幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:孤高の牛

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第七十八話『戦争の終わり』

「っつー……あーマジキツいかも……」

 

「アンタねぇ……アタシとリビアの合わせ技無かったら今頃死んでる可能性あったんだからね? お願いだからもう無茶しないでよ……」

 

「そうですよアルさん。マリーを泣かせたらめっ! なんですからね!」

 

「ごめんごめん、前向きに検討しとく。でも……これから戦後処理もあるし、俺は副司令官なんだから出とかないといけない。公国の膿を一掃してより良い世界にする為にも……な」

 

 帰ってきて応急処置を受けて早々だが、戦後処理が始まるらしい。

 俺としては今どうしてもマリーと顔合わせるのが、どこまで誤魔化しきれるのか分からないからキツかったというのもあり丁度離れる良い言い訳になったのが幸いだった。

 

 信号弾を撃っても黒騎士部隊とやり合って死にかけてた為に反応が無かった事でわざわざここまでやってきたバレントも来てるみたいだし。

 アイツがここに来てるって事はつまり、公国の真実が正式に公国貴族の一部に知れ渡った事にもなる訳で、そう言った連中が言う事で公国の善良な心が片隅に残ってた貴族や騎士達が納得しやすくなるこでめちゃくちゃ大きい功績になる。

 

「ちょっと、それくらい総司令官になったリオンに任せれば……」

 

「そ、そうですよ」

 

「戦闘面でリオンにおんぶに抱っこ状態だったのに、戦後処理まで押し付けるのは流石に可哀想だろ。任されたからには相応の責任と責務が伴うのが上の立場だ。俺はもう、ただの貴族子息じゃなくて爵位を持ってる人間だから尚更、な」

 

 俺はマリーやリビアの返答を聞かず、杖を突きながら外へと出る。

 もうローランドや王妃様、ルーデやラウダとバレントは合流してるはずだしリオンもいる可能性が高いから早めに着かないと示しが付かないな。

 取り敢えず、いつもなら数分のところを十分以上掛けて歩かないといけないと悟った俺は大きく息を吐き出すしか無かったのだった。

 

 

 

 

 

「王国軍副司令官、アルフォンソ・フォウ・ディーンハイツ只今到着致しました。入っても宜しいでしょうか」

 

「うむ、入るが良い」

 

「はっ。失礼致します」

 

 出来る限り息切れを悟らせない様に、入室する。

 案の定そこには俺以外のメンバーが全員集結しており、俺が杖を突いている事もあって少し気まずくなってしまう。

 

「ディーンハイツ男爵、怪我の具合は大丈夫ですか? もしも痛むなら無理に出席しなくても良いのですよ」

 

「お気遣いありがとうございます王妃様。ですが俺は自ら立候補して王国軍副司令官になりました。ならば発生する義務と責任を果たすのは当然の行いです」

 

「……無茶だけはしない様に。良いですね?」

 

「心得ました」

 

 本当は既にとてつもないくらい無茶してここに来てる……と言うのは言えば本気で怒られそうなので敢えて言わない。

 俺は心配そうに見つめるリオンを無視する形で隣に座り、佇まいを整える。

 やはり座った方が幾分かマシだな、これは。

 

「お兄様……」

 

 あとラウダはもうところ構わず俺の呼び方お兄様で統一しちゃってるのね……バレントが固まっちゃってるじゃん、可哀想に。

 ま、今の俺が一番心を許せるのはラウダだろうしそれはそれで居心地良いからホッとしちゃうんだけどね。

 

「無事だったのね、バレント」

 

「ルーデ様とラウダ様も、良くぞご無事で……」

 

「それで、公国の騎士よ。貴様はディーンハイツに会いたいという話だったな。理由を話してもらおうか」

 

 そう言えば極秘も極秘で渡していたせいで誰にもバレントとの繋がりを話す機会が無かったんだったな。

 まあ下手にバラして漏れるとそれこそ公国との繋がりが出来ているとして本当の罪人になりかねなかったし言えるかどうかで言えば圧倒的に言えなかったけど。

 

