幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
「オイ嘘だろ嘘だと言ってくれアル」
その日、リオン・フォウ・バルトファルトは絶望していた。
切っ掛けは一通の手紙、ユリウスを筆頭とした決闘再戦の手紙であった。
そこまでは良かった、彼も面倒だとは思ったが適当にいなしてしまえばどうとでもなると思っていたからだ。
「ただの五人からの決闘の果たし状なら別にどうだって良かったんだよ……俺が適当にやれば大丈夫なはずだからな。……でも、でもなあ……!! どうしてその果たし状の差し出し人が五人からじゃなくて……アルもいるんだよ……!?」
だがこの果たし状には『六人』の名前があった。
ユリウス、ジルク、クリス、グレッグ、ブラッド……そしてアルフォンソである。
彼には理解が及ばなかった、何故本来敵対関係だった五人とアルフォンソが組んでいるのか、六人衆と呼ばれるのを心底嫌がっていたアルフォンソが組んでいるのか、何一つとして理解出来なかった。
「しかも決闘理由が『純粋なリベンジ』って……アルお前はそういうタイプじゃないだろーが!!」
元よりアルフォンソは今嘆いているリオンと同じく打算的な人間だった。
マリエが絡まない事では勝てない勝負には乗らずに気ままに傍観者として過ごす程度である、そして今回マリエは全くもって絡んでいない。
「アルお前だけは裏切らないと思ったのにいいいいいいいい!!」
リオン渾身の叫びが木霊するのだった。
二学期も終わりが近付き肌寒さを感じる冬の訪れを感じさせる季節、そこに一体の鎧と六人の男達がいた。
そう、馬鹿レンジャーと呼ばれた五人衆と俺だ。
「ふっふっふっ……やっと完成したな」
「ああ。これは壮観だ」
「しかしまさかディーンハイツ君がこの話に参加させてほしいと言ってきた時はビックリしましたよ」
「そのお陰でディーンハイツ家の技術を盛り込めたからラッキーだったぜ」
「詐欺師にも騙される事無く出来たからね」
「最初、私に話を持ち掛けられた時は何の冗談かと思ったが……そう言えばディーンハイツもバルトファルトには苦汁を飲まされた一人だったと気付いて、気が付けばここまで来た。お前無しでは我々の努力の結晶を作り上げる事は不可能だった、ありがとう」
「良いって事よ。俺だってちょっとくらいリオンに一矢報いたいと思ってたところだったんだし。それに俺こそ稼げたから礼を言わせてほしいくらいだ」
クリスに話を持ち掛けたあの日、俺はそのまま五人衆を集めて話をしたのだ……今、お前らリオンへのリベンジ考えてるだろ? 俺と組んでみないか? と。
最初は怪しまれたものの、俺が『俺自身もリオンに実質負けた』事実があったのが良い方向に出たかそれを使い説得したところ了承された。
実はこの話には打算的な裏があり、王家に仕える上級貴族の嫡男や殿下であるユリウスにディーンハイツの工房を使用させ宣伝効果で実家を潤わせるという狙いがあった。
ユリウス達としても下手な詐欺師に騙されるくらいなら王家お墨付きの防衛部隊を率いるディーンハイツ家に任せた方が良いだろうとまんまと乗ってきてくれたのは非常に助かった。
とはいえ今回の目的はあくまでも宣伝、ぼったくりなんてする訳が無い。
五人の鎧の残骸から使える部品を絞り出し無理なく繋ぎ合わせ、一つの鎧として安全性、性能共に良質な物を作り上げるという大掛かりな仕事としての適正価格として10万ディア、つまり日本円価格1000万円を徴収しただけに過ぎない。
本来騙されるところではこの五倍且つ詐欺師だった訳だから非常に良心価格だと胸を張って言える。
ただ俺としても打算の次いで程度にはリオンへのリベンジがあり、あながち俺も含めたリベンジと言われても否定は出来ない。
鎧は五人の繋ぎ合わせだが、それを繋いだのは俺な訳だし。
それに俺やユリウス達も結構週末はディーンハイツ工房で夜な夜な作業員の手伝いをしてたし。
そのお陰で見た目こそヘンテコだが王家直属家の技術の結晶が詰まった作品になった。
だから盛大にお披露目決闘を行いこの技術を周りに知らしめて宣伝してやる。
「何だかんだ……俺達ディーンハイツに世話なりっぱなしだな」
「何とかしてマリエを僕達の物にしようと画策したりもしたけど、これじゃ当分は敵わないな」
「だが俺達は諦めない。俺達にも意地があるからな」
「ええ。今は同じ道を行く者同士、ですがこれが終わればまたライバル」
「私は必ずお前をどこまでも追い掛けていく。私の待つ答えがそこにあるはずだからな」
「ウチの嫁はウチの嫁だからな?」
ちょっとユリウス達との青春に浸ってたらすぐ引き戻されたわ。
この人達いつまで俺のマリー狙うつもりなんですかね……ただクリスだけは何か違う雰囲気もしたが。
折角今だけは馬鹿六人衆って呼ばれても許してやろうとしたのに。
「ところでディーンハイツ君、パイロットは誰にするつもりですか?」
「俺は乗らないから誰か乗れば良いよ」
「オメーは乗らないのか?」
「これはあくまでもお前ら五人衆のリベンジがメインだ、俺をメインに据えるのは場違いだろ」
「成程……そうなるとこの五人の中でも一番腕っ節がある人間が乗るのが妥当だろうね。僕はまだまだ追い付けないから即脱落だけど」
