幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第七十六話『譲れない想い』

「ほら、着いたから降りな」

 

 アレから十五分程して、ゆったりと進んでいた俺のエアバイクも流石にこれだけあれば安全地帯まで辿り着く事が出来ていた。

 その期間に一応怪我の状況を再確認していたが、恐らくこの感じでは内臓や器官が数箇所やられているものと思われる。

 一応軽傷に見せる事には成功しているがさっさと終わらせてマリーの回復魔法貰わないとまあまあまずいだろうな。

 

 まだ時間はあるから大丈夫だろうが。

 

「ら、ラウダッ!? 大丈夫なのッ!? その、貴方が攫わられたって……」

 

「大丈夫ですわお姉様。お兄様とマルケスさんが助けてくださいましたから」

 

「そ、そう……貴方達には助けられてばかりね」

 

「それ程でも無い……うっ、ゲホッ」

 

「ちょっと、大丈夫なの?」

 

 とは言えこんな姿見せちまうとマリーに伝わる可能性も出てくるし……それは避けたいところだな。

 無駄に不安煽りたく無いし、こういうのは軽傷って言っときゃバレないもんなんだよ。

 

「そ、それよりマリーは無事か?」

 

「ええ。もう帰還してきてるはずよ」

 

「なら良かった……一応言っとくが俺の怪我は軽傷だ、マリーには伝えないでくれよ? アイツに無駄に不安になってほしくないからな」

 

「お兄様、本当に大丈夫ですか?」

 

「平気だ平気。……ふぅ、そんじゃ俺はこのままリオンの援護に向かうから、ラウダの事頼んだぜ」

 

 勿論痩せ我慢だ。

 内臓が何個かやられてそうと言うだけあって、今にも吐血しそうなのを我慢しつつこうして平気そうに話してるだけだ。

 そんなでも信じてしまう程の演技力を前世で鍛えたからこそ、大抵の人間にはバレない。

 特に自分勝手な、メリットの低い感情優先でこうして行動する時に誤魔化すものとしては演技力というのはあまりにも最適。

 外道と言いたいなら勝手に言えば良い。

 それだけ俺は新道寺をこの手で殺したいのだ。

 

「……お兄様。わたくしと休みましょ? お兄様は軽傷と仰ってますが心配で……」

 

「だーいじょうぶだって。傷が開かない内に帰ってこりゃ良いだけの話だろ、帰ってきたら話でも何でもしてやるから……だから待っていてくれないか?」

 

「ラウダ、ここは信じて待ちましょう。呆れる話だけど、殿方には理屈じゃ引き下がれない時があるみたいなので」

 

「悪ぃな」

 

 ルーデは何だかんだ分かってくれてるようで良かった。

 そう言えばルーデはラウダに色んな冒険譚とか聞かせてたんだっけか、そうなると割かし男の心情も分かってるのも納得かもな。

 

「……貴方の為じゃないわよ」

 

「そういう事にしておいてやる。つーかルーデ、リオンに惚れてるだろ?」

 

「な、ななな何よ突然!?」

 

「え、いんや? 俺の為じゃないならリオンの為かなーってね。アイツ、何だかんだ言っても公国側の犠牲者も本当は出したくないって言うくらい優しい奴だからさ。文句言いながらも助ける人間の中にルーデやラウダも入ってるんだよ。んで、特に誰かに守られると言うよりは守る立場にあったルーデなら惚れててもおかしくないかなーと思った訳よ」

 

 ラウダも基本的にはそっちの立場だろうが、最終的にルーデに守られる立場にあったのは確かだろう。

 であるならば、完全に信用出来る様な人間に守られた事の無いルーデは、今の、面倒臭がりながらもお人好しなリオンに惚れる可能性は割と高くても不思議では無いと感じたのだ。

 

 事実、ルーデの運命の相手はリオンであり、それが成就するキーポイントとして挙がっていた『残酷な運命から目を逸らさない』事も達成してるしな。

 

「……知らないわよ、そんなの。それより、そんな呑気に話してるとまた傷が開くわよ」

 

「へーへー、分かってますよ」

 

「お兄様、取り返しの付かない事になったらわたくしも共に死ぬ覚悟がございますので。どうかご無事で」

 

「……そりゃ益々死ねなくなってきたな、はは」

 

 この二人、本来の世界線から逸脱して大きく改変されたと思ったけど根の強かな性格は割と変わってないのな。

 ラウダに関しては最早脅しの域だってそれは。

 一応王族だからね君?

