幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
「アルと僕は二重転生者……そう……僕達二人は『君の物語』を『創作の世界』として、君達リオンやマリエですらを『キャラクター』として見ていたクズなのさ!!」
「…………は?」
顔からサァーッと血の気が引くのを感じた。
言うにしたって俺からが良かった、それを踏まえたとしても出来る限り隠し通したかった、なのにそれを新道寺に言われてしまったのは、最早最悪としか言い様が無かった。
どうする、どうしたらこの事態を切り抜けられる?
俺は嫌われたくなかったから言わなかった、言えなかったのに、こんな形で知られたら全てが崩壊する。
今までの全て、やってきた事も、話してきた事も、何もかも、世界の為と思いつつマリーやリオンを利用して、騙していたとバレてしまう。
それだけは嫌だったのに。
考えれば考える程、思考回路が雁字搦めの様に絡まり分からなくなり、言葉が出なくなる。
「君がこの世界をメタ視点のゲーム……アルトリーベとして知っている様に、『アルトリーベの世界で自称モブとして戦うリオン・フォウ・バルトファルトの物語』を僕達はメタ視点で知っているのさ。君がどの様に物語を紡ぐか僕達は事前に知ってたって事なんだ! つ・ま・り~……アルは君達を騙しながらこの世界で生きてたって事なんだよねェ!!」
「アルが……俺達を……? ば、バカ言うなよ、誰がテメェみたいな胡散臭いクズ野郎の事信じるかよ! 大体俺の妹殺した奴の言葉なんて誰が信じられるか! 寝言は寝て言えカスが!」
「んふふ、それじゃあ君は不思議に思った事は無いかい? アルが前世、アルトリーベにあまり興味を示さなかったのに細かいところまで設定を知っている事、それに妙に君より設定を知ってるって事もあったんじゃないか?」
「不思議に……? そんな戯れ言には……いや、待てよ?」
俺が何とかして足掻こうとしてる間にも、リオンの思考は刻一刻と進んでしまう。
俺が暈して納得させてきた部分を、ここで思い返させたらリオンは全てを察してしまう、それだけはダメだと言うのに。
「公国の第一次襲来、修学旅行に襲ってくるってのは確かに妙にスムーズに見解が出てきたと思った……それに、聖女装備の真の秘密だって、今考えればあれだけアルトリーベシリーズに興味の無かったアルが裏設定資料集なんてそんな物に興味を持つかって言われたら……謎っちゃ謎……だ、だけどな! お前の言葉なんて信じるはずねーよ! アルなら否定してくれるはずだ……な、アル!」
「…………ごめん、リオン」
「ど、どうしたんだよお前らしくないぞ?」
「本当は……ずっと隠していたかったんだ」
なのに、心が折れてしまった。
どうしたって誤魔化しきれない、否定するにしてもどうやって、何を根拠に否定すれば良いのか、分からなかった。
新道寺の言葉なんて真っ向から否定出来れば良かったのに。
その瞬間、俺の中で何かが壊れる音がした。
「アル……それじゃあ……」
「ああそうさ、気に食わないが新道寺の言う通り、俺には少なくとも前世のそのまた前世の記憶がある。それもお前ら……リオンやマリー達の物語がラノベになってた世界のだ。だが前世を生きていた時、その世界が『リオン達の前世の世界』だと気付く事は無かった。この世界に生まれてから気付いたんだよ」
乾いた笑いが空に少しだけ響く。
もうこうなった以上、俺達は親友という関係ではいられない。
リオンやリビア、アンジェ達は強い人間だ。
最終的ににリオンが、自分達をメタ視点から見ていたと分かってもその関係性を変えようとは思わずただ真っ直ぐにリオンを愛した。
リオンも、バレても何だかんだそこまで気にしてない様な素振りをして気ままに生きていた。
だが俺は違う。
俺は弱い人間だ。
