「昔からそうなのよ。セルジュは私達を避けるように動いているし、冒険者稼業始めてからというもののそれに更に拍車が掛かったようになってしまったのよ。反発してる訳でもないし、それこそロイク辺りとは比べ物にならないくらい真面目なのだけれど……ここ最近はどこに行ってるのかしら。しばらく帰って来なくて」

 

 明らかに様子がおかしかった、俺の聞いていた、事前情報で知っていたセルジュとは食い違っていた。

 

 そもそもセルジュは『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』においてかなり特殊な立ち位置にいるキャラだ、それもナルシスやフェルナン、アルベルクとも一線を画しているレベルで異質だ。

 

 Web版ではゲーム感覚で力を手に入れて共和国統一を目指す野心満々の転生者だがそれが慢心を生みリオンの逆鱗に触れ全面戦争に繋がってしまう。

 一応生存はするが魂が抜けたように死に場所を求めて戦うしか無くなってしまう末路を迎える。ちなみにこっちではアルベルクは死ぬしルイーゼやラウルト家のリオンはそもそも存在していない。

 

 書籍版ではルイーゼに弟として見られなかった孤独感から反発しクーデターを起こし暴走してイデアルに取り込まれ、最後には助かる見込み無しとしてリオンに殺されるが心は救われる展開だった。こっちではアルベルクは生き残るしルイーゼやラウルト家のリオンがいるから家族としての深掘りがされている。

 

 つまるところルイーゼが出てくる時点で転生者の線は消して予想は書籍版準拠で見ていたが、何かがおかしい。

 書籍版のセルジュももっと問題児として扱われていたはずだ、不真面目では無いだなんて少なくとも言われてはいなかった。

 ルクシオンの監視でもセルジュはレリアとあちこち冒険に出向いているのを確認している、その度にこっそり先回りしているが全てイデアルは空振りだった。昨日もレリアとダンジョンを踏破していたが、ここも空振り。様子がおかしいという報告は上がっていなかったから警戒していなかった。油断していたか。

 

「はは、いや重ね重ね申し訳ない。そうだな――君達は冒険者だろう?セルジュの気持ちが分かったりするかな」

 

「そうですね、俺は冒険者稼業で苦境を振り払ってここまで成り上がってきたので。セルジュにも何かしら思うところがあるのかもしれません」

 

「俺も冒険は好きです。王国での冒険者の立ち位置は授業になるほど高く、自分の心身を高めるという意味合いでも冒険は重要視されています。そうした観点から見るなら、共和国での冒険者稼業も悪くは無いと思いますが……学業を疎かにしているのはちょっと、こちらとしては何とも」

 

「そうか……分かってくれる人間がいるだけで救われるかもしれないな。我々ではどうにも分かってやれないものでな」

 

「私も……冒険者なんて何が良いのか分からなかったけれど、それでもセルジュが没頭している事を否定はしたくなかったの。うん、ちゃんとメリットがあるなら良いわ。認めてあげたかったけど、何も分からないからつい否定的な事を言って。もしかしたらそれで更に反発しているのかもしれないわね」

 

 ヤバい、本当にヤバい。

 内心めちゃくちゃ動揺しているのを悟られないように必死に平常心を表に出しながら発言し続けるが、とにかく胃が痛い。

 特にこのルイーゼだ、ルイーゼはこのタイミングでは冒険者稼業に全く感心を示さず更に悪いイメージだけで話していたのでアルベルクに咎められていた。

 だというのに今の発言はどうだろう、セルジュなんて認められないと一蹴していた書籍版とは違い『認めたかったけど理解してあげられなかった』『そのせいで反発されているのかもしれない』だなんて、その発言そのものが本来ならありえないのだ。

 

 理解してあげたいという気持ちがルイーゼに残っているのは、セルジュに何らかの差異が出ていると言っているようなものだ。

 反発心が苛烈だったからこそ認められない発言があそこまで語気が強く出ていたのであって、とんでもない不仲でもなければ普通出てこない。

 

「うん、まあ帰ってきたらセルジュと話したら良いんじゃないか?家族ならじっくり話す時間もあるだろ」

 

「そうね、そうするのが良いわね。私から歩み寄って話せば、冒険者の事ももっと……」

 

「いや、ありがとうリオン君、アルフォンソ君。息子のやる事に無意識に偏見を持っていたのかもしれない。避けられている、歩み寄ってほしいと思っていたが、避けていて歩み寄らなかったのは私達の方だったな」

 

「そ、そんな事は無いんじゃ……?」

 

