幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
第二十二話『どうしてこうなった?』
「あー殿下ー? 机もう少し左にお願いしますねー」
「分かっている」
「んでダニエルそのティーセットは高いから大事にしてくれ!」
「そんなもん学園祭に出すなよ!」
「レイモンド、こっちはディーンハイツ領最高級茶葉だ。大量に取り寄せたとはいえウチの宣伝も兼ねてるから丁重に頼むぞ」
「ディーンハイツ領の最高級茶葉とか国内有数の超ブランド品だろ!? なんでそんなのが学園祭に出てくるんだよ!?」
「まぁバカな生徒から搾り取った分少しは還元してやらないとな。な、アル」
「そういうこった」
「お前らもっと恨まれてる自覚持った方がいいぞ」
夏休みが終わり秋、秋と言えばやはり文化祭だ。
前々から計画していた事をリオンに話した時は殿下達参入という事で苦い顔をされたが、値段設定やクオリティはリオンと俺で決める事と殿下達を完全にウェイターにする事の確約と有事の際のボディーガード代わりにすると言う事で納得してもらい人手の多さで準備は順調に進んでいた。
そしてやはり喫茶店のメインと言えば……
「あ、あの……変じゃないですか? こういうの着慣れてなくて」
「いや、完璧に似合ってるよ」
「うむ、少し胸を強調し過ぎたか」
「二人と比べたらアタシの小ささが顕著に……」
やはりこのメイドだろう。
アンジェもリビアも非常に良く似合っていて男子のハートを射止めるのも容易いくらい美人だが何と言ってもマリーが世界一天使だった。
「アンジェは着慣れていますね。お嬢様なのに」
「行儀見習いとして2年ほど王宮で過ごしたからな」
「リビアも似合ってるぞ。初々しい感じが実にいい」
「私も実は気に入ってます」
「な、なんて尊い光景……でもこの乙女ゲーの設定上俺との恋愛は成立しない……だって俺はモブだから……」
あっちはあっちで二人の世界に入り浸ってるが、そうやって見せつけられるとこっちもこっちで負けてられないと思ってしまう。
マリーの手をそっと握り囁く。
「マリー……世界一可愛いよ」
「うぇ!? そ、そう……? め、面と向かって言われると照れるわね……」
「ああ、何なら接客なんてさせたくない民衆の目に触れさせたくないくらい可愛いがここはマリーの可愛さを世間に知らしめるのも悪くないと思おうじゃないか。俺の嫁としてしっかり周知してもらうのは大切だからな」
「……こっちはこっちでゲロ甘が過ぎるんだが」
「……こうも見せつけられると流石に敗北感を覚えますね」
「ああ……いつか必ず奪って……と思っていたが……」
「だが折角マリエの近くにいられるんだ、それはそれ、これはこれとして割り切るのも大切だな」
「俺としては悔しさもあるが、メイド服姿のマリエを拝めたのはラッキーだしな。な、ブラッド」
「……否定はしない」
クックックッ、まずは殿下達に見せびらかす事にはしっかり成功したな。
和解したとはいえまだまだ諦めてなかったのは目に見えて明らかだったからここでしっかりとダメージを与えてライバルとしての差を見せつけ牽制するのは大事だった。
勿論それは一割くらいで残りの九割はマリーが可愛過ぎて本音が口から零れただけだが。
「リビアは綺麗な髪をしているな」
「私はアンジェみたいにスタイルが良くなりたいです……」
「これが本当に学園の女子か?」
「夢を見ているようだ……」
「その……アンタがウェイターじゃなくて良かったわ。あんまり……アタシの婚約者見せるのもアレだし」
「マリーは独占欲が強いんだな」
「き、嫌い?」
「いいや、愛してるよ」
「俺としてはこっちは夢であってほしいと思ってるよ」
「せめてそのラブラブオーラだけは消してくれ」
全くレイモンドとダニエルは分かってないな。
これが理想の恋愛婚というものなのだから堪能して行く事が礼儀だと言うのに……ん? 五人衆はさておきリオン、なんでお前まで呆れてるんだ?
おかしい、リオンとしては前世からの幼馴染で妹と弟分がようやく結ばれた構図なのにどうして呆れているんだ……?
