幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
「クソォ!! 誰だよこの僕の邪魔をするのは!!」
「はぁ、はぁ……間に合った……!! やっぱりアルの言ってた通りラウダさんを乗っ取っていたんだね……」
「ぐ……何故僕の居場所が割れた!? 王宮の人間すら出し抜いたこの完璧な僕が!?」
突如時計台の頂上に降ってきたのは、アルフォンソからの連絡を受けたマルケスだった。
彼はヘルトラウダが攫われたという連絡と行くはずの場所を聞くといつもは弱腰で怖がりなのにも関わらず躊躇無く飛び出し、雷龍で最短ルートを爆走したのだ。
「ロイズ……君の事はアルに聞いていたからね。君の使う『禁忌の魔法』も含めて」
「アルゥ……キミはなんでいつもいつも僕の邪魔ばかりするのかなあ!! あと一秒で空の守護者も召喚出来たと言うのに!! お前諸共殺すゥ!!」
ロイズは既に激昂し我を忘れていた。
本来の狡猾な彼であれば、その前にする事があると思い出せたはずだが目の前で最高のショーが壊されたという事実に完璧主義者である彼は怒りを優先させてしまった。
それがロイズの一番の弱点であり、それを今のマルケスが見逃す道理などあるはずが無かった。
「僕は君と殺し合いをする為に来た訳じゃないんだ!! これでロイズ、君の野望も終わりだ!!」
マルケスは腰に携えていたハンドガンで魔笛と……ロストアイテムの注射器を撃ち抜く。
「な!? しまっ……」
二つはいとも簡単に砕け散り、ロストアイテムのお陰でヘルトラウダに憑依していたロイズは追い出される様にして弾き出される。
「クソオオオオオオオオオ!!」
「……これはステファニーさんを傷付けられた僕の仕返しでもあるんだけどね」
そうしてロイズはその弾みで一気に時計台から落下していく。
弾き出されたのを確認したマルケスは、落ちていくロイズになど見向きもせず慌ててヘルトラウダに駆け寄る。
「ラウダさん!! 大丈夫!?」
「う、うぅ……わたくしは……一体……確か、騙されて……」
「もう大丈夫だよ、僕がやっつけたから……一緒に帰ろう?」
「あ……マルケス……さん……?」
「そうだよ、僕だよ」
状況がしばらく飲み込めなかったヘルトラウダは、しかしそれでもマルケスの顔を見るとある程度状況を思い出したのか、助けられたのだと安心して薄くではあるが笑顔になる。
「良かった……貴方が助けに来てくれて……」
そして彼女も彼女で、こう言った事になった事で思い出す言葉があった。
「貴方はとても過酷な運命の元にいます。貴方には本来近い将来死、若しくはそれに近しい運命が待ち受けている可能性があります。ですが、運命の男性と出会えればそれから逃れ貴方は幸せになれるでしょう。そしてその運命の相手は、貴方を助ける騎士の近くにいます」
ロイズに気絶させられる瞬間、彼女は死を悟っていた。
何故ならこの言葉があったからだ。
本来であるなら将来死ぬ未来があると言われ、事実ああして攫われ利用されるとすれば魔笛を利用される事は百も承知だった。
だからもう死ぬのだと、薄れ行く意識の中諦めていた。
だが彼女は助けられた。
それは彼女が『お兄様』と慕うアルフォンソの次に仲良くなった異性、ロボット好きの技術屋でありこの年齢にして六位下男爵の爵位を貰っているマルケスであった。
彼は見れば怖さすら感じさせる図体からは想像付かない程物腰低く、見方によっては臆病な性格とも感じさせる面もありながら好きな事への熱量は非常に高く、そんな彼の話を聞いているだけでヘルトラウダは心躍る気持ちになっていた。
そしてまだ話して数日だと言うのに、マルケスの優しさや好きな事への直向きな態度、技術力や爵位があるにも関わらず威張らず誰彼構わず助けようとする彼の姿に『真に心から惚れていた』。
