幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第四十二話『一致団結』

「な、なんなんだこれは!?」

 

 鳴り響く警報に動揺が隠せない学生達。

 しかし中でもクリスは何が起こってるのかを把握すべく俺とリオンの居場所まで走ってきていた。

 本来リオンに剣術で決闘を挑みに来てあしらわれるクリスにどんな心境の変化があったのかは知らないが、一応学生内では俺達を除けばトップクラスだしここは話してやるのが筋か。

 

「手短に話すが、公国がこの船団を探して彷徨いてるのを俺の護衛団が発見して奇襲。現在戦闘中となっている」

 

「なに!? しかし公国はモンスターを操る術式を使えると聞いている……そうなると……」

 

「ああ。アルの護衛団だけでは打ち漏らしが生まれる。だから俺達も全員でこの船を守る。鎧の操縦技術に長けた奴は護衛団の助太刀にも行くが」

 

「……冷静なのだな、二人とも。やはり私はまだまだ未熟だったのか」

 

 実際ウチのヘルシャーク隊だけでは奇襲とある程度の損害は出せるが攻撃より守備寄りの鎧の為ジリ貧になってしまう。

 機動性も高いとは言い難いものだから数で押され過ぎるとこの鎧単体では対処がキツくなるのも確かだ。

 だから、何としてでも俺達の、自分達の力で守らないとならない。

 

「悔やむのは後からでも出来る。それより現状を全員に伝えに行くぞ。守るべきものを守る為にな」

 

「そうだな。気後れしてる暇は無い……か」

 

 俺がいない世界線だとここはかなり面倒な場面になるが、少しでも良くなる様にと俺が色々と行ってきた。

 その成果が出るのか出ないのか、今から向かうのはその結果を可視化させられる最大の場所にもなる。

 何だかんだ言って信じたんだ、俺を失望させないでくれよ……

 

 

 

 

 

「あーお前ら、一旦落ち着け」

 

 未だ動揺が続く船内に、リオンの少し間の抜けた様な声が響く。

 勿論集団の中にはマリーやリビア、アンジェ達と言った俺達の大切な人達の姿も見受けられる。

 一層気が引き締められる。

 

「オイどうなってんだよ!」

 

 一人が叫ぶ。

 それに呼応するかの様に周りの連中、特に俺達三人が一年とあり上級生が騒がしくなる。

 

「み、みんな落ち着いてくれ!」

 

「一年如きがしゃしゃるな!」

 

 それをクリスが抑えに掛かるが逆効果。

 まあ決闘のアレ見てたら言いたくなる気持ちも分からんでは無いが今はそういう問題じゃないんだけどな。

 だがそういう時に役に立つのがリオンだから頼りになる。

 

「ガタガタうっさいんだよカス共が!!」

 

 一瞬にして会場が静まり返る。

 たかが一年、と言い返そうにもプレッシャーが凄い。

 これぞリオン、引いてはタケさんの十八番『演技力』だ。

 この人にプレッシャーを与える様な威圧感なんて実際は1ミリも無い、何なら嘗められて当然の存在だ。

 しかし一度役に入ると、自身の持ってないはずの力をハリボテとはいえ出せる特殊能力を有している。

 歴戦の猛者共ならさておきこんなボンボン共相手なら簡単に騙されてくれるから便利なのである。

 

「あなた方、先程から偉そうにしてますわね。ちゃんと状況を説明出来ますの?」

 

 お、出たなドM女王ことディアドリー先輩。

 ディアドリー・フォウ・ローズブレイド、実質最高位の伯爵家令嬢で高圧的な貴族に見られがちだがその実かなりまともな価値観を持っており今後リオンが色んな意味で関わっていく人物の一人。

 ドMである事以外は美人だし価値観まともだしで良いんだけどね……

 

 さて、それよりここは俺が出るか。

 

「そこは俺が話そう。俺の護衛団が関係しているからな」

 

「貴方の護衛団……と言うと、貴方がアルフォンソ・フォウ・ディーンハイツ男爵ですわね?」

 

「そういう事だ。俺の護衛団からの連絡によると船のセンサーにモンスターと船を発見、探知した結果公国の船団がモンスターを操りこの地帯を彷徨いていた為襲撃と看做しこちらから先制して粛清を行っている」

