幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
(う、嘘だろ……? いくら何でもこんな展開俺の予測には――)
飛んでくるスコップ、何が何だか分からず固まる俺。
勝てるとは思わなかった、思える訳が無かった。
それでもリオンの損得勘定における引き分けへの持ち込み程度なら狙えると言う自信はあった。
ずっとその自信はあった、やれるはずだと、俺にはこの世界の『リオンの入ったこの世界』の知識が唯一この世の人間内であったから、全て問題無いと。
その心の綻びがいけなかった。
「あ……マリ……」
当たる瞬間見えたのは、何かを叫ぼうとしていたマリーの姿。
そして次の瞬間俺の意識は途絶えた。
「う……ん……?」
ここはどこだろうか、俺は今正に決闘をしていたはず。
なのに何だか心地良い寝心地で。
「起きなさいアル、着きましたよ」
「え……あ、母さん……?」
「そうですよ、何を寝惚けているんですか。今日はお隣の領地の領主さんにご挨拶に行く日なのですからしっかりしなさいな」
「うぇ!? す、すみません!」
おかしい、何故ここに母さんがいるのか。
そして俺はなんで船に揺られて空の旅をしているのか。
しかし母さんに頭が上がらない俺は反射的に謝ってしまう。
……隣の領地?
寝惚けていて意識がはっきりしないがそういえば母さんはそんな事を言っていたっけ。
……待て、この夢どこかで見覚えがある?
「ははは、そこまで言わなくても良いだろうメイア。まだアルは小さいのだし顔合わせをする時までにシャキッとしていればそれで良い」
「全く貴方は……」
小さい……俺の事が?
そんなはずは無い、俺は今年16歳になる歳のはずだ、しかも身長だって170cm中盤も……アレ?
(小さくなってる……? いや、違う……これは……夢?)
逆行が起きるなど物理的に有り得ない。
だと言うのに俺の身体は小さくなっていた……逆にそれが俺を冷静にさせた、何せそうであるなら現実では無いのだから。
……では現実の俺は何を……?
そう考えた瞬間悪寒がした。
もしも目が覚めた時、俺が無様に負けていたら?
もしも目が覚めた時、マリーと引き離される事になってしまったら?
考えたくなかった。
ならばもういっその事、夢でも良い。
この心地良い空間に身を委ねてしまった方が楽なのかも知れない。
「隣の領地を治めてる方は、どういうお名前なのですか?」
俺の口が勝手に動く。
恐らく夢だからリプレイ映像みたいなものなのだろう。
「ラーファン家と言うらしい。同い歳の女の子がいるからお前とは仲良く出来るかもな」
ラーファン家……ラーファン家……?
あ……そうか、思い出した。
この夢は俺がマリーに初めて会う日の話なんだ。
懐かしい……この時点で全てを察した俺はもう一度アヤ……現マリエに会える事実に狂喜乱舞する気持ちを抑えたいのに精一杯で、それでも抑えきれずに両親に苦笑いされてたんだっけ。
「同い歳の女の子……!」
「あらあら、アルったら興味津々ね」
「そうだな」
そして着いたラーファン家。
初見の感想としては『趣味が悪い』の一言を呟きたくなる程のゴテゴテ高級品揃いだったが、俺にそんな事はどうでも良くなる程のメリットがあった。
「は、はじめまして……わたし、マリエ・フォウ・ラーファンと言います。よろしくおねがいします」
「オレはアルフォンソ・フォウ・ディーンハイツと言う。気軽にアルって呼んでくれよな!」
ここから俺とマリーの物語は始まったんだ。
「マリーマリー遊びに行こうぜ!」
「もうっ、アルはまたきゅうに言って……」
一月も経つ頃にはもうすっかり打ち解け、どちらも素の自分を曝け出して目一杯遊んでたっけ。
「ほらマリー、あーん」
「うぅ……あ、あーん……もきゅもきゅ……」
「美味しい?」
「……まじゅい」
「じゃあやめる?」
「……アルがいないと食べきれない」
「分かった! じゃあもう一回あーん」
「……あーん」
時にはマリーの嫌いなものをあーんさせて食べさせたりして
「あそこの串焼き屋が美味いんだぜ!」
「……どうして領主の娘のアタシよりアルの方が詳しいのかしら」
時には庶民街に飛び出して美味しい串焼き屋を教えたりして
「俺、マリーの事が好きだ」
「あ、アル……」
「答えは今じゃなくて良い、いつか出してくれるその日が来るのを俺は待ってるから」
そして告白をして
「ねえアル……」
「どうしたんだよ、こんな夜遅くに」
