幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第二十九話『なにこの状況……』

 俺は今猛烈に意味の分からない状況に遭遇していた。

 いやね、これの何時間か前結構シリアスな状況にいたと思うんですよ俺ね、うん。

 だってアレよ、クラリス先輩への罪滅ぼしとか何とか言ってリオンへの恋心後押ししてきたんですよ俺。

 普通さ、その後はしんみりとした状況とかになる訳で。

 あとこのまま行くとリビアがかなりまずい状況になるからリオンに伝えて猛ダッシュでリビアのとこ行かせて。

 少しだけでもお互い状況良くなってすれ違うけど想像以上に仲直りあっさり出来るとか、そういうの画策してた訳じゃん、実際リオンにはギリギリ伝えられたから半分は成功だけども。

 

 って今はそれはさておかないといけないんだけども。

 

 こればかりはちょっと意味が分からないんですよ本当に。

 

「マルさんや」

 

「……な、ななななんだい?」

 

「いや流石にビックリし過ぎて四度見くらいしちゃったんだけどさ……」

 

 ああ、それはそうと今俺はマルケスの部屋にいるんですがね。

 まあなんで今更この状態をお伝えしたかと言うと……

 

「なんで……ステファニー縛られてるん……?」

 

 

 

 

 

 マルケスの部屋、俺と土下座するマルケスと縛られてるステファニー、しかも鼻怪我してないし。

 なにこの状況……そもそも本来この縛られてる金髪ダブルポンデリングクソ女ことステファニーは空賊退治編の空賊のバックであり所謂黒幕、リビアを脅したりアンジェに暴言を吐きまくったりして印象を地の底から更に地の底にまで落としていくド外道だった。

 

 で? それが? なんで今の時間ここで縛られてる訳?

 そこはお前、リオンがガードして原作とは違って、この時点でリビアが不信に陥っても仲直りの際に好感度急上昇のトリガーをセットする舞台装置として存在してないとおかしい訳じゃん。

 

 マルケスお前何したんだよ……

 

「……ステファニーさんは『まだ何もしてない』んだ。だ、だから……その……アル……」

 

「ちょ、一回待ってくれ、な? 取り敢えず俺は状況がまだ飲み込めてないんだ。だから一度状況整理させてくれないか?」

 

「え、う、うん……」

 

「……そ、そこにいるのはオフリー嬢で良いんだよな?」

 

「そうだよ」

 

「で、縛ったのお前で良いんだよな?」

 

「うん」

 

「よし……ちょっとタイム……深呼吸したい……」

 

「ア、ハイ……」

 

 スーハースーハーと息を整える。

 状況整理はしたな、そして更に意味が分からなくなったな。

 ああどうしようこれほんと、一応コイツ伯爵令嬢なんだけど縛ってて良いのかね……まぁ今はそれは置いとくか。

 

「えー……っと、マル? まず聞きたいんだが、コイツ……なんで縛られてる訳?」

 

「……ごめんアル、君の言ってた杞憂が当たっちゃったんだ。ステファニーさんはこの後オリヴィアさんのところに行って、それから空賊を自作自演でけしかけるから不意打ちの連絡用にネズミくんを利用したいって僕に相談をしてきたんだ」

 

「コイツが馬鹿で良かったと心の底から思うわ」

 

 要するにステファニーの馬鹿っぷりは原作準拠だったらしい。

 姑息にもマルケスを洗脳して利用し、いざとなったら全ての責任をリビアとマルケスに丸投げして自分は尻尾切りして逃げる算段だったって事だろう。

 猿轡されてんーんー言ってるダブルポンデリング顔芸人を尻目にコイツがどの世界線でも結局は馬鹿でしか無い事が分かって安堵する。

 

 敵ながら有無を言わさず脅すくらいしないのかよと呆れながらも肩の荷が降りたような感覚に襲われる。

 あといつかこの成金には使った胃薬の代金くらい請求してやる事にしてやるか……なんか原作と違ってこの状態だと上手くやれれば追放されても死にはしないだろうし、どこ行くか知らんけど。

 

「それで……最初は止めたんだけどどうしても無理そうだったから……何とかして実行犯にしたくなくて……」

 

「って事は本当に今はコイツ何にもしてないんだな?」

 

「うん……この後本格的にカーラさんを脅して空賊を暴れさせるって……言ってたけど」

 

「なるほどねえ……ん? って事はこの後カーラに空賊動かす様に指示するのは……」

 

 しかし俺の杞憂は終わっていなかった。

 ステファニーが空賊扇動の指示をしないとなると動かすのはどこになるのかと言う問題だ。

 俺は未だ縛られてる顔芸女を見つめる……仕方ない、何とか口を割らせるしか無いか。

 猿轡を外して口を聞ける様にする。

 

「こんな事してタダで済むと思うなよ下級貴族のゴミが!!」

 

「ハイハイ大人しくしてねー、何なら今から緊急で飛行船動かしてフェイン家の領地まで行けば全て分かる話だから。悪いけど国家反逆罪でオフリー家共々死にたくないなら俺の質問にだけ答えてもらえる?」

 

「はぁ? あの雑魚男爵一人で勝てるとでも……」

 

「いや勝てるだろ。だって決闘の時リオンのアロガンツはスペックの5%も使ってないんだぞ?」

 

「そ、そんなの有り得ないわ!! それにマルケス!! お前がさっさとつべこべ言わず従えばアタシはこうはならなかったのよ!! 分かってるのか!!」

 

