幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第四十一話『覚悟と開戦』

 早朝、それは誰にも邪魔をされない神聖な時間。

 静かでゆったりとした時間が流れる美しい空間。

 日本の古き良き文化の発展したこの南の浮島には、忘れ去られたはずの奥ゆかしいこの時間が残っていた。

 だからこの時間のデートというのは格別なものなのだ。

 

「朝の空気が気持ちいいな」

 

「そうね……アタシとしてはアルと二人きりなのが一番嬉しいけど」

 

「俺もマリーと二人きりなのが一番嬉しいぞ」

 

 入学前ならいざ知らず、入学してからと言うもののマリーとこうしたデートを出来た回数は少ない。

 そもそもが寮住まいの学園生活でようやく心を射止めたのだから恋人になってからの静かな空間でのデートとなると更に回数は少なくなる。

 恐らくは片手で足りる程度では無いだろうか。

 

 だからこそこの時間は大切なのだ。

 

 それはさておき、俺はマリーとのデートがてらある場所へ向かっていた……そう、神社だ。

 リオンの縁結びを祈るのもあるが、最優先事項はこの後起こる事がほぼ確定している公国襲撃を無事乗り切れる様に、大切な人達を失わない様にと言う願掛けの意味合いがある。

 

 昼には浮島を出港する事もあり何としてでも済ませたかった。

 

「ここが縁結びで有名な神社ね」

 

「ああ、俺はともかくリオンには色んな良縁があるからな。次いでに祈っといてやろうと思ってな」

 

「ふーん、まあ最近リビアやアンジェ、クラリス先輩に囲まれてるのは良く見るわね」

 

「アイツは自称モテない男とか言ってるけど盛大にモテるからな。それを自覚させる為にも願掛けしといてやろうってな。……お、噂をすれば先にいたか」

 

 神社には先客としてその四人が既にいた。

 

「まさかリビア達と会うとはなあ」

 

「そうですね、でも朝からリオンさんに会えて嬉しいです!」

 

 話の内容からして、想定通り四人も偶然遭遇したものと思われる。

 仲の良い連中だよ本当に。

 尚、例の御守りはあの後渡してみんな喜んでくれていた事を追記しておく。

 

「よう、皆さん方」

 

「アルもここに来たのか」

 

「まあな。折角だし色々願掛けしとこうと思ってな……特にリオンの良縁は祈っときたいし」

 

「……そりゃどうも」

 

 ……あと神社の裏側にこっそりアンジェの取り巻き集団とクラリス先輩の取り巻き集団もいるのが見えた。

 本来ならアンジェの取り巻きが昨日の夜邪魔してくる展開だったが、そもそもリーダー格の二人が友人となってて親しくなってる辺りその展開自体が破綻している。

 代わりにアンジェの恋愛を陰から見守る良い人達と化している。

 修学旅行から公国襲撃までにおいてずーっと邪魔にしかならない原作と違って、二人の改心を皮切りに本当に心からアンジェを慕う様になった為に味方ポジションになっててこの後の公国襲撃でも良い方に作用するのではないかと踏んでたりする。

 

「リオンく~ん、お布施っていくらが良いのかな?」

 

「あ、そう言えばクラリス達はこういう作法は知らなかったな。ちょっと待ってな……アル達は、知ってるんだっけ?」

 

「俺は知ってるけどマリーはどうだっけ?」

 

「アタシ? アタシも……ま、まあ知ってるわよ」

 

 そう言えばだが、リオンはクラリス先輩に積極的に近付かれてから呼び捨てで呼んでほしいと言われたのかこうして読んでいたりする。

 リオン曰く「あまりにも呼んでほしいって言われたから折れた」って言っているが俺はお前がこういうクラリス先輩みたいな清純派な女の子が好みなの前世から知ってるんだぞ。

 だから二人にはまだ及ばないけど積極的にアピールしてくれてる先輩にデレデレしてるのバレバレなんだよ素直になっちまえよ。

 

「あ、そうだリオン」

 