「私は……ルーデ様とラウダ様が乗っていた船に共に乗っておりました。そこで彼等二人の襲撃を受けたのですが……去り際に、彼……アルフォンソ殿から『お前らは真実を知らない』『知りたければこれを使え』と、これを渡されました。そして次の襲撃の時には何が撮れたか、そして王国と公国、その歴史が私の知らされていたものとどちらが正解だったか答えを教えてほしいと頼まれました。

半信半疑ながらも、敵にここまでする理由が分からず使い、答えが出たのでその答えをアルフォンソ殿に、本日は持ってきた次第です。……そして、王国に協力する為に、我々ドゥース家はここに参りました」

 

「……ディーンハイツ男爵、これは本当ですか?」

 

「ええ、事実でございます。陛下や王妃様に伝えられなかったのは大変申し訳なく思いますが、これがどこぞのフランプトン派閥に漏れて公国と繋がっていると言われたら言い返す要素が薄過ぎて、本当の罪人になりかねず王国を守る事も叶わないと懸念し、今まで俺とバレント殿との密約とさせていただきました。無礼を承知の上でありますが、お許しいただければと思います」

 

「フン、まあ良い。フランプトンにその密約が知られた時のリスクを考えれば妥当だ」

 

「本当に……貴方はいつも無茶をしますね。ですが王国の為に尽力するその姿は立派です、誇りなさい」

 

「ありがたき幸せ」

 

 二人とも理解を示してくれて本当に助かる。

 色んな意味で賭けだったこのバレントとの約束、どうやら全て上手く行きそうでこれならそう遠くない未来に公国の再独立も叶う可能性が出てくるかも知れない。

 

「ところで急な話だった事もあった上、名目上捕虜だった事もあり名も聞かずにこの場に座らせてしまったな。一応聞かねば後々臣下達が五月蝿い故、本題に入る前に自己紹介でもすると良い」

 

「こちらこそ名も名乗らず取り次ぎを計らっていただき、なんとお礼を申し上げて良いか……私の名前はバレント・ヒム・ドゥース。ドゥース子爵家三男で、ルーデ様、ラウダ様両王女殿下の護衛騎士を務めております」

 

「成程、道理でさっき親しげに会話してた訳か……」

 

 俺としても、バレントと会ったのはあの一回きりとありルーデ、ラウダの護衛騎士だとは知らなかった。

 それこそあの時は最後まで意識を保っていた騎士に適当に話を吹っ掛けて利用しようと思ってただけだったしなあ。

 だが回り回って二人の護衛騎士にこの話を持ち込んだ形になったのは非常に俺としては助かる事この上ない。

 ルーデとラウダにある程度近しい人物が理解を示してくれるのであれば、説得力は俺の予想していたものより格段に上がる。

 

 これは嬉しい誤算としか言い様が無い。

 

「それじゃあ俺も改めて自己紹介しておこう。俺の名前はアルフォンソ・フォウ・ディーンハイツ。ディーンハイツ子爵家嫡男であり、今は五位上男爵の爵位と王国軍副司令官の立ち位置もいただいている」

 

「俺はリオン・フォウ・バルトファルトだ。バルトファルト男爵家の三男で、四位下子爵の爵位と王国軍総司令官の役職持ちだ」

 

「学生の身分でありながら既にそこまで高い爵位持ちとは、王国は素晴らしい人材をお持ちなのですね」

 

「こやつらは生意気だが実力はあるからな。気に食わんが割と手放せぬ存在だ」

 

「な、成程そこまで……」

 

 あと俺の爵位はリオンの隣で適当に色々やってたら勝手に付いてただけだからそこまで価値は無いぞバレント。

 五位上になってるのもヘルシャーク隊の指揮権限持つのに違和感無い爵位にするというローランドの計らいだった訳だし。

 

「ごほん、それより早く本題に移りましょう。貴方がそのロボットで撮ってきたものを見せてもらっても良いですか?」

 

「そうでしたね。ええ、是非ご覧になってください……私はこれを見て強制的に目を覚まさせられましたよ……アルフォンソ殿、貴方の言っていた事は本当だった」

 

