幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第六十九話『魔笛の解析結果』

「バルトファルト子爵、ディーンハイツ男爵、お飲み物は何に致しますか?」

 

「それじゃ紅茶で」

 

「右に同じく、温かいので頼む」

 

「分かりました」

 

 一夜明け、朝。

 一応看守がステファニーの時の人だったのが幸いしたのか、ある程度事情を察して色々と便通を図ってくれてるのが救いだ。

 だがそれはそれとして冬の朝はクソ寒い。

 特に地下牢なんてまともな設備も無ければ囚人服一枚で放り込まれてるとか俺達じゃなかったら凍え死んでるだろマジで。

 

「住めば都とか言うけど、ここは都にはなんねーよな」

 

「分かる。やっぱり俺の都はマリーの膝の上だわ」

 

「今そういう話してる訳じゃないからな? 好きな子の膝の上の居心地は確かに良いけどさ」

 

「いやまあこうやって話でもしてないと暇だし」

 

「うーんこの正論」

 

 実際には寒さよりも何も出来ないという事の方がまあまあ面倒だったりする。

 この世界には娯楽は少ない。

 それこそゲームもテレビも無ければマンガやラノベなんてモンも無い、あるのは大衆小説くらいだ。

 俺達からしてみればゲームの中の世界って補正と何だかんだ好きな人が出来た事とか、世界に振り回されつつも色々あって飽きない世界だったから伸び伸びと生きられたのであって、それを奪われた今やれる事が限られてるのは現代っ子ソウルが抜けてない転生者には中々に辛いものがある。

 

「子爵、男爵、お飲み物と朝食になります」

 

「サンキュ」

 

「ありがとう」

 

「では私は一旦席を外します」

 

 話し相手もリオン一人だと流石に話題が尽きてくる。

 とは言え看守も理解のある人間と言ってもおいそれと俺達と関わると不利な状態になるだろうし難しいところだ。

 

「投獄されてなきゃディーンハイツ領の紅茶と産地に拘った絶品料理が食べられたんだろうなあ……」

 

「そこに関してだけは俺も爵位貰えて良かったと思うよ……はぁ」

 

「マスター、アル、例の魔笛の解析が終わりました」

 

「いやはっや」

 

「良くそんな早く終わったな」

 

「ええ、魔装の右腕の件の責任を取らせるべく遺跡にいたAIを引っ張ってきましたから楽に終わりましたよ」

 

 ああ、一夜振りのリオン以外の話し相手だ……

 ルクシオンが帰ってきた事で俺の心が少しだけ満たされる。

 退屈は人を殺す、大袈裟な言葉だと思っていたがあながち間違いでも無いのだと実感させられてしまう。

 

 それにしても想定してたより早いな、いくらクレアーレを引っ張って来たとしてもそんなに早く終わるとは思わなかった。

 

「そのAI、自爆したんじゃなかったか?」

 

「私の空きサーバにデータを捩じ込んでおきました」

 

「流石ルクシオンやる事が違ぇや」

 

「私を呼んだかしら?」

 

「って早速いんのかい」

 

 そしてクレアーレも自然とルクシオンと一緒にいるし。

 まあ話し相手が増えた事は嬉しいが。

 

「ところでルクシオン、解析なんて一日で終わるとは思ってなかったけど偉い早く終わったよな」

 

「ええ、マスターの言う通り本来ならもう数日程は掛かる見込みでしたね」

 

「そこは協力者がいたから捗っちゃったんだけどね」

 

「……! 成程、ルーデとラウダが情報提供してくれた訳か」

 

 俺の計算上ああいったものを解析するには三日は必要だと思っていた。

 だがそれは、ルクシオンとクレアーレの二機だけでの解析ならの話だ。

 

「そうよ、あの子達ったら最初は怪しそうに見てたけど私達がマスターとアルの為に動いてるって知った途端凄く協力的になってくれたんだから。特に胸の大きい方……ラウダちゃんだったかしら、あの子は持ってる情報を躊躇無く提供してくれたわね」

 

「そうか……ラウダが……」

 

「すっかり二人もこっち側に付いてくれたな」

 

「ああ、損得抜きに個人的な感情だけで見ても嬉しくなっちまうな」

 

 少なくともここは原作の世界線とは大きく剥離している。

 どう足掻いてもこの時点では敵対関係にあったあの二人を、この時点でここまで正気に戻せて尚且つ友好的な関係を結べていた事がこんなに良い展開を産むとは。

 あの時二人とも攫っといて本当に良かった。

 

「マスター、アル、それより魔笛の詳細は聞かなくてもいいのですか?」

 

「あ、そうだった。頼むわ」

 

「使われた時点で詰みとかなったら死んでも死にきれんからな」

 

 二人の協力的な姿勢に感動して本題を忘れるところだった。

 しかしこれの詳細によっては嫌な予感が当たった場合覚悟しないといけない事だってあるのを忘れては行けない。

 寒さとは違う、身体の震えを感じる。

 

「あの忌々しき新人類の結晶こと魔笛は1分間吹き続ける事でその魂を代価に守護者と呼ばれる超大型魔物を二体召喚します」

 

「……アル、『第三作目』のラスボスはラウダって言ってたよな。もしかして」

 

「ああ、ラウダがラスボスって呼ばれるのはその魔笛を使って守護者って呼ばれるめちゃくちゃ強い魔物を二体召喚するからだ。つまり原作通りのチートって訳」

 

「うわぁ……敵に回さなくて良かった……」

 

 確かラウダが召喚するのが海の守護者と空の守護者だったはず。

 特に『空』の方には王国軍が半壊状態まで追い込まれて多数の犠牲者を出したんだったなと前前世のモブせかの記憶を辿る。

 

