幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第五十八話『夢か現実か』

 モヤが薄く掛かった様な雰囲気、そして少し遠くから聞こえるような声、何より視線が『上から見下ろす様な形』そんな空間に俺はいた

 そして俺はここが夢の世界だと認識していた。

 怒りに身を任せ、エルフ共を殺害し、マリー達に前世に縛られなくても良いと言われ、ふっと力が抜けて眠りに落ちたのを覚えているからだ。

 そしてこの世界の自分……アルフォンソを第三者視点から自分は観測している……だからこの世界が夢だと認識出来ていた。

 なのにここはまるで夢ではない、そんな気がしていたのだ。

 

「これは……懐中時計……?」

 

「アル曰くこのヘンテコな右腕はロストアイテムみたいなもんなんだろ? 同じ場所にあったって事はこれもその類いなんじゃないか?」

 

 夢の世界で俺が手に取ったのは、銀色半透明な懐中時計だった。

 魔装……呪いのアイテムと言っても過言ではないそれと同じ場所にあったらしく、どうやらクレアーレから押し付けられたらしい。

 

「その可能性はあるな……まあこの右腕はルクシオンに徹底的に調べさせるとして……これは良く分からないから下手な奴の手に渡るくらいなら俺が持ってるわ」

 

「大丈夫なの、アル?」

 

「閉じてりゃ問題無いだろ、こういうのは得てして開くという行為がトリガーになる」

 

 俺としても、魔装の右腕は実際に押し付けられたらルクシオンをメインとして会議を開き消し炭にしてもらう予定だ。

 あれさえ無ければバンデルは暴走しない&生存可能だし、純粋に公国の戦力を削ぐ意味合いでも大きいからな。

 

「俺より慎重派なアルが持つなら問題無いだろ。さて、それじゃ王国に帰るか」

 

「帰ったら公国戦の対策しねえとならないしな」

 

 しかしなんで俺はこんな夢を見ているんだろうか、とふと疑問に思ってしまう。

 もしかして予知夢なのだろうか、それとも何の関係も無い夢なのだろうか、にしては妙に解像度合いが高いのも不思議だと思う。

 

(ヤケにリアリティが高くて、しかも何故か気持ち悪い感覚がする。普通の三人の会話にしか見えないのに……何故だ?)

 

 そう思った瞬間、場面がブラックアウトする。

 夢特有の断片的なシーンだけ見るやつだろうか。

 

 今度はどこに……と考えていると、ドサリという音が聞こえた。

 

 そして場面が切り替わる。

 

「う……嘘だ……マリーが……また……俺は……守り切れなかったのか……?」

 

 膝を着く俺の目の前にあったのは……マリーの遺体だった。

 夢だと分かっている夢のはずだ俺は最初そう認識していたはずだ、なのにそれを見た瞬間俺の呼吸が浅くなるのを、脳みそがそれを見る事を拒否するのを感じた。

 

 周りを見渡す……帝国の旗が見えた。

 

 王国と帝国が、戦争をしていた。

 

 有り得ない。

 だって俺は、王国と帝国が戦争をしなくてはならなくなる理由を知っているし、それを事前に阻止する知識を持っている。

 ならば前提として帝国と敵対関係になる未来自体が有り得ない。

 じゃあなんでこんな事になっているんだ?

 

 分からない。

 

 ただ一つ、マリーが死んでいるという事だけが理解出来てしまっていた。

 

「は……はは……こ、こんな世界……もう滅べば良いんだ……マリーが居ない世界なんて、俺には必要無い……」

 

 ユラユラと立ち上がる『俺』は、クロカゲに乗り込もうとして……ロストアイテムの懐中時計が光っている事に気が付いた。

 

《汝 この世界を白紙に戻すか?》

 

「……は? 何だよ、お前」

 

《我は過去と未来、刻を司る者也。汝、我と契約を交わすか。さすればこの世界を白紙に戻す事も可能である》

 

