幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第六十七話『その選択は』

「ったく、まさかミオルの奴が別行動になるとはな」

 

「何でも別のモンを港に運ぶらしいぜ、何にせよアイツが下見しててくれたんだしこれであの外道クソ野郎共二人に一泡吹かせられると思うと気分が良いな」

 

「ははっ、そりゃ傑作だな」

 

 リオンやアルフォンソがアルフォンソの部屋に集まっていた頃、リオンの部屋には誰かの専属使用人数人が集まっていた。

 

「次いでにカイルの事も煽っとくか」

 

「アイツ、専属使用人の癖に主人と仲良くしやがって……さっさと抱けば良いのに無駄に人間と仲良くするとか馬鹿だよなあ」

 

「あの聖女、マリエだっけ? ちんちくりんではあるが抱き心地は良いと思うし勿体ないよなーギャハハ!」

 

「ま、全て終わらせて落とすとこまで落としたら俺達が抱いてやるかね。その為にもまずは……ククク、終わらせとくか」

 

 使用人達は悠長に話しながら部屋へと侵入する。

 その一角には、頑丈そうな半透明の箱に入れられた物が鎮座していた。

 今回専属使用人の亜人達が狙っていたのはリオンの部屋にあったこれだった。

 何処からか嗅ぎ付けて来たフランプトン派閥の貴族が

『バルトファルト子爵の部屋にある半透明の箱の中に入った物を港まで届けよ。成功すれば子爵や周りの地位は地に落ちる』

 と焚き付けそれを、リオンやアルフォンソに恨みのある専属使用人達に依頼していたのだ。

 前金も貰い、成功報酬はその数倍、そして今まで随分と割を食わされてきた鬱陶しい貴族も消せるとなればやらない選択など存在しなかった。

 

「これ何なんだろうな、黒くて右腕部分しか無い防具か何かにしか見えねえけど」

 

「俺達にゃ理解出来ねー代物って事だろ。何にせよこれを盗んで運ぶだけでとんでもない額が手に入るんだから何も考えなくても良いだろ」

 

「だな。んじゃ精々地獄に落ちなクソ貴族サマ」

 

 専属使用人達は言葉を吐き散らしながら意気揚々と部屋を後にする。

 ここまで見ればフランプトン派閥及び専属使用人達の勝利だろう。

 だがこの部屋には最初から『見張り』が存在していた。

 

「……チュチュチュ」

 

『見張り』は侵入者が去ったのを確認するとタンスの隙間からするりと抜け出し、続く様に部屋を後にする。

 彼が向かったのは……

 

 

 

 

 

「フン、『全てお見通し』ってのは間違いでは無かったか。気に食わないが加担しなくて良かったという事にするとしよう」

 

 無人の地下室、ミオルのいる場所であった。

 ここは『アルフォンソ』から、隠れるのに最適な場所でここ数年間で立ち入ったのは下見に来たアルフォンソ本人だけだと言う。

 

 ミオルは彼、ネズミの持ってきたデータを確認しながら鼻で同業人であったはずの専属使用人達を嗤う。

 何故同じ立場のはずのミオルが裏切っているか……それもそのはず、ミオルはエルフの島から帰ってきたアルフォンソが真っ先にコンタクトを取ったからだ。

 彼にはつい先日最終忠告という名目で色々やろうとしていた事がバレている事を告げ、暗に『手を引くならここだぞ』と促していたのだった

 

「まさか奴がここまで用意周到とは思わなかったがな」

 

 コンタクトを取った時、アルフォンソは

『お前を監視していた結果、態度は悪いが悪人には見えなかった』

 と言った。

 それはミオルをこれまでずっと監視していたと言っているも同然であり、あまりにもなやり口に流石に彼もドン引きしていたのは記憶に新しい。

 

 そして次に

『今までお前を監視させていたネズミロボットをお前にやる。これで専属使用人達を尾行させ犯行の瞬間を収めろ。そしたら完全にこちら側に来たと看做す』

『成功報酬は出してやる』

 とも言われ、これにもミオルは頷くより他無かった。

 何せこれも暗に

『失敗したり裏切ったらあっち側と看做して潰す』

 と言われた気がしたからだ。

 ミオル自身、アルフォンソの事は良く知らないが決闘まで猫を被ったり先の公国襲撃で少数ながら公国騎士を殺害したという実績を知っている。

 その為下手を打てば人殺しに迷いのあるリオンではなくアルフォンソに処断される、それだけは流石に避けたいとなり契約に乗らざるを得なかった。

 

「このネズミ……本当にバレねえのな。こんなのに尾行されながらアイツらの敵になるのは割に合わなさ過ぎ。やってらんねーわ」

 

 将来的に得をするのはどちらか、『原作の彼』ならこの状況に陥ったとしても分からなかっただろう。

 だが、今のミオルは少し特殊な状態だった。

 

「……上手く盗んでやろうと思ったんだがな。『前』は失敗してそのまま殺されちまったからよ。だが、こうなった以上俺は『もう間違えられない』。『死んだと思ったらクソガキの入学直前まで時間が遡る』なんぞ普通は考えられない、だが実際それが起きてるなら選択を間違えられる訳が無い。

確かにあのガキはムカつくし人間なんてゴミクズ同然だと思っている。だが、それはそれとしてもうあんな無様に殺されるのも御免だ。なら俺の一人勝ちでも良いだろう」

 

 現在のミオルには『二つの記憶』があった。

 公国軍に加担した結果無様にバルカスに殺される記憶と、現在の記憶の二つだ。

 しかしそれも昨年の三月から分岐しているもの。

 普通なら信じられない、だが彼は殺された時の絶望、痛み、苦しみを生々しい程に覚えていた、覚えていてしまった。

 だからこそ、信じられなくても信じるしか無かった。

 今度は死なない為に。

 何故そんな記憶があるかは分からない、だがやり直せるなら……

 

