幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:孤高の牛

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第十六話『事後処理は大切』

「……では私はこれで失礼したいと」

 

「ああ待ちたまえバルトファルト君」

 

「はい?」

 

 部屋の中からはリオンの素っ頓狂な声とアンジェリカの兄……何れレッドグレイブ家の当主になる男であるギルバートの声が聞こえる。

 俺は案の定と言うべきか、ある程度怪我が回復した後秘密裏にレッドグレイブ家に呼び出しを喰らっていた。

 理由は簡単、形式的とは言えマリーとアンジェリカは敵対同士だった事もあり一番経緯や理由を分かりやすく話せるだろう一応は殿下側に一旦は着いていた俺を呼び出したと言う訳だ。

 

 そんで次いでに引き分けの件に付いても多少は聞くんだろう。

 

「もう一人、人を呼んでいてね……もう少しだけ残っていてもらえないだろうか」

 

「はぁ……良いですが」

 

「では入って来てくれ」

 

「はっ、失礼致します」

 

 今度は現レッドグレイブ家当主、ヴィンスさんの声で俺が入る合図を出され入っていく。

 リオンは少し驚いた顔はしたもののある程度要件を理解したのか思案顔になりつつも動揺は見せない格好になる。

 

「アルフォンソ・フォウ・ディーンハイツ。今回何故呼び出されたか、分かるか?」

 

「はい、レッドグレイブ家令嬢・アンジェリカ様と敵対する様に決闘を受けたマリエ・フォウ・ラーファン及びユリウス殿下等に一度加担し、尚且つ裏切り現状客観的視点から此度の件に付いての話が出来る私に細かい事情や経緯を話してもらいたいと要請を頂きましたので参りました」

 

「うむ。そして最終戦となったディーンハイツとの一戦においても確認事項がある故、バルトファルトには残ってもらった」

 

「成程……」

 

 流石に次期国王候補だった殿下と婚約の約束を交わせる程の公爵家の現当主と跡取りとあり、一度は敵対していた人間に対するプレッシャーは半端ない。

 だがレッドグレイブ家は女性が男性蔑視を一切しない良識派の有力貴族とあり話せば分かってもらえるはずだ。

 

「ではまず、何故ディーンハイツが我が娘アンジェリカと一度は相対する選択を取ったのか、聞かせても貰おうか」

 

「決闘中お聞き頂けたかと思いますのでまずは私情の話になりますが、マリエを我がものにする為に合法的に私より上位のマリエにくっ付いていた貴族を脱落させ、私がリオンと引き分けになる事で私とリオンの賭けのデメリットを無くしたのです」

 

「……そ、それ以外にも理由があると」

 

「ええ、勿論私情以外の理由もございます」

 

 もう本音に関しては隠しても仕方ないと言うか隠してた場合公爵家との間にとんでもない亀裂が出来そうでまず出来ない、出来る訳が無い。

 しかしそれ以外の理由だってしっかりあるから俺は平常心でいられるのだ。

 

「マリエに好意を向け交際をしていたのは何れも伯爵位以上の将来王国に貢献すべき家柄の貴族嫡男達と、次期国王候補と言われていた殿下です。その国の未来を背負って立つ男達が一人の女、しかも貧乏子爵にゾッコンでは国の未来が危ぶまれます。なので強引な手ですが少し汚い手、所謂内々から作戦を実行し別れて貰いました。勿論私はただの子爵家嫡男故、一人の、婚約者のいない子爵家直系の女性を愛するのは何ら問題は無いと判断しております」

 

「父上、確かにこれは由々しき問題でありました。全員王国の中でも最上位の権力を持つ家柄でしたのでどうにかしないと行けないと……なので今回の騒動は悪い方向には向かっていないと存じます」

 

「ふむ、分かった。次にマリエ・フォウ・ラーファンはアンジェリカと今後敵対しないかに付いて話してもらいたい」

 

「マリエですが、あの子は大きく至らぬ部分があった事は事実です。ですがあくまでユリウス殿下の件はアンジェリカ様と一度話して真っ向からどちらがよりユリウス殿下の心を射止められるか『決闘』したかったと語っていました。なので殿下を独占するつもりは無く、アンジェリカ様との時間も大切にしてもらいたいと言っておりました。……殿下はまるで聞き入れなかった様ですが」

 

「……その言葉、我が王国に誓えるな?」

 

「無論にございます」

 

「よし……ならば貴殿の決闘での漢気に免じて、今回は信用しよう」

 

「……それと、言葉だけでは周りに示しが付かないので見える形での誠意をお受け取り頂きたく存じます……本題としては色々と失言した事への根回しの方が大きいんで……」

 

「はぁ……宜しい……受け取ろう」

 

 ふぅ……これで大体は一件落着か。

 マリエの言い訳とか物凄く強引だったが、金で何とか誤魔化せた様で何とか乗り切れた。

 そんな訳で今回の決闘賭博で稼いだ半分が吹き飛んだが決闘前持っていた資産と比べると天地の差程の金が今だ手元にある状況だ。

 これでマリーの身の安全と周りへの根回しが出来るなら安いものとして良しと見よう。

 

「では最後に、一応形式的な事になりますがディーンハイツ君、バルトファルト君、両者共にあの引き分けに八百長は無かったと誓えるかい?」

 

「はい。八百長なら間違っても俺はあんな大怪我させるような攻撃しませんよ」

 