「私もこの鎧だと戦闘スタイルが合わないと思うので辞退します」
「剣術に自信はあるが銃はまだだからな……」
「となると後は殿下かグレッグだが……」
「今回の鎧は少し大型だからな。そうなると俺の様な高機動型使いよりパワー型のグレッグが合っているだろう」
「な……!? 良いのかよ!?」
「お前が良いと思ったんだ、我々の代表として戦ってきてくれ」
「殿下……」
オイそっちはそっちで青春すんのかい。
無駄にキラキラしやがって……ま、俺も悪い気分じゃないけどね。
んで俺が折角手伝ったんだからそれなりに良いとこは見せてほしいもんだ。
「ま、ディーンハイツ家の知識と研鑽と技術を詰め込んだ、お前らの部品から作り出せる至高の逸品だから頑張ってくれよ」
「任せとけ!! みんなの託された想いを胸に一矢どころか十矢くらい報いて勝ってきてやる!!」
「ふっ、グレッグは頼もしいな」
「怪我すんなよー」
物凄くメラメラ燃えてるところ悪いんだけど君達がリオンに勝てるビジョンは全くもって浮かばないんだ申し訳ない。
一応リオンは五人の魂の結晶+俺渾身の技術を詰め込んだリベンジマッチなんて聞かされたら負けに来るだろうがあの人は手加減というものが出来ないのが最大の欠点なんだ。
つまりちょっと強くしちゃうと決闘の時の俺みたいな被害が生まれるという事だ、流石にパイロットが俺じゃないからあそこまで本気は出さないだろうけど俺じゃないからこそ手加減の調整も出来ないって事だ。
さようならグレッグ、骨は拾ってやる。
三割くらい冗談を含めた話はさておき、リオンのリアクションが気になるところだな。
決闘当日がどうなるやら、楽しみにしとくか。
そして二学期の終業式が終わった当日。
学園の闘技場は湧きに湧いていた。
学生もそうだが今回は教師陣もこの一戦を待ちに待っていたらしく、大歓声が響き渡る。
「ユリウス殿下達、あの外道に勝つために五人で頑張ってきたって!」
「週末には夜な夜な鎧の修理のために五人で集まっていたらしいよ」
「よ、夜な夜な……!?」
「しかもバルトファルト男爵側にいつもいたディーンハイツ男爵も決闘のリベンジとしてあの五人の側に付いて技術提供したんだって!」
「何それ激熱じゃん!」
お、周りの女子も湧いてるねえ。
しかも俺が加わったのがポイント高かったのか目がキラキラしてる男子生徒も見受けられる。
「あ、アンジェ……」
「ん? あぁ、心配ない。リオンからは事前に話は聞いていたからな。あいつの負けてやる理由も納得した。文句はないよ」
「そ、そうなんですか?」
「私とて思うところもある。だが、事実を受け入れられる程度には諦めもついたさ。それに、言い方は悪いが殿下に対しての気持ちは冷めたよ。まったく、余計なことにリオンを巻き込んで迷惑な」
「明日の授与式は大丈夫でしょうか? リオンさん、怪我しないといいんですけど」
「お話のところ申し訳ないけど、アイツは手加減出来ないタチだから勝っちゃうと思うよ。ほら、俺との決闘思い出してごらん? 相手が強いと逆にそうなっちゃうタイプなのさ」
「た、確かにリオンさんならやっちゃうかも……」
「……ふむ、否定は出来ないな」
「というかアルが週末消えてたのってそういう事だったのね……」
共に観客席から見守るマリー、リビア、アンジェ。
三者三様にドン引きしてるがマリーは何故俺にドン引きしてるんだ?
「俺もたまには馬鹿になりたい日もあるって事さ。後アイツらが詐欺師に騙されて怪我でもしたら目も当てられないし」
「って言ってまたお金稼ぎの事でも考えてたんでしょ?」
「御明答、しっかり適正価格で儲けさせてもらったぜ。良い宣伝効果にもなるだろうし万々歳だ」
「……もしかしてこの決闘で一番得してるのって……?」
「十中八九、アルだろうな」
「アンタの商売根性にはいつも呆れさせられるわね……」
心外な、本当ならアイツら一人頭日本円価格1000万円で詐欺師に騙されるところを俺達伝統と実力を重んじる本格派揃いのディーンハイツ工房で、しかも一人頭日本円価格200万円で丁寧に作り上げた職人の逸品だぞ寧ろ褒められて然るべきだ。
とはいえ俺が一番得してるは正解だがな。
「ハーハッハッハッ! こういう時に儲けられる人間が一番得出来るって事だ!」
「負けてからまた挑もうなんて凄いよな」
「あぁ、きっと今回はやれるさ」
「俺、殿下達を応援する」
「ディーンハイツも参戦してくるなんて思わなかったがアイツも見どころがあるな!」
「敵同士だった五人とディーンハイツの共闘……胸が熱くなるな」
そう、気分的にも得してると言える。
今日くらいは馬鹿六人衆と言われても笑って許してやろう。
「おおーーい!! アル!! 後で覚えとけよ!!」
既に入場済みのキレ散らかしてるリオンには渾身のてへぺろをお見舞いしておく。
「ふぁっく!!」
試合開始の号令が掛かる。
うんまあどれだけシチュエーション良くても試合結果は分かってるから……
勿論その後は見せ場を作らせてもらった上でしっかり負けました。
そらそうよ。
でも、少しだけ楽しかったって事もまた、事実として残るのだった。
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