幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第五十五話『甘やかしたくなる気持ち』

「里の遺跡を見てみたいと?」

 

「ええ、可能でしょうか」

 

「遺跡に入ること自体は――ただ、あそこは里にとって神聖な場所でしてね。本来なら、他の村の長たちにも同意が必要なのです。まぁ、自由に出入りをしていますが、流石に里以外の者たちが出入りするとなると……」

 

 村長の家、そこに招かれた俺達は交渉を行っていた。

 村にある遺跡、そこを訪れる事は可能かと。

 しかしいくらユメリアさんとカイルの関係性が良好になっていてもコイツらまで同じな訳も無く案の定難航していた。

 

「里長も反対するだろうし、無理でしょうね」

 

「里長?」

 

「占いが得意な老婆ですよ。我々より前の世代は強く信じていますが、今では占いの力も落ちたのか当たらないことも多いですけどね。昔は、人間たちもよく里長の下を訪ねに来たそうです」

 

 まあ何があっても入らせてもらうけどな。

 コイツらの事なんて別にどうでも良いし。

 

「それにあそこは、我々も足を運びます。ですが、宝なんてありませんでしたよ」

 

「え?」

 

 分かりやすい嘘を言いやがって。

 

「村長、里長が!」

 

 慌てて入ってきた村の女性エルフだろう人に、村長が近くにあった置物を投げつける。

 チッ、ほんと俺こういうの嫌いなんだけどねえ。

 

「きゃっ!」

 

 女性が物をぶつけられ、怖がっている。

 今すぐ駆け寄りたい気持ちに駆られるがここで動けば後でもっと酷い仕打ちに遭うかも知れないと思うと安易には動けない。

 

「バタバタと走って乱暴にドアを叩くとは何事だ! 何度教えれば理解できる! お客様の前で失礼だろうに!」

 

「……せめて我々の前でやるのは止めていただけると助かるんですけど。あんまり見たくないんで、そういうの」

 

「邪魔しないで貰いましょうか。エルフにとって礼儀作法は大事なのですよ。日頃からこうして礼儀作法に気を付けねば、子供たちも行儀が悪くなる。そうなれば、奴隷として高く売れませんからね」

 

 礼儀作法の矯正? これが?

 笑わせるなよクソが、そんな暴力で支配する人間なんて何もコントロール出来ねえんだよ。

 

「客の前で気分が悪い光景だな」

 

「俺達にはそう言った文化への理解が無いのでね。失礼なのは分かってるがこちらにもこちらの言い分があるという事を分かってもらいたい」

 

「これは失礼しました。……それで、要件はなんだ?」

 

 

 

 

 

 蹴られていた女性が話すには、その件の里長が村を訪れたという報告であり俺達含む村にいた全員が広場へと集められていた。

 しかしどいつもこいつもイケメン美女揃いで……普通の人間ならまだしもイケメン嫌い+マリー以外興味無い俺には胸焼けしかしない地獄の様な場所と化していた。

 

 そんな群衆の真ん中にいるのが、巫女さん二人に両脇を抱えられながら出てきた老婆……里長だった。

 最早一人で歩く事すら困難なのに良くこんなとこまで来たな……満身創痍過ぎるだろこのお婆ちゃん。

 

 ……そんでもって隣の巫女さんに言葉をボソボソと話している。

 

「里長の言葉を伝えます。もう二度と遺跡に入ってはならぬ。このままでは、古の魔王の怒りに触れる、と」

 

 いやしかも声すらまともに発声出来んのかい!

