幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第六十二話『公国の真実』

『もしも。もしもだ。公国の上層部が、嘘で国民を洗脳していたら……どうする?』

 

 それは、ずっとずっと私の中で木霊する言葉だった。

 バレント・ヒム・ドゥース、これが私の名前でありドゥース家という子爵家の三男として、公国の秩序を守り、公国の宿敵である王国を打倒する為に育てられ、兵士として自立し王女様お付きの護衛騎士になるまでに出世した。

 そして呑気に修学旅行を楽しむ王国の貴族子息達、引いては公爵家令嬢の乗る民間船を見つけ出し全員を抹殺し王国を恐怖に陥れる……予定ならそれで我等公国が覇権を握るはずだった。

 

「……まさか学生の中にあの様な手練達がいるとはな」

 

 しかし我々が王国の民間船を見つける前に民間船の護衛をしていた……後にアルフォンソの私兵団と分かった集団……に逆に先に見つけ出され先制攻撃を受けその時点で公国軍は半壊。

 遅れてやってきた漆黒の鎧に鎧部隊もほぼ壊滅させられ、船もあろう事かその漆黒の鎧より遅れてやってきた鎧達が加わった事でほぼ全てを無力化され、我々は完全敗北。

 

 殆どの者達は復讐に燃えていた。

 私も最初はそうだったが、本陣にリオンと名乗る男爵とアルフォンソと名乗る男爵……どちらも学生だった……に突入されヘルトルーデ様とヘルトラウダ様を誘拐された後で残ったアルフォンソに、私の中で幾度と無く木霊するそれを言われたのだ。

 

「使うと言っていたが、怪我が治るまでは療養とあって冬まで来てしまったが……」

 

 渡された珍妙なネズミ型をしたロボット。

 実際に動くのかどうかすら怪しかったが、療養中にしたテストでは座標登録での行動の正確性、映像、音声等の記録も鮮明に行えていた為奴が本気で渡してきたのだと確信した。

 

「そもそも王国はあんな技術をどこで発明したのだ……我々が遅れていると言うのか? いや、今はそれよりもやる事があるはずだ」

 

 

『だがおかしいとは思わないか? 王国が公国に不当な働きをしたと言うのも、国王、王妃両陛下の死も、確実な証拠は無い。違うか?』

 

『だ、だが我々は……』

 

『位のある人間の言葉だから信じたと? 馬鹿馬鹿しい、言葉なんぞいくらでも改竄出来るんだよ……騙されたと思って一度試してみたくないか? この録画録音機能が搭載された自立型隠密ロボットで上層部の本当の言葉を聞いてみるのを』

 

 

 このネズミ型ロボットが本物と分かった以上、次我々が攻めるまでに答えを見つけなくてはならない。

 あそこまで言われたのだ、徹底的に撮ってそれ見た事かと言ってやるのだ、我々公国は間違いではなかったのだと。

 

「今日は都合良く王宮に出向く日でもある……やれる事は全てやるだけだ」

 

 

 

 

 

「おおバレント殿、まだ完治していないと聞いておりますが怪我の具合は宜しいのですか?」

 

「王国の民間船に王女殿下二人が攫われたとあってはおちおち寝てもいられますまい。我等公国の威信に賭けて、必ずやヘルトルーデ王女とヘルトラウダ王女を取り戻す為にも、今日付けで復帰させてもらいました」

 

「なんと言う忠誠心……やはり貴方に王女殿下の護衛騎士を任せていて正解でした。我が公国軍も多大な被害を被り人材はともかくとして鎧や戦艦の量が足りぬ状況。一人でも多く出撃可能な騎士がいる事に越した事は無いですからな」

 

 王家代理として現在玉座に座るは、公国でも指折りの上位貴族の一人にして代々王家に忠誠を持って仕えてきた侯爵家、ダリア家の現当主アレン様だ。

 この方は良くも悪くも嘘や血が苦手で、騙されやすくも一途にこの公国を想ってきた心優しき方だ。

 ただ、ずっと弱腰で意見をほぼ言えずこの玉座に座っているのも他の貴族から押し付けられたものという何とも締まらないものだが……

 

