幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
連休明けの教室、そこには同時に五位下昇格を果たした二人、つまり俺とリオンがいた。
キラキラした俺とげっそりして死にかけてるリオンの対比はそれぞれの心情を明確に表してると言えるだろう。
「リオン、酷い顔だな」
「もっとアルみたいに喜んだら? 折角昇進したんだし」
「下手に出世なんてしたくなかった……五位下なんて艦隊指揮取らないといけないしそれ以外にもやらなきゃいけない事が増えたし……はぁ……不幸だ……」
「俺は将来的に子爵になるんだから今男爵貰っても損なんて一つも無いからな。それに今から五位下を貰えるんなら自分でやれる事も増える訳だし爵位を使えば金も稼げる。完璧だ」
「アルはほんとお金稼ぎが好きよねえ」
「金さえあれば困る事なんて無いからな。それに爵位があればその地位でマリーを守る事も出来る」
「……そ、そんな事言われたら恥ずかしいじゃない」
実際俺にとっての五位下はそれだけでマリーのバリアにもなるのが最大の好都合となっている。
今までは後々子爵の爵位は貰うが今はまだ何の位も無い下級貴族子息の婚約者として色んな意味で嫌なターゲットにされてきたがこれからは『五位下男爵の婚約者』。
つまりマリーにイジメを行えば男爵への侮辱にも繋がる訳で、格上に対しての侮辱なんて行えば下手をすれば廃嫡と学園追放が待っている。
そんなリスクを犯してまでイジメを行う奴なんてそうはいないからこの身分が非常に大きなアドバンテージとなる。
リオンはそもそも婚約者もいなければこれでバルカスさんを越しての五位下男爵、ひっそり生きたかったコイツにとっては六位より上なんて絶対要らない重りって訳で俺とは事情が全くもって違うからそこには同情を送りたい。
「相変わらずこの二人はラブラブを見せつけてくるな」
「マリエさんがしっかり者だからね……こんな可愛くて良い子が幼馴染で婚約者とかアルが羨ましいよ」
「婚約者か……修学旅行終わったらお茶会でも開くか」
「……確かにそれは良いかもな」
相変わらずはこっちのセリフでもある。
レイモンド、ダニエル含むこの教室内の男子の目線は俺に向かっての恨めしさが滲み出ている……友人の二人はもう慣れたもんって感じでそこまで感じないが。
そして本来俺はここで「いやリオンにはリビアとアンジェがいるだろ」とツッコミを入れたかったのだが、辞めた。
理由としてはここで自然とクラリス先輩を投入する為である。
リビアがリオンに告白してリードした様に、俺は俺で密かにクラリス先輩のサポートをそれとなく後押しして行くスタイルを続けている。
え? あの時最後の一押しとか言ったって?
俺がやるのはあくまでもチャンスの場所を作る事だからセーフだ。
んでアルトリーベの修学旅行と言えば、三学年合同の旅行だ。
それぞれ三箇所ある内から希望の場所を提示して行く旅行だけに、そこでも俺はクラリス先輩にリオンの行き先の情報を逐一流す算段という訳だ。
先輩は学年的にも一つ上でリオンとの出会いも二人に比べ遅く相当遅れを取っている状況だからこそチャンスの場面は多くしてもバチは当たらないはずだ。
因みに行き先は俺とリオンとでしっかり裏金を回しました、その為の金です。
「珍しいな、お前なら一目散にリビアとかアンジェとかとの関係性で茶々入れてくるもんだとばかり……」
「まあ一応体裁的にお茶会くらい開いとかないと嘗められるってのもあるからな。因みにそこには俺も参加するから宜しく、と言うかディーンハイツ領の紅茶の宣伝に使わせてもらう」
「清々しいまでの商売根性ねアル……」
「領地が潤えば自然と我が家も潤うからな。それに五位下の力がどこまで宣伝に使えるのかのお試しにもしときたいし」
