幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

30 / 83
第三十話『当たってほしくない予想程したくないものも無い』

「確かに悪事も沢山働いていたわよ。でもオフリー家はいつからか気付いたら兄に……ロイズ・フォウ・オフリーに家の全てを掌握されていた……そこから何もかもおかしくなったのよ」

 

 青ざめながらステファニーはそう言う。

 だが今青ざめたくなってるのは俺の方なのだ、どのルートでも名前の一つすら出ずに死んでったはずのオフリー兄……ロイズが黒幕なんて話聞かされたらアルトリーベを知ってる前提で話を進めに行こうとする転生者の立場なら全員こうなるのではないだろうか。

 少なくとも俺はそう思うから今冷や汗が止まらない。

 

「そもそもおかしくなったのは一年くらい前、それまでロイズは詐欺が上手いだけでどうでも良い存在だった。でもある日急におかしくなった……母を撃ち殺したのよ、アレが」

 

「ど……どうして、とか分かるのか?」

 

 意味が分からない。

 殺した? 自分の母親を? いくらクズ集団だと言っても身内への情くらい無いのか? 考えれば考える程頭がおかしくなりそうになる。

 声が震えるのを隠せない、マルケスもゾッとしてるのか身体を小刻みに震えさせてるのが分かる。

 

「兄曰く『僕の言う事を聞かない人間は全員こうなると言うお手本にしただけだよ、ありがとう母さん』って……あんなの人間じゃないわよ……しかも暗に『次はお前らだ』と言われてる気がして……実際に何人も殺されたし父もアタシもその日から兄の傀儡よ、当主だって名義上は父でも実権は兄のモノになってる。従わないと殺されるから……く、空賊だって兄が提案して、兄からアタシに命令が下されてそれの実行犯としてカーラが動いてるのが実態よ……分かったでしょオフリー家の異常さが」

 

「こ……これは予想以上……だな……」

 

 ロイズはサイコパスとしか言い様が無い。

 自分の意にそぐわない人間は全員殺すとかちょっと何言ってるか分からない……いや分かりたくもない。

 狂気の沙汰だろ……そりゃ逃げ出したくもなるわ。

 

 そんでもってカーラのバックにいるのもこの世界線ではステファニーじゃなくて実質ロイズって事か。

 つまりこれ、ステファニーもカーラも空賊も失敗したら全員無条件でロイズの抹殺対象になる訳で……チッ、面倒な……空賊とか強制労働者として貴族に売り渡したらそっちまで着いて来て売り渡し先の貴族諸共殺してきそうじゃねえかよ。

 

 何かしら強い力の働く場所に放り込むかこっちから空賊を抹殺するか……いや、後者はリオンが嫌がるだろうし前者で対策を後で練るか。

 

「こ、これで知ってる事は洗いざらい全部話したわよ!?」

 

「ああ……正直、今こうして引っ捕えてなきゃロイズは尻尾切りしてお前に全責任負わせて事前に逃げてただろうし助かったわ……この証言があれば少なくとも指名手配くらいはされるだろうし。ま、その後ロイズによってお前が始末されるかどうなるかはさておきここまで話しゃ一旦死罪は免れるのは確定だな」

 

 コイツもコイツで脅されてたとなれば話は変わってくるからな。

 家絡みの悪事にはまだ学生だから絡めないだろうし、学園で色々やってた+アンジェと乱闘未遂+脅されて空賊けしかけた程度ならそれこそ処分はカーラ並だと思われる。

 

「ふぅ……よ、良かったあ……ありがとうアル……」

 

「おう、まあ気にすんな……それよりここでの話は絶対漏らすなよ、良いな?」

 

「う、うん……流石に話せないし……」

 

 マルケスもホッとした様な雰囲気になり俺も少し息を吐いて肩の荷を若干降ろす。

 とんでもない話を聞いたせいで冷や汗がヤバい。

 