「そして最初の30秒で海の守護者と呼ばれる守護者、最後の30秒で空の守護者と呼ばれる魔物を召喚します。特性はその名の通り、『海』が海戦の得意な魔物、『空』が空戦の得意な魔物です。特に『空』は厄介この上ありませんね」

 

「成程ね……最悪でも空の守護者だけは何がなんでも召喚させたらダメって訳か」

 

「ええ、そうなります。……何せ、『空』まで召喚されれば使用者は確実に死に至りますし」

 

「な……!?」

 

「落ち着けアル」

 

「す、スマン」

 

『使用者が死ぬ』その言葉に動揺が隠せなくなる。

 どうやら俺自身が想像してたよりラウダの事を大切な妹分として見ていたらしい……短期間だと言うのに不思議なもんだ。

 

「解析して判明しましたが、あの魔笛は『空』を召喚しなければ命に別状をきたす事は無いみたいです。伝承ですら『魔笛を吹けば死ぬ』と語り継がれていた為これを知っているのは我々だけとなります。それにアレは遮蔽物の少ない場所でないと吹いても意味を成しません」

 

「わ、割と救いはあったか……」

 

「心配すんなって。マルケスやセミエンも護衛に付いてるはずなんだろ?」

 

「……ま、まあそうだな。とにかくこれが分かった以上『吹いたら即詰み』では無いって事だよな、それが分かっただけでも救いだよ」

 

 現段階でマリーにミレーヌ様が選別した騎士を付けている事で、アイツらの思考は自然と他の護衛対象に分散して付いていた方が良いという方向に向いているはずだ。

 ここ数日、マリーの護衛に付いてない時はラウダやルーデの護衛になっていたアイツらならきっと付いててくれてるはずだ。

 

「アルはマスターより心配性ですね。仕方ないですからマスターとアルが投獄されている間は私とクレアーレで監視しておきます」

 

「悪ぃ、助かる」

 

「それより二人とも、どうやらお客さんが来たみたいよ」

 

「え、お客さん?」

 

「って誰だ?」

 

 こんな極寒の地下牢に客とか物珍しい奴らもいたもんだよ。

 誰なのか知らないけど下手な連中なら追い返せば良いか。

 

「子爵、男爵、お二人に面会したいと言う方が来ておられますが」

 

「あー俺もアルも面倒だし帰ってもらって……」

 

「そ、それが……面会したいと言っておられるのは男爵の婚約者様でして……」

 

「はあ!? マリーが!?」

 

 めちゃくちゃ大きな声が出てしまった。

 そりゃそうだよ今一番来てほしくなかった人が来てるなんて思う訳無いじゃん、頭痛くなりそうだよクソッタレ。

 

「それは想定外過ぎる……まあ通すしかないよなぁ」

 

「あーあ、今の俺達とか見られたくないんだけどなあ。追い返すなんて俺達には出来ないし、入ってもらってくれ」

 

 しかし追い返すなんて真似が出来るはずもなく、諦めて通すように伝えるしか無かった。

 

「分かりました。それではマリエ様、お入りください。私は時間まで退室しています」

 

「…………何やってんのよアル」

 

 一日振りに見たマリーは、涙目でこちらを見つめていた。

 本当に、だから見たくなかったんだよ俺は。

 ここから先話すのも怖いが、逃げ場所も無いし腹括るか。

 

「幻滅したか?」

 

「する訳、無いでしょ……バカ。アルも兄貴も、絶対に理由が無いとこうはならないって知ってるもの。深くは聞かないし、多分言えないと思うんだろうけど、アタシは信じてるわよ」

 

「だってよ、良かったなアル」

 

「……信じてくれてありがとな。今は詳細は言えないけど俺達は無実だ、だから何とかしてここから出られるはずだ」

 

 ホッと心を撫で下ろす。

 嫌われていたら間違いなく立ち直れなかっただろうからな、いくら信じていても怖いもんは怖いんだよ。

 

「兄貴も、リビアもアンジェもクラリスもみんな心配してたわよ。同時にみんな兄貴の事信じてたけどね。良かったわね兄貴、愛されてて」

 

「み、みんなぁ……!! すまねぇ……!!」

 

 リオンの方もみんなから愛されてる事を再認識して泣いている。

 勿論だが俺も泣いている、涙脆くて困ってしまう。

 

 しかし泣いてばかりもいられない。

 

「す、すまんマリー、マルやセミエン、シーシェックに伝言を頼んでも良いか?」

 

「良いわよ、なに?」

 

「……フランプトン派閥の動向を探ってたネズミからの情報だが、近く公国が攻め入ってくる可能性が高い。マルとセミエンにはそれぞれこっちに明確に付いてる貴族子息達に連絡して出撃準備をさせてくれ、シーシェックには実家とヘルシャーク隊に俺が言っていたと伝えさせる様に言ってくれ」

 

「公国が……分かったわ。必ず伝える」

 

「ありがとう」

 

 俺には使命があるんだ。

 大切な人達を守る事もそうだが、二重転生者としての果たすべき、いや果たさねばならない使命がある。

 救える命は最大限全力を尽くして救う、それが『原作を知る者』としての役割に他ならない。

 

「……早速代理の役割が活きるな、アル」

 

「俺が信頼してる奴らだからな。これなら王国の犠牲者も大分減らせるだろ……何だかんだ、王国の連中に死なれると困るんだよ」

 

 最早『原作を知っている事』は呪いに近いかも知れない、とふと感じてしまう。

 どれだけ意識せずに生きようとしても、脳内が知ってるからこその思考をし出す、改善しようと身体が動く。

 

 どれだけ改善出来るかは分からない。

 それを見る為にも、早くこっから出なくちゃな。

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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