 

「なっ!? 公国が!?」

 

「馬鹿な……」

 

「こんな事ってッ……!!」

 

 状況をある程度把握したのか、次々と生徒の顔が青ざめる。

 それもそうだ、つまりは戦争だと言われているのも同然だからだ。

 それでも、俺達はやらなくちゃならない。

 ここで奮起させないといけない。

 

「良いか? アルが言った様にこれはただの空賊だのモンスターだのとは訳がちげぇ。れっきとした侵略、戦争なんだよ」

 

「で、ですが何故この船を狙ったんですの? 公国からしたら護衛団のいる南方船より殿下の乗った船を狙うはずでは……」

 

「そりゃお前、ユリウスは現状廃嫡されてるからな。だったら修学旅行に来てる連中で一番位の高い貴族っつったら……アンジェだからな」

 

「……そうか、やはり狙いは私だったのか」

 

「アンジェ……」

 

「くっ、そういう魂胆ですか……!!」

 

 実際『ラファ』がミドルネームに付くのは王家、若しくは王家に連なる分家レベルの極一部の貴族のみだ。

 中でも次期王妃だったアンジェは廃嫡されたユリウスと違い据え置き、ならば狙われるのは必然という訳だ。

 

「現状、俺の護衛団で何とか相手の攻勢を許さない状態を作り出して優勢だがこれがいつまでも続くとは思えない。何せあっちはモンスターで戦力の嵩増しをしているからな。取りこぼしたのがこちらに来るのも時間の問題」

 

「だからつべこべ言わずにテメーらの血に流れる冒険者の力を使って全員で生き残んだよ、分かったか?」

 

「つーかお前らが戦わないと真面目にアンジェが人質になりかねないからな。……分かってるよな、頼むぞ」

 

 俺はアンジェの本来なるはずの無かった、それでいて今は信頼してる友人達……シェリーとノワの方を見る。

 本来は、アンジェを裏切って投獄される二人。

 だが、俺は信じている……アンジェが俺達以外で心を許す、数少ない二人の友人を。

 

「アンジェは……アンジェは、私やノワの失態を許してくれました。それどころか友人でいてほしいと、そう言ってくれました。ならば今度は……私達がその恩に報いるべきです。そうですよね、ノワ?」

 

「もちろん! 友達を守るのは当然の事だもん! ……私に、真っ当な生き方を教えてくれたアンジェへの恩返しも、あるけどね」

 

「そうこなくっちゃ」

 

「シェリー……ノワ……ありがとう……」

 

 ……信じて良かったよ、二人を。

 俺が止めたからとはいえ、アンジェはこの二人が裏切らなかったから、沢山の取り巻きを失ったがそれでも孤立だけはせずに済んだし少しずつ新しい善良な取り巻きも増え始めている。

 心の拠り所が少しでも増やせるなら、それで良いと思った。

 だが、俺の予想を超える心の支えに、二人はなったらしい。

 

「オーホッホッホ!! ここまで素晴らしい友情を見せつけられては、そして公国にこのホルファート王国を愚弄されては、ワタクシ達も黙って見てられませんわ!! そうでしょう!?」

 

「そうだそうだ!!」

 

「俺は、アンジェリカ様を守る為に取り巻きになったんだ!!」

 

「王国は俺達の大事な国だ!! 誰にも渡さねえ!!」

 

「お前ら……お嬢様を必ず守り抜くぞ」

 

「ダンさん……俺はどこまでも着いていきます!」

 

 そして何より、大事な友人の為に立ち上がる二人に次々と感化される連中を見て、俺はやはりあの時の決断は間違ってなかったと噛み締める。

 原作とは違う、怒りではなく自分達の誇りと、国と、大切な人達の為に立ち上がる姿は見ていて壮観だ。

 

「それじゃ早速だが防衛組と鎧組とで選別する。因みにリオンは……」

 

「俺はエアバイクで本陣に突っ込む」

 

「だ、そうだから別働隊となる。この船には鎧が四体積み込まれてるからまずクリスとマルケスは決定だ」

 

「え!? 僕!?」

 