(……わたくしのお兄様への感情は、恋心とはまた別物だったのですね。そして……これこそが恋心、なのですね)
そして、今。
ヘルトラウダは助けられた事で、エルフの島で聞かされた運命に対する言葉の意味を確信していた。
(やはり、お兄様がわたくしの事を助けてくれる『騎士』様で、その親友のマルケスさんこそが……わたくしを死の運命から救ってくれる『運命の男性』だったと言う事ですか……本当に、あの時お姉様と共に攫われて良かった……)
修学旅行の王国貴族子息達を襲撃し、レッドグレイブ家令嬢を攫う。
その作戦に、本来ヘルトラウダが乗る事は無かった。
ヘルトルーデ、ヘルトラウダ、二人を共に失えば公国は正規の代役を立てられなくなるからだ。
だが何の因果か、公国の上位貴族に成り代わったロイズが軽率に、そんな事微塵も考慮せずに『共に乗せ、有事の際には二人揃って魔笛を吹かせれば良い』と言い姉の乗る船に共に搭乗した。
公国は王国に一人の犠牲者すら出せず圧倒的敗北を喫し、魔笛を吹く暇すら与えられないままに揃って攫われたが、回り回ってそれこそが死の運命を回避する一番の分岐点になるという、ロイズからしてみればあまりにも屈辱的且つ皮肉な事態を巻き起こしていた。
「さ、帰ろっか」
「わひゃっ……わ、わたくし重くないでしょうか?」
「大丈夫だよ。寧ろ軽いくらいだから」
暫く見つめ合っていた二人は、マルケスが優しく微笑むとそっとヘルトラウダをお姫様抱っこの様相で抱き抱え、自動運転で空中停止している雷龍に合図を送る。
「よっとっと。これでもう安心だよ」
雷龍はゆっくりやってくると、入り口のドアを開け折り畳まれていた階段を時計台に掛ける。
マルケスは手馴れた様に素早く雷龍まで入ると、今度こそ大丈夫と言わんばかりに緊張の糸が解れた様な、いつもの少し頼りなさげな顔付きへと戻っていく。
「そ、そう言えばお兄様! お兄様は無事なんですの!? わたくしそれに騙されて殺されかけて……」
「アルの事? アルなら無茶して怪我はしたけど一応無事みたい。と言うかもうすぐ来るはずだし……」
マルケスが辺りを見渡すと、猛スピードでやってくるエアバイクが見えた……アルフォンソのエアバイクだった。
彼はホッと一息吐くとヘルトラウダに向き直った。
「来たみたいだよ」
「マルッ!! ラウダは!?」
俺はエアバイクで雷龍の目の前まで突っ込むと間髪入れずにそう聞いていた、最早気が気で無かったからだ。
痛む身体にムチ打って来たからには一秒だって無駄には出来ない。
「お兄様!!」
「ラウダ!? ラウダなんだな!! ああ! 良かった……良かったぁ……ありがとうマル……お前のお陰だよ」
そこからひょっこり顔を出して手を振るラウダを見て、俺は心底安心感を覚える。
やっぱり俺の親友に託して良かった。
「それもこれもアルがロイズの事を教えてくれたからだよ」
「……そうか、やっぱりあの男はロイズだったんだな」
結局ラウダを攫った男はロイズだったのか……最悪の事態が起きかけていた事に肝が冷える気持ちになる。
しかしそうなると本当にマルケスにロイズの事を話しておいて良かったと思ってしまう。
……この話は数日前、投獄中まで遡る。
「マルケスにロイズの情報を送る、ねえ」
「ああ、予定としては看守が離れてる今の時間帯……つまりこの直後になるがあのエルフの島で聞いた里長の予言が当たってるとしたら現状の友好関係を踏まえてもラウダの死の運命を回避させられるのはマルしかいない。俺という『騎士』でもなくリオンという『勇者』でもなくマルケスを指定してきたと言うならどうしたってアイツにしか助けられないんだ。んでアイツがラウダを利用するなら、どんなカラクリかはさておき生きたまま乗っ取る方法を用意するはずだからそこも踏まえて送っておきたいしな」
投獄されて二日目の深夜、どうしても胸騒ぎがした俺は最悪の中の最悪の事態を鑑みて、ロイズの情報をマルケスに共有すると決断したのだ。
