幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第四十五話『仇敵』

「クソ、しつこい奴らめ」

 

 恐らくリオンが黒騎士と接敵してるかどうかみたいな時間、俺は俺で原作の世界線を大幅に超える公国軍無力化に成功していたのにも関わらずそれでも執拗に這い寄ってくる敵に苛立ちを隠せないでいた。

 それもそうだ、戦えば戦う程公国の犠牲者は増えるだけなのだ、それを分かっていて尚突っ込んでくる無謀さが非常に気に入らない。

 簡単にその命を散らそうとする精神が、そこはかとなく気に入らなかった。

 と言うかさっきゲラットには王女二人が負けを認めたから降伏する様にって紙を置いといたはずなんだけどなあ。

 

「俺の計算上原作の損耗率が二割、そしてヘルトラウダの言葉と照らし合わせるならそろそろ現状公国軍の損耗率は七割を超えるはずだぞ……! しかも今後使う切り札の三守護神は封じ込められて奥の手すら使えないってのに良くやるぜ、クソが」

 

 しかも奴らは俺どころかグリシャムにすら歯が立ってないレベルの練度、まだまだ積み込んであるビリビリネットミサイルで次々無力化させては溜め息を付く。

 これだから洗脳教育は嫌なんだよ、ほんとさ。

 

 ま、それでも一応死者は全損耗率の5%弱には抑えたけど。

 

「ほら、まだやんのか? 今なら見逃してやるからさっさと引けよ」

 

 周りの兵士は全員ほぼ無力化して、悪態を付く様に零す。

 あくまでも生殺与奪の権利はこちらが握ってるという威圧感は隠さず、戦意を喪失させる。

 やっとこっちの意図と強さが伝わったか、後は撃墜されるだけだった公国軍は退却していく。

 

 いや退却するなら最初からやれよ……

 

「あー疲れた疲れた、それじゃあゲラットでも捕縛しに……」

 

「おやおやァ? 君がアルフォンソ男爵かな?」

 

「オイまだいるのかよ勘弁してくれよ」

 

 ようやく終わった……と思ったのも束の間、何かねっとりとした口調のオッサンに絡まれた。

 もう本当にやめてくれよ……誰なんだよコイツ……

 

「君に会いたかったんだよねェ、僕」

 

「誰か分からねえけど俺は絶対会いたくないと思ってるよ」

 

「連れないなあ、僕は君に聞きたい事があるだけなんだけどなァ」

 

「頼むから何も聞くな、その話し方生理的に受け付けねえんだよ」

 

 しかも話し方ヤバいしコイツ。

 あー嫌だなあ何か前世のストーカー男思い出すわ。

 アイツもねちっこい感じでアヤを殺した事を俺に意気揚々と話しやがって……そのまま掴みかかって二人揃って死んだ事だけは不服だった、アイツだけ死んどけば良かったのに。

 

 ……まさかとは思うがコイツ違うよな?

 

 公国の鎧に乗った生理的に受け付けない得体の知れない奴はそれを無視して強引に喋りかけてくる。

 一回鎧ごと殴って吹っ飛ばしてやろうか……しかし、その思惑は次の言葉によって全て崩れる事となる。

 

「君ってさ、『ヒロ』……加賀宏道じゃないの?」

 

「…………オイ、テメェ誰だ?」

 

 加賀宏道……それは俺の『前世での』本名だった。

 勿論だが現状俺以外にアルフォンソ・フォウ・ディーンハイツ=加賀宏道だと知ってるのはリオンとルクシオンだけだ。

 なのに何故コイツはその俺の名前を知っている?