「……代償は何だ、それを答えろ」

 

 懐中時計は話す、契約を交わせばこの世界をやり直す事が出来ると。

『俺』は最早目に光なんて灯してない様な、それでいて何もかもを捧げてでもこの世界をやり直そうとしている様な、狂気的な目付きをしていた。

 

 ……ゾッとした。

 だが、俺なら、マリーを失ったなら、やるだろうと言う冷静な思考も存在していた。

 確かに俺の人生においてマリー以外の存在の大きさもかなりある、リオン、ディーンハイツ家、マルケス、セミエン、リビア、アンジェ……挙げれば割と大事にしたい人達は沢山いる。

 

 だが、それでも俺の人生にはマリーがいないと何もかも破綻する、意味が無いのだ。

 

 実際アヤを失った後の前世の世界でなんて、生きる価値が無いと思っていたのも事実だったし。

 別に前世で家族と仲が悪かった訳じゃない、寧ろ良くしてもらったお陰で親孝行しようと言う計画さえ建てていた程だった。

 なのに俺はその全てを捨てて新道寺を殺しに行き、相討ちで死んだ。

 

 後悔はある、だが満足している、それが新道寺を殺し転生し振り返った時の感想であった。

 

 だからこの今見ている『俺』という存在は、一歩間違えた世界の未来の俺だと確信出来る、出来てしまうのだ。

 

《代償として必要なのは汝の寿命半分。それだけあれば一度だけ、望む時の自由操作可能。それ以外に求むものは無し》

 

「たかが半分でこのクソッタレな、マリーが死んだ世界を消し去れるなら俺は喜んで差し出してやる……だから、テメェが何者か知らねえがこの世界を消せ」

 

《了承、汝と我は今を持って契約成立。汝の願い聞き届けた。契約成立後世界で我を見つけよ。さすれば代償を返す事可能也。但し世界改変後、汝含む殆どの者から今回の刻の記憶は消失する》

 

「んなのどうでも良いんだよ、俺の寿命半分とかマリーに比べたら何の価値もねえ。んな事より今すぐやれるのか? この世界を俺が学園に入学する直前まで戻す事ってやつをよ」

 

《可能。マスターの指示を認証。これより世界の逆行を開始》

 

 世界が止まる。

 今まで殺し合っていた王国騎士も、帝国騎士も、リオン達も、全ての時間が止まり、俺と『俺』だけがこの世界の末路を見届ける。

 懐中時計の輝きが強くなる、その光はやがて世界を包み込む。

 

「ロストアイテムにマスターねぇ……皮肉なもんだな。最後の最後に、リオンと並び立つチートアイテムとコンビを組むとは……ま、次の世界で万が一出会う事があればそん時は……また……」

 

 次第に世界が粒子となって消える。

 物も、自然も、人も、何もかもが消え行く。

 そして俺も『俺』も、それに飲み込まれる。

 

 視界が、真っ白になった。

 

 

 

 

 

「う……ん……ここは……?」

 

「起きた、アル?」

 

「…………マリー」

 

 目を開けると、マリーの膝の上にいた。

 ……そりゃそうだ、俺が今見ていたのは夢だ、それ以上でも以下でも無い、マリーが死んでるなんて現実なんてある訳が無い。

 だが少し動揺してしまう……それを隠す様に、わざとらしく起き上がる。

 

「おー悪ぃ悪ぃ、マリーの膝が気持ち良くてぐっすりだったみたいだな。そんで、こっから出るのか?」

 

「この変態おバカ……」

 

「ああ、そうだな。この管理AIからも財宝……かどうか良く分からんもの貰ったけど」

 

 ……そこには二つのロストアイテムと思しき物体があった。

 一つは魔装の右腕……俺にとっては特級呪物と断言出来る超危険物だった。

 

「……それ、ルクシオンは解析出来たりする?」

 

「特殊な加工がある為時間は掛かりますが問題無いでしょう」

 

「助かるわ……多分それ、ロストアイテムだから」

 

