幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第七十話『そして未来は少しずつ変わっていく』

「……始まったな」

 

「だな。で、俺達もあんまウカウカしてられないんだけど?」

 

「心配するなリオン、手は打ってある。もう少し待とう」

 

 遠く外から、砲撃の音や声が聞こえ始める。

 投獄され早数日、遂に公国が攻め込んで来たらしい。

 事前にマリーに襲撃が近い事をみんなに伝える様に言ってあるがこの感じなら俺の事を信じてくれた連中は多いのだろう。

 悲鳴やら断末魔は無く、怒声ではあるが活気付いてるのが分かる。

 

 俺達も早く出たいが……事前に手は打ってある。

 今の俺達には敵も多いが味方も多い、それを信じて待つだけだ。

 

 

 

 

 

―同時刻 ホルファート王国上空―

 

「あの小僧共の言う通り公国が来たぞ!! 撃て撃て撃て!!」

 

「裏切り者では無かったのか!?」

 

「だとしたらフランプトンの情報を流す意味が無い、二人を信じ、戻ってくるまで必ず耐えるのだ!!」

 

 ホルファート王国軍は、本来の世界線ではこの戦いでは無様にも大敗を喫するはずだった。

 しかしアルフォンソの『二重転生者』の知識と努力により、それは完全に打ち砕かれていた。

 

 王国でも信頼の大きい子爵家であるディーンハイツ家。

 たとえ身内でも信用出来る情報でも無い限り立ち上がる事が無いシビアな家でも有名だ。

 そのディーンハイツ家が、投獄されているはずの息子の言葉を信じ王宮に迎撃準備の打診を懇願したのだ。

 最初は困惑した王宮も、代々王家を守る盾として君臨してきたディーンハイツ家の要請とありすぐ全土へ通達が送られた。

 

 そしてこの家が主導となって準備を進めた結果、今度こそ奇襲とも言える襲撃を仕掛けて来たはずの公国軍はまたしても初手で戦艦を数隻失う事となった。

 

「馬鹿な……! 何故我々の襲撃が読まれた!?」

 

「有り得ぬ! これは公国内部にしか通達されなかったはず……」

 

 哀れ公国軍は事実を知らない。

 この情報がフランプトン侯爵派閥を発信者として公国に伝わっていた事を。

 なのでフランプトン侯爵派閥をずっと監視していたアルフォンソなら簡単にその情報が手に入れられた事を。

 

 だが公国も一筋縄では終わらない。

 

「退いておけ、ここからは我々黒騎士部隊が殲滅する」

 

「バンデル殿もお怒り故な」

 

「我々を愚弄した罪、その命を持って償うと良いわ!!」

 

 颯爽と現れた五機の黒い鎧、黒騎士部隊。

 バンデルを主軸としたそれは、王国軍にとって永く絶望の象徴であった。

 何度も壊滅させられ苦汁を味わってきた王国軍にはそれはトラウマとも呼べる代物であった。

 しかしそれでも、今の王国には抵抗出来る手段が何とかあった。

 

「ここは我々ディーンハイツ家とサンドゥバル家、そしてヘルシャーク隊が受け持つ!! 各位ここから退却しその他公国軍を迎撃せよ!」

 

「お、おお!! 王国の誇る守備の扇の要と最近王宮が絶大な期待を掛けていると噂の技術屋か!!」

 

「かたじけない、ご武運を!」

 

 本来ディーンハイツ家も黒騎士部隊には良い様にやられてきた家の一つであった。

 しかし数年前、サンドゥバル家と出会った事で両者の技術と戦力は一気に高みへ登っていた。

 

「何があってもここから先は通させんぞ! 良いですな、サンドゥバル男爵」

 

「宜しいですとも、これも息子達精鋭鎧部隊が来るまでの時間稼ぎ。互いに全力を尽くしましょう」

 

 そして何より、この二家は先の公国襲撃での戦果として多くの軍艦、戦艦を両家息子……アルフォンソとマルケスより送られていた。

 更にディーンハイツ家にはアルフォンソが獲得した元ウイングシャークことヘルシャーク隊がいた。

 その為戦力強化によりブーストが掛かり、こと防衛戦においては世界最強とも言える地位を確立しようとしていた。

 

「ディーンハイツゥ……貴様の家の小僧には散々な目に遭わされたぞ……その恨み、ここで晴らさせてもらう!」

 

「ハッハッハッ、我が息子アルフォンソは調子に乗り過ぎたりたまに後先考えず感情的になる事以外は完璧な息子だからな。公国にそうやって認知されるのも吝かでは無いかも知れぬな?」

 

「ぬぅぅぅぅぅ……!! ルイス貴様ァ!! 公国を愚弄するなァ!!」

 