「決闘の時から思ってたけどアルってやる事が徹底してるよね」
「敵に回したら証拠を消した上で殺されそう」
「心外な。俺は敵側の不都合な証拠をバラ撒いて法の元で死罪にしてもらうくらいしか出来ない気弱な少年だぞ」
「どこをどう見てもそれは気弱とは言わないのよ……」
失礼な、俺は普通に殺す事なんて出来ないか弱い少年なのに。
ただマリーの為なら手段を選ばないだけなだけだ。
それはさておきお茶会の算段は本音だ、何なら修学旅行の飛行船で提供される紅茶にもディーンハイツ領の物を提供させてもらっている。
勿論だが提供時に生産地のウチの名前をコールして貰える契約付きだ、VIP対応に感謝だな。
「因みに俺は修学旅行の飛行船で出る紅茶にもディーンハイツ領の物を提供してるから感謝したまえよ諸君」
「文化祭に続いて良くそんな大量に提供出来るな……」
「まぁディーンハイツ領の紅茶マジで美味いから助かるけど」
「賭博で搾り取った金と空賊討伐で入った報奨金と空賊が貯め込んでた金銀財宝もあるからな。これを機に先輩達にも領地の紅茶をご贔屓にしてもらいたいと先行投資しようって話だ」
嫌われてるとはいえそれはそれこれはこれで上質な物を好むのがこの世界の貴族の性質、ならばここで宣伝しない手は無い。
特に上級貴族は下級貴族の領地には興味が無いからウチの知名度は低い、だが上質な物は好き、つまり良いカモになるという訳だ。
「アルのとこの紅茶は疲労回復にも効くから重宝してるぜ」
「リオンお前はその歳で疲労が積み重なり過ぎなんだよ……」
何食わぬ顔で一番悲しい事を言うリオンを尻目に、修学旅行を待ち遠しく感じるのだった。
そしてあっという間に迎えた修学旅行当日、これの帰りに公国に襲われる事になるという盛大な胃薬案件を抱えているがこれに関してはウチの艦隊……ウイングシャークを含めた全勢力がいつでも出撃可能な状態に整備されているから一旦はこれは隅に置いておこう。
豪華な船でゆっくりと紅茶と軽食、焼き菓子やケーキ、ダーツ等を優雅に楽しむ。
この世界限定かどうかは定かでは無いが、ここでの修学旅行は勉学では無くほぼお遊びな為こんな感じでやりたい放題出来る。
「さぁ今回、紅茶の方は茶葉の名産地でもあるディーンハイツ領の領主ディーンハイツ子爵家嫡男、アルフォンソ男爵様より御提供いただきました。香り、味も最上ながらリラックス効果や精神安定、疲労回復等効力も幅広い物となっております。気に入りましたら是非ご贔屓に!」
お、ちゃんとコールも入ってるな。
これに関しても飛行船の所有者側に裏金を渡してこの修学旅行中スポンサー紛いな事をしてもらっている。
「成程、これが噂のディーンハイツの紅茶か……確かにこれは良いな」
「まさか下級貴族の領地にこれ程の物があったとは。見識を見直して父上に取り引きを打診してみよう」
「本人は気に入らないが紅茶は気に入った。これは今まで飲んだどれよりも上質な味わいを感じさせる」
「そういやこの船に着いた護衛団ってのもディーンハイツ家が用意したらしいな」
「皆様、ご好評いただきありがとうございます。我が家との取り引きをご希望される方は私にご申し付けて下されば家にすぐさま打診を致しますので御気軽に贔屓にしてください」
「うわぁ完全に裏アルね……」
「はは、確かにこのアルは違和感覚えるのも仕方ないな」
「ま、まあこれがアルだからね」
おい聞こえてるぞそこの俺の嫁とセミエンとマルケス。
まあ営業だからこうなるのは仕方ないんだ、流石に営業時にあんな口調出しても良い事無いしな。
さてそれより評判だが、初めて飲んだ連中が大半の中ほぼほぼ満場一致の高評価をいただいてるらしくて何より。
これは公国戦後のご褒美が大量契約になりそうだ。……乗り越えられるよな?