「でもそんな言い訳はどうだって良いよな。そうだよ、俺はリオンのアルトリーベの知識を利用して俺の知識を都合良く植え付けて、自分の思うがままにコントロールして世界を操作してたんだよ。今までの知識なんて何もかも『その時』に得たメタ知識だ。騙してたんだよ。お前の事も、マリーの事も。俺の為に、俺がこの先の戦争でも生き残る為に、都合の良い存在としてな」
「お前……な、何言って……」
逃げて、逃げて、逃げて。
その上バレたら怖くなって。
言えなかった俺が全て悪いんだとまた逃げて、今までの思い出が捨てられる前に俺自ら手放して突き放す。
もう、新道寺を殺すのはまたの機会にするしか無いというのはさておきリオンやマリーと今までの様な関係ではいられない、いては行けないと感じてしまった。
「新道寺、貴様みたいなクズと一緒の存在にされるのは正直死ぬ程気に食わねえしいつか貴様は必ず殺す。だが……俺は確かにクズ野郎だ。大事な事を言えずに敵に暴露される臆病者だ。今までも言える機会はあったのに言えなかった臆病者だ。だから……俺をクズ野郎だと気付かせてくれた事だけは感謝しといてやる」
「な、なんだよっ気持ち悪いな……僕はもっと狂った様に怒って僕を殺しに掛かるアルが見たかったのにこんなんじゃ興醒めじゃないか……あーあーもう良いよ、僕は僕でまた別の国で体制を立て直して君を殺す準備でも整えとくから! 本当になんなのさ……なんで吹っ掛けたこの僕が興醒めしないとならないんだ……」
新道寺は何かぶつくさ言いながら去っていったが今はそんな事どうだって良い……いや、最早俺の事だってどうだって良いか。
薄く諦めた様に笑うと、道化の様にわざとテンションを上げた話し方に切り替える。
俺はこの国を守るだけの立場にいれば良いのだから。
「よっしゃ! ヴァイスが来るまで俺ももう少し援護するわ! アイツのせいでまあまあ近付かれたしな!」
「ちょ、アル、少しくらい話を……」
「『俺なんて価値が無い人間の話はどうでも良いんだよ』! それより早くやんねえと、ヴァイスの到着にはあと数分掛かるんだろ?」
「お前、良い加減に……」
「頼む、これ以上俺が惨めな思いをする前に答えてくれ」
「……この大馬鹿野郎が。ヴァイスが来るまで残り2分弱だ」
「だったら俺様の持ってきたモンも使えるって訳だ。将来俺はこの国を守る盾として活躍しないといけない人間なんだからここで一つ派手にぶっぱなしてやるか!」
「待てよ、お前は怪我してるだろ。そんな一気に……」
なんでいつまで俺の事気に掛けるんだよ、リオンは。
俺は自ら突き放して、利用したって言ったクズ野郎なんだぞ。
良いから離れればお前の言う楽が出来るんだぞ。
なのになんで……あーもう、イライラしてくるな。
俺みたいなクズに突っかからないでほしいんだけど。
「悪ぃけど休んでる暇なんて無いんだよ。俺は副司令官なんだ、だったらその責務を果たさないと国にも実家にも顔向け出来ないだろ。そうしたらそれこそ俺の生きる価値がこの世から消えちまうからな! 一応貴族だしそれは避けたいから色々と頑張らないといけない事もあるのよ。命張ってでもな!」
そう言って有無を言わさず煙幕弾やスタングレネードを撃ち込み相手を撹乱させる。
そうでもしてないと気が紛れない。
以前俺はある程度二重転生者であるのを話す事に付いて、割と割り切った態度で挑めそうだと思っていた。
だが思った以上に俺の精神は弱かった。
合算すると割と生きてきた方だと思っていたが、どうにも俺の俺自身への見立ては甘かったらしい。
もしも嫌われたら……そう思うとリオンやマリーの顔も声も聞けなくなっていた、聞きたくなかった。
自分でも自分の事が幼稚に思えて嫌いになる。
「ふぃー、結構やったからこれで暫くは動けないはずだな」
『よおアル、ヴァイスはもうすぐ到着だ。色々任せて悪かったな』
「セミエンか、別に構わねーよ。さっき色々と撃ち込んだお陰で相手は動けない状態だろうしさ。ん? つーかなんでお前がヴァイスにいるんだ? 確か神殿軍も一緒に撤退したはずじゃ……」