「分かった、そこまで言うなら俺も協力してやる。ルクシオン、いるんだろ?」
「全く機械使いの荒いマスターですね。ですがあの男にこの王国を侵略されては私が王国を滅ぼせなくなるので今回は乗って差し上げましょう」
「毎回毎回お前は物騒なんだよ」
「どちらかと言えば今回は俺のワガママなんだけどな……動いてくれてサンキューな、ルクシオン」
文句を言いながらもルクシオンも動いてくれたし、俺の直感が警鐘を鳴らして即座に動けて本当に良かった。
こういう時、ラノベやゲームの重要キャラだったり主人公だったりは『嫌な予感』を他人に話さなかったりする事が多いが、流石に俺の今生きてる現実でそれをやらかしたら笑い事にならない。
俺はフラグだって完璧に折ってみせる、俺は運命に翻弄される側じゃなくて運命を変えに来た方の人間だからな。
さてそんな経緯があって、俺はマルケスに情報を持っていく事が出来、こうして救う事が叶ったのだった。
「うん、僕がこの塔から突き落とした……というか勝手に落ちたから今何処にいるか分からないけど……あ! そうだ、ロイズは『あと一秒で空の守護者を召喚出来た』って話してたけど……」
「はあ!? マジかよ!?」
マルケスには回想が終わって早々とんでもない話を聞かされた俺の身にもなってもらいたい。
最悪の事態は防げたっちゃ防げたがあと一秒でラウダが死んでいた事と海の守護者は召喚された事を同時に聞かされたら動揺するに決まっている。
「……!! となると……海の守護者は召喚に成功されてしまったのですね」
「じゃ、じゃあ魔笛を破壊したって事は……」
「契約は召喚後に破棄された事になる。つまり……今の海の守護者は全員抹殺対象だ。クソ、全艦への退避命令を出さないと……ぐぅっ!?」
「お、お兄様!? 大丈夫ですか!?」
まずい、こんな時にまた傷が痛んできた。
少なくとも王国の兵士や騎士達を、あの手この手を使って犠牲者をほぼ出さず助けてきたのにここに来て台無しにされるのだけは避けたいってのに。
「……アル、今王国軍全体に命令が出せるのはアルとリオン君だけだよね」
「あ、ああ……そうだ」
「それじゃあ僕がリオン君のところまで行って話してくるよ! だからアルは王宮までラウダさんをお願い!」
「マル……! 分かった!」
今の俺には、マルケスが輝いて見えた。
いつも及び腰だったりちょっと弱気な面が目立つが、マルケスはやる時はやる男だったのを思い出した。
俺は肩で息をしながらもラウダを俺の後ろに乗せる。
「マル、お前の鎧だと守護者と対峙すんのは危険だから伝えたら退避して来い。そっから先はリオン達が何とかする!」
「うん、それじゃ行ってくるね」
「マルケスさん……ご無事で。お兄様もっ、無理せずゆっくりで良いですからね?」
「さんきゅ。そんじゃお互いまた会おう」
だがラウダやマルケスには悪いが、俺はラウダを届けたら守護者を倒しにもう一度戦場に戻る。
強引にディーンハイツ家の量産型鎧に乗って、あの地に戻る。
これは、譲れない戦いだから。
お知らせ
共和国編を書くにあたって、書籍版をじっくり読んでからそっちのルートの世界観をしっかり掴んで書きたいと思っているので第七十八話の投稿をもちまして、暫くお休みをもらいます
その間、幕間で数話くらい上がるとは思いますがいつ帰ってくるかは未定なので気長に待っていてくれたらと思います(高いからと買うの渋ってた小説全巻を資料の為に買ったので失踪だけは有り得ないのでご安心を)
一旦になりますが、約二ヶ月半毎日投稿にも関わらず追い掛けてくれた読者の皆様本当にありがとうございました
また気が向いたら遊びに来てください
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