そんなこんなで途中ジェナという面倒な乱入者もいたがしばらくこの賑やかな感じは続くのだった。
ジェナ? ああ、アイツに関しては全くもって懲りてなかったのと俺とマリーの貴重な時間を邪魔したのでリオンと二人掛りで帰ってもらいました。
さーて後はステファニーにだけ気を付ければ文化祭は完璧かな……
「あら、意外と良い茶葉じゃない。どこの物なの?」
「ディーンハイツ領から仕入れて参りました最高級品にございます」
「へぇ~、悪くないわね」
いやほんとそう思ってた時期があったんですよ。
だってあの人誰がどう見ても分かる程度には分かりやすいくらいクズで馬鹿で勝手に破滅してくタイプの人間だし。
だと言うのに……
「マルケスさんもそう思うわよね?」
「え!? あ、うん……そ、そこの茶葉は美味しいので有名だからね……」
「あらそうなの? マルケスさんは物知りね」
「オイ……どうなってやがるアル」
「いやこっちに聞かれても分かんねえよ」
殿下達五人衆がウェイターをやってる為厨房係の俺とリオンはこっそり覗きながら焦りを隠せないでいた。
そりゃそうだ、あのモブせかでも超小物である事無い事無理やりケチ付けまくって暴走するオフリー嬢ことステファニーがある程度上品に飲んでいるのだ、しかも何故かマルケスを連れて。
いや一番のツッコミどころは間違いなくなんでいるのか理解に苦しむマルケスの存在に他ならない訳だが。
「なあ……まさかとは思うんだが」
「な……なんだよ」
「お前の友達……マルケスか、アイツあのステファニーになんか上手い事騙されてるんじゃないか?」
「……ま、まさかぁ」
マルケスはああ見えて用心深いし女にそこまで興味も持っていない。
金に釣られる事も無いし色仕掛けも効果が無い、何せそれより自分の開発するメカが好きだからだ。
……いや待てよ?
「……お前からの話だと確かマルケスって『自分の』メカニック技術が所謂『完全な他人』に理解された事って無いんだよな?」
「あ、ああ」
「……だとしたらそれに上手い事付け込まれたとか」
「それだけは可能性として有り得るから正直笑えねえんだわ」
そう、マルケスのメカニック技術は、サンドゥバル家に完全に関わった事の無い人間から評価された事が無い、正真正銘0だ。
そしてアイツは自分のメカをこよなく愛する人間だ、そこを利用された時が唯一ガードが緩くなる時だろう。
そうは思いたくない、思いたくないんだが……
「こ、こっちの茶葉は甘みがスッキリしていて。それでこっちは香りにリラックス効果があってね……」
「へぇ、今度取り寄せてみようかしら。確かディーンハイツ領はマルケスさんのお友達のお父様が領主をやっているって聞いたわね」
「そ、そうなんだよ。僕の自慢の友達だから今度紹介――」
俺はここで聞くのを辞めた。
完全にマルケスが丸め込まれていた、女に興味無いからお茶会すら開催せずに自分の趣味にだけ没頭して友人も俺以外は全員五位下男爵家の男子しかいなかったあのマルケスが……よりにもよってこの後マヌケにも空賊をけしかけて自爆し自分の家の当主と跡継ぎの兄が処刑されて自分もしっかりと無様に消え去っていくステファニーなんて……最悪だ、最悪過ぎる。
あとマルケス、あの女に俺を紹介なんて頼むからしないでくれ顔も見たくないんだよ。
「……なんか、同情するわ」
「勘弁してくれ、余計頭痛がしてくる」
「それじゃあ私達は帰るわー。男爵家と子爵家が材料をセレクトした店だからどんな粗悪品が出るかと思ったけど意外と悪くなかったとだけ言っておくわ、それとアンジェリカにこう伝えなさい……今日は機嫌が良いから何もしないでおくけど精々寝首を掻かれない様に気を付ける事ね、と。さ、行きましょうマルケスさん」
「うん……ダニエルくん、レイモンドくん、アルに宜しく言っといてね」
頼むからステファニーだけはよろしくしないでほしい、助けてくれ。
「お、おう……」
「分かった……」
「……か、帰った?」
「もう出てきて良いわよアル」
「ふぅ……いやツッコミどころ満載で胃薬飲んだわ……」
何とかあの後すんなり帰ってくれたから助かったが胃薬が尊い犠牲となった、仕方ない犠牲だった。
なんで友人があんな事になってるんだよほんと……しかしマルケスのせいと言うかお陰でこの場でのアンジェとリビアに亀裂が生じる事が無かったのが不幸中の幸いか。
取り敢えずこれで一件落着……
「リオンく~ん、来たわよ~」
「は、母上!?」
「スマン胃薬、尊い犠牲としてお代わりされてくれ」
「あ、アル……? 大丈夫……?」
「マリー……? ああうん大丈夫だ、ははは……ヤバい噂しか無い伯爵家の令嬢に自分の友人が絆されて後々そんな令嬢に俺が紹介される可能性があって、何とかそれを胃薬で乗り越えたと思ったら今度は目の前に王妃様がいて胃薬飲んでるだけだからさ……うん……大丈夫……きっと……」
ああ終わってなかったよ忘れてたよ。
王妃様来襲は本来あの馬鹿ステファニーが暴れてる最中に来るからそれが無かった上に帰ってったせいでモブせかで本来起きるはずだった色んなイベントがカットされててすっかり忘れていた。
リオンは大丈夫だろうが俺は一国の王妃様相手に緊張するなという方が無理なので殿下と話す王妃様を見つつ胃薬を飲み干す。
俺の明日はどっちなんだろうか。
恐らく憑依、転生、ご都合改変等の初手魔改造を受けてるステファニー以外では世界で一番ステファニーの出番が多くなる自信しかありません(白目)
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