そんな色んなフラストレーションが溜まっていたのもあってか、とにかく適当な話題を振りたかった俺は純粋にヴァイスから連絡してきたのがセミエンだったという事に疑問を持っていた。
何せヴァイスに搭乗する理由が見当たらなかったからだ。
『あれ、聞かされてない? マリエちゃん、この戦争から逃げる事はしたくないって万が一には聖女の力を使う事も含めてヴァイスに搭乗したんだぜ。だから護衛として、親衛隊から一番アルと近しい俺が一緒に乗ってる訳』
「ま、マリーが!? はぁ……マジかよ……」
『ん? どうした、いつもならもう少しテンション上がってるとこじゃねーの? やっぱ疲れてるとか?』
「え!? い、いや、まあそうかもな! 黒騎士部隊との戦闘もかなり縺れたし! ははは!」
最悪だよ本当に。
心を落ち着かせて多少演技力を整えとかないといけないのに、一番この状態で会いたくなかった人がすぐ近くまで来ている。
アイツの幸せを考えると、俺との婚約破棄は得策では無い。
俺がアイツ一筋だった様に、自意識過剰かも知れないがアイツが俺一筋な事は知っているからだ。
それにディーンハイツ家と親しいノース家の次期当主でもある、ならば関係性を断絶させない為にも俺が適度に距離を取りつつ結婚して、ノース家との友好関係を取り持ってアイツの精神も安定させとくのが安牌だ。
最低限のケアくらいしないと、流石に俺のせいでアイツが死ぬ様な事だけは避けたいし。
『変な奴だな。それより見えてきたぞお前らの事。これで本当にそろそろ射程圏内だしリビアちゃんには準備しといてもらうわ』
「おう。んじゃ待たせてもらうとするか」
ムキになって平気とか言ったが、流石に身体も限界を迎えそうだ。
でっけぇのも全力でスタンさせて被害はほぼ0だし、本当にこの戦争で王国軍に被害が、原作と比べて減らせて良かった。
俺みたいなクズ野郎に出来る事なんて、未来の厄災に先手で回り込んで封じ込める事くらいだしな。
(――もう戦いは終わりました。貴方がいなくても、被害を殆ど出さずに戦争を終わらせる事が出来ました。だから……ゆっくり休んでください。貴方がいなくても平和になる様な、そんな未来を、世界を作っていきますから……)
遠くに見えるヴァイスからだろうか、声が直接脳内に入ってくる。
やっぱりリビアは優しい子だな……デカブツが穏やかな顔で消滅していくのを、見守る。
(……前世の記憶、か。ヴァイスの影響だろうけど……あのデカブツが消えるのと一緒に、消しておくか)
そう言えばヴァイスの力かリビアの力か、リビアの祈りでリオンが前世の思い出を見ているところがあったっけ。
残酷にも俺にも、そんな思い出を見せられているらしい。
そしてそっと、前世からの三人で仲良くやってきた記憶を、脳みそから消し去る様に閉じ込めようと、忘れようと決意する。
それは二人との決別の意を込めて。
(これで記憶が消えてくれればどれだけ楽か……嘆いてもどうにもならんか。なら自力で忘れていくしかないな)
「アルーーー!! だいじょーーぶーー!?」
「おーマリーか、俺はこの通り無事だぁ……っててて!?」
「この大バカーーーーー!! アタシの思った通り無事じゃないじゃない!! 帰ったらお説教なんだから!!」
「うへぇ、分かった分かった……あー戦争が終わったと思うと急に身体が痛くなってきたな~」
これにて戦争は、戦後処理を除き終わった。
王国軍の被害はフランプトン派閥以外は原作の1/10未満に留まり、世界全体の歴史でも稀に見る程の圧勝劇で幕を閉じた。
……俺への重い重い代償を残して。
アルフォンソの記憶が消えてると勘違いされる書き方になっていたので一部編集を加えました
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