幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
明日にはマリーの新しい実家に挨拶に行くとあり、朝からさっさと準備を済ませ昼には暇になっていた俺はリオンの元を訪れていた。
リオンには査問会からの報告書の話、ステファニーが結局マルケスの使用人として部屋に居座る事になった話、ロイズの話を行った。
「……つー訳でステファニーは髪も下ろしてすっかり大人しくなって最早別人になってる。正直マルがアイツを無意識の内にジワジワと変えてたんだろうな、恐ろしい奴だよ」
「あの噛ませ令嬢がねえ……しかしそれ以上にロイズの事が面倒だな。深く関わらせてない捨て駒の中でもランクの低かったカーラとステファニー、空賊以外は全員殺してた訳だろ?」
「ああ。だから次はどこで誰を殺すのか皆目見当もつかない」
「厄介極まりないな……」
実際公国の貴族を殺していたロイズが次誰に成り代わっていくのかは予想が付かない、後から聞いたが俺が見たロイズの姿はイーデン伯爵とかいう公国の上級貴族だったらしいが全く聞き覚え無かったし。
「ったく面倒事ばかり……そういえば面倒事と言えば何か忘れてる様な……」
「面倒事……あっ、聖女関連の事とかも面倒だったよな」
「あーね。首飾りはグリシャムから貰ってるんだっけ?」
「おう。お宝の中でも一番のお宝だって言ってたぞアイツ」
「確かにあれは激レアだからな」
話は連想ゲームみたいな形で聖女関連へと移っていた。
そう言えば本来ウイングシャーク頭領の大切なものって立ち位置ではあったんだよなアレ。
……後は腕輪と杖が聖女のアイテムだっけか。
「取り敢えず神殿にはバレない様に渡されたからまだバレてないはずだ。それよりマリエの新しい実家に挨拶に行ったら腕輪の回収もしたいと思ってるんだが、一緒に王都のダンジョンに来るか?」
「そうだな、何かあったら困るし……うん? 王都のダンジョン?」
「アル? どうした?」
「いや……その……非常にまずい事になりそうな言葉を思い出しちまったんだ……は、はは……今の今まで特段気にもしてなかったけど……」
「お、オイオイなんだよ」
腕輪、そして王都のダンジョンという単語を聞いて俺は今まで何もかも忘れていた事を思い出してしまった。
そう、それはモブせかの流れを知ってるなら忘れてはいけない展開……
「……俺達、ウイングシャークスカウトしに行った時にマリー置いてきてたよな?」
「そうだな」
「後からカイルから聞いたんだ。俺達がそっちにいる間マリーとカイルとで王都のダンジョンに潜って大量に稼いでたって」
「ふーん……え? マリエが王都のダンジョンに?」
「…………ワンチャン、ワンチャンだが、まずい可能性ってあるくね?」
「…………今すぐマリエを呼んできてくれないか?」
「分かった、な、何とかする」
マリーの聖女の腕輪回収イベントであった。
大騒動ですっかり抜け落ちていたが、この聖女覚醒?イベントでマリーは聖女として認定されてしまう。
しかし後々三守護神に恐れを為して自分が偽者だったと白状してしまい危うく処刑されかけてしまうのだ。
この世界線では三守護神は封じたが、何だかんだリビアの力無しでは難しい展開が待ち受けてないとも限らない。
俺の嫁が処刑寸前なんてそんなのあんまり過ぎるし、俺がいるんだから絶対回避させないといけない。
俺は大急ぎでマリーの部屋に向かい、とにかく連れて来るのだった。
「なによ、話って。結構急いでたみたいだけど」
それから約10分後、マリーがリオンの部屋に来て話を聞くまでの体制を作る事は出来た。
そもそも俺のいない世界線と違ってこの世界線ではリオンが既にマリーを妹と把握出来ている事もあり、俺がいたのもあり、そこまで険悪では無かったのも大きいだろう。
「単刀直入に言う。お前、王都のダンジョンで聖女の腕輪を見つけたな?」
「聖女の腕輪? ……あっ。アレってやっぱりそうだったのね」
「マリー!? やっぱり持ってるのか!?」
「え……でもなんで王都のダンジョンに聖女の腕輪があるって知ってるのよ?」
えー単刀直入に聞き過ぎたせいでまずいです。
確かに焦ってたけどマリーが冷静にツッコむせいでこっちの正体が一瞬でバレかけてます。
いやね、後で正体は明かそうと思ってたよ?
でも今は違うと思わない?
「……リ、リオン? 俺はどうしたら良いと思う?」
「あの時の約束、俺だけ早まったのはちょーっと納得行ってなかったんだよな」
「ま、待て待つんだリオン。確かにお前が三人の気持ちに答えるのが前倒しになったのは俺のツッコミ有りきだがリオンが口を滑らせたのが一番のミスだろ?」
「じゃあお前もそうだな、もう諦めよう! シチュエーションが欲しかったのは分かるけど逃げられないんだぞ!」
めちゃくちゃ良い顔で鬼畜発言するんじゃないよこの人は。
そう言えばだがリオンは、あの式典の前三人に気持ちがバレて白状という形で告白、三人と付き合うという流れとなっていた。
俺としては早くに気持ちを伝えられて良かったと思ったがまさかここでそのカウンターが来るとは思わないじゃねえかよ!