 

「え~? 忘れちゃったのかなァ? 僕だよボ・ク・♡ 愛しのアヤを君に奪われて、そして君に殺された新道寺明彦……ま、今はロイズ・フォウ・オフリーだけどね、ふふ」

 

「……冗談はその中年声だけにしとけよクソジジイ」

 

「君、成り代わりの魔法って知ってる? 成り代わりたい人物を殺せばいつでもどこでもその人間の姿になれる正に『魔法』。今の僕は全知全能なんだよォ?」

 

 俺はその瞬間、何の躊躇いも無くショットガンをそいつに向かって放っていた。

 

「貴様……貴様がアヤを殺した新道寺だと……? ふざけるなよ……お前だけは……お前だけは何があっても殺す……殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスゥ!!!」

 

「アッハハハハハハハ!! そう、それだよそれ!! 君の、ヒロの、その顔が見たかったんだ!! そして君はそのまま僕に殺されろ!! 今度こそ僕は!! 僕が!! 愛しのアヤ……マリエを手に入れるんだよォ!!!」

 

 俺にはもう理性など残っていなかった。

 目の前で笑う男が、新道寺明彦だとしたら。

 俺のただ一つにして、最大の未練が、そこにいる事となる。

 守り切れなかった、無念の想いを押し込めてここまで生きてきた。

 この世界でアヤを、マリーを幸せに出来れば俺の気持ちはどうだって良いと思ってきたし実際そうだったはずだった。

 だから俺はその代わりにこの世界を全力で楽しんで、全力で改変して、出来る限りの人を助けて、少しでも良い王国に、世界に、していければとここまでやってきた。

 

 なのに……なのに。

 

 コイツさえいなければ俺の知識と、リオンとのコンビで全て乗り越えられると思ったのに。

 

 マリーを今度こそ幸せにしてあげられると思ったのに。

 

「お前がぁ!! お前さえいなければアヤは!! 死なずに済んだのに!! お前のせいで!! ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁ!!」

 

「実に面白いよヒロ!! 僕は君という監獄から彼女を解き放っただけなのに!! その身勝手さ、傑作だ!!」

 

「何が身勝手だ!! 何が傑作だ!! 俺はお前とは違う!! アヤを純粋に愛していたんだぞ!!」

 

「あーあーそういうの要らないんだよね~、ただ殺し合ってくれれば君はそれで良いんだよ。僕は元からこの世界にいた人物のポジションだったけど君は所詮『モブせか』においては存在しない人間で邪魔者なだけだしさ……あ、これ言っても君には通じないよね~」

 

 身体全体から湧き上がる血の気が、引いていくのを感じた。

 コイツ……今なんて言った?

 

「お前……どうして『モブせか』を知ってるんだ?」

 

「あれれ……? てっきり『二重転生者』は僕だけだと思ってたのに……まさか君も知ってるなんてねェ。益々面白いよヒロ」

 

「テメェいつからそれを知っていた?」

 

 震える手を抑えきれない。

 ガタガタと銃を持つ手が震えて、止まらない。

 なんでコイツが二重転生者なんだ……? 俺と同じ、そんな事、認められる訳が無かった。

 

「勿論『リオン』の前世世界でリオンの前世体を見つけたその瞬間からだよ。確信は『アルトリーベ』が発売されてからだけどね。アヒャヒャ、でも良かったよ。君も二重転生者なら所詮『モブせか』の登場人物なんて全員舞台装置と思ってたんでしょ?」

 

「や……やめろ、それ以上言うな……」

 

『アルトリーベ』の世界と気付いてからずっと思わない様にしてきた。

 思ったら、意識したら、終わりだと思った。

 そんな事無いはずだと思いたくても、心のどこかで、片隅で、そう意識してしまっている自分がいる事を認めたくなかった。

 

 そんなものを、コイツの、新道寺の口からなんて死んでも聞きたくないと俺の本能が拒否をする。

 

「ヒロ……君も僕と同じ……モブせかの登場人物をキャラとして、記号として意識しちゃう『クズ』なんだよォ?」

 

「その口を閉じろおおおおおおおおおおお!!!」

 

