幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
「お姉様に手を出すな!!」
「……ん? え、あれ? ヘルトルーデが二人?」
「……お、オイオイ嘘だろ」
そこにいたのは、本来そこにいるはずの無い人物だった。
『ヘルトラウダ・セラ・ファンオース』、後々の山場の一つを作るはずだったヘルトルーデの妹が何故かクジラ戦艦の中にいたのだ。
「ラ、ラウダ!? 出てきちゃいけないって言ったでしょ!?」
「ですがお姉様が……!!」
「……えーっと、妹さん?」
「そ、そうよ悪い!? 妹には手出しさせないんだから!」
よし、一旦なんでヘルトラウダがいるかとかそういうのは頭の隅っこに置いとこうそうしないと脳みそが恐らくバグる。
ただとてつもないイレギュラーが公国に起こってたという事だけ把握していれば良い。
リオンも何が何だか分からないといった様子だしここを突け入れられるとまずいしな。
「分かった、ヘルトルーデ、ヘルトラウダ両王女に危害を加えはしない。但し先に攻め入ってきたのはファンオース公国に他ならない。こちらも相応の戦果が無いとやってられないんでね……二人揃って王国まで来てもらいましょうか」
「……そ、それで我々をどうするつもりだ」
「なに、名目上捕虜という事になるだけで実質的な王国留学みたいなものに『させてもらう』くらいですよ。但し……こちらの勝利で良いならの話ですが」
ニヤリと口角を上げる。
中々に外道な事を言っているとは自覚している、何せどちらか若しくは双方ここで射殺されるか、負けを認めて二人一緒に安全を確保されるかの二択を選べと、公国にとってこれ以上無い屈辱的な選択を突き付けているからだ。
だがこれで後者を選べば今回の襲撃、戦争は一瞬で終わる。
いくら王国憎しと言えど公国軍の犠牲者を増やす事、そして姉妹を失うなんて事態にはしたくないはず。
敵を信じるというのも何とも言い難い話だが、二人の姉妹愛を信じてみるのはモブせかのエピソードで語られた二人の関係性上割かし悪くないと思っている。
「卑怯な……元はと言えば王国が攻めて来なければこんな事には……」
「……それでお姉様を助けてくれるのですか?」
「君や残りの公国軍兵士含めて全員の話だ。因みにヘルトラウダ王女の笛は……ルクシオン、場所分かる?」
「隣の部屋にあります」
「だ、そうだからリオン頼む」
良く分からんが後々の脅威をここで一気に削げるならそれに越した事は無い、何でとか誰がとかは後で考えれば良い。
最大の危険物『ヘルトラウダの魔笛』もルクシオンの解析で回収出来るしもうこのままこの二人懐柔出来ねえかなあ。
「分かった、回収してくる」
「との事だ」
「…………非常に心苦しいですが、最早ここまで。切り札も両方奪われ、モンスターも八割以上が消失、公国軍も今回連れてきた内六割が死傷と報告が上がってる以上打つ手無し。それでも慈悲を与えられると言うならここは甘んじて受けるしか無いです。これ以上犠牲を増やすのは得策でもありません」
言っても死者は死傷者人数の5%程だがな。
「ラウダ……」
「お姉様、生きていれば必ずまた復讐の機会は訪れます。今は我慢の時です」
「話は終わったかい?」
「死ぬ程不服ですが、ラウダの言う通りここで犠牲が増えるくらいなら一旦引いた方が余程建設的……貴様らの言葉、王国民としてでは無く一人の騎士として信じよう」
ふぅ、全くヒヤヒヤしたったらありゃしない。
いざとなれば姉妹揃って射殺もやむ無しかと思ったが正直そんな事したら支配下戦力として公国が手に入らなくなるからやりたくなかったんだよ。
しかし従ってくれるなら公国の膿と洗脳を取り除くのも時間の問題、こちとらネズミくんおるんやぞ。
「騎士として、約束は必ず守りましょう。リオン、交渉成立だ」
「穏便に済んで良かった……取り敢えず二人共俺が回収していくか?」
「んじゃ頼むわ」
「おう。それじゃあお二人さんはこちらへ……」
「ヘルトルーデ様、ヘルトラウダ様……ッ!!」
連れて行かれる王女二人に手を伸ばす兵士。
そう言えばこの中では未だに悶絶する侍女を除き唯一意識のハッキリしている公国の人間か。
ふむ……念の為にと持ってきていたが試す価値はありそうだな。
「お前……名前は?」
「な……何故、私の名前を聞く……」
「お互い敵同士かも知れない。だが、お前を男と見込んで話がある」
「何を……王国軍風情と話す事など……」
「もしも。もしもだ。公国の上層部が、嘘で国民を洗脳していたら……どうする?」
これは一種の賭けだ。
早期に洗脳解除を施せる可能性があるのだとすれば今しか無い。
