幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第二十六話『俺も参加は流石に聞いてない』

「じ、ジルク大丈夫なの?」

 

「お見苦しいところを見せてしまって申し訳ありません。ですが大丈夫ですよ、骨折しただけですから」

 

「足に加え腕まで骨折した奴が言うと全くもって説得力が無いな」

 

「はは、面目無い……」

 

「でもこのレースで自分の生活費を稼ぐ予定だったんでしょ? なのに骨折なんて……」

 

「マリーは優しいなあ、原因は間違いなくコイツにあるのに」

 

 気持ちを整え医務室に行くと案の定ジルクは骨折の重傷を負っていた、それも足に加え腕までイカレていたらしく決闘時の再来かと思えるくらいボロボロになっている奴の姿は最早ギャグに近いのではないだろうか。

 

 確かにコイツに多少の引け目はあるがやはりやらかした事がやらかした事とあり同情は正直あんまり出来ないが。

 

「あの……アンジェ」

 

「ん、シェリーか。どうした?」

 

 アンジェに親しげに話し掛けてくる黒髪ロングストレートの美少女はシェリー……お気付きの人もいるかも知れないがかつてアンジェの取り巻きとして暴走しかけていた取り巻き筆頭の二人の内の一人だ。

 今では二人揃って愛称呼びをする仲になり、この人の数少ない信頼出来る友人として談笑してる姿を良く見る。

 

「ジルクさんが出られないとなると、代役を立てないと行けないのですが……」

 

「有力選手は軒並み別競技にエントリーしてるか怪我で出られないかみたいで……」

 

「ノワ……そうか、二人とも調べてくれていたのか。ありがとう……しかしどうしたものか」

 

 そしてもう一人が赤茶髪のセミロングで癖っ毛が特徴の活発少女ノワ、因みに本名はノワールらしい。

 本来ならアンジェが陰口を叩かれるフェーズだったが、脇を支えてくれる二人のお陰でそういうものは鳴りを潜めていた、グッジョブだ二人とも。

 この二人が原作だと公国を手引きしてたド外道コンビとか耳を疑うレベルだわ、今正に耳どころか目も疑うレベルの事が起きてるが。

 

「あら、随分と醜い姿になったものねえジルク」

 

 あー暫くはこの二人の変わり振りに目を細めて和やかな雰囲気で行きたかったのに出てきましたよクラリス先輩……しかもこれまた案の定本来より色んな意味で切れ味鋭そうな感じで。

 

「クラリス……やはり妨害行為はあなた方の仕業でしたか」

 

「えぇ。私を捨てたアンタにはもっと酷い目に……地獄に落ちるより苦しい生き地獄に遭ってもらうわ」

 

 クラリス先輩の威圧感が怖い怖過ぎる。

 オイオイどうなってんだよこれは、原作基準だと半グレ程度だったのがガチでグレきる直前みたいになってるじゃねえかよ。

 あーあ、シェリー、ノワとかビビりまくってんじゃん……ダニエル、レイモンドお前ら来なくて良かったな……

 

「美人が怒ると迫力あるよね」

 

「もうっ茶化さないでくださいっ。めっ、ですよ!」

 

「嘘だろリオンお前の心臓どうなってんだよ」

 

 リビアが可愛くて昇天するリオンを尻目に青ざめる俺の構図。

 こちとら圧が凄くて関わり合いになりたくないレベルなのになんでお前はふざけられるんだ? これでモブな訳ねえわ。

 

「クラリス、気持ちは分かるがあそこまでやる必要はないだろう」

 

「アンジェリカ……何よ涼しい顔して。自分も殿下に惨めに捨てられたくせに」

 

「な……貴方アンジェに向かってその言い方は無いですわ!」

 

「そ、そうよ! しかも流石にアレはやり過ぎよ!」

 

「これは当事者同士の話なの、悪いけどアンタらと話す気は無いのよ」

 

「くっ……」

 

「ありがとう……済まないなシェリー、ノワ」

 

 途中勇気を見せたシェリーとノワが庇いに入るが撃沈。

 いや大切な友人守ろうとした気概を見せただけでも賞賛に値するだろこれは……相手が悪かったんだ、落ち込むな。

 

「……お前、専属奴隷まで連れて随分派手に振る舞っているが一人だけ悲劇のヒロインにでもなったつもりか?」

 