「個人的な好みはこの際度外視だ。俺にとって安全な派閥に付かせてもらう」

 

 彼は静かに地下室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

「オイガキ、いるか」

 

「マリー」

 

「バンザイ」

 

「よし、入れ」

 

「……その合言葉はどうなんだ」

 

「良いだろ、事実なんだから」

 

 深夜、俺の部屋にミオルがやってきた。

 凡そ契約の件の録画が終わったのだろう、合言葉も間違ってないいしドアを開け入れる。

 

「それより、だ。例の録画だが済ませておいた、見ると良い」

 

「OK。…………ふんふん、これなら証拠の一つとして提出可能だろうな。これで晴れてお前もこっち側だ。おめでとう」

 

「フン、半ば脅しのレベルを超えた様な事ほざきやがった癖に」

 

「そりゃそうだろ、カイルと違ってお前との接触なんてあの一回と契約結んだ時だけなんだから。ま、裏切ってたら丁度今の時間帯にお前の首と胴体のお別れ式をしていたところだったと思うし感謝してもらいたいもんだがな」

 

「エグい事言うんじゃねえよ」

 

「は? 実際今の録画聞いてアイツらは絶対俺の手で肉片にするって決めたんだが?」

 

「ギャグみてえなノリで殺意が高ぇんだよテメェは」

 

 軽いノリなのは認めるがそれはさておき録画の中でマリーの事を色々言ってくれちゃったクソ共はしっかり俺の手で殺さないと気が済まないのもまた事実だ。

 ちんちくりん? 小さくて華奢なのが尊くて可愛いんだろうがよぶっ殺すぞ、まあぶっ殺すけど。

 

「まあどっちにせよお前はもう殺害対象からは外れてるから安心しとけよ、元よりバルトファルト家の専属使用人って時点で殺しにくかったし」

 

「一度は入り掛けてた事実は聞きたくなかったぞクソッタレ」

 

「一割は冗談だ」

 

「冗談の割合が少な過ぎんだよ」

 

 意外とノリ良いなコイツ。

 いやあそれにしても逮捕される前にここまで理想的なムーブメントが出来るとは流石に思っていなかった。

 何かしら欠ける可能性は考慮してたし。

 

「よっ、アル。その調子だとコイツはこっちに来たんだな?」

 

「おうリオン、そんなとこだ。ところでこの胸糞悪い録画聞くか?」

 

「アルがそこまで言うやつを見る度胸は無いな」

 

「英断だな。ところでカイルは?」

 

「すっかり寝てるよ。他の使用人から付け狙われてるから明日からしばらくはマリエの警護人数も増やすんだっけ」

 

「基本俺除いて二人だったのを倍にする。これだけいればある程度の戦闘力にはなるだろうよ」

 

 そして遅れてきたリオン。

 リオンには、今日は一番危ない日だからと自室にカイルを匿ってもらっていたりする。

 一人やマリーと二人でいるとこ見つかったら何されるか分からんからな。

 普段はやらないが今日だけはマリーの部屋の前にも警護兵として親衛隊をサイクルで付けてるくらいだし。

 

「そっち側といっても、俺は好き好んで行く訳ではない。あくまでも俺が生き残る為の最適解を選んだに過ぎん」

 

「賢い選択をしてくれてありがとよ。烏合の衆と言えど一人でも敵を減らせるに越した事は無い。あとジェナの後処理が面倒い」

 

「一応姉貴の専属使用人だしな。お前を殺す殺さない以前に姉貴が癇癪起こすのだけは避けたいし」

 

「俺が言うのもどうかとは思うが扱いが雑過ぎるだろ」

 

「だって今までの言動思い出してみろよ。一応常識をある程度兼ね備えた上であんなに関わり合いになりたくない人間とか逆にこの世に存在しないレベルとしか言えない」

 

「我が姉貴ながら言われてる事がその通りなのが終わってる。てかお前も内心そう思ってるんじゃないのか?」

 

「ぐうの音も出ねえよ」

 

 ジェナは本当に神掛かったくらいに常識人枠の中での普通に最クソ選手権優勝レベルなのだ。

 常識があるのにクソになれる時点で奇跡的なのにそれに王国の常識とかいう最悪のエッセンスが混ざりその中でも心底俺が嫌いな性格が合わさり怪物が爆誕しているといっても過言では無い。

 最近は特に、マリーが女としての家事や料理とか性格とか良いお手本を見せ付けてくれるお陰でウチのクラスメイトの女子が徐々にマリーを理想として寄ってってくれてるのが救いなだけにジェナレベルには是が非でも会いたくない。

 

「よーし、ほんじゃその録画映像は俺のに移して……これでやる事は終わりだ。各自帰って寝て良いぞー」

 

「その前に一つ良いか?」

 

「なんだ?」

 

 お開きにしてさっさと寝たい……んだがミオルが話し掛けてくる。

 まあ少しくらいなら聞いてやらん事も無いか、一応仲間に加わったんだし。

 

「奴らに運ばせた物ってなんなんだ?」

 

「俺の部屋にあったのはロストアイテム……のパチモンだよ。だから公国も専属使用人達もフランプトン派閥も全員俺達の掌の上で踊ってるって訳」

 

「因みに中には『ハズレ❤』って書いた紙も内蔵されてたりする」

 

「煽り極め過ぎかよ、怖過ぎてドン引くわ」

 

 公国に着いた後で中身を確認した貴族達の顔を想像しただけで米をかき込めそうなくらいだ。

 

 あ、明日からはムショ飯でしたねはい……

 

 フランプトン派閥を油断させる為とは言えキツい話だよ全く……

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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