これがあれば公国の犠牲をより少なく出来る、共和国以降戦争が万が一あったとしても多少優位に事を進められる可能性が出てくる。
手駒として置いておける数は多い方が良いに決まってるからな。
そうじゃなきゃこんな回りくどい事しねえっつーの。
「貴様、ふざけるのも……」
「だがおかしいとは思わないか? 王国が公国に不当な働きをしたと言うのも、国王、王妃両陛下の死も、確実な証拠は無い。違うか?」
「だ、だが我々は……」
「位のある人間の言葉だから信じたと? 馬鹿馬鹿しい、言葉なんぞいくらでも改竄出来るんだよ……騙されたと思って一度試してみたくないか? この録画録音機能が搭載された自立型隠密ロボットで上層部の本当の言葉を聞いてみるのを」
「そんな……公国が我々を……? いや、だが……どうすれば……」
通常時であればこんな戯れ言に乗ってくる事なんて無いだろう。
だが、人は精神状態が弱っている時程言葉という魔法に騙される。
疑心暗鬼になって、今まで信じていた信念が揺らぐそこを狙う。
相変わらず一貫してやる事が外道だが嘘は付いちゃいないからまだ有情だ。
「これを使えば真実に辿り着いて大切な人達を守る事だって出来るかもなあ? 逆に使わないなら……公国は真実を知らぬまま滅び行くだけかも知れないぞ? さあ、今ならタダでくれてやるがどうする?」
「…………俺の名前は、バレントだ」
「俺はアルフォンソ・フォウ・ディーンハイツ。子爵家の嫡男だが一応これでも五位下男爵でもある。ま、よろしく……ほい、そいつに一度でも顔を認識させれば勝手に追跡してくれるから」
「アルフォンソ……それにさっきの奴がリオン……そうか、王国で若くして大きな功績を挙げている者がいると聞いていたが……」
くくく、落ちたな。
天を仰ぎながらネズミくんを受け取る公国兵士ことバレント。
これで何かしら変わってくれたら良いが……
「公国でも俺達有名なのね……あ、取り敢えずまた公国こっちに攻めてくるでしょ? その時に個人的に発煙筒上げるから撮ってきたものと答え聞かせてもらえると嬉しいかな」
「……ああ、良いだろう。そこまで言うなら我々が正しかったと突き付けてやる」
「期待して待ってるぜ。んじゃまた」
複雑そうな顔をして俺を見送るバレントに再び口角を上げ軽口を投げ掛けエアバイクに跨る。
この後は俺の記憶違いが無ければリオンが黒騎士と戦うんだったか、あのジジイ何とかして生かしてやりたいんだけどどうにか出来ないもんかね。
……まあ後で考えるか。
『レディック、俺だ。捕虜として王女二人を捕らえてリオンが付近を護送中のはずだ、見つけ次第両王女をそちらに乗せてやってくれ』
『こ、公国の王女殿下二人ですかい!? そりゃまたとんでもない戦果を……分かりやした! オイ、レーダーでバルトファルト男爵を探索しろ!』
『グリシャム、そしてみんな良く戦ってくれた。戦況はどうだ?』
『頭領!! 俺達なら六割以上を無力化して一旦撤退まで追い込んだんで完全勝利ですぜ!! 被害は鎧が多少故障したのが数機程度で人員の負傷者はいません!! 特にマルケスさんの指示と無双は半端無かったですぜ!』
『へへ、俺の見込んだ通りだったろ?』
レディックにはリオンが乗せた捕虜の回収、そしてグリシャムの方の戦闘もほぼ終わった感じだな。
やはりと言うべきか手練の空賊だっただけあって鎧の質が良いならそう簡単に負けない強さを持っている、スカウトした甲斐があったってもんよ。
それにマルケスも俺より強いと断言しただけの活躍はしてくれたらしい、流石親友なだけある。
さてと、それじゃあ俺は四番艦に預けたクロカゲを取りに……
『両王女殿下はその身を公国に捧げられた! 各艦、客船に総攻撃を仕掛けろ!』
「はああああああああ!? いやふざけてるだろそれは!! それが無いと思ったから俺は安心したんだぞ!?」
最早胃薬とかそんなものを通り越して面倒な事がただいま発生した。
そう、ゲラットによる総攻撃である。
本来ヘルトルーデ王女には代わり……そう、ヘルトラウダ王女がいたからこそ自らを犠牲にする作戦があった。
だがこの世界線では違う、何故なら代わりであるヘルトラウダ王女諸共回収してしまったからだ。
だから有り得ないはずなのだ。
そして客船の方に両王女はいないので盛大なとばっちりでもある。
「ゲラットは馬鹿なんだなそうなんだな」
もう俺にはそうやって罵倒しながら四番艦に急行するより他無い。
『リンスカム!』
『メンテナンスはバッチリッスよ!』
『ナイス過ぎる!』
そう思い慌てて直ぐ近くの四番艦に連絡を入れる。
相変わらず仕事の早い連中だ、有り難すぎる。
「悪いな、直ぐに出ないとまずい事になった」
「俺らでも全力で止めますッス! 頭領はまず客船の方を!」
「分かった、助かる!」