あと護衛団は当初の予定通りウイングシャークを付けた。
開戦した時いつでも乗れる様にしときたかったからな。
因みにリオン達が何処にいるかと言えば……
「リオンさん、あーんしてください」
「……わ、私も……そ、その、あーんを……」
「えへへ、その……リオン君、私のも食べてくれるかな……?」
ちょっと離れた場所でリビア、アンジェ、そして完全に清純可憐な素に戻ったクラリス先輩からハーレムで詰められていた。
実は空賊スカウト後、本来ならアンジェとも仲違いの様な形で殴られる流れだったがそうなる要因になるイベントをオール排除したお陰でリビアが自ら、アンジェに告白した事を告げアンジェも迷いながらも友人達に後押しされ決断し告白したのだ。
その時の映像は……あるにはあるがあまり見るものでも無いだろう。
いつかの機会があれば観ても良いが……な。
あとクラリス先輩だが、どうにも中々近付く気配が無かったがリビアもアンジェも乙女心は察せるだろうとちょっと助言したらこの有り様だ、三人とも乙女の顔で実に素晴らしい。
リオンよお前はそろそろ観念してあーんされとけ。
あ、諦めて受け入れた。それで良いんだよ幸せになれ。
「アンジェ、頑張ってください……!」
「ファイトだよアンジェ!」
「お嬢様……お嬢様を幸せに出来るのはバルトファルト男爵以外いません……どうかキューピットが振り向きますように……」
「ダンさん、俺達も一緒に祈ります!」
尚、アンジェとクラリス先輩双方の取り巻きの方々もしっかり観察中でした。
お勤めお疲れ様っす……
「……わ、アタシもあーんして良い?」
「マリー……俺が拒む理由が無さ過ぎるよ是非してくれ」
そんな三人に感化されたのかマリーがこっそり近付いてきて俺の袖をクイクイと引っ張ってくれる。
え、何この子めちゃくちゃ尊いじゃん……俺の嫁可愛過ぎでは?
マリーを抱き寄せ囁く。
顔を真っ赤にしながらもコクコクと頷く彼女の頭を撫でてあーんを待機する。
「あ……あーん」
「あー……ん、美味しいよ。ありがとなマリー」
「……アタシのモノってアピール出来たかしら」
「そりゃ勿論。ま、俺からのアピールが強過ぎて大抵の男は諦めてるだろうけどな」
あーこれだよこれ、幸せ味ってやつだなこれが。
前前世で見た某生徒会の一存のロリ会長の気持ちが今なら良く分かる。
幸せ味とは恋人からあーんをされて食べさせ合いっこをさせる事で生まれる崇高な気持ちなのだと理解が出来る。
え? ロリ会長はそういう意味で言ってない? 細かい事は気にするな。
「やあアルフォンソ君。君も南の浮島になったんだね」
「おやおやルクル先輩」
そんな甘い雰囲気を知ってか知らずか、ルクル先輩が話し掛けてくる。
何の為に裏金を使ったと思ってるんですか、この為ですよ。
「今回の目的地は丁度“お祭り”があるらしいよ。独特な雰囲気が楽しい所だってさ。女子は浴衣を着飾って楽しむ。男子はエスコートできればぐっと距離が縮まる。……って、君にはマリエちゃんがいたね」
「ええ、世界一の嫁ですよ」
「ちょ、まだ嫁じゃないでしょ!」
「将来的には嫁だし些細な事だろ」
そう、この修学旅行の行き先は所謂日本文化の根付いた浮島だ。
前世振りの日本文化に触れられるとあり俺もリオンも全力で裏金を動かしたのは秘密だ。
「……しかし、リオン君は難儀な相手を選んだね」
「そうですかね」
「ある意味、三人とも身分不相応と言われても仕方ないと思うくらいにはね」
「恋愛に身分なんて関係無いですよ。殿下相手に勝ち取った俺が言うんですから」
ルクル先輩がそう言うのも無理はない。
ま、リオンがそう思われるのも仕方ないと言えば仕方ないところがあるのだ。
一人は平民、一人は伯爵家、一人は元次期王妃……客観的に見てその見解は間違いない。
だが俺はそれでも声を大にして恋愛に身分は関係無いと言い張りたい。
俺がそうだったんだから当たり前だろ?
「はは、君が言うなら説得力があるよ。それじゃあ僕が口出しする事でも無いね。……そうだ、一緒にルーレットでもどうだい?」
「いえ、俺は勝てない賭博はやらない主義なので……ダーツなら良いですがね」
「そ、そうかい? じゃあ遠慮しとくよ。君が勝てる前提で動く賭博じゃ勝ち目が無い」
苦笑いしながら去っていくルクル先輩。
うんまあ賢明だろう、勝てないと分かってて突っ込む賭博なんてやるだけ無駄だしな。
俺としてもこういうカジノに関してはダーツに特化してるが他の物は並程度だから利害が一致しないのも仕方ない。
さーて、マリーの浴衣姿に想いを馳せて暫くは賭博で遊んでるかね。
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