「……ごめんね。でも、僕のメカを初めて評価してくれて、そして僕の友達になってくれた君に悪事なんて働いてほしくなかったんだ……」

 

 やっぱりステファニーはマルケスを騙してたのか……近付いたのも、メカを褒めたのも、文化祭を回って仲良くしてたのも、全部演技だった訳だ。

 全てマルケスを洗脳してネズミくんを悪用し出し抜く為にやったハリボテだったのだ。

 

 それを分かっても尚俺の親友は、そのやってきた嘘を全て否定しなかった。

 甘過ぎると思うし、捨てたところで何一つ心が傷つかない様なクズ人間相手だし、今だって本性表して罵倒されてるのにこれだ。

 

「評価? 友達? バッカじゃないの!? 全部嘘に決まってるでしょ!! お前なんて一欠片も評価した覚えなんて無いのよ!! さっきのアンジェリカとの事も止めやがって……下級貴族の分際で――」

 

 通りで鼻の怪我が無かった訳だ。

 それはそれとして俺はこの女の口を強制的に遮る。

 

「テメェ俺の質問以外には黙ってろっつったよな? それともなんだ、今すぐフェイン家に連絡して王宮に突き出して国家反逆で死罪にしてやっても良いんだぜ? あ? 自分の立場分かってんのか?」

 

「ひっ……」

 

 何かヤクザみたいな口調になるが許してほしい。

 国家反逆罪ってだけでとんでもない事なのにそれに加えて俺の親友の、自分をやっと評価してくれる人間に出会えた気持ちや、罵倒されても尚友人と言い張り守りたいと言う気持ちを踏みにじって罵倒する姿が耐えられなかったのだ。

 

「俺はな、そこはかとなく身内に甘い人間だ。だからマルがどうしてもって言うならまだこの連休中拘束してるだけで止めて『ステファニーが何も出来なかった』という状況証拠を作り出してお前の死罪を何とかしてやろうって言ってんだ。それを無下にして罵倒するという意味を考えてからモノ言えや。あと次コイツの事馬鹿にしたらいくら親友の頼みでもお前は即刻突き出すから覚悟しろ、良いな?」

 

「ッ……」

 

「アル……そ、そこまでしなくても……」

 

「お前が助けてほしいって言ったのは分かってる。だが俺が最大限出来る譲歩がこれなんだ、許せ。ここで情報を吐かない限りこの女はどうあっても死罪なんだよ……助けたいって思うならここは我慢してくれ」

 

「……分かったよ」

 

 実際まだ脅しも空賊を動かす事もしてないならここで拘束する事が状況証拠となって王宮への説得になるのは確かだ。

 実行犯でも主導した人間でも無いなら知ってる事洗いざらい話せば身分剥奪と退学、実家の取り潰しと当主の処刑は免れなくてもステファニー本人の死罪くらいは回避可能なはずだ。

 

 俺としちゃこのいけ好かない女なんてどうなっても構わないが、それでマルケスが悲しむんなら死んでもらっちゃ困る訳で。

 面倒だと思いつつもステファニーに向き直る。

 

「アンジェとの殴り合いになり掛けた時もマルに止められたらしいな……本当に感謝しとけよ。それで? お前が動けない以上他に誰か動くよな? 誰がどんな手を使うか洗いざらい話してもらおうか」

 

「ぐっ……」

 

「はぁ……話せばお前の命だけは保証する。死んだら親友が悲しむんだから寝覚めが悪いんだよ……」

 

「クソッ……分かった、分かったわよ……!」

 

 やっと観念したか。

 いくら馬鹿でもここまでやられて観念しない方がおかしいと言われたら否定は出来ないが何にせよ本来あるべきルートが改変されてるとなれば危険な可能性もあるから早めに聞き出すに越した事は無い。

 

「んで? お前が動かないなら誰が動くんだ?」

 

「そ、そもそも今回は全て兄の計画なのよ……」

 

「……そう来た、か」

 

 聞いた瞬間頭を抱えかける。

 根本から黒幕がすげ替えられているとか気付く訳が無い。

 寧ろステファニーを捕まえないと分からない事だっただけに回り回ってこうして捕まってるのがファインプレーとしか言えないだろう。

 

「あ、アタシも確かに加担したわよ大嫌いなアンジェリカが苦しめば良いと思ったわよ! でも空賊だけけしかけて後はオフリー家からアタシは逃げるつもりだったのよ! あんな馬鹿げた家に居られる訳無いじゃない!!」

 

「お、おい急にどうしたんだよ……」

 

 何かステファニーが急に錯乱し出した件。

 しかも相当焦燥してるし怪しいワードも聞こえた気がするし…… 何だかこの空賊退治嫌な予感がする様な……いや、ここで聞くの止めるとか流石に無いな、寧ろ聞かないといけない気がする。

 

「い、一旦落ち着け……あの家が何なんだ? 教えてくれ」

 

「す、ステファニーさん大丈夫?」

 

「はぁ、はぁ……う、うるさい……あ、あの家は狂ってるのよ……何もかも……良いわ、どうせアタシの伯爵家としての地位は終わりなんだし語ってやるわよ……オフリー家の狂気を……」

 

 アルトリーベでも、モブせか正史でも、マリエルートでも一切語られる事の無かったステファニー以外のオフリー家。

 しかしこの世界線では少なくともあのステファニーが恐怖で怯える程の何かを持っている事は確かだと言う事が分かった。

 

 そしてこれから何が語られるのか……それによっては運命の歯車は大きく狂い出すのかも知れない……

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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