 どんだけ満身創痍なんだよ。

 

「……里長、魔王とは何ですか? そもそも、他の村の者たちも出入りをしているじゃないですか」

 

「何も知らないと思っているのですか? 貴方が遺跡に大きく関わっているのを里長は知っています。里長は言っていますよ。禁忌に触れてはならぬ。エルフの聖地に入ってはならぬと」

 

 まあこの村長ゲスだからな。

 何一つ情が湧かない上に何かあれば即切り捨てられるくらいには何も情が湧いてない。

 

「占いですか」

 

「何? 全否定派?」

 

「まさか。不思議な能力を持つ人たちは確かに存在しましたよ。マスターやアル、マリエもその一人ではないですか」

 

 確かに前世の記憶を頼りにこの世界を攻略しようとしてるリオンみたいな転生者連中は非科学的な超能力者と言われても遜色無いな。

 俺に関してはそれすらも何故か超越してるメタ二重奏な超能力者みたいなのだから更に異色だけど……

 

(正直、全部話すと言いつつリオンやマリーにすら二重転生者……お前らの事をメタ視点で見られていた存在であった事、言えなかったな。そりゃ言えたら良かったさ……でも、アイツらだからこそ、大切な人達だからこそ、言えないんだよ……)

 

 言えればどれだけ楽かと幾度と無く思った。

 そうすれば俺の抱えてるものは全て無くなって、何もかも取り払って、本当の意味で対等な関係になれる。

 だが、俺は恐れてしまった。

 もしも自分が、大切な人から『お前らも俺からしたら創作世界の人物だった』なんて言われたら。

 言う事なんて、出来っこ無かった。

 

「アル? どうかしたの?」

 

「え、あ、いや……だ、大丈夫だ大丈夫っ、ちょっと意味分からん話聞かされて眠くなってたんだよ」

 

「全く、シャキッとしなさいよね」

 

「スマンスマン」

 

 まずい、ここで気取られては何もかも終わる。

 ここは何より一先ず冷静にならないとな。

 

「ところで魔王について何か知っているか?」

 

「マスター達の方が詳しいのでは? 乙女ゲーに魔王が出てくるのですか?」

 

「出てこない。だから気になっているが……ま、村長の話通り里長も老いたと考えるべきか……それとも別の意味合いがあると見るか……」

 

 まあ突飛押しも無い話だし、何か魔王という単語が言葉のアヤになってると考えるのは割と的確か。

 それよりこの話いつまで続くのかね。

 

「うーん、色々計画はあったけど流石に無理言ってまで入るのは失礼よね。仕方ないけどここは――」

 

「貴女様は聖女様でしょうか?」

 

「へ? あ、はい、そうですけど……」

 

 ここは引くべきか……とマリーが提案しかけたところで女性がマリーの存在にようやく気付く、いや一応聖女用の衣装着てるんですけどねこの人。

 

「……遺跡に入るのは構わないそうです。聖女が古の魔王を連れてくる。それが、里長がここ数ヶ月で予知した未来ですから」

 

「魔王? アタシ、そんなの知り合いにいないわよ? ……魔王みたいな強さの奴と魔王みたいに敵に容赦の無い人なら一人ずつ知ってるけど」

 

 間違いなく前者がリオンで後者が俺だろうな。

 リオンはともかく俺の言われ方よ、誤解招いちゃうだろそんな事言ったら……俺は救いの無い敵判定したら死罪まで持ち込むか殺すか死より屈辱的な末路を歩ませるだけの人間なのに。

 

「もしや、ユリウスのことでは? 王族ですし、新人類の末裔は魔法を使います。魔の法則を操る王族という意味なら、魔王、もしくは関係者とも呼べますね」

 

「……そう言われると少しは納得だが、殿下はここにいないぞ?」

 

「私に言われても困りますが」

 

 意味合い的には一番納得出来るがユリウスが魔王だった場合あまりにもショボ過ぎるんだが。

 

「審判の時です。この島が沈むのか、それとも許されるのか……この方たちの邪魔をすることは許しません。全ての者は、心静かにその時を待つようにと里長が仰せです」

 

 村長は納得し切れないといった風に小さく舌打ちをする、ざまぁねえなこのゲス野郎。

 その点この里長は満身創痍な以外は悪くない判断だし、流石は占いで未来を見通していた聡明さがあるな。

 

 何にせよこれで遺跡探検は了承された事になるし自由にやりますかね。

 

 

 

 

 

 遺跡内部、そこは荒廃としており壁や床は植物のツタが纏わりついていたり多少古びていたりと俺やリオンにとってはそこまで楽しいと言える雰囲気では無かった。

 だがその点リビアは興味津々だった。

 