「……このアタシが下級貴族なんかに助けられるなんてね」

 

「なんかって……まあ良いけど。つーかあんだけ騒いでた癖に急に大人しくなるのな」

 

「アタシはもう伯爵家ではいられないんでしょ? クソ程ムカつくし今すぐにでもアンタらぶん殴りたい気持ちもあるけど、そんな事して死ぬなんて無様な真似御免被るわ」

 

 心底不服そうにする、依然縛られたままのステファニー。

 正直なところ終わったら終わったでまた暴れ出すんじゃないかと嘗め腐っていたがそこは腐っても人間、最低限の理解力と身の弁えはあったらしい。

 さて、これで一応尋問は終わりなのだが……俺としてはまだ聞きたい事があった。

 

「俺からの尋問はこれで終わりだが……一つ聞いても良いか?」

 

「……何よ」

 

「お前……なんで取り巻きも専属奴隷も連れてないんだ?」

 

 それはずっと頭の片隅に追いやっていた事だった。

 何せこれまでがそれ以外の事が重要過ぎていた為に気にしない様にしていたが一度そう言った事が終わると急に気になり出してしまう。

 この女は典型的な王国の学園女子であり、取り巻きも奴隷も連れて派手に暴れ散らかしているイメージしか無かった。

 最初にエンカウントした時、そしてエアバイクレースの時、双方共にマルケスを連れていたから特に気にする事も無かったが本来ならばマルケスは『取り巻きの一部』にしておけば都合が良かったはずだ。

 だからわざわざいつもの取り巻きを置いて闊歩するなんてまず有り得ないのだ。

 

 そう言う思考もあり、聞いてみたくなった。

 

「……ロイズは取り巻きも女の奴隷も大量に連れていたわ。あんなおぞましい奴の真似なんてやる訳無いじゃない……死んでもやらないわ……人間なんて誰も信じられる訳無いのよ……」

 

「アイツそんなヤバいのか」

 

「ええ、やりたい放題よ……誰も止められないくらいに。だからアタシは何としてでも逃げたかった……死ぬ程不服だけど……感謝はしてるわ……」

 

 古今東西、狂人を止めたいならそれ以上の狂人になり切れば良いと良く言われるが皮肉にもここでそれが実践されてるとは笑えない。

 ロイズとかいう名前すら初めて聞いたオフリー兄が飛び抜けて狂ってるせいでコイツが比較的まともになってしまってるとは……

 

 しかし……聞いた話を纏めるとこれは最悪の事態が起きてる可能性があるな。

 

「……俺はある程度の話をリオンにしてくる。勿論アイツは空賊討伐の最前線に立つから言うだけでお前に危害を加えるとか不都合な展開にはしないから逃げるなよ?」

 

「わ、分かってるわよ」

 

「マルも、ちゃんと見張っておけよ……後で護衛一人送っとくから」

 

「だ、大丈夫……」

 

「頼んだぞ」

 

 俺は早急に部屋から出るとリオンの部屋……に向かう前に一度俺の部屋に戻る、護衛を送るのを見られるとあまり良くないからな。

 

 ところで護衛に送る人物だが、まあお分かりの通りシーシェックしか居ないので送り込む。

 対人戦闘においては無類の強さを誇るアイツなら何も問題無いとは思うがな。

 

「シーシェック、いる?」

 

「こちらに」

 

 呼ぶと何故か瞬間移動して来たかの様に急に隣に現れる我が使用人ことシーシェック、こんな奴に命を狙われたらひとたまりもないだろうなと毎度ながら思う。

 

「済まないが理由は聞かずマルの護衛をしに部屋まで行ってくれないか? ……今は公に理由は話せないんだ」

 

「かしこまりました。主の頼みとあらば理由など聞くに及びません、お任せ下さい」

 

「……俺の事信頼してくれてサンキューな」

 