「?? さっきから何話してるのよ」
「あー悪いなマリエ。俺達が何故聖女の腕輪の場所を知っていたか……」
「リオン? リオンさん!? まだ間に合わない!? 今ならまだ言うの辞めるの間に合わない!?」
「ダメです」
彼は満面の笑みを浮かべていた。
ちくしょう俺が何したってんだよ。
ちょっとリオンの話前倒しにして決闘再戦で胃を破壊しただけじゃないか。
え? それが原因?
……はい、諦めます。
あーあ、もっと良いシチュエーション考えてたのになあ。
「……あーもう、もっとシチュエーション考えてたのにぃ……俺渾身の計画がぁ……」
「それは俺にも言える話だからおあいこだねアルフォンソくん」
「この鬼畜騎士がよ。……リオンから話してくれ」
「はいよ。まあ、簡潔にネタばらしすると俺達実は『転生者』な訳よ。んでお前が転生者なのも把握済み。アルトリーベってゲーム知ってるだろ?」
「……え!? アンタ達も転生者なの!?」
「そ。因みに俺はお前の兄貴だ」
「はあ!? 兄貴!?」
俺が部屋の隅でゲッソリする中マリーの叫び声が聞こえる。
そりゃまあ目の前にいる良く分からんモブチート使いが兄とか言われたらビックリするに決まってるわな。
「そそ、古塚武康。お前古塚彩乃……アヤだろ?」
「……アタシの大好物は?」
「プリンとヒロ」
「アタシの嫌いな物は?」
「ギャンブル」
「ヒロの本名は?」
「加賀宏道」
「うわぁ本当に兄貴だ……」
半分くらい俺の話だったんだけどこれツッコむべき?
そんで大好物カテゴリになんでプリンと共に平然と入ってるの俺は。
そんでなんでマリーはそこに何の疑問も抱かないんだよ。
兄貴判定する質問どうなってんだこれ。
「お前に散々アルトリーベやらされたからな。嫌でもアイテムの場所は把握してんだよ」
「あ……その、兄貴……」
「一つ言っておくがお前のせいで俺が死んだ訳じゃないからな。ありゃ事故だ事故、だからお前如きが気にするなんて一億万年はえーんだよ」
そう言えばマリー……アヤはタケさんが死んだって聞いた時かなり気に病んでたっけか。
少なくともこっちの世界線ではアヤの性格も軟化してた分、そう言った事でも深く傷付きやすかったし。
「……そ、そう?」
「俺は事実しか言わねえってアヤが一番知ってるだろ」
「それもそうね。……って! そう言えばアルも転生者ってのは本当な訳!?」
「そうだが? アル、言わなくて良いのかー?」
「そのまま忘れててくれれば良かったのに」
「忘れる訳無いじゃない、だってアルの事なのよ?」
うん嬉しいんだけど今は違うんだどうにか忘れててほしかった。
ものすごい純粋な目で見られて俺としては複雑過ぎる。
「もう観念しろって」
「ぐぬぬ……」
「アタシは……アルが誰であっても今のアルが好きな事に変わりは無いわ。……その、確かにヒロくんの事も今も忘れられないけど……」
それ言われたら尚更言いにくいんだけど分かってるんですかね。
でもどっちの俺も愛してくれてると言ってくれて嬉しくない訳も無い。
そりゃあ、前世からずっと大好きな人なんだしさ。
……はぁ、腹括るか。
「俺がヒロだよ……」
「……へ?」
「お前の事こんだけ大好きでタケさんとつるんでる人間って言ったらヒロくらいしかいないだろ?」
「……え!? ほ、本当にヒロくんなの!?」
「何ならアヤが高校生の時に俺達とやったなんちゃってギャンブルでの全員の勝率と勝敗数と賭けた物も全て言えるが?」
「うんそれは言わなくて良いから……! で、でも本当にヒロくんだったなんて……」
あーもうマリー泣きそうな顔しちゃって。
そんなに会いたかったのかよ、ったく嬉しいな。
俺も泣きそうになるじゃねえか。
「……ヒロとしては、久しぶりって言っといた方が良いか?」
「ずっと……会いたかった……アタシ、あんな死に方しちゃったから……」
「怖かったよな、苦しかったよな。ゴメンな、助けてやれなくて……」
「ううん、ヒロくんは悪くないから謝らないでよ……でも……ありがと……また会えて、嬉しい……!」
そりゃ怖かっただろ、ストーカーに殺されたんだから。
いつもの抱擁とは違う、十何年振りかの、ヒロとアヤとしての抱擁を交わす。
やはりその身体は、少しだけ震えていて。
自然と俺もほんの少しだけ、抱き締める腕に力が入ってしまう。
「俺も……この世界でだけど、また再会出来て、アヤに気持ちを伝えられて、ここまで来られた事が嬉しくて仕方ないよ」
「……その、兄貴もありがとう」
