幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
「なんだ? テメーらも巻き込まれてえのか?」
「し、しかしっ、アンジェリカ様は殿下の婚約者ではないですか! それを無下にするのは……」
「そ、そうですよ! それに1対6なんて!」
「二人とも……!」
「他人にどうこう言われようとも俺の気持ちは変わらない。縛られた人生縛られた婚約者など無意味だ」
殿下に意見するなんて、後々どうなってもおかしくない程のリスクがあるにも関わらず取り巻き達はそれでもアンジェリカの隣に立った。
実際顔は青くなってるし足も手も震えているのは目に見えて分かる程、周りからしたら格好悪いと思われる様な出で立ち。
しかし俺は、内心彼女達の評価が一気に上がった。
無謀であると分かっていながら正しい方、後悔しない選択をし身分に関係無く立ち向かったその姿勢を馬鹿にする事は出来ない。
因みに彼女達は一度逃げ出そうとした心情がある為どうにも俺の立場がある程度分かってるらしく敵意はそこまで向けられなかった。
俺は表立って助けられないからね、頼んだぞ。
「……こんな展開、無かったはずだが……ま、良いか」
リオンも何だか良い顔しながらその二人を見つめているのがその証拠足りえるだろう。
マリーは……冷静になれていたら結構良い反応を見せてくれていたのだろうが今はそれどころじゃないか。
さてそれに対しても殿下は平然と突っぱねているクズ振りを発揮。
縛られたくない気持ちは分からなくはない、何せ俺もこの学園内でこそモブ的立ち位置の子爵家だが世界全体で見ればそれなり以上の地位にいる為色々と縛られる生活や我慢しなくてはならない事も多かった。
だがそれとこれとは話が別だ。
高い地位に生まれたからにはメリットも多く、だからこそ縛らなくてはならない事があるのだ。
そのメリットを享受してデメリットは嫌だなんて道理が通ると思ったら大間違いだ。
「そんな……!」
「す、少しはアンジェリカ様の話を聞いて……」
「そんなもの必要無い。それよりアンジェリカ……覚悟はできているな? 俺たちと戦う覚悟が」
「……折角私にも味方が着いてくれたのだ。代理人がいなくとも、私は……!」
もう逃げられない、追い詰められた、どうしようも無い。
それが本来のアンジェリカと言う女だった。
だが今の彼女にはほんの僅かながら光があった。
両隣に立つ、いつも共にいてくれ、道を踏み外す事はあれど決して裏切る事の無かった取り巻き……否、友人達が。
そしてやはりというべきか、あの男も始動する。
「リ、リオンさん!?」
「お前、何を……」
「俺、アイツら嫌いなんだよね」
リオン・フォウ・バルトファルト。
『モブせか』の転生主人公にして、この世界を引っ掻き回し引っ掻き回されるゲスな男。
そして転生前の俺の年上の幼馴染、タケさんだった男。
遂に俺とリオンが対峙する……絵面としては俺リオンの視界の端っこにギリギリ映ってる程度だけどね。
「はいは~い。皆さん俺が代理人に立候補しま~す」
「えっ?」
「誰?」
「知らない」
「どっかの田舎貴族でしょ」
「確か入学前に冒険者として成功したヤツがいたな」
「あぁ聞いたことがあるな。お前のことか」
ザワつく会場内、飄々とした表情と声で軽く手を挙げて前に出てきたリオンと一瞬目が合う。
恐らくゲーム内に登場しない俺の事をマリエ共々イレギュラーな存在だと確実視して品定めしているのだろう。
「だ、大丈夫なの? こんな奴で……」
「待って……確かあの人は『恐ろしいくらい腕の立つ冒険家』がいるって言っていたから……」
「……つまりアイツが?」
そしてアンジェリカの友人達は察しが良くて助かる。
撒いといた種をしっかり分かってくれる辺りアンジェリカさえ絡まなきゃ面倒な人間では無いってとこか。
「あー、話してるとこ悪いんだけど……アンジェリカさん、俺を代理人に指名しないと」
「えっ?」
「ほら認めるって言えばいいだけですから」
「……多分、彼なら大丈夫です」
「そ、そうねっ、あそこまで頭の回るあの人の予想してた人? だし」
「わ、分かった、認める……」
よし、ここまで完璧。
これで本来の流れ通りマリエハーレムvsリオンの構図が完成。
後はゲームシステムと俺の順番さえ上手くイジれればオールクリアだな。
「というわけでこのリオン・フォウ・バルトファルトが代理人を引き受けました。そちらは殿下たち六人で間違いないですか?」
「そうですね、僕も入れて一応六人なんで」
「じゃあ決闘方法と何を賭けるか確認したいのですが……アンジェリカさんの相手への要求は?」