「なんだアル?」

 

「お前、欲望は心の中でだけ祈っとけよ……そこ、ちっちゃい巫女さんいるから」

 

「……ハイ、ワカリマシタ」

 

 素直になれとは言ったが小さい女の子に悪影響を及ぼす事を言うのはNGである、特にこの王国内でちょっとした男の下ネタで顔を赤らめる程の純粋で可愛らしい巫女さんは非常に貴重な存在である為何がなんでも守らないといけない。

 

 ……待て、俺はロリコンではない、マリーが好きなだけだ。

 

「全くリオンは……済まないなアル」

 

「ああ良い良い気にしないで。コイツの事は何もかも熟知してるってだけだよ。ま、お互い様だけど」

 

「この短期間で随分と仲良くなったものだな、二人は」

 

「……そ、そうか? まあ下級貴族の男同士色々と思うところは同じだからかもな。だよなリオン?」

 

「お、おう! なんたって戦友だからな!」

 

 危ない危ないロリコン否定してる間に墓穴を掘るところだった。

 確かに傍から見たら何もかも熟知してるって表現に少し違和感を覚えるのも仕方ないからな。

 幸いな事に俺とリオンは決闘後からいつも一緒に行動してる感じが周りからすればあるから何とか誤魔化せたが。

 

「それよりお参り、するんでしょ?」

 

「そうだなマリー。それじゃ知ってる組から先にお手本として……」

 

 気を取り直して俺とマリーとリオンでまずはお手本を見せる。

 小さい巫女さんは、作法を知ってる事を喜んでるのかずっとニコニコしてくれている。非常に可愛らしくて微笑ましい。

 

 さて、しっかり祈っとかないとな。

 みんなが全員無事に生き残れます様に……あとリオンが幸せを自覚します様に……

 

 その為にはどんな手を使っても公国を徹底的に潰す。

 どんな手を使ってでも……な。

 

 

 

 

 

『こちらアルフォンソ、レディック、グリシャム公国の船は見つけられそうか?』

 

『こちら一番艦艦長グリシャム、周辺の輸送船から不審な船を見掛けたとの報告が上がりましたぜ頭領』

 

『こちら二番艦艦長レディック、モンスターが普段いる地帯にモンスターが居ない事から近くにいるんじゃねえかと予想を立てているぜ』

 

『よし、ならばウイングシャーク改めヘルシャーク隊全艦に告ぐ! 全員厳戒態勢に入れ! そして公国の船はモンスターが取り囲んでるから見つけたら必ず分かるはずだ! 発見次第俺の指示を待たずに全機発艦、全力でモンスターと敵軍を抹殺せよ!』

 

『了解!』

 

 帰りの船、俺はそこの地下室に、船の警備隊の許可を得て入りネズミくん経由で護衛のウイングシャーク……もといディーンハイツ家の船と鎧で構成されたアルフォンソ私兵団『ヘルシャーク隊』に連絡を取っていた。

 事前にこういう事がある可能性を考え、金は掛かったもののマルケスにネズミくんの追加生産を注文しといて本当に助かった。

 

 そう、公国にあんな屈辱を味わわせられない為の対策として俺は『先制攻撃』をする事を前提として動いていたのだ。

 

「ギャレット、『掃除』は済んだか?」

 

「完璧に終わりましたぜ頭領。事前に頭領達が目を付けてたコイツらが案の定当たりでした」

 

「ちくしょう!!」

 

「私は違うのよ!!」

 

「あ? こっちにゃ撮影技術と録画技術があんだよシラ切ってんじゃねえぞ」

 

 勿論、あの二人を筆頭とするアンジェ取り巻き改め親衛隊が善良になったからと言って手を緩める俺ではなく、お参りの後にリオンと談合しルクシオンに怪しい連中を炙り出してもらっていた。

 因みに行きは中も警備にヘルシャーク隊を何人か潜入させ厳戒態勢を取っていたので誰かがその間公国に合図を送っていたとか言うのは無い。

 