「凄いですよ! リオンさんもアルさんもマリーも見てください、この形をしたこの装置は、他の古代遺跡でも発見されているんです。少し形は違いますが、ドアの近くにあるこの何かは古代遺跡の特徴ですよ!」

 

「お、おう……」

 

「ただの薄っぺらい石版か何かかと……」

 

「アタシには良く分からないけどリビアが喜んでるなら良いわ」

 

 いや装置とか言うけどこれただのカードキー通す装置です……

 しかも確かに良く見れば分かるが良く見ないとただの古びた石版にしか見えないくらい劣化してるし……良く分かったなリビアは。

 

「事実は告げない方がいいのでしょうか?」

 

「教えた方が喜ぶだろうに」

 

「……自分で発見するから楽しいこともあります。マスターには分からないでしょうね」

 

「お前って本当に嫌な奴だな」

 

「つっても自分で発見する探究心はロマンだからなあ」

 

「そんなもんなのかね」

 

『嫌味ならマスターには負けますよ。しかし、これはなんというか――』

 

 甘いなあリオン君、探究心というものはどこまでも底無しなんだ。

 探す、見つけるというその過程こそがロマンなのだよ。

 だからリビアからそれを奪うのはちょっとばかり無粋って訳だ。

 

「宝はないのか。まぁ、遺跡を見られただけでも話のネタにはなるか」

 

「エルフの遺跡と聞いてきたのですが……肩透かしでしたか」

 

「そう簡単に財宝のある遺跡が見つかるかよ。こういう空振りもあるから楽しいのさ。でも、ここまで何もないと逆に清々しいな」

 

 アンジェ、ジルク、グレッグも俺達と同じだったのか三者三様に残念がってるらしい。

 

「……ここまで来て何も無いなんて」

 

「ちょっと残念ですが私はお姉様と冒険みたいな事が出来て嬉しいです!」

 

 いや王女姉妹も割とノリノリやないかい。

 特にヘルトラウダは目をキラキラさせて周りを見渡している、何これもしかして和解させられればリビアと良いコンビになる流れか?

 

「あれ? 実は期待していたの?」

 

「……そうよ。悪い?」

 

「別に悪くはないけど意外だなって」

 

「公国だって元を辿れば王国系の国よ。冒険者に憧れを持つのは貴方たちと同じなのよ」

 

「王国民と共にいるという事を除けば憧れの冒険! 興奮せずにはいられませんわ!」

 

「……ラウダ王女の方は特にノリノリみたいだな」

 

「あの子、小さい頃から冒険譚や物語系の絵本ばかり読み漁ってたから。経緯は不服であれどラウダが喜んでる事自体は礼に値するわね」

 

「そりゃ光栄なこって」

 

 しっかり俺達に馴染む二人に周りが苦笑を漏らす。

 ま、俺の方こそ経緯はさておきこうして良い顔する二人が見られるのはヘルトラウダの末路を知ってる分感慨深いものを感じてしまう。

 しかも彼女はまだ14歳。

 だから……あんだけ苦しんでいたのを知っているから、ちょっとだけ、甘やかしたくなる気持ちになってしまうのだ。

 

「何なら折角留学生待遇で王国に来たんだ、帰ったら王都のダンジョンも見てみるか?」

 

「良いんですの!?」

 

「モンスターがいるから結構装備はしてもらう事になるが、俺とマリーとリオンでエスコートすれば余裕だろうしな。な、リオン」

 

「そこまで目を輝かせる奴相手にダメですと言える程鬼畜にはなれねえわ」

 

「あ、それならアタシが殴り倒して服従させた知り合いのモンスターいるしその子に案内させれば良いわね!」

 

「え?」

 

 ああ、平和だなあ。

 最後何か物騒な言葉が聞こえた事を除けば実に平和な時間だ。

 何かもうこのまま公国とか共和国とか帝国とか何もかも忘れてえなあ。

 

 

 

 

 しかし俺は、この後とんでもない事になるのを、知る由もなかったのだった――

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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