「良いよ別に。あー、ほらそれより聖女の腕輪どうするか問題終わってないだろ」
「あ、そういやそうだったな」
感動の場面ではあるが現状そっちを早急に終わらせる必要もあったな。
俺とマリーは一旦離れて、本題へ移る。
「まさかとは思うが着けてないよな?」
「どっかで見覚えがあったから怪しいと思って着けなかったわよ。軽率な事してアルと一緒にいられなくなるのも嫌だったし」
「めちゃくちゃ嬉しい事言ってくれるじゃん」
理由に惚気が入るとか最高に勝ち組って感じがしてニコニコしてしまう。
「えーっとだな、お前は本編のプレイとかしてないから知らないだろうが聖女アイテムはリビアの力が無いと本領発揮しないんだ。他の奴が使っても途中で詰んで首チョンパだろうさ」
「え!? あ、危なすぎでしょ……」
さて本題だが、俺はここで一つ訂正を行いたい。
本来は確かにリビアが着けないと本領発揮しないが、マリエルートで明かされた真実での記載ではリビアが着けると精神汚染で聖女の怨念に精神を乗っ取られてしまうのだ。
序盤の、しかもリオンと会わないマリエルートでの話ではあるが着けるにしても賭けの分が悪過ぎる。
対して『マリエ』はいつも心の中に大好きな兄貴……リオンがいて生霊の守護霊として怨念を完全妨害していたので装着しても問題無いという記述があった。
つまりそれ+俺と言う相思相愛の婚約者がいる現状精神超強化状態のマリーに何とかして着けさせて尚且つリビアをサポートに置かないといけないのだ。
一か八かだが……やるしかない。
「それに付いてだが……実は裏設定資料集で重大な事実が書かれていたんだ」
「え、裏設定資料集? そんなのあったか?」
「リオンが死んでから発売されたやつだから知らなくても無理は無い」
「……? アタシそんなの知らないけど」
「そりゃ公式には発表されず一部の特典にこっそり付いてたものだからな。たまたま知り合いが持ってたから見させてもらったんだ」
二人に嘘を付くのは心苦しいが、この二人だからこそ騙せてしまうと言う事の方が心苦しい。
だがこうする事でしかどうする事も出来ないんだ……許してくれ。
「それで、なんて書いてあったんだ?」
「実はあの腕輪やら何やらの聖女アイテムには強い聖女の怨念が宿ってて、心から繋がってる婚約者レベルの男性がいないと怨念に精神を乗っ取られるらしい」
「マジかよ!?」
「あれ、それじゃリビアには……」
「そう、リオンと付き合い始めたとはいえ婚約者レベルまではまだだから着けるとどうなるか分からん。そこでだ……マリーが着けるってのはどうかって提案してみたい」
「こ、コイツが?」
「だけどアタシが着けても本領発揮出来ないんでしょ?」
「だからこそここが最大のポイントになるんだが……側仕えって名目でリビアを置くのはどうかなってね。同じ回復魔法使いだし、いざとなればリビアと組んでやれば問題も無いはずだ。二つの問題を同時に解決する唯一無二の解決策だと思ってる」
そう、だったら隣にリビアを置いちゃえば良いのだ。
幸いにしてこの世界線でリビアとマリーの仲は良好であり気の合う良い友人関係を築けている。
ならばその関係性を最大限に活かさない手は無い。
「なるほど、そりゃ良いな。マリエにはアルって言う心から愛を誓える婚約者がいるもんな」
「面と向かって言われると恥ずかしいんだけど。でもそれで解決出来るなら、アタシの力が使えるなら……やりたい。アタシだって、アル達の隣に立てる様に公国が攻めてきたあの日を繰り返さない為に血の滲む努力を続けてるんだから」
「……悪ぃな、無理言って」
「アルの為に動けるならやらせて。守ってもらってばかりだったから、今度はアタシが守れるものを守りたい」
本当、マリーも良い子に育ってくれたよな……育てたの三割くらい俺だけど。
しかしこれで一気に胃薬案件が片付いたと見るべきだろう。
そもそも学生が聖女として一人で何もかもやるにはあまりにも荷が重いし、その辺の説得力も持たせられるだろ。
これで本当の意味で冬休みを堪能出来るな、と息を吐くのだった。
オマケ 知らなきゃ良かった事に気付く古塚兄妹
リオン「あれ?それじゃアルトリーベ本編でリビアが聖女になってるのって……」
マリー「もしかして実質バッドエンド?」
アル「そうなるな」
リオン「うわぁ……知らなきゃ良かった……」
マリー「ほんとよ……わざわざそんな設定作る意味無いでしょ……」
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