「護衛騎士として、使命を果たします」

 

 今日王宮に出向いたのは、復帰報告と現状整理をするのがメインで他は別段する事は無い……表向きは、だが。

 そう、王宮と言えば上位貴族が都合良く集まる場所でもある。

 つまりあの男、アルフォンソが言っていた事の真偽を確かめるには絶好の場所なのだ。

 更に事前に確認しているが、今日は示し合わせたかの様に上位貴族達がこの王宮に集まっているというじゃないか。

 ならば調べない手は無い、アレン様に会釈をし退席した後、誰もいないのを確認しネズミ型を放つ。

 

「座標は王宮の中でも人の出入りが少なく、且つ上位貴族の集まる場所として知られるスポット。秘密にしたい話をするならそこしかあるまい」

 

 何が出てくるかなんて知らない。

 だが、何か出てくる様なら父上や兄上達にも報告が必要だろう……願わくば何も出てこない事を祈るが。

 

 

 

 

 

 足音と言う足音も聞こえない中、ネズミは天井裏や隙間を使い所定の位置に辿り着いていた。

 そこは丁度公国の上位貴族達が集まっている場所でもあり、ネズミは映像撮影の為に独自の判断でサイレントレーザーを使い天井のごく一部を焼失させ、穴を開け盗撮、盗聴を開始する。

 

 そうとは露知らずな貴族達の話は盛り上がるばかりである。

 

「いやはやしかし、両殿下が攫われてしまうとは我が公国の騎士達も情けないですな」

 

「ご最もですな。あの二人のどちらかでもいれば魔笛で守護神を召喚する事が出来るというもの。そうなればあの様な小僧などに遅れを取らぬものを」

 

「とは言え悪く言えば両殿下の使い道などそれ以外無いにも等しい。所詮あの二人も、陛下達と同じく無能だったという事に他ならぬ。折角我々が幼少期より手塩にかけて嘘を刷り込んだというのに」

 

「おやおや、バレなければ嘘ではありませんよ。陛下達は非常に不幸な事故で二人とも亡くなってしまった、と我々が言い続ければあの無能二人を殺した事も事故という真実によって上書きされるのですから」

 

「それもそうだな。しかし両殿下奪還はどうすべきか……」

 

「ならばここはイーデン伯爵にお任せ致しましょう、彼は前回あの民間船に乗っていた実力ナンバー2の小癪な餓鬼相手に互角に渡り合ったと言うではありませんか」

 

「おお、彼程の実力者なら最悪魔笛を吹かせるまでなら何とか出来るはずですな。……しかし彼があれ程の実力者だったとは」

 

「私としても驚きですが、この際こちらに都合良く動いてくれるのなら何だって構いません」

 

「今その彼が他国に出掛けているという呑気な事をしてさえいなければ、賛成出来たのだがな……」

 

 ここまで聞き取ったネズミは、証拠には充分と判断したか行きと同じく足音一つ立てず高速で去っていく。

 向かうはバレント・ヒム・ドゥースのいる飛行船乗り場だ。

 

 

 

 

 

「……なん……なのだ……これは……? これが、我等が信じていた公国の真実だと言うのか……? これを、私達騎士は大義と言われ戦い、散っていったと言うのか……?」

 

 ドゥース家に帰ってきた私は早速共に帰ってきたネズミの映像確認を行った……行ったのだが、そこにはあまりにも信じ難いものが映っていたのだ。

 上位貴族達による亡き陛下達や両殿下への嘲笑、罵倒、挙句の果てには陛下達を殺したのが上位貴族の手によるものだと映像は言うのだ。

 

「こんな事が……あって良いのか……? 我等は一体何年、騙され続けてきたんだ……?」

 

 信じられない、信じたくない。

 だがここに、映像が映し出されてしまっている。

 しかも自らの手で放ったテストもした正真正銘小細工無しの証拠だ。

 