「私も、八百長ならマリエを泣かせる様な展開にだけはしませんので」

 

「分かりました。話は以上となります」

 

「ではディーンハイツ、バルトファルト……君達の頼みは受け取った。後はこちらで処理をしておくから下がりなさい……ディーンハイツは今回は殿下達の暴走として誤魔化しが効くが次は無いので発言には重々気を付けるように」

 

「はい、失礼します」

 

「ぅぐ……寛大な処置感謝致します……失礼します」

 

 あの引き分けは確かに八百長云々は確認したいだろうな。

 何せ力量差があり過ぎたからなあ……上手く話が纏まって良かったと二人して下がる。

 そんでもって調子乗りすぎた事もしっかり釘を刺された、下手したら死んでたなこれ……と反省仕切りだ。

 リオンみたいに調子乗れる立場に無かったのに良くもまああんな言いたい放題言ってしまったものだ……もしかして俺って盛大に馬鹿なのか?

 

「……ふぅ、これで俺とマリーは安泰だ」

 

「まさかお前も呼ばれてるとはなぁ、アルフォンソ」

 

「そりゃ呼ばれるでしょ、アイツらに話が出来ると思うか?」

 

「……無理だろうなあ」

 

「だろ?」

 

 緊張から解かれて学園廊下。

 アルフォンソとリオンとしてはそこまで面識は無いが、双方前世の性格そのままで引き継いでいる為相性が合わない訳が無かった。

 そして他愛の無い話やらユリウス達の愚痴を言い合い、話はバルトファルト領旅行へと移る。

 

「で、アンジェリカさんの心を癒す為にオリヴィアさんも連れて、丁度良い感じに田舎の俺のバルトファルト領にご招待するって訳だ」

 

「なるほどな……ところでその旅行、俺とマリーも着いていきたいんだが……どうだ?」

 

「……は? なんでお前らまで着いてくる必要があるんだ?」

 

「いや……ウチのマリーとそっちのアンジェリカさん、オリヴィアさんを仲直りさせてあわよくば仲を深めたいと思っててな……ほら、どっちも一応マリーに嫌悪感は抱いてないんだろ?」

 

「まあ……交渉段階で明らかにユリウスが暴走してたのに巻き込まれてたって感じだったからそれはそうだけどな……何せ俺一人で決められる事じゃない。一度持ち帰って二人に相談を……って」

 

 原作ではどうにも初手があまりにも悪過ぎたこの三人。

 どうにかしてこの三人の仲良くしてるところをこの段階で見られないかと言うのが俺の真意だった。

 良い化学反応が見れると俺の直感が告げているのだ。

 

 そして好都合にも、返事は後日になるかと思いきや丁度アンジェリカ、オリヴィア両名がこちらに歩いてくるのが見えた。

 今日は運が良いぞ。

 

「バルトファルト……それにディーンハイツ……」

 

「ご無沙汰しております……なんてな」

 

「全く、ディーンハイツの猫被りには驚かされたぞ」

 

「いやぁ申し訳ない、騙すつもりは無かったんですがね?」

 

「分かっている。……それと、取り巻き……いや、友人達の事、済まなかった。そしてありがとう」

 

「さ、さてなんの事やら……」

 

 そう言えば前回会った時は猫被りしていたから……と思い出しおどけてみると簡単にカウンターが返って来てちょっと困惑。

 と言うかあの人達決闘終わった途端口軽過ぎだって……まあこの感じを見るに例の事も謝って全部清算したんだろうし良いけどさ。

 

「リオンさんリオンさん、いつの間にディーンハイツさんとアンジェリカさん仲良くなってるんでしょう?」

 

「さぁ……正直サッパリだ」

 

「あぁそっちの子には自己紹介がまだだったね。俺の名前はアルフォンソ・フォウ・ディーンハイツと言います。子爵家、ディーンハイツ家の嫡男だけど俺家柄とか貴族と平民とかそういう立場上の堅苦しいの苦手だから是非ともフランクに話してくれ」

 

「あ、はい。私はオリヴィアと言います……その、特待生として入らせてもらっています。よ、よろしくお願いします!」

 

 うお、オリヴィアを間近で見るのは初めてだが迸る良い子オーラが半端ない……流石元は主人公ポジションだけあるな。

 こんな良い子達とこれから友達になれるとか俺ってば恵まれてるね……っと、本題から話が逸れてたな。

 

「リオン、本題に移っても良いか?」

 

「あ、そうだったな……アンジェリカさん、オリヴィアさん、実はアルフォンソとマリエが今回の旅行に同行したいらしいんだが……構わないか? 不都合があるなら断るけど……」

 

「……私としては構わない。あのままあの子と話せないと心のつっかえが取れないのも大きいが……個人的に仲良くなれると思ってもいるのでな」

 

「わ、私としてもお友達になれるなら大歓迎です!」

 

「急な頼みだったのにすまない、恩に着るよ」

 

 二人共快諾してくれて良かった。

 これで蟠り解消と友人としての絆の深まり度合いも原作より良い感じになりそうな予感がするぞ。

 

「ま、賑やかなのは嫌いじゃないしな」

 

 俺としてもまだまだ怪我が癒え切ってないところでの田舎旅行ってのは悪くないと思ってるし、何よりこの時間を使って『タケさんとの再会』もしときたいからな。

 

 とにかくこの旅行、うんと楽しむとしますかね。

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ

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