幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
「悪いなセミエン、メンテナンスとか手伝ってくれて」
「良いって。リオンのも整備したかったけどアイツは全部自分でやるって言ってたから。こうやって同じ学園、同じ下級貴族の境遇の奴に託せるもん託したいんだよ」
決勝前、結局エアバイクは原作通り俺もリオンも訓練用のプロトタイプしか用意されなかったがここまでは想定内と言ったところだ。
ところで今話してる奴だが、コイツはジルクとは別ブロックで惜しくもブロック3着で決勝に行けなかった一年の有力選手だった。
ただ一年&下級貴族イビリが酷かったせいかエアバイクは故障し代役での決勝進出も叶わなかったという不憫な目に遭っていた。
だからなのか、一年で決勝に出る俺とリオンに『やれる事は全て託したい』とメンテナンスを申し出てくれたのだ。
リオンは魔改造して爆走するにしても、俺は優勝狙いではなく『リオンを妨害する選手を蹴落としてちゃっかり3着』が目的なので良い感じにメンテナンス入れてくれるなら丁度良い。
他も優勝狙いよりかリオンと俺にヘイト向けてダン先輩優勝させる腹積もりだろうし技量がそこそこでもどうにかなりそうだし。
「つっても俺授業で乗ったくらいしか無いけどな」
「にしては上手すぎだろ」
「鎧操縦はリオンを除けば殿下達より上手い自信があるからな。機体コントロールや勝負の駆け引きはお任せあれってね」
「いやほんと……お前の決闘凄かったよな。根性あるよ」
「それでも勝てる気はしなかったけどな、それに俺アレで敵大量に作っちゃったし」
しかしセミエンは話しやすくて良いな。
学園じゃ今や俺は敵だらけ、リオンと同数程度には恨まれてる存在だろうに問題無く話してくれるのは良い意味で気が緩んで助かる。
「違いない。でも俺はあんな蛮行してでも愛する人を手に入れたかったって気持ちを見て感心しちまったよ。……っと、よし、これでメンテナンス完了かな。規定内での改造もしといてやったからちょっとは目立ってくれよ?」
「予定じゃ3着以内には入る計算だ、心配ご無用ってな」
「んじゃ俺は戻るけど、怪我はすんなよ。期待してるぜー」
「はいよー」
気分転換にもなったし、さてリオンとこに行って談合でもして来るか。
まさかあの人が俺に勝ちを明け渡すなんて無いだろうが一応俺はリオン―ダン―俺の三連単一点特化で金を賭けてるんだ、下手に勝った方が損失が出る計算になる。
「えーっと、確かリオンは……げっ」
リオンの待機してる場所を探して見つけた……は良いがほぼ同時にリオンのところにダン先輩が来てしまった。
ここ被るのだけは面倒だから嫌だったんだがなあ。
「代役はお前らか……あとディーンハイツお前げっ、とはなんだ」
「お、アル……に、おや? 優勝候補筆頭のダン先輩が俺に何か?」
「そりゃあんな事あったらあんま顔合わせたくないでしょうよ……」
「その件はこちらも悪いと思ってる……しかしジルクの代わりがスコップ野郎とはな。先に謝っておくがお前に恨みはないが次のレースは本気で潰す」
「やむにやまれぬ事情でもありました? クラリス先輩にでも脅されましたか?」
ってかリオンお前の方がこの勝負にバチバチしてないか?