「アタシね……ユリウス殿下達の輪の中に、アルも加えたいって思ってるの」
「……マジか」
「うん……アンタはいつもアタシの事気遣ってくれるし、細かいとこも気付いてくれるし、何より素のアタシを見せられるのはアンタくらいだし……嫌……だった?」
「そうか……ううん、嬉しい。めちゃくちゃ嬉しいよ。ありがとう」
「よ……良かった。そ、それでね、アタシ……ファーストキスとかまだだから……へ、下手なの殿下にさせられないからアルでれ、練習させて!」
「……くく、ったく本当にマリーらしいな。良いよ、俺もマリーの初めては俺以外嫌だったし……」
学園に入って、マリーからハーレムに入れてくれて、そんでファーストキスも俺がもらえて。
ずっと楽しかった。
馬鹿五人衆に目を付けられながらも、猫を被りながらも、そんなマリーとの少ないイチャイチャ出来る時間が何よりも幸せだった。
前世で叶う前に死んでしまった恋をようやく叶えられると思って、幸せだったんだ。
……じゃあ、もうこれ以上求めなくても良いじゃないか。
現実ではどうせ無様にやられて何もかも終わりなんだ。
だったらそうならない様に、俺はあの五人の後ろを着いて、いつまでも猫を被り続けて、少ない二人の時間に幸せを育めば良いじゃないか。
妥協したって良い、負けると分かっている決闘もその後も全て原作の筋書き通り馬鹿五人衆から馬鹿六人衆になってリオンの下で適当に働けば良いんだ。
夢の中でくらいやり直せるなら、そうしたって誰も責めやしない。
「ようマリー、今日も可愛いな」
「アンタは朝から元気ね……」
「そりゃな! 俺は所詮六番手なんだ、殿下達が来たらこんな事出来ないんだし今の内にイチャイチャしても良いだろ?」
そう、これで良い。
俺は流されるがままにこの身を預けて、馬鹿を演じ続ければ良い。
そうすれば俺はマリーと離れずに済むし世界だって原作通り救われる。
たとえ六番手であっても、あんな驕りで悪夢を見るくらいなら、俺は……
「本当にそれで良いの?」
「……マリー?」
「アンタ、そんな妥協する人間じゃ無かったでしょ?」
「俺は……そう、い、いくらマリーを愛してるとは言っても殿下とは格が違ったんだよ。勝てる訳が無い、だから選択出来る最善を……」
マリーの言葉に心をかき乱される。
これはあくまで幻影、俺が見てる夢の中に過ぎないはずだ。
だったら俺の理想のマリーでいてくれる、なら諦めた俺の心に寄り添ってくれるに決まってる。
そう言い聞かせ言い訳を紡ぐ。
「……いつものアルなら『俺がいつか絶対マリーを勝ち取ってやる』くらい言いそうなもんだけど」
「か……買い被り過ぎだろ、俺を。アルフォンソ・フォウ・ディーンハイツはそこまで強い人間じゃねえんだよ」
「アタシ、アンタを待ってるんだけど」
「は? いやいや待てって、俺は今ここに……」
「居ないじゃない。アンタは夢に捕らわれて現実から逃げようとしてるじゃない。アルはほんっとーにお馬鹿ね」
……違う、そうだった。
『俺の理想のマリエ・フォウ・ラーファン』は、確かに今のこの辛辣ながらも直球で言葉を伝えてくれる、ずっと俺の隣で笑うそんな人だった。
「マリー……俺は……」
「世界がどうとかそんな回りくどい事してアタシは巻き込まれて自分は六番手になったんだから、責任くらい取りなさい。良いわね! ほら、いつまでも寝てるんじゃないわよ!」
「……俺、情けないな。少し絶望的になったからってすぐ諦めたりなんかして」
涙が溢れてくる。
色んな理由を付けて回りくどく大きく遠回りしながら、それが最善だと言い聞かせ最速でマリーとくっ付く事を辞めていた。
だが、だからこそ、俺は今度こそマリーを、マリーと幸せになる為にこの舞台に立ったんじゃないのか。
「アンタは情けなくないわよ……ヒロくんの時からずっとね」
「それ……俺の……」
それは俺の前世でのマリー……アヤからの慣れ親しんだ呼ばれ方だった。
俺はやはり、自分で隠していた事とは言えもしかしたら気付かれたかったのかも知れないな。
涙が止まらなくなる。
「『アタシ』はまだアルがヒロくんだって気付いてないけど、思い出はずっと覚えてる。ずっと待ってる。だから早く行ってあげなさい」
「すまん……アヤ……俺、行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
あの日、アヤを失って。
生まれ変わってマリーともう一度会った日に決めた事を胸に。