「だとするならば……ヘルトルーデ王女も、ヘルトラウダ王女も、公国へ奪還するのは逆に危険……結果的に何もかもあの小僧の言葉通りだったと言うのか……」

 

 握る拳の力が強くなるのを感じる。

 だが悔しがってる暇は無い、私はこれを父上や兄上達に見せて協力してもらう他無い。

 幸いにして、私の家は柔軟な考えが出来る家故に既に先の話は極秘と言う名目で話を通してある、後は結果を伝えるだけだ。

 

「ふっ……次会ったらあの者には礼を言わねばならぬな……」

 

 息を一つ吐き出し、私は父上の元へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふ……見~つけたぁ♡」

 

 暗い暗い洞窟の中。

 そこに目隠しをされ倒れ伏しているのは一人のエルフであった。

 そしてそれを見つけ出したのもまた、一人のエルフ……否、その者が持つナイフの血の持ち主こそがこのエルフ『だった』。

 

「やっぱりエルフの島ならエルフに成りきらないとね」

 

 その正体は、新道寺明彦……ロイズが殺し成り代わった姿であった。

 

「この術も大分僕に馴染んできて記憶もトレース出来る様になったからね……お目当ての物があるか無いか……コイツから『記憶を貰わないといけない』。僕の探し求めるロストアイテム……書物で、数百年前ではあるけど一度だけ所持者がいたと記述があったそれさえあれば……ヒロに勝つ事も容易。さっさと殺してぇ、アヤを僕だけの物にしないといけないからね♡」

 

 目隠しが乱暴に取られる、そこにいたのは紛れも無くヒロ……アルフォンソに瀕死にされた村長だった。

 実はあの後里長サイドが主体となり処罰を決めた結果、洞窟に放置して餓死、つまりは実質的な死刑という判断に相成ったのだ。

 しかし放置して以降は四肢と喉を機能不能にされた事もあり完全に誰も様子など確認に来なかった。

 

 ロイズはエルフの幹部格の男が一人になったところを殺害し成り代わり、村長の末路をその男の記憶をトレースした際に知り今に至る。

 

「……ッ!! ~~!!」

 

 言葉にならない声を上げながら逃げようと藻掻く村長に対しロイズは非常につまらないといった表情でそれを見つめる。

 

「声も挙げられない、逃げる事もままならない。これじゃ暇潰しにすらならないじゃないか。はあ~あ、つまらないから死んでね」

 

 ズドン、と鈍い音がしたと思うと村長の心臓にはナイフが突き刺さっていた。

 何が起きたか分からないといった表情になった村長は、そのまま崩れ落ち事切れる。

 

「ばいば~い。後は僕が君に『成り代わって』あげるからね♡ 変ッ身ッ♡」

 

 それを見届けたロイズは、返り血を浴びた顔のまま両手を上げ、心地良さげな顔付きで目を閉じ『成り代わりの合図』を告げる。

 ドロドロと幹部の男エルフの身体が崩れ落ち、全てがジェルになったかと思うと瞬時に細胞の再構成が行われ、ジェルが集まり身体となっていく。

 

 そこにいたのは紛れも無く『村長』であった。

 

 そして村長の遺体は、それと同時に霧となって完全に消滅した。

 

「さてさて、コイツの記憶に僕の追い求めるロストアイテムはあるのかなァ?」

 

 ロイズは再び目を閉じ『村長』の記憶を辿り始める。

 

「…………これは。そうかそうか、やっぱり君が持っていたんだねェ。んふふ……ふふ、フハハハハハハハハハハ!!」

 

 暫くし、目を開けたロイズは高笑いを洞窟内に木霊させる。

 

「これで、これで僕は真の神となるッ!!」

 

 それは、新たな戦いの静かな静かな幕開けであった。




※割とロイズの挙動は檀黎斗をイメージしていたりする。尚、能力は檀黎斗神には遠く及ばない模様
やっぱり神は神だからね、仕方ないね

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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