 王族が自分が死んだせいで自害を決断するって原因になった方からしたら死んでも死にきれなくなるとんでもない呪いなんですけど分かってるんですかねこの人は。

 

「絶対生きて帰ってきてください。マルケスさんやお兄様達とまた冒険に行く約束も残ってるの、忘れてませんからね?」

 

「おう、戦後処理が落ち着いたら連れてってやるよ」

 

 俺は二人に苦笑すると、エアバイクのエンジンを掛ける。

 話して少しは痛みも和らいだだろうか、深呼吸をしながら手を挙げる。

 

「リオンに伝えておきなさい。帰ったらお茶会をしてあげない事も……ないわよ」

 

「りょーかい、因みに今の録音しといたからな。チャオ☆」

 

「は!? いやそれは違うでしょ!? ま、まち、待ちなさい!!」

 

 そしてルーデ渾身のツンデレを録音したところで飛び立つ。

 こういうのは逃げたもん勝ちってね。

 説教くらいなら帰ってきてからいくらでも聞いてやるとするかな。

 

 

 

 

 

「あーあー、こちらアルフォンソ。リオン、状況はどうだ?」

 

『アルか。王国軍はヴァイス以外総員撤収、公国軍も黒騎士部隊が落ちてアル渾身の斉射受けてからはほぼ完全に戦意喪失してたからちょっと脅したら散り散りに逃げてったわ。本当は捕まえないとなんねーんだろうけど、そう言うのは黒騎士部隊とか他の撃墜して捕虜になってる連中で賄えば良いし俺の管轄内で死なれると寝覚めが悪いからな。それより海の遠くから何かデカいのが来てるが……』

 

「了解。それなら何よりだ。こっちの状況としては一旦時計台周辺に寄ってロイズの遺体を探したが見当たらず。恐らく逃走したと思われる。そしてそのデカいのは十中八九海の守護者だ。守護者の到着までには時間が掛かるだろうがガラ空きだろうし射程圏内に入ったら容赦無く撃ってもらって構わない。と言っても奴には特殊な倒し方以外では倒せないから時間稼ぎにしかならないだろうけどな」

 

「分かった。あとどれくらいで着けそうだ?」

 

「直行すれば五分だが、その間退避してくるヘルシャーク隊と一旦合流してディーンハイツ家の量産機に乗り換えてから来る。十分弱を見積もってくれると助かる」

 

「了解」

 

 俺はリオンの元に行く道中、万が一を考えてロイズの生死を確認する為に時計台に立ち寄ったが、マルケスの報告にあった付近やそこからもう少し拡大して少し探したものの人の遺体一つも無かった。

 それは紛れも無くアイツがまだ生きている事を指し示し、やはり俺がこのままじゃ終われない事を示していた。

 

「レディック、俺だ。そろそろ合流地点だからハッチを開けといてくれ」

 

『分かりました! 二番艦ハッチを開け!』

 

 早る気持ちをアクセルに込めて、見えてきた二番艦に素早く乗り込む。

 中では既に煙幕弾やスタングレネードといった時間稼ぎになる代物をメインに積み込んだ量産機が一機、メンテナンスを完了された状態で鎮座していた。

 

「クロカゲ以外に乗るのは何年振りかねぇ……」

 

「頭領、準備万端ですよ!」

 

「いつもながら助かるぜ。そんじゃ行きますか!」

 

「ご武運を!」

 

 万が一クロカゲが故障した場合に備えて、多少家の量産機に慣れる訓練もしたのを遠い昔の様に思い出す。

 幸い数年振りと言えど、盾を持ってバックパックの容量が簡易化され、機動力が多少落ちる所謂クロカゲのプロトタイプの様なものなので感覚は違和感を覚えないレベルだ。

 

(原作とあまり比較するのは良くないんだろうけど……守護者が二体減、魔装も無い、公国軍もほぼ戦意喪失で後は海の守護者とロイズをぶっ殺して終わりだ。油断はしない、だが……これだけ本来の世界線より優位に立てているなら……後はリビアの準備を整わせるだけだ。全力でやってやる)

 

 

 

 

 

「お姉様、宜しかったのですか?」

 

「何か問題でもあったかしら」

 

「マリエさんの事です。お兄様に言われた方が良かったのでは……」

 