 いくら防衛戦最強と言えど、黒騎士部隊相手に真っ向から立ち向かっていても意味が無い。

 そこでディーンハイツ家は、舌戦で先に激昂させた後に防衛戦を始めると言った普通では見抜かれる様な戦法に打って出た。

 普通なら効果は無い……だが、公国軍、引いては黒騎士部隊は特に王国への勘違いから来る哀れな恨みが強い。

 悲しいかな黒騎士部隊は実力も公国NO.1だが感情による調子の高低差もNO.1なのであった。

 

 それでも圧倒的な強さを誇る故に『公国最強』と呼ばれているのだが……今のディーンハイツ家、サンドゥバル家にはギリギリで耐えられる程でもあった。

 

「ヒャッハー!! 公国だか黒騎士だか知らねーが頭領が来るまで全力で守り切るぜテメェら!!」

 

「おお!!」

 

(アル……リオン君……間に合ってくれ……!!)

 

 そう願いながら、最強の矛と最強の盾はぶつかり合う。

 

 

 

 

 

「マルケスの坊ちゃん!」

 

「と……確か、頭領の代理パイロットの貴族様だったな。……後の一機……は、頭領の友人が乗る為にウチで開発したやつか?」

 

「マクレーンさん! グリシャムさん!」

 

「黒騎士部隊が出てきたと聞いたが、やはり向かうのか?」

 

「だとしたら俺も向かうぜェ!!」

 

 その頃、精鋭鎧部隊と呼ばれる五機のメンバーはそれぞれ迎撃を行っていたがそれぞれに黒騎士部隊が現れディーンハイツ家とサンドゥバル家で対抗していると情報が伝達されていた。

 

 会話の上から順に、アルフォンソを除けばディーンハイツ家最強、シーシェックの父親でもあるマクレーン。

『モブ中最強格』とアルフォンソに評され、私兵団の取り纏め役でもあるグリシャム。

 曰く『リオンを除けば学園最強』マルケス。

 クロカゲ代理パイロットに任命されているクリス。

 そして何故かいるグレッグ。

 

 だがグレッグも、ポテンシャルのオールラウンダー性は随一。

 何より二学期終業式後にリオンと決闘した特製のディーンハイツ家の技術が詰まった鎧が生きていた事がここに来て好転しNO.5に何とか滑り込んだのだ。

 

「いくら防衛戦最強と言っても鎧にゃ鎧で対抗しないといけねえからな」

 

「行きやすぜ坊ちゃん方!!」

 

「うん。家以外にも、僕にも守りたい人が出来たから……全力で守る」

 

「折角託されたのだ、期待に応える活躍をせねばな」

 

「おうよ!」

 

 全員の目は、闘志で溢れていた。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫、今治してあげるから」

 

「いてて……流石聖女様だ……すぐ怪我が治っちまう。これならまだ戦える」

 

 最前線には勿論、マリエ率いる神殿の部隊もあった。

 本来の神殿軍は訳の分からない女が指揮官として乗っていたが、あまりに悠長な事をしていた為親衛隊により捕縛され指揮官に相応しい騎士を選出し少ない部隊ではあるもののしっかりとした戦力として機能していた。

 

「怪我をした人達は重傷者を優先にマリエ様の元まで行ってください! 慌てなくてもマリエ様の力なら治ります!」

 

「さてランス君、僕達も頑張らないとね」

 

「量産型とは言え鎧さえあれば充分頑張れますから」

 

「船からの迎撃は俺達に任せろ!」

 

「こんなのもう修学旅行で慣れたぜ!」

 

「慣れたくなかったけど今は感謝してる!」

 

「俺達も頑張って隊長と副隊長に良いとこ見せっぞ!」

 

「あたぼーよ!」

 

「うん、船は任せるよ」

 

 何よりここにはルクル、ランスと言った鎧の扱いが上手い親衛隊含む七人の親衛隊が集結していた。

 一度はアルフォンソに半殺しにされた二人を含み、全員が学園全土でトーナメントを行い残った屈指の実力者。

 周りの騎士達も、それだけで士気が上がっていた。

 

「……大丈夫ですか、ご主人様」

 

「問題無いわ。アタシがやれるのなんてこれくらいなんだし」

 

「でも相当疲れて……」

 

「大丈夫、アンタが気遣ってくれる分疲れも吹っ飛ぶんだから」

 

 そしてマリエもまた、一杯一杯になりながらも奮闘していた。

 それはひとえに愛するアルフォンソが来てくれると信じているから、だから強がりだっていくらでも言えるのだ。

 

(アル……信じてるから。必ず来てくれるって)

 

 

 

 

 

 

 