「私が勝てば、マリエと殿下は別れてもらう」
……そう来たか。
いやこれはアンジェリカ大ファインプレーと言っても過言では無い発言をしてくれたんじゃないか。
何とかして『あそこまで』誘導したいと思っていたがその必要が大きく減りそうだ。
「そんなに俺たちを引き裂きたいのか。どっちが悪女か分かったものでは……」
「あぁ~そういう面倒くさいのいいんで。さっさとそっちの条件出してくださいよ。は~や~く~」
ほんとそれな。
どっちが悪女云々の前にアンジェリカは今回マリエに悪女発言はしてないのにも関わらず思い込みが激しいのと、常に自らが正しいと思い込むその姿は正にクズ男の鑑である。
「え!? えーと、その……」
そしてマリーはアンジェリカが想定以上に良い人だったのが響いたのか何なのか言い淀んでしまった。
ここで本来はうろ覚えのゲームのセリフをパクってくるんだが、言い淀まれるのは殿下達に口を挟まれかねないので俺が口を開くとするか。
「あ、あの……僕から提案があるのですが……」
「おいアルフォンソお前如きが口を挟める場では……」
「ま、待って。アルくんは決闘に対する知識が豊富だし、言えなかったアタシに原因があるからここは話を聞いてあげてほしいのっ」
「……分かった。マリエが言うなら聞いてやる」
「……ありがとうございます」
マリーが天使過ぎる件について。
面倒でもゴリ押そうと思っていたが、俺の助け舟に気付いてくれたかフォローを入れてくれた。
これで変な空気にならずに意見を言える。
「んで、アルフォンソ……だっけ? 提案ってなによ?」
「賭けには殿下とだけ別れてもらうとの事でしたが、現状他の我々五人にはデメリットが無いのはあまりにもフェアプレー性に欠ける、そうは思いませんか?」
「……俺的にはどうでも良いんだけど」
「アルフォンソ、どういう風の吹き回しです?」
「考えたのですが……えっと、先程のアンジェリカ様の要求ですと殿下にだけリスクを負わせる事になりますよね。それは流石に体裁として良くないと思いまして……」
「……成程。確かに我々がいくらそこのどこの誰とも分からぬ相手と言えどノーリスクなのは示しが付かない。分かりました、そう言った事でしたらアルフォンソの意見を飲みます」
よし、一番殿下に近い腹黒緑髪を懐柔。
アイツは殿下第一人間だから引き合いに出されてしまえば突っぱねる事は不可能、コントロールしやすい馬鹿で良かった。
「ありがとうございますジルク様。……えーっと、そういう事だから……我々の賭ける内容も同じく、負ければマリエとの交際を諦める……で、良いですかね?」
「……ジルクはどうだ?」
「私は殿下と同じリスクを背負える事、誇りに思います」
「ま、俺としちゃ少しは楽しくなりそうで良いが」
「万に一つとて、我々が負ける発想は浮かばないですがね」
「フン、どうせ一戦目で全て終わる」
うーんこの馬鹿集団。
「ごめんねマリエ、これで良かったかな?」
「う、うん、ありがとねアルくん……」
マリーは心底ホッとした様子で感謝を言ってくれた。
この馬鹿共にマリーは任せられないから俺が頑張るのは当然の行いだがな。
「えっと、じゃあ我々の先鋒は僕……」
「お前に先鋒など務まる訳が無い、この俺が貰う。お前など決闘においてもマリエの一番を戦う必要も無い。双方六番手で充分だ」
「あ、はい……」
紫ナルシストに気圧されて下がる俺に他のハーレム面々も哀れみの目線を送ってくる。
だが俺は内心狂喜乱舞が止まらなかった。
紫ナルシスト、お前は良くやった。
今回のMVPは誰が何を言ってもお前以外有り得ないと言い切ろう。
そう、今回最終的な狙いは『一人一人に賭けの内容を付けさせる』事と『俺が六番手になる』事だった。
アイツらは自分の強さに絶対の自信を持っている、俺はそこを逆手に取る策略を取った訳だ。
俺が脱落するより俺が負ける事で生じる株の下落を危惧して実質いないも同然の『殿下の後ろ』に指定してくる事を信じていたがナルシストが想像以上にナルシストでサラッと決まっていった。
それがあまりにも嬉しくて仕方なかった。
俺が六番手且つ一人一人に賭けさせれば俺が闘技場に立つ=その時点で既にマリーの隣に立てるのは俺以外いなくなる、が成り立つからそこで命懸けで負けさえしなければこの時点で試合に勝てなくても引き分けで俺の実質的な勝利が決まる。
話し合いはまだ途中だがこれで戦前対談は俺とリオンの二人勝ち。
そうとも知らず殿下達は余裕そうで滑稽だな。
さて、後の話し合いは実質消化試合だが気を緩めずに行くとするか。
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