 俺はこの世界を『原作』だの『本来は』だのと、創作の世界である事を無意識に口ずさみながら考えてきてしまっていた。

 勿論この世界で出来た友人や、婚約者は全員大切な人だと疑っていない、それは今も変わらない。

 だからこそ考えたくなかった。

 ずっと頭の隅に置いておけば大丈夫だと安直に考えていた。

 

 ……そんなだから、クズと言われて否定出来なかったから、俺は我を忘れて飛び掛るより他無かった。

 

「ヒャヒャヒャ、図星なんだねェ!! 愛だのなんだの語っておきながら無様この上無いよ!! 無様次いでに僕に殺されてくれたらもっと嬉しいんだけどね!!」

 

 飛び掛かり、避けられ、乱射してはまた避けられ、不毛な戦いが続く。

 俺でもこれが不毛な戦いだと言うのは分かっていた。

 これが何も生まない戦いだと言う事も分かっていた。

 それでも、感情は理性を奪ってしまうものである。

 ぶつけ様の無い狂った感情だけが突き動かしてしまっていた。

 

「アル、緊急事態だ――って、何やってんだよお前!! なんでそんな戦い方してんだ!」

 

「誰だか知らねえがうるせえんだよ!! 俺は、俺はコイツを殺さないといけねえんだよ!!」

 

「馬鹿かお前!! ゲラットが暴走してモンスターを呼び寄せる魔術を使いやがったから何としてでも防衛しないといけないって連絡入ってただろ!!」

 

「おやおや楽しんでたのに飛んだ横入りに……あの無能はやはり使えないねえ。仕方あるまい、ここは一旦引こう。次会う時は必ず殺してあげるからね♡」

 

「どこ行くんだテメェ!! 逃げるな!! クソ……離せ、離せよ!! 俺は、俺はアイツを殺さないと……」

 

「ふざけてんじゃねえぞアル!! あの公国騎士が誰なのか俺は知らんが、誰であったとしてもここでお前が冷静にならなきゃマリエはどうなるんだよ!! 俺の妹だからってのも多少はある、だがそれ以前にお前が世界で一番愛してる女だろ!? そいつ守らなくてどうするんだ!! 目ェ覚ませ!!」

 

「リ……オン……」

 

 ハッ……と目が覚める様な感覚がした。

 俺のクロカゲを羽交い締めにしていたのは、外装がボロボロになりながらも黒騎士を撃退したであろうリオンのアロガンツだった。

 そして空を見上げる……空を覆い尽くさんとばかりに集結する魔物に、現実を突き付けられる。

 

 そうだった。

 目の前にいた仇敵を前に、我を忘れていた。

 

 あのまま戦っていれば客船が逃げ切れるかどうかも不透明で、下手をすれば二度と取り返しの付かない事になっていた可能性すらあった。

 

 馬鹿かよ俺は……

 

「よう、目は覚めたか馬鹿野郎」

 

「……スマン、一番大切な事を見落とすところだった」

 

「お前らしくもないな。ま、理由は後で聞いてやるからその前にまずはルクシオンで消し飛ばした後で撃ち漏らしたモンスターの処理に全力で取り組むぞ! 俺達の大切な人達を守る為にな!」

 

「やっぱ敵わないな、タケさんには。アンタが兄貴分で良かった」

 

 身体から力が抜ける。

 しかしそんな場合ではない。

 愛する人がいて、命を預けてくれた部下がいて、俺はそんな人々を守らないといけない。

 

「俺も俺でヒロには色々助けられたからお互い様だ。おーし行くぞ!」

 

「そうだな、あのアホジジイのゲラットも捕まえないといけねーしな」

 

 ふぅ、と息を吐き出す。

 確かに新道寺の事は今でも殺したい気持ちしか無い。

 だが今は目の前の事を全力で処理しないと……そしてその後で、俺はリオンに全てを打ち明けよう。

 

 

 俺がアヤを守れなかった事も……全部、な。

 

 




この話は正直どう書こうかかなり悩んだ
味気無くないかとか一種の大きなターニングポイントの話だからとか色々考えたけど上手く書けてたら何より

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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