「ま、待て。私はともかくサンドゥバルに務まるのか?」

 

「マルはこう見えて決闘してないだけで操縦技術は俺より上だぜ?」

 

 そしてここで隠し球を投入だ。

 そう、マルケス……アイツはああ見えてやはり機械に精通してるからか鎧操縦の技術やデータ把握は俺より上と断言出来る。

 1対1で俺とマルケスがやり合ったらまず俺が負けると言えるレベルで上手いんだからたとえここに積み込まれてる鎧が通常量産機であっても相当な戦力になるはずだ。

 

「ちょ、ぼ、僕にそんな大役……」

 

 オロオロしながら焦るマルケスに近付く。

 ったくコイツは自信が無さ過ぎるんだよ天才の癖に。

 俺の周りはどうしてこう、ケツを蹴っ飛ばさないといけない親友が多いのやら。

 でも、蹴っ飛ばせば動くからコイツらと親友になってるってとこもあるけどな。

 

「……お前がここで頑張って騎士爵でも貰えれば、ステファニーを個人的な使用人として雇い入れて守ってやる事も出来るぞ」

 

 ボソッと誰にも聞こえないように呟く。

 

「……!! ほ、ほんと……?」

 

「ああ。爵位があれば騎士爵でも給金は出るからな。しかも爵位を手に入れられればマルの技術を王国に売り込めるから継続的な給金を手にする事が可能だ。どうだ、やる気が出るだろ?」

 

「……うん、分かった。僕やるよ」

 

 よし、焚き付け完了と。

 今のマルケスにはステファニーの事を振れば大概やる気が出るのはバレバレだ、しかも俺の言葉に嘘偽りは1%も無いからコイツに不利益は何一つ無い。

 そもそも公国のモブに落とされる様なヤワな奴じゃないしな。

 

『頭領、そろそろ抑え込むのもキツくなってきやした!』

 

『寧ろここまで良く粘ってくれた、ありがとう。もう少しだけ粘ってくれ。鎧の増援と船の防衛隊の算段が付いたところだ。レディック、悪いが船をこっちに寄せてくれ! そっちに俺のクロカゲがあるから飛び乗る!』

 

『分かりやした! テメーら、あと少し耐えろ!』

 

 っと、流石にこっちもキツくなってきたか。

 

「悪いが護衛団もそろそろキツくなってきてるから俺やリオンはこのまま前線に出る。クリス、鎧搭乗者残り二人の選別はお前に『任せる』」

 

「……! 良いのか、私に託して」

 

「決闘前ならいざ知らず、今のお前にならこれくらい託しても良いって思ったんだよ。頼むぜ」

 

「分かった……託された」

 

 あの日、俺が土下座をした日。

 クリスが一番何かが変わってると感じた。

 それが何かはまだ分からない、だが今のクリスになら、託しても良いと、そう決断出来たのは事実だった。

 

「そんじゃ俺は行くけど……マリー」

 

「……アル」

 

 そして最後に、マリーに振り向く。

 めちゃくちゃ心配そうな顔しちゃってからに……そんな顔されると行きにくいんだよ、こっちが心配になるから。

 

「必ずお前の事守って、生きて帰ってくる。愛してるよ」

 

「絶対……生きて帰ってきてね」

 

「おうよ。……リオン、挨拶は済ませたか?」

 

 話し続けるとどうにも名残惜しくなっちまうな。

 半強制的に話を終わらせる、帰ってきたら絶対イチャイチャしてやるクソが。

 

「ああ。……三人共、まだまだ優柔不断で誰を選ぶとか、そんな余裕も無い臆病な男だけど……三人全員、みんな大切な人達だから。だから、いっちょ行ってくるわ」

 

「リオンさん……どうか無事に帰ってきてください」

 

「リオン。あの告白の返事は帰ってきてから聞かせてもらうからな」

 

「リオン君……私も、リオン君の事二人に負けないくらい好きだから。きっと生きて帰ってきてね」

 

「約束する。俺は負けねーよ」

 

 そして俺とリオンはアイコンタクトを取り窓を開け近付いてきた二番艦へ飛び乗り、リオンは保管庫に向かう。

 

 一致団結した俺達は手強いぜ、公国さんよ。

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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