一番やる気無かった癖に煽りがエグい。
俺的にはソフトな描かれ方をしたアニメルートを準拠にした会話が繰り広げられると思っただけに原作版の煽りに少し引いてしまう。
「違う!! ……ゴホン、悪かった」
クラリス先輩も本来は聖人だからなあ、そりゃ否定したくもなるよな。
ダン先輩が言うにはやはり婚約破棄までは清純可憐で優等生な聖人だったらしく話し方もお淑やか、みんなの憧れの的だったがこれまたやはり夏休みからおかしくなってしまい専属奴隷は大量に付けるわ見た目も口調も不良じみてしまうわで取り巻き一同ジルクにはただならぬ恨みを抱いているとか。
「俺の家は宮廷貴族でも末席だ。爵位もなければ、俺自身は跡取りでもなかった。でもな、お嬢様はこんな俺にも優しかったのさ。俺にエアバイクの才能があると知ると、支援してくれた。おかげで卒業後はこいつに乗って働く仕事に就けそうだ」
聞けば聞く程クラリス先輩が不憫に思えて仕方ない。
勿論俺にだって確かに責任は大きくある、だからこそこの試合リオンは負けさせられない。
あと俺も好成績残さないと発言権無くすだろうし、3着になるのにはクラリス先輩への発言権を残す意味合いもあるのだ。
気を引き締めないとな。
「……優しい人だ。俺たちの憧れだった。周りの女が酷くて、他のお嬢様連中の取り巻きたちがグチグチ言っているのを聞いて……俺達はこの人で良かったと何度も思ったさ」
うんうん間違いなくこの王国の女共は95%がクソの集まりだわ。
そりゃそんな現状下の中クラリス先輩(旧)見てみろ、あまりの清楚さと聖人さで信者が出るのは仕方ないって話だろ。
「お嬢様の家はエアバイクのレース場を持っていてよ。そこを自由に使えるから練習には困らなかった。ジルクの奴も婚約が決まる前からレース場に通っていたんだぜ。お嬢様はあいつのために指導者を用意して、エアバイクも送ってさ。凄くいい顔で応援するんだよ。それが悔しいやら嬉しいやら……でもお嬢様も凄く嬉しそうな顔をいつもするから全員納得してたんだ。なのに……それなのに! ジルクの野郎は急に、しかも手紙一枚で婚約破棄を言ってきやがったんだ……! お嬢様が会おうとしても絶対に会わないまま、気が付けば婚約破棄だ……! ふざけるのも大概にしろよ……!!」
「それはボコボコにされて当然です。俺もジルクは大っ嫌い。つまり先輩と俺は同じイケメンが嫌いな仲間です」
「俺はジルクは嫌いと言う程嫌いじゃないがそれはリンチされても何も言えないですよ。せめて向き合って話さないと、そんなの誠実さの欠片も無い」
「……分かってくれるか。悪いな、少し気が楽になる」
ダン先輩のあまりに悲壮な語りに頭を抱えたくなってしまう。
心の底から大切にしたいと思ってた婚約者が急に態度を変えて手紙一枚ではいおしまいとか納得行かないってレベルじゃねーわ。
大体マリーが極度に恨まれたのだってジルクがそうやって逃げ回ってたからってのが七割くらいあるだろ。
「なら、俺は許してくれません?」
「悪いな。心情的には嫌いじゃないが、お嬢様の命令は絶対だ。……この命令だけは俺達は絶対にやり通す。何が何でも……この命と引き換えにしてでも、な」
ああダメだこの先輩も覚悟ガンギマリの原作版だ……印象的にこちらの方が俺は好感が持てて格好良いと思ったがいざ当事者になっちまうと胃薬が必要だな……
つかこのレースでリオンが勝ってもジルクの身の安全はどうなるかわかんねえなこれ。
取り敢えず死なない様に祈っとこっかジルクくん……
「……医務室の件は聞いた。無理かも知れないが、どうかお嬢様を悪く思わないで欲しい。あの人、さっきも言ったが狂っちまったのか夏休みから人が変わっちまったのさ。奴隷を侍らせて、夜はそいつらと遊んで朝帰りだ。昔は……そんな人じゃなかったのにな。俺達取り巻きだけじゃなく、アトリー家の人達も心を痛めている」
「……同情しても手は抜きませんよ」
「俺とか手抜いたら最下位まっしぐらですからね?」
「駄目で元々だ。まぁ、お前らはこういう話に興味がなさそうだから無理だろうな。別にいい。俺の単なる醜い愚痴だ……」
悲痛な言葉を置き土産に先輩は去っていった。
あの人達はどうにか報われてほしいと願ってしまう。
「バイクの改造は完了しました。今の話を聞いても優勝を狙いますか?」