「アルフォンソがマリエが不安になるから言うなと言う様に、マリエも同じ様に言っていたのよ。だから言わなかった。あっちでバッタリ鉢合わせになればそれはそれで腹も括れるでしょ」

 

「……似た者同士なのですね」

 

「呆れるくらい、ね」

 

 

 

 

 

「リオン、待たせたな。状況は?」

 

「おう。やっぱりと言うべきか時間稼ぎにしかなんねーな。完全退避が終わるくらいの時間は稼げたと思うけど」

 

「OK。ヴァイスの方はどうだ」

 

「今こっちに向かってる。あの力があれば即座に終わらせられるだろうさ」

 

「だな。ラウダが『59秒』まで魔笛を吹かされ続けた代償の方も心配だしさっさと倒してロイズも探して殺すとするか」

 

 現地まで到着した俺が見たのは、凡そそこが戦場だったとは思えない程の静かな空と、海の向こうに見える明らかな異物だった。

 肉眼で見るとその威圧感が良く分かる。

 

「その必要は無いよ……アルゥ!!」

 

「なっ!?」

 

「やっぱり生きてやがったか……ロイズゥ!!」

 

 しかしそんなイージーになるはずの空に、来訪者が現れた。

 それは見たくもない、会いたくもない、それでいて今一番会わなくてはならない、殺さなくてはならない相手……ロイズの声に他ならなかった。

 所々にヒビの入った公国軍所有の鎧から聞こえるそれは、今まで聞いた余裕綽々のものではなく、どこか怒気を含んだ、錯乱状態とも取れる様な声であった。

 

「あのクソガキのせいで僕は神になれるはずだったのになれなかったんだ……許す訳にはいかないんだよねえ!! アヤが振り向いてくれなかったのも、僕が殺されたのも、折角全ての知識を持ってるこの『モブせか』の世界で神になれなかったのも、それもこれも全て、全て全て全て全て全て全て全てェ!! お前のせいなんだ!!! お前さえいなければ!! 僕は全て上手くいったのに!!」

 

「ざけんな! 何が俺さえいなければ全て思い通り、だ! お前みたいな奴俺がいなくてもマリーは断ってたよ!!」

 

「噂通りクソみたいな奴だな……ん? モブせか?」

 

 しまった、と言う時には既に遅かった。

 このキチガイ野郎との口論に気取られていたせいで一瞬リオンの存在を忘れていてしまった。

 そのせいで――『モブせか』という単語を新道寺の口から出るのを抑える事が出来なかった。

 

「はぁ、はぁ……あはっ♡ そうだった……そうだったねェ!! リオン君はアル最大の秘密については知らなかったんだったね♡」

 

「は? アルの秘密……? ずっと幼馴染で親友だった俺よりお前みたいなポッと出のアホの方がアルの事を知ってるってのか?」

 

「……」

 

「少なくとも、とある一点だけは君より知ってる事があるよ♡ んふっ、アルが嫌だって言ってもここで言っちゃうけどね♡」

 

「クソッ……死に晒せぇ!!」

 

 だがまだ誤魔化せるはずだ。

 リオンがモブせかという単語でイコールとして俺が二重転生者と勘付くにはまだまだ時間を要するのが関の山。

 ならばここで殺してしまえば、俺のコンプレックスを聞かれないで済む。

 

「ハハッ、同じ重傷同士と言えど片手を失っただけの僕の方が余程マシみたいだねェ!!」

 

「畜生が……!!」

 

「お、オイ! 無茶すんなって!」

 

 だが、身体全体がボロボロになってる俺からしたら、どうにもいつものパフォーマンスには程遠く。

 ロイズに一撃も喰らわせる事が出来ない。

 

「今の僕じゃアルはともかくリオンには勝てないからね……屈辱的だけど今は戦いに来た訳じゃない……アルの秘密を暴露しに来ただけだ、んふふ♡」

 

「ぐっ……」

 

 それどころか蹴飛ばされた上で、昏倒してしまう。

 俺に駆け寄るリオンを見やり、そのスキに、ロイズは嬉々として口を開いていた。

 

「アルと僕は二重転生者……そう……僕達二人は『君の物語』を『創作の世界』として、君達リオンやマリエですらを『キャラクター』として見ていたクズなのさ!!」

 

「…………は?」




次回、n回目の読者選別回開始
アルの明日はどっちだ

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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