「俺の方こそ、バレント殿の様な聡明な人間と交渉出来たのは僥倖ですよ」

 

 さて、それより取り敢えず映像を見てみるか。

 どんなものが映ってるやら……

 

 

 

 

 

「……わたくし達、本当に騙されていたのですね」

 

「これでは、何の為に……」

 

「……酷い」

 

「フン、所詮自分達の悪業を誤魔化し責任を全て両王女に押し付けるだけの存在が幅を効かせていたか」

 

「うわぁ……」

 

 正直絶句した。

 事前に外道が大半を占めているのは分かっていたしルーデやラウダの事を騙して利用するだけしてポイ捨てする様な連中だと言うのは理解していた。

 だが実際こうして映像を見ると、想像以上の外道振りに言葉が出ない。

 あのクソ野郎共、人の命をなんだと思ってやがる……

 

「ど、どうかしましたかお兄様?」

 

「アイツら……ルーデやラウダの命をまるで道具としか思ってねえじゃねえか……そんなの絶対に許す訳にはいかねえだろ」

 

「……ありがとうございます、お兄様」

 

 別に礼を言われる様な事言った覚えは無いけどな。

 あんな奴ら誰が許せるかって話だよほんと。

 

「こんな国なら、王国に討たれて良かったのかも知れないわね」

 

 今まで公国の為に、その身を犠牲にする覚悟すら持って王国に攻め入ってきたルーデからこんな言葉が出てしまうのは、いくら現実を見て改心していったとしてもあまりにも重たく、それでいて悲しい一言に聞こえてしまった。

 バレントも、目を伏せて唇を噛み締めている。

 

「ルーデ様、ラウダ様……申し訳ございません。私がもう少し早くに気付けていたら……」

 

「バレント、貴方に責任は無いわ。だから謝らないで」

 

「そうですわ。責任があるとすれば隠して国を貶めた貴族達と、知らねばならなかった私達王族です」

 

「そんな……」

 

「いやあそこまで徹底的に隠されてたならルーデとラウダにも責任は無いだろ」

 

 リオンの言う通り、本当に二人やバレントに罪の意識を背負う責任なんて無いと思っている。

 悪いのは隠していた外道連中に決まっている。

 

「そうそう。真実を知って、それと向き合おうとする人間に俺は責任があるなんて口が裂けても言えないな」

 

「リオン……」

 

「お兄様……」

 

「済まない」

 

 だから少しは肩の荷下ろして、これからはゆっくり過ごしてもらいたい。

 

「この証拠は後々正式にお前の手で説明してもらう。それを持ってドゥース家は無罪とする故、暫くは極秘で王宮での隔離生活をしてもらう、良いな?」

 

「承知しました。……最後に一つだけ、アルフォンソ殿に質問しても宜しいでしょうか」

 

「許可する」

 

「……お兄様ってどういう事ですか?」

 

 オイ最後にそこ突っ込んでくるのは反則だろ。

 どう言えば良いのか分からんってそこツッコまれたら。

 

「スゥー……あー、えっと……ま、まあそれだけ仲良くなれたという事で……」

 

「そうですわ! お兄様はわたくしを助けてくれたのですから! わたくしの理想のお兄様ですわ!」

 

 ナイスフォローラウダ、でも原因作ったのもラウダだけどな?

 

「それを……聞けて良かった。これからもどうか、ルーデ様とラウダ様をよろしくお願いします」

 

「……ええ、勿論」

 

 ま、でも何だかんだ納得してもらえる答えがあって良かった。

 言われずともこの二人と仲良く出来るなら俺の心の拠り所になるし、な。

 

 こうして公国との戦争における俺の役割はこれにて終わった。

 と同時に一年生としてのイベントも全て終わった。

 

 ……この調子で留学とか嫌だけど、行かないとこの世界がまずいし行かないといけないよなあ。

 

 最後の最後に俺の心に暗い影を落としたこの戦争は、二年生になっても引き摺るのだろうと今から憂鬱になるのだった。

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ

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