「『もう二度と後悔しないって決めた。今度はどれだけ不格好でみっともなくても、勝ち取ってみせる』」
「う……ん……いってぇ……」
徐々に意識が覚醒する。
心地良い微睡みから若干の煙臭さと痛みを伴っているのが分かる。
良く見るとまだスコップが少し振動している、当たってからまだ数秒程の時間しか経っていないのだと咄嗟に判断し激痛が走る腕と頭を何とか動かす。
「やっべえどうしよ」
「マスターは馬鹿なのですか?」
「うっ、うっせえ! あれは『どう見ても当たったらただじゃ済まなかった』んだぞ!」
「だからと言って本気で投擲するのは操縦者諸共死ねと言っている様なものですよ」
「そうは言ってもな……!」
「おい……誰が……死んだって……?」
「お、お前大丈夫なのか!?」
「投げた張本人が……良く言うぜ……」
朦朧とする意識の中でマリーのいる方向をちらりと見る。
そこにはボロボロと涙を零す彼女が見えた。
……アイツにゃ相当心配掛けちまったみたいだな、こりゃ。
「も、もう良いわよ! そこまでボロボロになってまでやる必要無いでしょ!」
「悪いがな……この決闘はそう易々と……負けられるもんじゃあ……ねえんだよ……!」
本当ならもう泣かせたくはない、今すぐ辞めたい。
だが俺は決めたんだ、もう後悔しないって。
大の字に倒れるクロカゲの腹部からスコップを引き抜き、それを杖に立ち上がる。
機体はグラグラと立つのも精一杯だがそこは俺が長年扱ってきた鎧、何とか気力を振り絞り立たせニヤリと笑う。
「へ……へ、このスコップは貰ったぁ……!」
「あ、テメ、地味に面倒な事を!」
頭から生暖かいものが流れ落ちるのを感じる。
どうにも出血が止まらないらしい、息をするのももう限界に近いか。
それでもこれは俺の予想外ながらも一番好都合な展開に持ち込められていた。
「お楽しみは……これから、だろうが……」
「……いくら何でもルクシオン製のスコップ取られるのはちょっとキツくないか?」
「どう足掻いてもマスターの勝利は揺るぎませんがその過程においてアロガンツが先程の弾に被弾する確率、常時30%。クロカゲ搭乗者の死亡確率は現状10%、このままだと分刻みに10%ずつ上昇する見込みになります」
「よーし今すぐ辞めようそうしよう! オイアルフォンソ!」
「な……んだよ……」
「このままだとお前の命と俺のアロガンツが危ないらしい、あとスコップも返してもらいたい」
「なら……なんだってんだ……」
「俺のアロガンツとスコップとお前の生命と俺のこれからの安泰と引き換えに第六戦目の賭けをチャラにして引き分けにしたい。どうだ?」
「俺が……勝てば、殿下の、賭けに……勝つ事になるからな……っへへ、んなの、ごめんだ……それに……リオン、お前に勝てる見込みなんて最初から無かった……はぁ、はぁ……お前がそれで良いなら……俺は引き分けに『賛同する』ッ……!」
良く分からんがどうやら俺の渾身の一撃は当たればアロガンツにダメージを与えられるらしい。
それに勝ち組人生を送るのを主目的としてこの世界を生きるリオンにとってアロガンツへのダメージと俺を殺す事は中々にハイリスクノーリターンが過ぎる。
これで……チェックメイト……だ!
「……最初から引き分け目的かよ、なら最初から言えよ回りくどい……いや、八百長防止……『賭け不成立を自然成立させる』為にわざと言わなかったのかよ。はぁ、分かった。俺の方も聞いての通り引き分けに『賛同する』。審判、アイツの命が懸かってるから早めに引き分け宣告頼むわ」
「ひ、引き分けに『賛同する』を双方了承した為この試合は引き分けとなり賭けは双方第五戦目までのものを適用とし第六戦の賭けは双方『無効』とする! 救護班は急ぎアルフォンソ選手の救助と搬送を!」
「へっ……これで……実質俺の……勝ち……だ……マリー……俺は……やっ……」
意識が一気に遠のく。
俺はやれたんだ……絶望的なアロガンツ戦を、相手の性格頼りとは言え引き分けを言わせる事に成功したんだ……
これで……俺は……マリーを……
「アル、アルぅ! 死んじゃ嫌だあああああ!!」
遠くからマリーの声が聞こえる……待ってくれ、俺はあの声に反応しないといけないのに……
しかし無情にもそこで俺の意識はブラックアウトした。
※この後16話辺りからこの決闘でやらかした事とか入ってきてたりします
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