全速力で出撃し客船の方へ向かう。
そこには先に着いていたリオン含めた生徒や船員がある程度元気な姿で出迎えてくれた。
甲板に一旦着陸し飛び降りる。
「リオン! みんなは無事か!」
「ああ、軽傷者は何人かいるがマリエやリビアの回復魔法で何とかなってる。攻撃方面もアンジェの魔法が大活躍だったらしい」
「そりゃ頼りになる」
「しかしまさかリオンが王女二人を捕虜にするとはな」
「でも、リオンさんやアルさんなら酷い事はしないですし安心ですね!」
「リオン君……無事で良かった……」
「リビア、アンジェ、クラリス……俺の方こそ、みんな無事で良かったよ。しかもみんな大活躍だったんだろ?」
リオンの周りにはリビア、アンジェ、クラリス先輩が集まっている。
みんなリオンの無事を喜んでいる様で何よりだ。
「アル!! よ、良かった……」
「マリー……心配掛けたな」
そんで……俺の方も束の間の再会ってところか。
抱き着いてきた我が愛しのマリーを抱き止め、頭を撫でる。
だが俺達には悠長にしている時間はそうは無い、幸せな時間は終わりを告げまた俺達は戦地へ向かうのだ。
俺はそっとマリーを突き放す。
「リオン、パルトナーは?」
「ルクシオンが事前に用意しててくれたからな――」
「パルトナー、来ます」
空を覆う程の戦艦……700m級の近代戦艦としては最大級の火力と性能を誇るそれが現れる。
「アル……行っちゃうの?」
「俺は、お前を守らないといけないからな。さあ、船員の皆さんは俺のクロカゲとリオンのアロガンツ、んでパルトナーで攻撃してる内にこの船を戦線離脱させてください」
「わ、分かりました!」
リオンも名残惜しそうにしながらも三人に何か話して、アロガンツに乗り込む。
俺もクロカゲに乗り込む……
「なあ、リオン」
「なんだ?」
「三人に何話してたんだ?」
「……俺の本音だよ」
「ま、戦争だしな……何があるか分かんない分、言いたい事は言える内に言わないと」
戦地に行くまでの僅かな時間でリオンと雑談をする。
こうでもしないと、やはり落ち着かない。
「俺はさ、三人の内誰かを娶れって言われても誰か一人に絞るなんて出来っ子ねーんだよ。優柔不断なクズだからな。だから俺は、公国との戦争が全て終わったら三人の気持ちに答えるって言ってきた。全員を幸せにする為に、全員の気持ちに『YES』って言うつもりだ」
「この世界じゃやれない事は無いな。……俺も、公国との戦争が全部終わったら、マリーに俺の事……『ヒロ』だって事、話そうと思ってる」
「んじゃその時は俺も一緒に行くわ。次いでに俺の方も正体明かしとかないと行けねーし」
「だな……そろそろか」
「お互い、大丈夫だとは思うが『いのちだいじに』って事で」
「おう」
俺達はそれぞれの場所へ向かう。
決意を胸に、守るべき者の為に。
「馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!」
一方、ゲラットが乗り移った船ではその当人の発狂した叫び声が木霊していた。
それもそうだろう、増援が来るには早すぎるこのタイミングでパルトナーという巨大戦艦が現れ公国軍艦を次々撃沈させているのだ、それにアロガンツ、クロカゲ、ヘルシャーク隊といった予想外に予想外を重ねた事態が起きているのだから当然だが。
「か、格なる上は……バンデル子爵とイーデン伯爵を出します!!」
「し、しかしバンデル子爵の方は出撃させるなと……イーデン伯爵に関しては本当に鎧操縦が上手いのかも怪しいですし……」
「良いのです!! 成功すれば命令違反は功績で潰され失敗しても奴らが勝手に出撃した事にすれば!」
錯乱した彼は、命令違反も厭わない外道であった。
躊躇する兵士の両肩を掴み狂気じみた目で言い放つ。
だが、本物の狂人はゲラットなどでは無かった。
(まさかイーデン伯爵が武芸に長けていたとは知りませんでしたが……どちらにせよ死ぬなら勝手に死ぬでしょうし功績を挙げるならそれに越した事は無いですからね……)
そのゲラットを遠くから見つめる人影があった。
(なんて思ってるんだろうね。馬鹿だねえ公国も……僕が折角王女二人で守護神を同時召喚させれば王国に勝てるからヘルトラウダも連れてくべきだとイーデン伯爵として直訴したのに……おめおめどちらも攫われるとは。ま、公国のお馬鹿さん達は僕が『姿形を変える禁術』に手を出してるとも知らずにいるから仕方ないか……ただ、これ成り代わりたい対象を殺さないと術として完成しないのが面倒なんだけど……まあ良いさ。ふふ、楽しみだなあ……君と会えるのが……)
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