「フン、捕まるとはお前らも哀れだな」

 

「よう、来てくれたか……ミオル」

 

「アルが頼みの綱にしてたのコイツかよ……」

 

 戦闘が始まり数時間程が経っただろうか、やっと俺の『切り札』が来てくれた。

 そう、切り札とはミオルの事だ。

 戦闘員にならず、戦争時でも自由に動け、身体能力が高く、俺達サイドに付いてると言ったらコイツしかいない。

 

「あ? 文句あんのか?」

 

「いや……だけど違和感が凄くてな。でもありがとう、助かった」

 

「礼は素直に言え」

 

「ほんと、お前が仲間になってくれて助かったよ」

 

 公国がただの軍勢だけなら、ミオルが来てここまでホッとする事も無かっただろう。

 だが相手には黒騎士部隊がいる、そう思うと刻一刻を争う事態なのだ。

 実家とサンドゥバル家が迎撃してるだろうけど俺達が出向かないとどうなるか分かったもんじゃない。

 

「そうかよ。ほら、開いたからさっさと出てきて行ってきたらどうだ」

 

「悪ぃな。この恩は必ず返すぜ!」

 

(フッ……恩、か。考えといてやるとしよう)

 

 

 

 

 

 会議室。あの後無事陛下、王妃様と合流した俺達は直ぐにそこに案内された。

 こちらとしても戦況を聞きたかったので割と助かった。

 

「申し訳ありませんが戦況を教えて貰えますか?」

 

「元よりそのつもりで君達を呼びに行く途中だったのでな」

 

「私から説明しよう」

 

 共に会議室にいるレッドグレイブ家当主、公爵のヴィンスさんとアトリー家当主、伯爵のバーナードさんが説明を始める。

 

 曰く公国の初期段階の戦力は黒騎士部隊、艦隊約100隻、それにモンスターが多少追随して来ているとの事。

 そしてこの数時間でモンスターはほぼ全滅、艦隊も一割程度を機能停止又は沈没まで追い込み黒騎士部隊はディーンハイツ家とサンドゥバル家、それにマクレーン、グリシャム、マルケス、クリス、グレッグで何とかかんとか押さえているが時間の問題という事らしい。

 

 守護者も魔装も無い上に初期戦力が艦隊が2/3になってモンスターもクソ少なくなって、何より団結力が上がったお陰で相当こっちの被害は少ないらしい。

 それでもフランプトン派閥の艦隊は何個か沈んだらしいが……そこは些細な問題、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「単刀直入に尋ねる。君達なら早期に公国の部隊を殲滅し黒騎士部隊にも勝てるか?」

 

「勝てます。リオンを総司令官に、そして俺を副司令官にすれば……ですがね」

 

「君達二人の事は信頼しているが……それとこれとは話が違う。実績が無いのではないか?」

 

「少なくとも俺は一人で黒騎士部隊相手にした実績はありますけどね」

 

 ヴィンスさんが鋭い目付きでこちらを見つめる。

 事実俺達がやらなければ結局どれだけ公国軍を沈めようと黒騎士部隊に壊滅させられる未来が待ってるだけだ。

 

「仮にリオン君を総司令官にすると言えば、フランプトン侯爵が反対します。現在の王宮内最大派閥を敵に回すことになりますよ」

 

「そっちは問題ありません――黙らせる材料は、嫌という程ありますので、ね」

 

 リオンが不敵な笑みを浮かべるとパルトナーにいたロボットがその上にネズミを同伴させ入室してくる。

 ロボットの手には封筒、そしてネズミは目を光らせ今まで監視していた映像を映し出す。

 

「これは……!」

 

「今まで集めてきた証拠の一部です。こうしている今も証拠は集まってますよ」

 

 フランプトン侯爵と公国の繋がりを示すモンなんてそれこそ湧いて出る程あるからな。

 集めるだけなら楽勝ってモンよ。

 

「……その気になれば、最初から自力で解決できたのね。はぁ……本当に、貴方達は王宮より余程頭が切れるかも知れないわね」

 

「それで、貴様ら他の条件はあるのか?」

 

「俺のアロガンツ及びパルトナーの返還ですかね」

 

「……全く、どこまでもがめつい小僧共だ。ヴィンス、バーナード、俺達はフランプトン派閥を潰す為の根回しをしてくる。後は頼んだ」

 

「……どこまでも急なお方だ。まあ良い、陛下が認めたのだ……王国を、我が娘達を、頼んだぞ」

 

 ローランドがヤケに素直で助かった。

 最早俺達に託すしか無いと眉を下げ頼むヴィンスさんとバーナードさんに、俺達は無言で頷き返す。

 

 さあ、さっさと公国軍潰して二年生に進級しますかね。

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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