 ええ……こんなに和解ルート行けそうな感じだったっけラウルト家って。いやだがしかしだ、ここでラウルト家の問題を円満解決出来れば被害を抑えられる可能性も高くなる。

 こっちとしちゃ都合が良い、果てしないイレギュラーに胃痛は確かに止まらないがこれは大きなチャンスなのだ。ピエールと同じく味方に引き込められれば精神的に助かる。

 Web版はさておき書籍版は家族とのすれ違いが大きかった訳で、こっちのセルジュも基盤は書籍版だと感じているから仲良く出来るならしたい。こんな話聞いといて助けられず殺すしかないだなんて、そんなのは俺だって御免なんだよ。

 

 ……それに。なんか似てるんだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは前世の話、まだ3人とも健在だった頃。

 雨の降る日、ちょうど買い足したいものがあったからと遊びに来ていたアヤに少し待っていてもらいコンビニまで出掛けた帰りだった。

 

「ようアンタ、大丈夫か?」

 

 雨に濡れて呆然と立ち尽くす、同年代っぽい男を見掛けた。

 着ていた服もあまり綺麗ではなく目に生気も宿っていない、なんだかそんな姿が子犬のように見えてしまって放っておけずついつい連れ帰ってしまった。

 

「ヒロ?どしたのその人?」

 

「なんか一人ぼっちだったから拾ってきた。家も家族もいなくて行く宛ても無いらしいから少しの間俺の家で預かることになった」 

 

「……いや、それは」

 

「良いって、困った時はお互い様。旅は道連れ世は情けってな。親父と母さんも良いって言ってくれたし」

 

 前世の両親は底抜けのお人好し、というかお人好しという言葉が服を着て歩いているような人達というのが大きく印象に残っている。

 だから事情を話せば、少しの間置いてくれるのを快諾してくれた。両親揃って教育者だったのもあるのだろう、連れてきた奴の目を見たら一発で人生の迷子と察したのだ。

 

「ま、困った事があったらなんでも話してくれよ、な?」

 

 奇妙な出会いではあったが、そいつと過ごしている時間は何とも楽しかった。最初こそ目すらあまり合わせてくれなかったが、次第に心を開いてくれて一緒にゲームしたり馬鹿みたいな話をしたり、一人っ子だった俺になんだか弟が出来たみたいだった。

 そういえば俺より1つ年下だったっけ。

 

 いつしかしっかりと自分の足で立てるようになったそいつは、気付けば自分で住み込みの仕事を見つけてきて「いつか必ず恩返しする」と旅立っていったっけ。

 

 アイツ、アヤやタケさんとも仲良かったし3人ともちょっと寂しがってたなあ。懐かしい。

 

 アヤは料理を教えて、俺達はゲームやらレジャーやら人生を豊かにする事を沢山教えた、何も知らなかったアイツはだが飲み込みがすごく早かったんだよなあ。1年もいなかったけど、本当に思い出深い日々だった。

 

 ……だからこそアイツには、真也(マサヤ)には悪い事をしたと思っている。

 

 3人とも、そう3人ともだ。

 

 恩返しを待たずして死んでしまったのだから。

 

 真也は真面目すぎるくらい真面目だった、それこそ2ヶ月くらい経つ頃にはかなり打ち解けてくだらない話をしたり一緒にゲームしたりと俗物的な面もかなりあったが基本的にはやると決めたら徹底的にやるような性格だったのを思い出す。

 料理もゲームもレジャーも、一度やると決めたらとことんこだわって極めて行った。こだわりと集中力の凄まじさは3人よりも明確に上だったか。

 

 だから仕事にしたって一度自立して、ちゃんと一人前になって恥ずかしくなくなるまで顔を出さないようにしたんだろうな。

 本当はそれでも間違いじゃなかった、とてつもない覚悟だと褒められるべきだろう。

 

 ……その間にタケさんは事故死、アヤは新道寺に殺され俺はその新道寺と相討ちで死亡。

 真也だけ置いてきてしまったのを俺は意図して思い出さないようにしてきたし、アヤとタケさんも同じくそうしてるのだろう。

 思い出したらきっと引きずってしまう、あっちに置いてきてとても悲しませたに違いないのだから。

 

 ――もしもこの世界に真也がいたら、今度こそ置いていかずに過ごしたいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうかしたのかね?アルフォンソ君」

 

「いえ、少し遠い旧友を思い出してしまって。どうにもセルジュと雰囲気が似ていたもので」

 

「アル……なるほどな」

 

「そうだったか」

 

 まさか前世の友人だったから旧友とは言えず、誤魔化したがリオンにはお見通しだったらしい。まあ一緒に遊んでたし分かるか。

 何にせよ今日は俺も呼ばれて正解だったな、そうじゃなきゃセルジュの情報を得るのに遅れをとっていた。

 

 アイツと似ているのも相俟って、余計気になっちまうんだよな。

 あんまり他人の家庭にクビを突っ込みたくはないけど。でももしもあの末路を変えられるのなら……俺はお人好しが過ぎるのかね、全く。

 

 取り敢えず下手な事はするなよと心の中で念じるのだった。

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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