「アルフォンソ様がご誕生なされてから、私の使命は主アルフォンソ様の為に働く事ですので。私の方こそ、信頼して下さる事感謝します……では、行って参ります」

 

「おう」

 

 ……ほんと、すげー奴だよシーシェックは。

 

 よし、俺も自分の使命を果たしに行くかな。

 

 

 

 

 

「よ、リオン」

 

「ああ……アルか」

 

「……落ち込んでんな」

 

「俺は……とんでもない思い上がりをしてたのかも知れない」

 

 取り敢えずリオンの部屋には上がり込んだものの、当の本人は酷く落ち込んでいた。

 原作の様な悲劇が起きても浅い傷で済む様にと、クラリス先輩のところから帰るや否やリオンに猛ダッシュで追い付くとそれとなく「もしかしたら一人でいるところを狙われるかも知れない」と言い向かわせ、俺もすぐ追い付く算段だったのだがあんな事があった為無理だった。

 

「らしくないな」

 

「……リビアさ、カーラに言われたらしいんだ。『準男爵家の私でさえ純粋な貴族からは人間に見られないのに貴方が貴族の友達になんてなれる訳が無いのよ。アタシも貴方も、どうせペット同然なのよ』って」

 

「うわぁ……」

 

 ステファニーが居ない現状でどうやってリオンが落ちこむ展開にもつれ込んだのかと思ったが原因はカーラだった。

 アイツも大方オフリー家に原作を超える追い詰められ方をしたからリビアに当たっちまったんだろうが……

 

「それでさ、俺リビアに聞かれたんだ。『どうして私に近付いたんですか?』って。友達になりたかったからって言いたかった……でも言い切れなかった。だって俺はリビアの事もアンジェの事も、最初は舞台装置の一部として近付いた心があったからな。はは、そんな訳で俺、嫌われちまったって事だ」

 

 あーもう、それにしたってリオン……タケさんはいつもは気楽な方向に進みたがる癖に大事なところで深く考え過ぎなんだよ。

 それがこの人が優しいって言われるところなんだけど、場合によってはこうやってなるから誰かが立て直さないと。

 

「正直に今の気持ち言えば良いじゃん。友達になりたかったって言葉は本当なんだから」

 

「か、簡単に言うけどな……」

 

「……後悔しない生き方をしてほしいんだよ、タケさんには。俺は……あっちの世界で後悔があったから、特に」

 

 あとこんな感じで私情もたんまり入ってるけどな。

 

「ヒロ……分かった。お前に言われたなら兄貴分としてウジウジしてばかりでも居られないよな」

 

「そーいう事」

 

 ほら、こうして背中を蹴り飛ばせばこの人は何だかんだ立ち直る。

 原作やアニメのリオンと違って、序盤から同じ境遇と認識出来る俺がいるからこそなし得られる結末があるんだってとこ見せてやる。

 

「あ、そういやヒロここに来たって事は話す事あるんじゃないのか?」

 

「ああそうそう、ちょっとステファニーの事で面倒な事になってな……」

 

 おっと本題を忘れるところだった。

 傷心状態で話すのも忍びないと気を取られてしまった様だ。

 俺はステファニーがマルケスによって今捕まえられてる事、バックの黒幕がオフリー兄である事を伝える。

 

「……こりゃ確かに面倒な事になってるな。それで、そのロイズって奴の話聞いてると俺は一つの結論に至ったんだが」

 

「奇遇だな、俺もこのイレギュラーを聞く限りで大きな可能性に思い至ったんだけど」

 

 これを伝えたかったのは情報の共有も勿論だが、これを聞いての認識の擦り合わせもあった。

 まあその、当たってほしくない予想程したくないものも無いんですがね……

 

 二人揃って溜め息を吐き出す。

 

 

 

 

 

「ロイズ、転生者じゃね?」

 

「ですよねー……」

 

 吐いた溜め息は、虚空に消えていった。




誰なんすかねロイズくん…

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。