 専属奴隷……そういや忘れてたけどコイツらの存在って色々アレなんだよなあ……だってアレだろ、身体だけの関係だけ持たせる所謂そういうセクシャルなフレンドな訳で。

 マリーには奴隷ではなく使用人としてカイルが着いているが、というか今もちゃっかり使用人だからマリーの隣にいるがアイツはあの子にとってはセクシャルなフレンドとかではなく弟みたいに可愛がってるらしい、まあ俺というものがありながらそんな事する子では無いしカイルもそれはしないだろうが。

 マリーからは生意気だのなんだの愚痴を聞くがホッコリしてしまう程だ。

 

 ……閑話休題、俺の現実逃避は終わりだ。

 

「う、うるさい! アンタに何が分かるのよ!」

 

「お嬢様、相手は公爵家です……いくら何でも分が悪過ぎます」

 

「チッ良いわ……ジルク、これからずっと仕返しをしてあげる。泣いて許しを請うのね」

 

 現実逃避終わり次いでにジルクにこの先の言葉を言わせない様にとにかくジルクにアイコンタクトを送り続ける、頼むからこれ以上余計な事をして火に油を注ぐなと。

 下手に誤魔化しても意味無いからこれしか出来ないが何とか頼む、通じてくれ……!

 

「フッ……分かってますよアルフォンソさん」

 

 よし、何とかなったか……?

 流石馬鹿レンジャー最高の馬鹿にして原作最終回まで悪癖の直らなかった致命的な作中一の馬鹿と言えどこれくらいは通じてくれないと……

 

「それであなたの気持ちが収まるなら。ただしマリエさんに何かすれば我々が許しません」

 

「ジルクー!?」

 

 うわぁ盛大に期待を裏切ってきたよこの人。

 ここまで来ると逆に期待を裏切らないまであるよこの行動。

 お前それやったらマリーに飛び火するってなんで分からないかなあ……はぁ、何かあったら不味いしカイルにアイコンタクトしとくか。

 

(分かってますよディーンハイツ様。いざと言う時は守りますから)

 

 カイルが聖人過ぎる件。

 どこぞの腹黒緑とは格が違ぇや。

 

「え!? えーっと……ご、ごめんなさい……」

 

「……はぁん? それがマリエねぇ……そもそもアンタさえ居なければ私はこんな想いしなくて済んだのよ……アンタさえ居なければ……!」

 

「ひぃ!」

 

 

 クソ、だから言ったんだぞ俺は……これ以上何も言うなって。

 原作以上にクラリス先輩に恨まれてるだろうマリーに何とかして標的を可能な限り向けさせない様に仕向けていたのはこれを防ぐ為だったのだ。

 

 完全に殺意を向けてマリーに飛び交ってくる……ここからじゃ庇うのに間に合うかどうか……いや、間に合わせる……!

 

「ご主人様っ」

 

 と、俺が飛び込むすんでのところでカイルが身を呈して自分ごとマリーを押し倒して何とかかんとか回避。

 焦り過ぎてアイツの存在忘れてたわ……さっき指示出したの俺なのに。

 

 しかしそれでも来ようとするので今度は俺が二人を庇う様にして前に出る。

 好きな女くらい守れなくてどうすんだよ。

 

「クラリス先輩……それ以上は一線を越えます。止めていただいても宜しいでしょうか」

 

「……アンタは?」

 

「アルフォンソ・フォウ・ディーンハイツ。マリー……マリエの正式な婚約者だ。確かに過去コイツがやった事は許される事では無いのかも知れない……だが、それを知って今生き直そうとしているんだ。どうにかその怒りを収めてくれないか?」

 

「止めない、と言ったら?」

 

「マリーには死んでも手出しさせない。その代わり俺を殴れ。コイツの責任は婚約者である俺の責任でもあるからな」

 

「ま、待ってよ! アタシのやった事なんだからアタシの責任じゃない! アルが背負う事無いでしょ!」

 

(コイツら見てると確かにヒロとアヤだわ……このラブラブカップルがよ……)

 

 ピリピリした空気の中近くにいたリオンの独り言が聞こえた。

 お前という奴は……空気を読んでるんだか読んでないんだか分かんねえってそういうのは。

 

「…………はぁ、良いわよ。マリエ……アンタの事は思うところは大いにあるけどその婚約者くんの顔に免じてアンタへの嫌がらせは止めてやるわ。でもジルク……私はアンタだけは何がなんでも許さないから」

 

 しかし何とか乗り切れたか……クラリス先輩が元は聖人優等生だから引き下がってくれたんだろうな。

 居なくなったと分かると冷や汗が出まくって仕方ない。

 

「ふぅ……っと、マリー立てるか?」

 

「う、うんありがとう……と、というかアルは無茶し過ぎなのよ! 全くアンタはもう~!」

 

 ガミガミと色々言ってくるマリー。

 だが今の俺は無敵だ、何せそんなお小言よりとんでもないプレッシャーを目の前で受けたんだからな、ハッハッハッ、膝が震えるなあ!?

