幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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多分次話から二年生編
それに伴い次回は更に遅くなる可能性が高いですがご了承ください


第八十話『幕間・春休み2』

 春休み二日目を迎えたが、相変わらずまだ杖が手放せないのが面倒だと息を吐く。

 歩くだけでいつもの所要時間の数倍使ったり、ドッと疲れが出るのは流石に不便この上無いとしか言い様が無い。

 周りは俺が王国の英雄だとか持て囃して色々言わなくても手伝ってくれるのがまだ不幸中の幸いなのかも知れないが、そうだとしてもストレスは溜まってくるものである。

 

 そんな訳で暫くやる事があるからと学園に残った割には部屋から全く動いていなかったりする。

 

 それはさておき、今俺がやっている事と言うのは……そう、前々から、それこそ去年の夏場から散々やろうとして中々やれなかった『エリカ』の正体調査だった。

 

「まぁ王族なのもあったが、それよりも公に存在を隠されてるってのが一番キツかったんだよなあ……お陰でどこにいるのか探すのにこんなに時間が掛かっちまったじゃねえか」

 

 夏場からずっと調査を続けていたが、そもそもエリカがどこにいるのかさえ分からないというほぼ詰みみたいな状況を八ヶ月弱続けていてようやくこの春休み前にやっとの事で見つけられたのだった。

 そこから何とかしてその『中身』が転生者なのか、それともアルトリーベデフォルトのエリカなのか、転生者なら誰が入っているのか、それを確かめる為に少なくとも春休み半分はここに居座る算段を付けていたのだ。

 

「ま、何にせよようやく探し出せたんだ。このチャンスは逃す訳にはいかないな。という訳で早速ネズミを投入するかな」

 

 流石は隠し子というだけあって、結構厳重な設備がされた人気の無い部屋だったが人が寄り付かないという事はエリカ自身には見つかっても問題は何ら無い。

 と言うより、転生者であってもなくても彼女はあんなところで過ごしているのだから退屈しのぎの相手になってくれるならちょっと不法侵入してても気にせず遊んでくれるだろうよ。

 

「座標設定良し……さぁ、行ってこい」

 

 座標を打ち込んだところで自立モードにし、放す。

 ネズミは「チュチュチュッ」と声を出すと相変わらずの無音高速振りで一瞬で姿を消していた。

 

「つーか俺も俺で骨折してるから動けなくて暇なんだよね。エリカが良い反応してくれると良いんだけど」

 

 ベッドに寝転がりながら、中継接続用のネズミを観察する。

 天井裏を通っているのか時折光が差すが基本的には真っ暗だ。

 

 しかしこれでエリカの中身がヤベー奴だったり、アルトリーベデフォルトだったらどうしようか。

 そうだとしたらアンジェの不利益になるし、何とかしてそのまま閉じ込めておけないものだろうか。

 だが逆にこれが中身善人転生者だったりした場合、多少の差異はあれどこちらに不利益は無いはずだし後々仲良くしても良いか。

 

 ……まさかモブせか原作基準のエリカは来ないよな?

 

「有り得ないとは思うが万が一そうなったらそん時はそん時で考えるか。さーてと、着いたかな」

 

 まあ、今杞憂しても意味は無い。

 取り敢えず映像を確認すべく映像確認用に認証コネクトしてあるネズミの映像を見始める。

 

 ……丁度部屋の天井裏にいるらしく、隙間を縫って侵入成功。

 最初に確認した時も思ったがやはり、見た感じシンプルな部屋って感じだな。

 これじゃあ毎日退屈だろうに……その辺はローランドとかも最大限安全面を配慮してこれなんだろうから仕方ないっちゃ仕方ないのは分かるが……親も忙しくてあまり見に来れず世話係にしか会えないとなると窮屈な暮らしをしているのは確定だな。

 やはり遊び相手になってあげよう、中身がまともだったらの話だがな。

 

 

 

 

 

『……?』

 

 目の前に突然現れたロボットのネズミ、外の世界を知らないエリカはこれの存在を知らない為不思議そうに見つめている。

 ネズミはネズミらしく、鼻をひくひくとさせながらこれまたエリカをつぶらな瞳で見つめている。

 

『チュチュチュ』

 

 ててててて、と彼女の近くまで近寄りテーブルの上に乗る。

 相変わらず両者見つめあったままである。

 うーむ、この感じならエリカは少なくとも変なのが中身だったりする事は無いだろう。

 だったら遊んでやっても良いだろう、とネズミも感じ取ったのか手のひらに乗るとそのまま肩まで到達する。

 

『わひゃっ……か、かわいい……!! っとと、久々に見ましたねこういうものは……』

 

 肩に乗ってものの数秒で仲良くなり始める一人と一機。

 何とも微笑ましい……じゃなくて! それもあるけど、この話し方的に恐らく原作エリカというのも除外だろう、寧ろ一番可能性から外していた、有り得ないだろうと思っていた中身がここに来て浮上してきてしまった。

 

 

「あの話し方……ま、まさかのモブせか原作基準……つまり平行世界のマリーの……アレが中身に……オイオイ冗談だろ……?」

 

 

 いやしかしまだ話し方が似ているだけだ、王族ともなればこれくらい聡明そうな喋りをする子もいるかも知れないしな、うん。

 

 そう信じたい。

 