「調べるに越した事は無いか……ロストアイテムっつったらどんなものか分かれば使い方も分かるだろうし、それで戦力になったら万々歳だ」

 

 ルクシオンに調べさせるのは、俺にはこれを特級呪物と言える根拠を示す事が不可能だからだ。

 ならば一番聡明なルクシオンが言えば納得するはずだ、と言う思考の元誘導したのだ。

 

 それはさておきだ。

 

 俺はもう一つのロストアイテムを見やる。

 何故だか分からない、分からないのだが、それを見た瞬間から身体の震えが止まらない。

 魔装の右腕の話はそれを誤魔化す為に積極的に話していたという面もある、が……俺は吸い込まれる様に言葉を紡いでいた。

 

「これは……懐中時計……?」

 

「アル曰くこのヘンテコな右腕はロストアイテムみたいなもんなんだろ? 同じ場所にあったって事はこれもその類いなんじゃないか?」

 

 息が浅くなるのを必死に堪える。

 俺の言葉も、リオンの言葉も、あのさっき見た夢と全く同じだった。

 これ以上夢と同じ展開は嫌だと口を閉じようとする……が、何故か口がそれを拒否する。

 そして言葉は更に紡がれてしまう。

 

「その可能性はあるな……まあこの右腕はルクシオンに徹底的に調べさせるとして……これは良く分からないから下手な奴の手に渡るくらいなら俺が持ってるわ」

 

「大丈夫なの、アル?」

 

「閉じてりゃ問題無いだろ、こういうのは得てして開くという行為がトリガーになる」

 

 発狂して叫びたい気持ちに反し、表情は至って冷静に、口が勝手に言葉を話していく。

 紛れもない、夢で見た最初の場面と全く同じシチュエーション、全く同じ口調、タイミング。

 益々分からなくなる、あの夢は夢なのか、未来なのか、過去なのか、全てがぐちゃぐちゃに混ざり合う感覚に襲われる。

 

「俺より慎重派なアルが持つなら問題無いだろ。さて、それじゃ王国に帰るか」

 

「帰ったら公国戦の対策しねえとならないしな」

 

 脳みそが割れる……となったところで、金縛りから解放される。

 

「アル、どうしたの? 立ちくらみでもした?」

 

「あ……ああ、そうらしい。しばらく寝てたのに急に立ち上がったせいかもな、ははは……」

 

「無理すんなよ~」

 

「どうせそこの村長も動けないんだから焦る事なんて無いのよ」

 

「そ、そうかもな。もうちょっとだけ休んでから行く事にするわ」

 

 ふぃ~、といつもの様に座り込み、バレない様に浅い呼吸を連続して吐き出す、あまりにも気持ち悪い感覚に吐きそうになる。

 懐中時計を見る……動く気配は無い、見たまま、銀色半透明の懐中時計に相違ない。

 

(まさか……有り得るはずが無い。俺が見たのは紛れも無く夢の中の世界であって、ここの世界であるはずが無い。なのに何で夢と同じ事が起きる時、俺の意志とは無関係に口が、身体が、動いたんだ? 何でこの、夢で見た物と全く同じ懐中時計が、全く同じここにあったんだ? ただの偶然である訳が無い。……本当に、俺は逆行しているのか? この世界を繰り返しているのか? だとしたら……俺の異常なまでの『マリーを失う』事への恐怖感は……)

 

 考えれば考えるだけ、あれが夢では無かったと警鐘を鳴らす。

 あったかも知れない世界ではなく、過去に俺が歩んだ世界だと本能が告げている。

 

(だとしたら俺は何者なんだ? 本当にこの世界に生きる人間なのか?)

 

(……分からない。分からないが……今はとにかく、目の前の事を捌いて、生き抜いていくしかない。答えは全て終わった後にでも探せるはずだ。だから……何にせよ、俺はマリーを守る。それだけだ)




この話はかなり重要だった事もあって難産だった

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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