 

「カイルもありがとな」

 

「いえ、主人を守るのは当然の事ですからね」

 

「しかしどうする? 次のレースは代役を立てるしかなさそうだが」

 

「いいえ私が出ます。それが一番冴えたやり方です」

 

「一番冴えたやり方は婚約破棄しない事だろうがよ」

 

「あとさっきのアイコンタクトが大暴投してるから少なくともお前が冴えてるは絶対嘘だわ。お陰で俺が割食ったんだぞ」

 

「……」

 

 おいジルクお前は目を逸らすなや。

 

「その事なのですが……」

 

「そ、その……代役は『二人』必要らしくて……」

 

「は? いやなんで?」

 

 何にせよこれで一旦は凌いだ……と思ったら何か凄く嫌なワードが聞こえたんですよ、ええ。

 え、なに、代役が二人? はは、そんな馬鹿な……

 

「ジルクさんのブロック予選で走った選手が全員負傷もしくは違反による強制着外らしく……そのブロックから決勝に上がれる選手が一人も居ないんです」

 

「なんだと……」

 

 そりゃアンジェもビビるわそんな事聞かされたら。

 俺もビビってるよ頭おかしくなりそうだよ。

 

「こうなったら……リオン、アル! アンタ達が出場しなさい!」

 

「はぁ? なんで俺達が?」

 

「あぁ……やっぱり俺も巻き込まれるのか……俺も参加は流石に聞いてないって……」

 

 ほらもうこれだもんな。

 あー最悪だ、俺は賭博で楽したかっただけなのに……

 

「リオン、アル、私の事は気にするな。特にリオンにこれ以上迷惑は掛けられない」

 

「……ダメ? アルぅ……?」

 

「よし出ようリオン、俺達なら向かうところ敵無しだろ!」

 

 前言撤回しよう、今俺は猛烈にエアバイクレースに出たくて堪らない気持ちになっている。

 そりゃお前マリーの上目遣い+涙目なんて見せられてみろこれに勝てると思うか、俺は思わないね。

 

「ああ! アルがマリエに取り込まれた!(とは言っても俺もアンジェパパには大きな借りがあるんだよな……俺を庇ったせいで困る羽目になったアンジェを見過ごせばアンジェも俺も立場が無い……)」

 

 因みに断った場合俺もアンジェパパことヴィンスさんにはそれこそリオンの数百倍の大恩があるので立場が一瞬で無くなります、と言うか死罪一直線ですありがとうございます。

 だから出るしか無いんだよリオンくん。

 

「ま、マリーそこまでしなくても私は……」

 

「いや……出場する」

 

「流石リオンくん話が分かるじゃないか」

 

「お前は分かりすぎな?」

 

「アタシだってアンジェの友人だもの、やれる事の提案くらいしなくちゃ。二人とも数合わせくらいにはなるから少なくともアルが順位争いにさえ絡まなきゃ大丈夫でしょ」

 

 あ、リオンは心配しないのね君。

 俺の事は心配してくれてる様で特別扱いされてる感じがしてニンマリしてしまう、大切にされてるんだなあ俺。

 

「つー訳だ泣いて喜べ緑の陰険野郎! 俺は優勝かっさらってお前の代わりに稼いできてお前に貸しを作ってやる!」

 

「俺もやれる事はやるしな」

 

 とはいえ出るからにはやれる事はやってやる。

 少しくらいカッコイイところ見せたいしな。

 

「今はあなた達を頼るしかなさそうですね。大きな借りになりそうですが」

 

「あぁすぐに返してもらうから覚悟しておけ」

 

「心配するなマリー……表彰台は狙うが何も問題は無い」

 

「いやそれが一番の問題なのよ?」

 

 さて……そんでもってかなりの大事に巻き込まれたがこのせいでアンジェ、ステファニーの乱闘を俺自身で止められないのが痛手だ。

 ここはステファニー側はマルケス、アンジェ側は殿下とシェリー、ノワを信じるしか無いか。

 

 ……それより今はエアバイクレースだな。

 

 目標は3着、手堅く表彰台乗って賞金貰うかね。

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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