『貴方どこから来たんですか? ……貴方は自由で、少し羨ましく感じてしまいます。誰も信じてくれないだろうけど、私実は前世の記憶というものがあるんです。その時はお母さんにこそ会えなくて少し寂しかったですけれど、自由に遊べて、走り回れて、お姫様に憧れたんです。でも……いざなってみると窮屈で仕方ないですね。身体も弱いし、好きな事なんて何も出来ない。でもこの世界のお父様もお母様も優しいし、弱音を吐いて心配させたくもないんです。生まれてきたからには、期待を裏切る訳にはいきません。王族としての責務を果たさねばならないのです……』

 

『チュ……チュチュっ!』

 

『慰めてくれるのですか? ふふ、ロボット……? なのに心が通じ合えて、こうして遊んでくれて、ありがとうございます。貴方は私のこの世界で初めてのお友達ですね……こうしていると、前世の小さい頃を思い出しちゃいますね。お母さん……アヤさんとも、本当に小さい頃少しだけ遊んでもらった記憶があるんですよ……楽しかったなあ……』

 

 

「……」

 

 あー、うん。

 これ……確定ですね……はい。

 え、何がって……そんなの決まってるでしょ。

 

「まさか『平行世界のアヤの娘』が中身とは……俺も後々会うんだろうけどどんな顔して会えば良いんだよこれ……」

 

 つまりは、めちゃくちゃややこしい話にはなるが俺が前世に介入しなかった世界線でのマリー……アヤの娘という事だから実際に親子関係が無くても実質親子みたいなもんだし、何なら優しいアイツの事だから実の娘の様に可愛がるのは目に見えて分かる。

 

 で、だ。

 

 問題は俺だ。

 

 この世界では俺とマリーは結婚する訳だが、エリカからしたら勿論だが父親は俺では無い訳で。

 マリーとエリカは平行世界の話にはなるが親子だから実質親子だが俺とエリカは全くもって何も無い。

 本当にどうするんだよこれ、だから夏休みの時こういう事考えて胃痛引き起こしたんだよ……

 

 いやまあ今となってはそれ以上に胃痛なのは二重転生者のクズ野郎である事がリオンにバレた事なんだけどね?

 

 え、てか共和国までリオンと同船とか空気死に過ぎて嫌なんだけど……ヘルシャーク隊一隊だけ護衛として連れてくか……まあマリー乗せるくらいなら平気だし。

 

 閑話休題。

 

 

『……でも、貴方がロボットとなると、誰かがここに送り込んでくれたという事になるんでしょうか……それともこの子を通して見ているとか……?』

 

『チュウ……』

 

 

「げ、流石に60年以上生きていただけあって年の功があるな……」

 

 原作で言及されていた通りなら、エリカは前世を少なくとも60年以上生きている事になる。

 そうともあればこの状況の不自然さには流石に気付くという事か……あとネズミ、お前はどうしてエリカと一緒に思案顔みたいな事してるんだよあざといぞ。

 

 

『……もしも、私の声が聞こえているなら……ですが。今言った戯れ言は気にしないでください。私は王女として生まれた以上その責務を果たすだけです。それ以上もそれ以下もありません。だから何の為にこの子をここに送ったのかは分かりませんが、疚しい事など無いのです。それだけは確かです』

 

『……ですが、この子をここに送ってきてくれた事とても嬉しかったです。王族故にお父様やお母様にも全てを許して話せる訳ではなく、そしてそんな存在なんて私にはいなかったのですから。話せたとしてもこんな事信じる人なんていないでしょう、気味悪がられるだけですから』

 

『でもこの子は何も否定せず聞いてくれました。ただただ私のお話し相手に、お友達になってくれました。それが心の底から嬉しかった……ありがとうございます』

 

 

 こっちがギャグ調になってる間にエリカはめちゃくちゃ重たいシリアスになっていた。

 そりゃ、前世の記憶だの異世界だの言われても普通の人間は信じないだろうな……一部俺やマリーみたいな同類(転生者)を除けばの話だがな。

 しかし流石に60年以上の人生を送っていただけあって自らの境遇に対する向き合い方がガンギマリ過ぎる、普通理不尽な人生だと嘆いていてもおかしくないところなんだぞそこは。

 

 ったく……仕方ない、本来なら暫く遊んでやった後に見つかるとまずいから撤収させようとしていたんだが……あんな事言われて撤収させられる奴がいたらそいつはとんでもない鬼畜かサイコパスかの二択だわ、少なくとも俺には無理だよ。

 

 俺はアップデート機能である『中継映像を映しているネズミに話し掛け簡易指示を送る』を躊躇無く使う事にした。

 

「お前はそこで待機。友達の遊び相手になっててやれ」

 

 

『チュチュッ』

 

『どうしたの? ……私の膝の上に乗って……ずっと遊んでくれるの?』

 

『チュウ~』

 

『……ありがとう。私の、この世界で初めてのお友達』

 

 

 潤んだ目でネズミにそう話し掛けるエリカを見て、果たして貰い泣きしない様な奴がいるだろうか。

 

「エリカァ……お前はもっと幸せになれ……!」

 

 しかも俺は直接的な関わりが無いとはいえ平行世界のアヤの娘ともなれば俺の見る目も実質娘みたいな見方になる。

 もしかしたら自分の娘になるかも知れなかった存在があまりにも幸薄過ぎて泣いてしまう。

 

 

「本当に……帝国との戦争だけは何が何でも引き起こしちゃならない。マリーを救う為にも、エリカを救う為にも……引いてはこの世界がそいつらにとって少しでも優しく、笑顔が出来る世界になる様に」

 

 そう改めて覚悟を決めるのだった。

 

 二年生は目の前だ。

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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