「当たり前だ。俺は俺―ダン先輩―アルの三連単に大金を賭けているし俺達が最下位コンビになると思ってる連中が悔しがる姿を見せてくれるんだぞ。そのためには俺は優勝くらいするさ、なアル」
「いやーやっぱ前世から幼馴染だとやりたい事言わなくても分かってくれてるみたいで最高だぜ! 俺も同じ三連単に賭けたからとにかくリオンはやりたい放題やってくれ、俺はダン先輩との一騎打ちに持ち込める様に有象無象とバトルファイトしながら3着になるから」
「へへ、頼むぜ相棒」
「任せときな!」
それはそれとして俺達は作戦通りやる事をやるだけだ。
打ち合わせしなくても以心伝心出来てた俺とリオンのコンビを嘗めるなよ。
『いよいよ決勝レース。本命はやはり3年生のダン選手』
決勝の舞台、奇遇にも俺はリオンの隣に配置されたのでチラリと様子を窺う……小さくグッジョブを出してくれたので何も問題無いだろう。
めちゃくちゃうるさく野次ってくる外野をBGMにスタートを待つ。
『それでは決勝戦スタートです!』
さて、スタートダッシュと共に俺とリオンが囲まれる。
ここまでは何ら問題は無い、俺がわざと蛇行運転で囲んできた連中にぶつかり僅かな隙を作る。
「今だリオン! 後は任せる!」
「表彰台で会おう!」
その隙にリオンは抜け出し脱出成功、俺が囲まれる形になる。
序盤から中盤の役割はヘイト管理だが……
「ディーンハイツゥ! 王族を侮辱してタダで済むと思うなよ!」
「気に入らねえんだよ!! お前みたいな奴は!!」
「クソ外道が! 俺の金返せ!!」
おーおーこりゃ管理しなくてもヘイトしか向いてねえわ。
そりゃ決闘の時あんだけやったら殿下側の取り巻きは面白くないだろうなあ……殿下達自身には悪いと思っているがお前らには微塵も思ってないんだよねえ悪いけど。
「俺と殿下は既に和解したんで。あと確かに殿下達には悪い事したと思うけどアンタらには何の感情も無いから悪いけど落ちてな」
「な、なにぃ!? ぐわあああ!!」
『おおっと首位グループを走るリオン選手とダン選手の後ろでは激しい鍔迫り合いだ! アルフォンソ選手タフな攻撃で一台吹っ飛ばした!』
いやぁそれにしても観客の悔しがる顔を見ながらする運転は最高だねえ、しかもセミエンのメンテナンスのお陰でぶつかり合いに明らかに強くなってるな。
有難い限りだ。
『リオン選手失速したと思ったら今度は急にスピードを上げた! 信じられません!なんだこのスピードは!?』
っと、そんなこんな遊んでたらもう終盤だ。
前方ではダン先輩の独走状態だが後ろからとんでもないスピードで突っ込んでくるエアバイクが一台……いつの間にか首位グループから最後方ポツンまで落ちてた、所謂予定通りのリオンだ。
うーんこの煽り運転最高や! 良い子は真似するなよ!
『まさかの展開! リオン選手優勝争いに浮上してきた!』
「やらせるか……ぎゃっ!?」
「悪ぃがオメーらの相手は俺だよォ!」
「ちくしょう!」
そしてそのままリオンは爆速でダン先輩に並び立つ。
どうやったらそんな魔改造したのか気になるわほんと。
「速え!怖え!もう二度とレースなんて出るもんかああああああああぁぁぁ……」
『ご、ゴール! 優勝はリオン選手だー!!』
「うわぁ……ありゃオーバースペックなんてもんじゃないだろ。ま、後は3着をいただくだけなんですけどね」
1着2着が確定した後に俺もアクセルを全開にする。
ま、その後は別段ドラマも無く小競り合いでボロボロになった連中のエアバイクでは到底追い付ける訳も無く3着で無事フィニッシュ。
『2着ダン選手、3着にはアルフォンソ選手! 一年生が優勝と3着、二人表彰台に立つ歴史的快挙達成です!』
「うわぁぁ!」
「またお前らか~!」
「疫病神共が~!」
「死ね~!」
「ダーハッハッハ!! ざまぁみろ!! 今度はお天道様の下を歩ける正真正銘の功績だ!!」
あー楽しかった、俺はまた乗るくらいならしても良いかな、と近くで爆発するリオンのエアバイクを尻目にそう思う。
「……あ、そういやアンジェとステファニーの乱闘あったんだっけ、うっ急に胃痛が……」
そしてそれと同時に今思い出したくなかった事を思い出し少し心労が溜まる。
いや今は忘れようそうしよう……うん、それが良いな……
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