 そんな訳でルクシオンが見つけたきな臭い連中数名に対し、帰りの船にも乗せたヘルシャーク隊数名で見張らせボロを出したところをひっ捕らえた事になる。

 

「ほ、本当に公国を手引きしている不届き者がいるなんて……我々への支援と言い本当にありがとうございますディーンハイツ男爵!」

 

「こちらこそ、修学旅行の間スポンサーになっていただいたのは頼もしかったですよ」

 

 そして許可を得た後この船の艦長の案内の元辿り着いた、ここ地下牢に捕縛した連中を無造作に突っ込む。

 艦長にはコールの為とは言え盛大に支援をした事になるのも含めて礼を言われてしまったが、まあ悪い気はしない。

 何ならこのままこの企業がウチのスポンサーになってくれれば万々歳なんだがな。

 

 それはさておき、これで先制攻撃される不穏分子は取り除いた事になる。

 

 俺は双眼鏡を片手に甲板に行き、事の成り行きを見守る。

 

「うぃーすリオン」

 

「おう、奴らは?」

 

「捕まえて牢屋行き。未遂で終わらせたから恐らく死罪になるかどうかは半々ってとこだな」

 

「なるほどね」

 

 外の風が涼しい。

 初めて貴族らしい、そしてディーンハイツ家らしい粛清と指揮官としての命令を出した緊張感が少しだけ解れる。

 覚悟は決めていても、やはり人を殺す事になる可能性に思うところはあるのだと自覚してしまう。

 

 もう少しゆっくり出来れば良いんだが……そうは問屋が卸さないらしい。

 

 ヘルシャーク隊の艦隊から次々と鎧が発艦しているのが見えた。

 遂に始まったか。

 

「……来たか」

 

「マジで来るとはな。アル、お前には感謝しないとな」

 

「ゲーム脳に囚われなきゃリオンでも予想は付く事さ。これを機にゲーム脳は卒業だな」

 

「はぁ……だな、流石に」

 

『頭領! 公国の艦隊を発見しやした!! 命令通り全艦全機発艦してます!』

 

『でかした、こっちはこっちで船に伝えるから奇襲してくれ』

 

『アイアイサ!』

 

 俺が双眼鏡で見てもまだ分からなかったがどうやらディーンハイツ家の船は高性能らしい、この時点で発見出来てるとは。

 俺とリオンは急いで甲板から艦長へ報告しに行く。

 

「ディ、ディーンハイツ男爵! 護衛団の鎧が発艦していましたが何がありましたか!?」

 

「艦長、申し訳ありませんが第一級警報を鳴らしてください。モンスターの集団を引き連れた公国の船団を見つけたと俺の護衛団より報告が入りました。侵略です。公国による王国への侵略が始まったのです。なので見つかる前に我々が奇襲し断罪を行うのです」

 

「な、なんですと!? 分かりました!! オイ、第一級警報だ!!」

 

 鳴り響く警報、ザワつく艦内。

 

「……アル、大丈夫か?」

 

「リオンこそ、本物の戦争は初めてだろ?」

 

「そりゃあな。でもアル、お前顔が……」

 

 ……知っている。

 守らなければならないもの、それを背負った、背負ってしまった。

 その宿命を背負うには、俺はまだ覚悟が足りない。

 それでも、なってしまった以上やるっきゃない。

 一人で背負い込んだリオンに比べたら、この襲撃を見越せなかった原作と比べたら、楽なはずなんだから。

 

「俺はな……守るべきモンが多過ぎるんだよ。でもな、リオン……お前と二人なら乗り越えられると思ってるんだ。だって俺達……『心友』だろ?」

 

「……そうだな。俺達なら出来る。俺にだって……守らなきゃいけない人達が……リビア、アンジェ、クラリス、それに家族や友達がいるからな。ぜってぇ守って生き残るぞ」

 

 公国の戦争とは絶対に言わせない。

 

 俺の、俺達の、戦争が、始まる――




貴族として背負わないといけない現実と、精神的に成長しきってない脆さとの葛藤

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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